2000年06月04日
tpt『Naked-裸』06/01-06、07/07-16ベニサン・ピット
中嶋朋子さんと堤真一さんの演技対決に鳥肌が立ちました。涙をぼろぼろ流しながら体を張って迫真の演技をする中嶋さんに対して、堤さんは静かに立って燃えている、不動の青い炎のようでした。張り詰めた静けさの中で、躍動する体と揺れ動く心が衣装の外から透けて見えるようでした。
他の役者さんたちもいわゆるプロの方々で、控えめだけれどとても効果的な照明・音響と共に、質の高い空気が持続していました。私はすっかり観客になって、目の前で繰り広げられる人間の感情のぶつかり合い、絡み合い、何かが生まれて死んでゆく様を無防備に受け入れていました。
tptの作品を体験すると、必ず何かを学ぶことができます。
山本亨さんの出番が少なくてちょっと残念でした。
値段:7000円/当日券
2000年06月03日
MONO第26回公演『錦鯉』06/01-04中野ザ・ポケット
抑制した演技と適度なギャグで、穏やかながら濃密な舞台空間を体験しました。
前売2800円/全席自由(整理番号付)。
気持ちよく笑って自然に緊張できて、ラストはドキドキして体中がじわ~っと震えて、心を含む全身が完全に舞台に支配されてしまいました。快感がすごかった。足の指の先から頭のてっぺんまでしびれました。久しぶりに心から拍手を送りました。
優しさゆえの厳しさ、そして余裕から来る奥ゆかしさに心打たれました。静かで張り詰めているのに、なんだか穏やかで暖かい。そんな不思議な、優しい空気。
ヤクザのお話。サラリーマンだった男が先代の遺志をついで組長になり、てんやわんやあって組はつぶれ、全員カタギになるのですが・・・等々。ストーリーもかなり質が高いですが、なんと言ってもその中に込められたメッセージがすごかった。
「指の先までいっぱいだ」という主人公のセリフ。命が、体中にみなぎるのです。自分が自分の人生を生きていると自覚したその瞬間、それが命の最高の状態であり、つまりそれこそが「生きている」ということなんですね。その刹那に心が触れたとき、血が巡り、全身がしびれ、涙が流れるのです。
役者さん達がセリフを間違う回数がちょっと多かったのは残念ですが、決めるところは決めてくれていたので、オッケーです。蛇足ですが、最後のオセロのシーンは無かった方が良かった気がします。
ああ、次回新作は2001年2月ですね。首を長くしてお待ち申し上げております。
作・演出:土田英生
出演:水沼健・奥村泰彦・尾方宣久・金替康博・土田英生・西野千雅子・増田記子
※2000年しのぶの観劇ベストテンの第2位(後で加筆)