若い役者さん(男4人女3人)のお芝居でした。チラシのビジュアル的には私の得意分野ではなさそうだったのですが、思っていたよりも控えめな演出の中で、素晴らしい演技に出会えました。
増沢望さんが素晴らしかったです。甘いマスクで背が高く、ほどよく鍛えられた体格も美しい。でも、そんな増沢さんの外見以上に、彼の演技に魅せられてしまいました。特にビールを飲む造作が最高でした。ビールの小瓶の中には、舞台なのですからビールは入っていません。空っぽのはずです。なのに、本当に飲んでいるみたいなの。また、その飲み方が切なかったり、投げやりだったり、得意満面だったり・・・色んな種類があるのです。その一口、一飲みで、空間が彼だけを選び、満たされます。
役者は演じる人物の気持ちを表現するものだという風に考えて、自分の気持ちをセリフに乗せることばかり考えていましたが、それは間違いだったと気づきました。役者はもっと客観的で理論的で、そしてどんな気持ちもしたたかに、それに溺れることなく表現するものなのですね。舞台の上で情熱的なセリフを言いながら、体を涙で震わせていても、その自分を冷ややかに見つめる自分が必ず存在するのです。増沢さんの鋭い目に、それを教えていただいた気がしました。
作・演出:ブラッド・フレイザー
演出:宮本亜門
キャスト:木村佳乃 増沢望 橋本さとし 笠原浩夫 明星真由美 平宮博重 天野小夜子
パルコ劇場内:http://www.parco-city.co.jp/play/human/index.html