2000年07月16日
ひょうご舞台芸術『水の記憶』07/05-15紀伊国屋ホール
本年度オリヴィエ賞最優秀コメディ賞受賞作品(イギリス)です。
母親が死んで実家に帰ってきた三姉妹。長女の夫と次女の不倫相手、そして母親の幽霊も加わって、お葬式が始まるまでのてんやわんやの24時間。母親の幽霊が明かす次女の子供の秘密がポイントになり、涙ほろりのコメディーになっていました。
長女役は佐藤オリエさん。コミカルで余裕のある演技は期待通り!
次女役のキムラ緑子さん。クールで控えめな演技に、凝縮された熱い心を感じました。
三女役の戸田京子さん。ド迫力のセリフと所作の中に、繊細な心理描写と圧倒的なコメディー・センスが冴えました。
舞台も衣装もとてもロマンチックで、雪に閉ざされた狭い部屋の窓の外に広い世界(イギリスの田舎の風景)を感じました。緑の照明が幻想的でした。
客席には年配の方々が多く、落ち着いた劇場空間で大人の時間が流れました。優しくて、親しみやすくて、完成度が高いです。ああ、大人の芝居だなー・・・。
ひょうご舞台芸術 第21回公演
(東京:紀伊國屋ホール、神戸:新神戸オリエンタル劇場)
作:シーラ・スティーブンスン 演出:栗山民也 美術:堀尾幸男 照明:勝柴次朗 プロデューサー:中谷友和 美術監督:山崎正和
出演:佐藤オリエ、キムラ緑子、戸川京子、千葉哲也、坂部文昭、八木昌子
RUP:http://www.rup.co.jp/ ※URLは2005/07/13加筆
2000年07月08日
むっちりみえっぱり『インディアナポリス』05/26-28滝の湯 2階宴会場
劇団:むっちりみえっぱり
演目:「インディアナポリス」
劇場:滝の湯 2階宴会場
日程:2000年5月26日~5月28日
値段:1000円/全席自由(当日券1300円は入浴料込み)
インターネットの演劇系サイトで有名で、ホームページもとてもおしゃれでしっかりしています。とりあえず銭湯の宴会場で芝居をやるところからして普通ではないのですが、内容はもっと普通じゃなかったです。
演技が上手いとか下手とか、暗転が長いとか、そんなのはどうでもいいと思わせるストーリー、ネタ、舞台。観客は体を小刻みに震わせながら小声でクスクス、にやにや笑うという感じでした。
何か、得体の知れないセンスがあると思いました。本気で素っ頓狂にトボケてるんだけど、皮肉っぽくてズル賢い、というような。表現しにくいですが。
家が火事になるシーンは秀逸でした。あれだけで銭湯まで行って観る価値がありました。
新国立劇場『夜への長い旅路』05/11-31新国立劇場 小劇場
津嘉山正種、三田和代、段田安則などの大ベテラン役者ばかりのストレート・プレイ。演出は栗山民夫さんで、照明も舞台美術も重厚で芸術的。特に照明が素晴らしく、朝焼け、海辺、潮の香りまでも表現し切っていました。
ある幸せなはずの家族の狂気と崩壊。脚本はピューリッツァー賞受賞作品で、セリフもストーリーも絶品。でも、なんと言っても役者が素晴らしかった。ひとつひとつの言葉に命を感じました。プロの世界を見せ付けられました。客席からも「ブラボー!」の声がかかりました。
プログラムに載っていた三田和代さんのインタビューの「演じるのではなく、そこに『いる』ことが大切で、唯一のことです。」という言葉に体がしびれました。「完敗だ」と思いました。芸術の道は厳しいなと、今さらながら再認識しました。
脚本:ユージン・オニール "Long Day's Journey into Night"
演目:「夜への長い旅路」
劇場:新国立劇場 小劇場
日程:2000年5月11日~5月31日(東京)
値段:5250円/A席
出演=津嘉山正種/三田和代/野々村のん/浅野和之/段田安則
作 :ユージン・オニール 翻訳 :沼澤洽治 演出 :栗山民也 美術 :堀尾幸男 照明 :勝柴次朗 音響 :深川定次 衣裳 :宮本宣子 演出助手 :豊田めぐみ 舞台監督 :田中伸幸 企画 :渡辺浩子 主催 :新国立劇場
公演ページ:http://www.nntt.jac.go.jp/frecord/play/1999%7E2000/yoruhe/yoruhe.html
2000年07月07日
パルコ劇場プロデュース『滅びかけた人類、その愛の本質とは・・・』07/01-16パルコ劇場
若い役者さん(男4人女3人)のお芝居でした。チラシのビジュアル的には私の得意分野ではなさそうだったのですが、思っていたよりも控えめな演出の中で、素晴らしい演技に出会えました。
増沢望さんが素晴らしかったです。甘いマスクで背が高く、ほどよく鍛えられた体格も美しい。でも、そんな増沢さんの外見以上に、彼の演技に魅せられてしまいました。特にビールを飲む造作が最高でした。ビールの小瓶の中には、舞台なのですからビールは入っていません。空っぽのはずです。なのに、本当に飲んでいるみたいなの。また、その飲み方が切なかったり、投げやりだったり、得意満面だったり・・・色んな種類があるのです。その一口、一飲みで、空間が彼だけを選び、満たされます。
役者は演じる人物の気持ちを表現するものだという風に考えて、自分の気持ちをセリフに乗せることばかり考えていましたが、それは間違いだったと気づきました。役者はもっと客観的で理論的で、そしてどんな気持ちもしたたかに、それに溺れることなく表現するものなのですね。舞台の上で情熱的なセリフを言いながら、体を涙で震わせていても、その自分を冷ややかに見つめる自分が必ず存在するのです。増沢さんの鋭い目に、それを教えていただいた気がしました。
作・演出:ブラッド・フレイザー
演出:宮本亜門
キャスト:木村佳乃 増沢望 橋本さとし 笠原浩夫 明星真由美 平宮博重 天野小夜子
パルコ劇場内:http://www.parco-city.co.jp/play/human/index.html