2001年11月27日
パルコ劇場プロデュース『サクラパパオー』11/15-27パルコ劇場
鈴木聡さんが作・演出をつとめるラッパ屋の作品で、タイトルからもわかるように競馬のお話。
TVドラマなどで活躍の桜井淳子(さくらい・あつこ)さん、東京乾電池の角替和枝さん、東京サンシャインボーイズの小林隆さん、元・夢の遊眠社の羽場裕一さん、天井桟敷(寺山修司の劇団)出身の若松武史さん、そしてラッパ屋の福本伸一さんなど、パルコ・プロデュースならではの豪華キャストによる再演です。作・演出は鈴木聡さん。
最初はその新劇風の演技と演出にかなり引いてたのですが、中盤から突然、舞台が光を発し始めたんです。ストーリーはこれといってそんなに特徴があるわけじゃないです。すごく普通の人々の競馬場での悲喜こもごも。そこで起こる「小さな奇跡」(←チラシより抜粋)。
その奇跡のシーンの少し前ぐらいから私ははどんどんと芝居の中に引き寄せられるのを感じました。同時に舞台が客席に近づいてました。まるで役者さんが私の中に入ってくるような感じ。よくある感じの音響と素直な王道の照明。そしてわかりやすい演技。だけどその舞台で起こっている奇跡がまるで私自身に起こっているような錯覚をおぼえ、わけがわからないままに涙がポロポロとこぼれ落ちて・・・・それがまた止まらないの。
お芝居の要素すべてが光を放っていた気がします。舞台の上にあるものが全部優しいものだったんだと思う。役者さんみんなが素直で良い人に見えた。きっとこの舞台が出来上がってくるまでの過程が、本当に優しくて温かいものだったんじゃないかな。思いっきり大切にされて、大きな愛に包まれながら、生まれた舞台だったんじゃないかな。たくさんの人間が集まって、その全員が同じ気持ちになって作り出した何か。それこそ本当に奇跡だったんだなーって、観終わってからしみじみと感じています。
桜井淳子さん、美しかった。スタイルもいいけど声が素敵。舞台初体験とはすごいですね。
若松武史さん、ものすごい濃い味だけどぴったりでした。くせになりそうな役者さんだ。
羽場裕一さん、めちゃくちゃかっこよかった。TVもいいけどまた舞台で拝見したいです。
福本伸一さん、ラッパ屋になると三枚目が多いんですかね。二枚目の感じも好きなんだけどなー。
TEAM発砲B-zinの小林愛さん、ちょっと期待していたんですが演技がアニメっぽかったですね。声優さんとして活躍されているのもうなづけました。
パルコ劇場HP : http://www.parco-city.co.jp/play/
2001年11月26日
自転車キンクリートSTORE『第17捕虜収容所』紀伊国屋サザンシアター11/16-25
ドイツ軍の捕虜収容所に抑留されているアメリカ兵たちのお話でした。何も起らない、することもない、劣悪な環境の収容所でなるべく明るく過ごそうとする男達。ある時、自分達の情報がドイツ軍に筒抜けになったことから、仲間の中にスパイがいると知って・・・。
なかなかサスペンスフルな結末でした。伏線もしっかり張られていて。ドキドキしちゃった。中盤以降にスパイが誰なのかが観客に知らされるのですが、「こら!その人がスパイなんだから、そんなことを今しゃべっちゃダメよっっ!」と客席から叫びたくなるほど臨場感がありました。ふふふ。
翻訳ものなんですが台本(飯島早苗)、演出(鈴木裕美)がしっかりしていたんだと思います。ただ、枠の中にきちんと収まっていた感があって、客と芝居との距離がちょっと大きかったかな。いわゆる「ウェルメイドなお芝居」ですね。
実力のある男優さん達の競演でしたが、一番良かったのは(役得でもありますが)小村裕次郎さん。元・猫ニャーの看板男優さんですね。背が高くてハンサムな方なんだけどボケ&可愛いいキャラが素敵でした。
私のいちおしの山本亨(やまもと・あきら)さんは、あんまり活躍してなかったなー・・・。メイクも濃いし衣装もかなり作りこんであったので誰だかわからないぐらいだった。残念。
作=DONALD BEVAN / EDMUND TRZCINSKI/訳=鴇澤麻由子
演出=鈴木裕美/台本=飯島早苗 出演= 出演=京晋佑・高橋克実・山本亨・川原和久・樋渡真司・大石継太・岡田正・ 田鍋謙一郎・ 五十嵐明(青年座)・藤本浩二・浅野雅博(文学座)・小村裕次郎
2001年11月21日
ミュージカル『ジキル&ハイド』日生劇場11/05-30
加賀丈史、マルシア、重森あゆみ、段田安則、という豪華キャストのミュージカルです。
私、日生劇場で良いお芝居を観た経験がないので全然期待してなかったんですが、すっごく面白かったです!怖かった!!
まず、マルシアさんが素敵でした~・・・・♪ 歌がうまいしダンスもきれい。スタイルも抜群なんだなー。彼女、舞台でめちゃくちゃ大きく見えるんです。大迫力。
加賀丈史さん、私はあんまりファンではなかったのですが今回で目覚めました。すごいよ!一体何歳なんだ!?あんなに動けるなんて思わなかった!!!紳士のジキル氏から野蛮なハイド氏に最初に変身するシーンの変貌振りには息を呑みました。声色がすごい。コミカルな演技も粋。渋いダンディー。
重森あゆみさん、可哀想でしたね。どうしてもマルシアさんと比べられちゃうし。ちょっと薄すぎました。歌も、声はいいんだけどパワー不足かな。「三文オペラ」の時の方が良かったなー。
段田さん、歌は苦手のようですねー・・・。でも演技はさすが、清くて良かったです。
その他の出演者の方々のコンビネーションも良かった。合唱もすごく心に響いてきたし動きも演技もピタっと決まってしてました。これって演出の力なのかなー。ちなみに演出は山田和也さんです。
衣装もすっごく良かった!生地が良いしデザインもいい!加賀さんのハイド氏役の時の薄い灰色のコートが特に美しかった。コートでマルシアさんをすっぽり包み込むのも効果的。官能的で怖かったです。
舞台装置もすっごく豪華でした。あれならこの高いチケットでも十分納得です。火花散るし火もボーボー燃えるし、巨大なセットがバンバン飛び出てくるし。照明もエンターテイメントとしては派手すぎず、味があって良かったです。
私が昔、お世話になっていた先生が出演していらして、それも嬉しかった。小関明久さんという方で劇団若草の先生なんです。音楽座「アイ・ラブ・坊ちゃん」にも出てらした方で、ミュージカルの人なんだなー。
芸術座内東宝日生公演係HP : http://www.toho.co.jp/
2001年11月19日
青年座『悔しい女』11/17-25本多劇場
観劇の記録です。11/19ソワレ。
演出の宮田慶子さんが2001年『赤シャツ』『悔しい女』『サラ』『セイムタイム・ネクストイヤー』で平成13年度毎日芸術賞千田是也賞、第9回読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞。
主演の高畑淳子さんが『悔しい女』優子役、『セイムタイムネクストイヤー』(本多劇場/地方公演)ドリス役の2作品で読売演劇大賞特別賞を受賞。
作:土田英生 演出: 宮田慶子
出演:高畑淳子/ほか
http://www.seinenza.com/
2001年11月18日
阿佐ヶ谷スパイダース『日本の女』スズナリ11/7-18
阿佐ヶ谷スパイダース、略して阿佐スパ(あさすぱ)。今、小劇場界で一番熱い長塚圭史さん作・演出のプロデュース集団です。毎回、様々な新しい役者さん達とのミックスが楽しみです。
何しろ長塚さんの脚本って退廃的です。どす黒くてエログロ。これは好みが分かれるところだと思うのですが(私は苦手なんです)、その気持ち悪さを吹っ飛ばすというか、気持ち良さに変えてしまうような、暑苦しい、カラッカラに乾いた、言ってみればジャンプ力に近いような笑い(ギャグ)が魅力だと思います。役者さんが巧いというのもありますし、その役者さんの魅力を引き出すことが出来ている長塚さんの演出力でもあるかもしれません。
今回のお話はわかりやすかったですね。構成が「ライヒ」@東京グローブ座に似てたし。私もかなり阿佐スパ色に慣れてきたらしく、パターンがわかってきてしまってストーリーを楽しむことはできなかったんですが、何しろギャグが良い。巧いんです。
私は
「ホットケーキの匂いがぷんぷんするっていうんだ。それほどホットケーキ食ってないのに。」
で卒倒しました(笑)。
それと、阿佐スパに出る「男」ってかっこいいんです。特に今回は男による男のための芝居だったから特にその色が濃く出てましたね。男性のファンが多いのもうなづけます。
阿佐スパのメンバーは長塚さんと中山祐一朗さん、伊達暁さんの3名だけですが、私はこの3人の役者さんが大好きです。特に伊達さんファン♪中山さんも毎回違うキャラですごいし。今回は本当に怖い人(田中役)でした。実は長塚さんのへろへろなのに瞬発的な動きにくびったけだったりする。
苦手だ苦手だと思っていながらもいつの間にかディープなファンになっているという・・・・。これが阿佐スパなんですね。参った参った。
阿佐ヶ谷スパイダースHP : http://syns.com/spiders/
2001年11月15日
韓国ハクチョン劇場『地下鉄1号線』11/15-18シアターコクーン
韓国製ミュージカルでした。
ものすごく複雑な気持ち・・・どういう感想を持ったらいいのか・・・・。
箇条書きにしてみます。
・みなさん歌が上手い。声が本当にきれいで力強い。じーんとくるほど。
・皮肉たっぷりの歌詞でコミカルにソウルという都市を笑い飛ばす軽快さとエスプリが素敵。
・ダンスは下手だけどそんなこと気にならないライブ感とお祭り感。
・衣装が安っぽい。色合いは決してセンスがいいとは言えない。ちんどんやさん系。
・音楽は日本の80年代のポップ歌謡曲のよう。エレキギターとドラム、キーボードが主流。
・いかにもこれから「歌うわよっ」みたいなきっかけで歌が始まってしまう。演歌調。
・メイクがすごい。笑いを狙っているのか本気でやってるのかの境い目が曖昧。
すごくかっこ良いところとめちゃくちゃダサいところが完全に入り混じって同居しているので拍手していいのかうなだれていいのかわからないところが刺激的な舞台でした。
18日(日)までやってます。ソフトな文化衝突をご希望の方は足を運んでもいいかもしれません。客席も相当インターカルチュラルでした。私はちょうど真後ろのオジサマが芝居中にずっとおしゃべりしているのがつらかった。下ネタでウハウハ言うし。
文化村HP : http://www.bunkamura.co.jp/
新国立劇場演劇『コペンハーゲン』新国立劇場小劇場10/29-11/18
第2次世界大戦中に核分裂の研究をしていた科学者たち(実在した人物)が、その死後にその時のことを回想する形で語られる濃密な会話劇です。登場するのはボーア博士とその妻マルガレーテ、そして弟子のハイゼンベルクの3人だけ。
休憩時間を含めておよそ4時間ありました。さすがに疲れます。こんなに疲れたのはワーグナーのオペラ以来でした。途中でお腹がすいて眠っちゃったり(泣)。役者さん、熱演なのにごめんなさい。
※上演時間は4時間ではありません。勘違いです。ごめんなさい(2007/02/01加筆)。
素晴らしい脚本でした。めちゃくちゃ深いです。原子・電子レベルで起こる現象と人間同士のコミュニケーションにおいて起こる出来事が実は、同じことだという視点。それが論理的に明かされます。(これだけじゃないですが)説明はすごく上手ですが、なにしろテーマが壮大で難解なので戯曲をちゃんと読み直さないと本当の意味はわからないと思います。おせじにも賢いとは言えない私の頭脳に伝わってきてくれた数少ないセリフを下記に紹介しようと思います。稚拙な解釈付きで。
『歩くということは話すということ。』
ボーア博士とハイゼンベルクは、いつも散歩をしながら物理学の話をしていました。何か新しい理論が生まれるのはいつもその散歩の時でした。 私たちにも当てはまりますよね。例えばデートとかってそうじゃないですか?ただ、道を歩いているだけでそこに何かが常に生まれている。会話のときも沈黙のときも。
『誰も見たことのないような新しい量子倫理学が必要となるでしょう。』
これは「将来こうなるだろう」という予言なのですが、私もその通りだと思います。例えば、世界を優しく覆う倫理というものがあったならば原爆は落とされなかったかも、と。 今で言うと、クローン人間についてはまさにそこがテーマなんじゃないでしょうか。(語弊があるかもしれません。お許しください。)
『沈黙。わたしたちはいつもこの沈黙に戻ってくる。』
ボーア博士とその妻マルガレーテの長男は海で溺死しています。そのことを常に思い出す。そしてその時、二人(及びその周りの人)は沈黙します。「話すことなど何も無い」に行き着くからです。めちゃくちゃ漠然としていますが、なんかコレって原子の調和と同じなんじゃないかなって。
≪ご参考≫
「ボーアとハイゼンベルクとの対話劇」
新国立劇場HP : http://www.nntt.jac.go.jp/