正式なタイトルは『ジェイプス~記憶の棲む家』です。ひょうご舞台芸術は見逃さないようにしています。
サイモン・グレイ作の濃密な3人芝居。イギリスの最高級住宅地にある立派な家を舞台に27年間にわたる男2人と女1人の複雑な三角関係を描きます。伝えんとするのは古きよき時代から現代への人間、家族のあり方の変容と現状。やりきれない気持ちとどう向き合っていくのか。これからの未来をどう乗り切っていくのか。
宮田慶子さんの演出は一人一人の心を細やかに表すことに成功していると思います。
ストーリー、ちょいとネタばれします。
兄の恋人と関係を持つ弟。それを知っていてその女と結婚する兄。
兄と家族になりながら弟を恋焦がれる女。
アルコール中毒になってボロボロの体で家に帰ってきた弟をゆっくりと抱きしめる兄。
「ああ。ここはお前の家だよ。」と優しく何度もつぶやきながら。
兄役の羽場裕一さん。うますぎです。兄の性格、生い立ちなど全てが指先から頭のてっぺんまで満ち満ちていて、非常に生々しくその存在を受け止めさせます。年をとっていくのがすごく自然。
弟役の高橋和也さん。バケモンです。アル中の演技なんて本当に20歳ぐらい年とって見えました。女に対しては遊び人ぶったり、つらくあたったり優しくしたり、その時々で色んな態度をとるのですが兄といる時はいつも同じ口調に戻るんです。なんて細かい演出&演技なんでしょう!
妻役の土居裕子さん。ナーバスすぎるかとも思ったのですがそれがあってこその女。変身ぶりにもうなります。過去にいろんな賞を取ってる女優さんなんですね。納得。
宮田慶子さんの指揮のもと、役者3人が繰り広げる静かで激しいバトル。それが一番の見どころだと思いますが、舞台美術も必見です。ある豪邸のリビングなのですが、柱、壁、暖炉、ソファ、ステンドグラス入りの大きなドアなど、その家に棲む人間の匂いと歴史を何十年に渡って染み込ませ、今も静かに待っている。
横田あつみさんはこれから要注目の舞台美術家だと思います。妹尾河童さんのお弟子さんなんですよね。
ひょうご舞台芸術第26回公演
(東京/PARCO劇場、兵庫/川西みつなかホール、新神戸オリエンタル劇場)
出演=羽場裕一、高橋和也、土居裕子
作:サイモン・グレイ、翻訳:小田島恒志 演出:宮田慶子、美術:横田あつみ、照明:中川隆一、音響:高橋巖、衣裳:前田文子、宣伝美術:坂本拓也、宣伝写真:小林敏伸、舞台監督:加藤高、芸術監督:山崎正和 ひょうご舞台芸術第26回公演 企画制作:兵庫県、(財)兵庫県芸術文化協会、制作:RUP
兵庫県立芸術文化センター(仮称)」 : http://www.gcenter-hyogo.jp/
http://www.parco-play.com/web/program/001139/