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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2000年05月30日

音楽座ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん2000(ミレニアム)』01/08-23新国立劇場 中劇場

 劇団若草で師事していた先生が出演されていたので、いい席を取ってもらって観に行きました。
 正直なところ、予想外にも、最初から最後まで涙ぼろぼろ流れっぱなし。ショッパナからもーやられっぱなし!

 「坊っちゃんは立派な方になるお方です。清(きよ)は信じております。」←女中・清(きよ)の、坊っちゃんへの無償の愛、信じる力っていうのかな。それの塊(かたまり)が直球で飛んできました。

 「あなた、どうぞお好きなことをおやりください。お金なんてなんとかなります。」「あなたはかんしゃくもち。殴るし蹴るし。でもあなたがいないとつまらない。」←これは夏目漱石の妻・鏡子の歌です。全然性格の合わない二人なんだけど、ただ「あなたを愛している」んですね。

 「毎日、毎秒死と向かい合っているにも関わらず、『柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺』と言い放ってしまえる君が怖かったのだ。うらやましかったのだ!」←親友だった正岡子規の幽霊に向かって言う漱石のセリフです。漱石ははっきりいってダメ男だったのですが、迷いつつ、じたばたと不恰好ながら、あきらめずにまっすぐ運命に立ち向かっていく姿が感動的でした。

 そして、極めつけの漱石のセリフ。
「なぜ生きるのかではない。いかに生きるかだ。」
 こんなにストレートなセリフを本気で言ってしまっても、それがそのまま素直に伝わってくるなんて・・・。その率直さ、純粋さにただただ感動です。

 ラストは、「夢を追って、好きなことをして、自分を信じて生きていこう。それこそが人間が本当に幸せになれる道なんだよ。」と声高に堂々と表現して、観客に夢を与えていました。私はこんな芝居がやりたい・・・・・。

 このミュージカルに関しては、ダンスも歌も舞台装置もそれはそれは素晴らしいものだったのですが、中でも一番素晴らしかったのは脚本だと思います。夏目漱石の作品、人生をしっかり読み込んで、その意味をゆがめることなく伝えることができていたのだと思います。音楽座ミュージカルはもう絶対にはずしたくないですね!

団体:音楽座
演目:「アイ・ラブ・坊っちゃん2000(ミレニアム)」(再演)
劇場:新国立劇場 中劇場
日程:2000年1月8日~23日
値段:11500円/S席

Posted by shinobu at 2000年05月30日 22:27 | TrackBack (0)