REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2001年07月20日

Bunkamura『音楽劇 三文オペラ』シアターコクーン07/09-27

 『三文オペラ』という作品、私は初見です。名作でした・・・・。
 『三文オペラ』はベルトルト・ブレヒト作、クルト・ワイル作曲の音楽劇で1928年ベルリン初演です。そういえば、新国立劇場演劇『夢の裂け目』(井上ひさし・作)はこの『三文オペラ』の音楽にオリジナルの日本語の歌詞をつけていました。

 主要な役は、加賀丈史さん、村井国夫さん、瑳川(さがわ)哲朗さん、大浦みずきさん、重森あゆみさん、森川美穂さん、キム・ヨンジャさんという豪華キャスト。その他、脇役もかなり有名な方がいらっしゃいました。私の大好きな大森博さんとか。さすが蜷川幸雄さんの作品です。キャスティングなんて自由自在ですね。

 相変わらずの蜷川さん独特の演出もやっぱり顕在で、ちょっと首を傾げたくなる部分もありましたが、装置と衣装の豪華さは息を呑むほどでした。あの色彩感覚は素晴らしい。それにしても豪華でしたねー・・・・全てが。

 蜷川さんのお芝居が始まると、いつも思わせられていたんです、「帰りたい・・・」と。でもこのお芝居は『三文オペラ』。初めてだし勉強のためには最後まで見なきゃ!と覚悟を決めました。すると、1時間半ぐらい経ったあたりからだんだんとその味というか、色がこなれてきて、面白くなってきました。休憩15分を含む3時間強のお芝居なので、中ほどから盛り上がってもまあ及第点か、と。

 ラストがとにかく良かった。『三文オペラ』というお芝居のラストが良い、というのはもちろんなのですが、演出がねー・・・・私が苦手だったはずの部分が、くるっとひっくり返って、効果的で粋な演出に変わっていました。やられた・・・!

 元・歌のおねえさんの茂森あゆみさん、歌うまい!声きれい!
 キム・ヨンジャさんの魂のこもった歌に感動。

 ここからネタバレあり。

 『三文オペラ』のラストは、主人公の大悪党メッキーが絞首刑になる直前、彼の一番の敵である義理の父親が客席に向かって「最後はハッピーエンドにしなきゃ!」という意味のセリフを言うやいなや突然、女王から恩赦が出て助かり、1000万ポンドの年金と貴族の位まで得てしまう、という大どんでん返し。すると敵も味方もみんな「良かった良かった」と大はしゃぎのお祭り騒ぎとなり、歌って踊って大団円・・・というめちゃくちゃな終わり方です。今までの3時間ものストーリーをひっくり返しちゃうの。

 それが爽快なんです。痛快なんです。人間ってそういう奇跡を求めているんだと思うんです。嘘でもそんな奇跡を目撃したら、何もかもがパーッと明るくなって全てを信じられるようになるような・・・。

 『夢の裂け目』のラストシーンもこれに似ていた気がしました。つかこうへい作『蒲田行進曲』(演劇)もそうですよね。テリー・ギリアム監督の映画『フィッシャー・キング』も、ペドロ・アルモドヴァル監督の映画『神経衰弱ギリギリの女達』も、アキ・カウリスマキ監督の映画『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』も・・・。あ、スタンリー・キューブリック監督の映画『時計仕掛けのオレンジ』も、言わばそうじゃないですか?違ってたらごめんなさい。でも、私はそういうのが好きなんですねー。

文化村HP : http://www.bunkamura.co.jp/

Posted by shinobu at 2001年07月20日 23:08 | TrackBack (0)