2000年10月30日
音楽座ミュージカル『メトロに乗って』ル・テアトル銀座10/21-11/08
「観劇後に明日を生きる希望や勇気が湧いてくるもの。
疲れた心が癒され、元気になるもの。
私たちは、いつもそんな作品を追求してきました。」
音楽座のパンフレットからの抜粋です。素晴らしいと思います。私はそういうお芝居をこそ観たいのだ。
今回の原作は浅田次郎さんの同名小説「地下鉄(メトロ)にのって」です。舞台は黒っぽい灰色が基調になっていて全体的に暗いイメージでした。地下鉄だからかな?歌も踊りも全般的に地味目だった気がします。2幕の始めの歌と踊りは最高にかっこよかった。あそこからクライマックスまでずっと集中して観ていられました。
互いにわかりあえない父と息子のお話。息子が地下鉄で昔にタイムスリップして、戦後の闇市、満州出征、貧困だった少年時代など徐々に父の人生の時間をさかのぼり、激動の昭和を旅しながら真実を知っていきます。そこに腹違いの兄妹の悲恋のエピソードが重なって・・・。
誰もが必ず泣いちゃうメロドラマ的要素がふんだんに取り入れられていて、私は涙ぼろぼろ状態でした。会場中で鼻をすする音がしていました。
最後の締めのセリフは
「忘れろ。忘れろ。全部忘れろ。つらかったこと、悲しかったこと。苦しかったこと。全て忘れたら、最後には希望が残るから。」
でした。
私はお話としては「アイ・ラブ・坊ちゃん」の方が好きだったかも。でも存分に感情移入させていただいて、楽しませていただきました。音楽座ミュージカルはティッシュとハンカチ必須ね。
音楽座ミュージカル=http://www.ongakuza-musical.com/
※リンクは2005年に追加しました。
2000年10月29日
蜷川幸雄 演出『近代能楽集』10/27-11/5彩の国さいたま芸術劇場
おや、これも初日観劇でしたね。最近ほぼ無意識に初日のチケットを取る癖がついてきたようです。やっぱり初日のあの緊張感って良いんですよね。自分がやる側の時は死ぬほどイヤだけど。
三島由紀夫の戯曲集『近代能楽集』の中からの2作品。完全に別のお芝居を2本観た感じです。役者さんも全くかぶっていませんでした。
1作品目の「卒塔婆小町(そとばこまち)」は今年の春にtptの「Long After Love」で拝見していたので、その演出の違いを観るのを楽しみにしていました。残念ながら演出についてはtptの方が格段に良かったですね。
でも詩人役の高橋洋(たかはし・よう)さんは素敵な発見でした。すごく清らかでキュートで目が離せませんでした。蜷川版「パンドラの鐘」で発掘青年オズの役をしていた人です。
2作目は「弱法師(よろぼし)」。
15歳の盲目白髪の少年が主人公。弱冠18歳の藤原竜也さんです。そもそも藤原さん目当てで埼玉まで足を運んだのです。そしてその目的は容易に達成されました。やっぱり彼は天才!!あの体から出る光は一体何なんだろう!?と思うぐらい、彼は光り輝いていました。それも艶っぽく。色香が客席まで漂ってくるほど・・・・。でもあんなに美味しそうにタバコを吸われるとこっちも吸いたくなっちゃう。こらこら、未成年者の喫煙を促さないように!!
舞台装置はそんなに凝っていませんが、演出は・・・とにかく蜷川色炸裂!!お好きな方にはお薦めですが、私は苦手な方でした。
文化村HP : http://www.bunkamura.co.jp/
2000年10月27日
劇団東京ヴォードヴィルショー『竜馬の妻とその夫と愛人』10/26-11/03本多劇場
本多劇場へ行く道すがら、三谷幸喜さんとすれ違いました。脂汗をかきながら跳ねるように急いで歩いてらっしゃいました。そう、今日は初日だった・・・・!!
坂本竜馬が死んで、後に残された妻「おりょう」と彼女をとりまく3人の男たちの小粋に存分に笑わせてくれて最後にほろりと泣かせてくれる男3人、紅一点の4人芝居。
さすが三谷さんの脚本です。もー感服。満腹。大満足。
登場人物それぞれのキャラクターがものすごくしっかりと描かれていて、その人の立場だったらまさにその受け答えをするだろう、と思わずうなってしまうほどの緻密なセリフの応酬。命がけ、真剣勝負なのだけれど、なぜか可笑しい、どこか心温まる優しい人間同士のコミュニケーション。
「わしは坂本さんのようになりたいんじゃ。」
「あなたなんて坂本先生に会っていなかったらただの女中じゃないか。」
「私は坂本りょう。坂本竜馬の妻よ。生涯変わることはないわ。」
「竜馬は死んだ。でも僕は生きている。僕は今、君を抱きしめてあげることができるんだ。」
坂本竜馬というあまりに大きな存在は、死んだ後でさえもまわりの人々の心をとりこにし、悩ませます。
佐藤B作さん、佐渡稔さん、あめくみちこ さん、平田満さん。全員めちゃうま。言うことなし。役者さん一人一人が、生き生きと鮮やかに舞台上に存在していました。おりょう役のあめくみちこさんの着物姿のなまめかしいこと!やっぱり女は大和ナデシコ。目指せ着物美人。
細かいことですが、この題材・内容で1時間55分にまとまっていたのはとても素晴らしいと思いました。
当然のごとく超ぉ~お薦めですが前売り券は完売。当日券のみの扱いだそうです。時間と体力のある人は並んでみてください!
地方公演が沢山あるので、もしかすると狙い目かも・・・
劇団東京ヴォードヴィルショー=http://www.vaudeville-show.com/
2000年10月25日
reset-N『MARKET』10/23-25吉祥寺Star Pine's Cafe
友人に薦められて観に行きました。わざわざ吉祥寺まで。
クール。
残酷なストーリーの中に、なぜか一条の光と透明感。
そして若さ。
今ありがちな乾いた感じではないんです。適度に体温を感じる程度の湿度がありました。つまり温かみ、ですね。
舞台は、階段を降りてくる地下の部屋(倉庫)、という設定なのですが、Star Pine's Clubの舞台そのものを、それ自体が部屋であるように使っていました。Clubの階段がその部屋の階段なのです。それが非常に効果的で、話にリアリティーを持たせていたと思います。大道具はイス1つのみ。あとはほんの少しの小道具だけ。それもまた役者を際立たせる役割を担っていたのだと思います。
ストーリー自体は非常にハードな内容なのであまり私の好みではないのですが、なぜかそんなにイヤな気持ちはしませんでした。それどころか残酷さにわくわくしてしまったぐらい・・・。
作・演出家である夏井孝裕さんは1999年に「knob」という作品で第四回劇作家協会新人戯曲賞を受賞されているそうです。この「MARKET」は1996年の作品だからというのもあるのでしょうが、さすがに物語的には少し古い感じがしました。でも、発信してされ、伝わってくるモノ・コト(何か)は今にも通じるものだと思いました。
役者さんも上手かった・・・・。テンションが超高くて自然。
また、上演時間が1時間だったことが良かったです。内容が濃密なので長いとつらかったと思います。あの短さだったからこその説得力ですね。
reset-N(リセット・エヌ) ホームページ → http://www.reset-n.org
2000年10月22日
プッチーニ『蝶々夫人』オーチャードホール10/21, 22
もーぼろぼろに泣きっぱなし!!
私だけじゃないの!
鼻水をすする音が会場中から聞こえっぱなし!!
ネタバレします。
舞台は戦時中の日本の長崎。アメリカ海軍士官ピンカートンと結婚した15歳の日本人芸者、蝶々さんが子供を育てつつ夫の帰りを待っていたけど、結局捨てられて自殺するって話。あーすみません、色気なくって。
すごかったです。ものすごく健気で清らかで美しくて誇り高くて・・・。原作はアメリカ人の小説で、オペラ台本化したのはイタリア人。作曲したのはイタリア人、プッチーニ(←けっこうハンサム)。どうして日本人女性の精神をあんなに繊細に表現できるのでしょう!?もー・・・あんたは天才だっっ!!(誰もが知ってることですが)
「ある晴れた日に」というのが一番有名な歌なのですが、伴奏が流れてきただけで涙がポロポロ。顔中くしゃくしゃにして泣いてしまいました。
二幕の最後は静かな伴奏とハミングだけで2分間以上あります。それはピンカートンの船が3年ぶりに日本に帰ってきたのを見つけた蝶々さんが、彼の帰りを一晩中起きて待っている時の心境を表しています。子供と侍女と一緒にじーっと正座している後姿。そしてそのまま暗転・・・。もーまた泣かされちゃったっ。
すごくお薦めですが、デートには向きません。だってメイクが全部落ちちゃう・・・。
2000年10月21日
Bunkamura『VOYAGE』2000年10月シアターコクーン
途中休憩の時に帰りましたぁ・・・。前前からとっても評判は悪かったので覚悟はしていました。「無理せずすぐ帰ろ」って。で、案の定。半分でもう十分だったと思います。
でもシアターコクーンの変形舞台をはじめて観た!開演前に、普段は見られない舞台の裏側をきょろきょろしながら歩き回りました♪「おおおお、ここを唐沢寿明さんが歩いたのね!!」
雲やかもめの絵が描かれた白い幕を四方の壁全てに張り巡らし、劇場のド真ん中に丸舞台。舞台下では楽器の生演奏。つまり舞台が船で、周りの客席は海、そして空なのです。うきうきしました。コクーンじゃないみたい!!だって2階席の人は幕に空けた穴から観るようになってるんですよっ。
で、芝居の内容は・・・・。
役者さんは皆さんとても大変そうでした。
中谷さとみさんが最高にキュートで良かった!アフロ13観に行きます!!
演出:串田和美
出演:松たか子 大森博史 中谷さとみ 他
2000年10月19日
tpt『地獄のオルフェ』09/21-10/15ベニサン・ピット
差別・偏見・暴力の嵐が吹き荒れるアメリカ南部の閉鎖的な田舎町。不幸な中年女レィディーは、町にやってきた若くて美しい風来坊ヴァルと不倫の関係に陥り・・・・。テネシー・ウィリアムズ原作。マーロン・ブランド主演の映画にもなってます。
窓に打ちつける雨、店内の乾いて凍りそうな空気、暗いベッドルームの湿気など、肌で感じることができました。でも、これ以上ないような陰惨な結末に打ちのめされて、帰り道は気分どんより・・・。
山本亨さんの出番が少なくて寂しかったな~。
【出演】ビューラ・ビニングス◎宮地雅子 ピーウィー・ビニングス◎深貝大輔 ドッグ・ハンマ◎山本亨 キャロル・クートレール◎西尾まり エヴァ・テンプル◎赤石まり子 シスター・テンプル◎南一恵 祈祷師◎アレックス・ヘインズ ヴァル・ゼイヴィア◎辰己蒼 ヴィー・タルボット◎富沢亜古 レイディ・トーランス◎倉野章子 ジェイブ・トーランス◎二瓶鮫一 タルボット保安官◎早坂直家 デヴィッド・クートレール◎真名古敬二 女/ポーター看護婦◎松浦佐知子
作◎テネシー・ウイリアムズ 台本◎tpt workshop 演出◎ジョナサン・バトレル 美術◎ユリア・リービセラー 照明◎笠原俊幸 音響◎長野朋美 衣裳コーディネート◎喜納裕子 ヘア&メイクアップ◎高橋功亘 舞台監督◎小川 亘 萬寳浩男 ドリー・ハンマ◎植野葉子
Theatre Project Tokyo -T.P.T-公式HP:http://www.tpt.co.jp/
http://www.tpt.co.jp/aboutus/archive/032.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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2000年10月18日
アルメイダ劇場『コリオレーナス』10/18赤坂ACTシアター
シェイクスピア大好きな私としては、わざわざイギリスから来てくださる本場の舞台を見逃すわけには行きません!・・・が、寝ちまった・・・寝ちまったよ!!(前半30分ぐらい)
だいたい「コリオレーナス」というお芝居自体がかなりのセリフ劇なんですよね。しゃべりっぱなしで夜7時から10時までちゃんと3時間ありました(もちろん休憩はありましたが)。お尻が痛かった・・・。
また、非常に残念ながら主役のレイフ・ファインズさんにはそれほど魅力を感じず、それよりも副主役(?)のライナス・ローチさんに目を奪われてしまいました。超美形よりもちょっと影のあるヤサ男に惚れてしまうのよね♪
物語の終盤に、コリオレーナス(レイフ・ファインズ)が母親の言葉に心動かされて改心するシーンが素晴らしかったです。彼に背中を向けようとする母の手を、後ろからぎゅっとつかんだコリオレーナスのくしゃくしゃになった泣き顔。一つでも心を震わすシーンがあれば、それだけで「観に来てよかった」と思えますよね。