2002年08月28日
ラ・ヴォーチェ『オペラ「愛の妙薬」』08/25,28,30新国立劇場
ドニゼッティ作曲『愛の妙薬』はベルカント・オペラの傑作と呼ばれています。
テノールのジュゼッペ・サッバティーニさんが出演されるのと、演出が面白そうだったのでチケットゲット。
※レビューは2014/10/07にアップしました。
演出のウーゴ・デ・アナさんは超有名な人だったみたいです。大当たりでした♪『愛の妙薬』のストーリーに画家のゴッホの人生を重ねる、という実験的な手法にもかかわらず伝わってくる愛は直球ど真ん中。心が伝わってきました。
売り上げランキング: 164,928
出演: ジュゼッペ・サッバティーニ, ナターレ・デ・カロリス, ヴィクトリア・ルキアネッツ, 五十嵐麻利江, アンジェロ・ヴェッチャ、他
作曲:ドニゼッティ 演出:ウーゴ・デ・アナ 指揮:パオロ・オルミ 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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2002年08月26日
蜷川幸雄 演出『夏の夜の夢』08/16-09/1シアターコクーン
ご存知シェイクスピアの『夏の夜の夢』です。
1994年の初演から何度となく再演されている名作だそうです。
私にとって蜷川演出ってかなりの当たりはずれがあるのでチケット入手に勇気がいるんですが、今回は松田洋治さん目当てでチケットを取りました。
も~・・・・・当たり!超大当たりでした!!
もうちょっとでスタンディングオベーションしそうでした。
一言で言うと、和風な演出なんですよね。まず舞台が石庭。そう。あの岩石がぽつぽつ置いてある砂の庭です。豪華で艶やかだけれどどこか暗闇のイメージを髣髴させる和風の衣装をまとって妖精の王(平幹二朗)と女王(白石加代子)が高笑いをしながら舞台の底から歩み出てきます。人間以外の生き物が棲まう深い森のイメージが劇場を支配し、すっかり気分は樹海でした。妖精パックが無言の踊り手でセリフは舞台下手で弁士(松田洋治さん)がしゃべります。舞台の穴から何人もそのパックが出てくるところもわくわく感増大。
妖精界の外の人間世界の演出もお楽しみ満載でした。ハーミア、ライサンダー、ヘレナ、ディミートリアスの四角関係は若々しくてアクティブ。大笑いでした。
また、海外公演でも評判だったのが道化の人たちの登場シーン。焼きそば屋台にバイクと自転車でかけつけるんです。これはすごい。やっちゃった演出が成功しています。役者さんがまた上手なんですよね~。劇中劇のシーンであんなに笑えたのは初めてでした。
サービス過剰なシェイクスピア和風お祭り芝居。ぜひぜひ1度は体験して欲しい。お薦めです。
2002年08月22日
MONO『きゅうりの花』08/14-21ザ・スズナリ
MONOは京都を拠点に活動する劇団です。しのぶのいちおし。作・演出家の土田英生さんが押しも押されぬ大スターとなってしまいましたね。東京公演千秋楽ということで満員でした。立ち見も出てました。ロビーには草なぎ剛さんや文学座、俳優座、フジテレビからお花が届いていて嫌がおうにも盛り上がります。
『きゅうりの花』は過疎の村を舞台にしたコメディーなのですが、土田さんらしくのほほん切なくシリアス。なんか、心がぎゅ~っと締めつけられた感じ。つらかった。
あの「ハァ、イエイエナァ~」踊りも滑稽で居心地が悪いけど大人のさりげないいじめが一番きつかった。人間の心の機微というか、デリケートな部分をすごく丁寧に演出されてますよね。優しい語り口だからこそ心の奥まで突き刺さる辛らつさ。いやはやあっぱれです。
役者さん、毎回欠かさず観るようにしているからか、いつもに似た配役すぎた気がしました。どういう風にセリフをしゃべるか予想できちゃうんですよね。あ、熱狂的ファンだからか(苦笑)。一番良かったのは東京から来たお嫁さん役の増田記子さん。こぎれいで品があって、いかにも都会から来た感が出てました。唯一いつもと違うキャラだったと思います。
それにしても有名になるスピードが速い気がするのは私だけ?やっぱりインターネットのせいじゃないかって思うんです。口コミが最大の宣伝になってる気がする。やっぱり良いものは良い。
この秋からフジテレビで土田さん脚本のドラマが始まるそうです。キャスティングが楽しみ。
作・演出:土田英生
出演:水沼健・奥村泰彦・尾方宣久・金替康博・土田英生・西野千雅子・増田記子
≪掲示板形式だった頃のログです≫
まさきちさん、やっとお返事書けました!おひさしぶりで~す。
> 水沼さんの表情の変化がなんだか後から思えばすごかったな・・・。
怖かったですねー。「いつもの華がないな~」なんて心配していたらあの結末って・・・。
> あの人達、全員好き、と思わせてくれる劇団ですよね、MONOって。
そうですよね。これからも好きでいたいので、土田さんがものすごくお忙しいこととは思いますが
ぜひMONOとしての活動も続けてもらいたいと願います。
MONO公式HP : http://www.nk.rim.or.jp/~mono/
2002年08月18日
Studio Life『歓びの娘 ~鑑定医シャルル』紀伊国屋サザンシアター08/10-21
Studio Lifeは作(脚色)・演出の倉田淳さんのもと、美形男優が上質のストレートプレイを披露してくれる他に例のないスタイルの劇団です。ほんと、隙間産業。ジャンル自体を生み出していると思います。
『歓びの娘~鑑定医シャルル』は藤本ひとみ原作の推理サスペンス小説。シリーズ化しているほどの人気作品です。
いやー・・・・面白かった。ほんと、まずストーリーが面白い。はらはらドキドキ。
まあ原作がヒット小説なのだから当然といえば当然ですが、小説を舞台用作品に書き変えて、さらに見応えのある演出をつけるその腕は素晴らしいと思います。倉田さんの脚本・演出はすごくシンプルでわかりやすく、真面目で上品。とにかく原作を大切にしているのがひしひしと伝わってきます。
役者さん。皆さんお美しいし演技がお上手です。女役も男優がやるというその手法、大成功だと思います。お芝居をお芝居として観ることができます。歌舞伎と同様の効果が出ているんですね。
主役の笠原浩夫さん。長いセリフを微動だにせずとうとうと述べるその姿、美しい。
アデル役の深山洋貴さん。コメディー・センス最高。ぜひStudio Life以外でも活躍して欲しい。
私が観に行った回はプレミアム・ナイトと称されるスペシャルデーで、補助席もあわせてほぼ満席。その99%が女性客。お芝居終了後に役者さんへの簡単な質問タイムが用意されていて、始まるや否や、カメラのフラッシュの嵐。うわーお。ファンサービスに余念が無いのねー。ダブルキャスト公演が定着しているのもすごい。
作品の質もそうですが、役者さんたちの堂々とした態度、STAFFの丁重な応対など、「劇場にお芝居を観に来る」という大きなイベントをステキな宝物の時間にしてくれる、そんな行き届いた心遣いが、たくさんのお客さんを獲得している要因の一つだと思います。若い女性もいましたが、年配の女性もたくさんいらっしゃいました。
スタジオライフHP : http://www.studio-life.com/
2002年08月12日
パルコプロデュース『W;t(ウィット)』パルコ劇場08/10-19
ガンとの闘病がテーマのこのお芝居のチケットを取るのは勇気がいりましたが、『ペギーからお電話?』を観て以来、草笛光子さんにぞっこんの私。彼女に会いたい一心でチケットを取りました。
チラシはこちらでご覧になれます。※2005/07/13加筆
・・・泣いた~・・・・つらい~・・・・・。
でも観てよかった~・・・・。
今の医療では、ガンを倒そうとしてガン以外の正常な細胞も殺してしまうんです。つまり、強烈な副作用で死んでしまう。死因はガンですが直接的原因はガンじゃないことも多いんですね。でもそれが最先端なんです。他の選択肢が無いという悲しすぎる現実。あからさまな矛盾。完全なパラドックス。極シンプルな舞台上でガン患者への医療の現状が非常にリアルに描き出されます。
う~・・・もーしゃれになんないッス!マぁジひどすぎ~っっ。一見謙虚なバイト君&女子高生言葉で濁しでもしなければ、私の憤りは生々しすぎて映倫にひっかかります。ので、ガンうんぬんについてはここまで。「後は沈黙。」
タイトルの「W;t(ウィット)」は、イギリス人にとっては非常に大切なことなのでしょうね。ウィットについての学問があるぐらいだし、教養人にとっての必須条件みたい。こんなにシリアスで暗~いテーマを笑いいっぱいでやる、ということ自体がウィット。もっとも深刻な場面でこそ笑いが起こるようにする、という演出もウィット。
「今の私に一番必要なのは、こんなことは口にしたことはないのだけれど、優しさ、です。」
これが一番メロドラマティックなセリフだったと思います。決しておおげさに泣き叫んだり、むやみに擦り寄ったりしない。それもウィット。
やっぱり草笛さんは最高に素晴らしい女優さんでした。ただ巧いだけじゃないです。挑んでます。ご自分の限界に。お芝居の可能性に。そして最後、全てを観客にゆだねます。かっちょいー!ほんとのプロ!!
田中律子さん。これが初舞台だそうですが適役でしたね。素でやってらっしゃる感じだけど決してナーバスにならないところが素晴らしい。決めるところは決めるし。
若いヤな医者役の佐藤一平さん。はきはきとして大きな演技は魅力ですね。ちょっと注目しちゃお。
日本を代表する舞台女優、草笛光子さんの生の意気込みを感じる舞台。お盆にお時間があったらぜひシリアスな大人のウィットを体験してみてください。
出演:草笛光子、田中律子、鵜澤秀行、本山可久子、佐藤一平、瀬戸口郁、鍛治直人、八幡朋昭、太田佳伸
作:マーガレット・エドソン、訳:鈴木小百合 演出:西川信廣、美術:朝倉摂、照明:沢田祐二、音響:高橋巖、衣裳:宇野善子、舞台監督:伊達一成、宣伝美術:鳥井和昌、宣伝写真:野口博 企画・製作:(株)パルコ
パルコ劇場:http://www.parco-city.co.jp/play/
青島レコード『FAT OLD SUN』シアタートップス08/07-11
毎回チラシがあまりに素敵なので、行こう、行こう、と思いつつ行けなかった青島(チンタオ)レコード。やっと初見です。お友達の坂本弓子さん(reset-N)が出演されています。
舞台は近未来の閉塞されたどこか。先祖代々受け継がれてきた文献に書かれている『鳥』が空を破って降りてきて・・・という完全にオリジナル設定の物語。
選曲が最高に良かったです。ちょっと錆びた風合いの上質なPOPミュージックを、粋なD.J.が聞かせてくれているような。
舞台美術や衣装、大道具、小道具、CG映像等、全てに強いポリシーを感じました。センスも素晴らしい。
役者さんも達者な方々ばかりで一人一人に見出すべき魅力がありました。
その集合体なんですね。
途中の状況説明的シーンが多いし長かったかな、と思います。
でもラストの緊張感、怖かった。
ところどころ緑なコンクリートの床と無機質でカラフルな花。
赤いレインコートと毒ガスマスクに大音量のPOPミュージック。
次もここの作品を観に行きたいです。
Chintao Records HP : http://www.chintao.com/records12/
2002年08月11日
ロリータ男爵『鎖の工場』三鷹芸術劇場08/08-11
ロリ男、『花魔王』からずっと追いかけて観ています。私が制作をしているRel-ay(リレイ)の9月公演に出演してくださる大佐藤崇さんが所属する劇団。
まずチラシがかなりオトナっぽかったし、劇場もデラックス。内容もかなり渋めでした。最初はかなりスローな感じでコツコツと地味に進んでいたのですが、キャッチコピーでもある「俺にはとめなきゃならないネジがある」というセリフから急激な盛り上がりを見せ、ノンストップでたたみかけるようにラストまで。渋い。
画像と振り付けで見せるオープニング良かったな~。歌が少なかったしちょっと暗めのストーリー&設定だったからか、いつものロリ男の公演とはちょっと違う後味でした。
看板女優の斎藤マリさんが娼婦役っていうのは驚き。少年役が多いのに。大きく劇場いっぱいに広がる美声。舞台にしっかりと立ってお芝居全体を支える大黒柱。
大佐藤くん、カッコよかった~♪Visual系にかっこいいってのは初めてでした。細くて筋肉質な体型がGood。動きが大きく効果的なので演技もいちいち目立ちます。
雲平くん、役者松尾マリオさん、さすがの存在感。おさえた演技が光っていました。主宰の田辺さんのファンなので田辺さんの出番が少なかったのは残念。
三鷹は遠いですが、三鷹駅に4人集まったらタクシーで安く行けました。だんだん三鷹市芸術文化センターに慣れてきちゃった。
ロリータ男爵 : http://www.lolidan.com
2002年08月07日
阿佐ヶ谷スパイダース『ポルノ』TOKYO FM HALL8/2-17
今や押しも押されぬ大スターとなってしまった長塚圭史さん作・演出のユニット阿佐スパ。
私、TOKYO FMのホールは初めてでした。普段は音楽ライブに使われてるんですよね。演劇で使われるのは10年ぐらい振りだそうです。
いつのまにか私の絶対観に行くリストに入ってしまっている長塚作品ですが、正直なところ、昔はストーリーや世界観が苦手だったんです。でも役者さんの生き生きとした姿に惹かれて必ず通っています。
あー・・・・かなりオトナな感じ。いつも通りにとんがってるけど、芯は暖かい。思いっきり湿っぽい。じとじと。じめじめ。でも瞬発的にからっからに乾ききります。
設定はいつもちょっと異常。そこに登場するやはり尋常じゃない人たち。歪んだ想いとそれに答えてしまう矛盾。だけど私たちが普段からよく親しんでいる感情が根底にゆるがず流れています。そこにあぶり出されてくるアブノーマルな関係。アンバランスな感情交換。完全にすれ違った解決策。
監禁→禁断の愛→精神的破綻・・・など、よく使われる設定ではあるのですが、そこに描かれている人間の心は普遍に通ずるものなんですね。特に男と女の恋愛関係については長塚さんはすっごくロマンティックに、大切に描いてくれている気がします。エログロちょい濃い目で。
伊達暁さん。しびれました・・・・あー・・・・やっぱりすごいです。超『いちおし』です。岩道さん(国旗の妻)とのやりとりで私は涙してしまいました。
逃げて。「だって・・・。」 逃げて。「はい。」 言わないで。「言いますよ!」 言わないで。「はい!」
・・・すみません。書いてもわからないですよね(セリフも曖昧だし)。ぜひ観てください。ビリビリしびれて泣けちゃったんです。心は静まることができずに溢れ出して、だけど繊細であまりに儚く、結果、セクシーすぎて。
長塚圭之さん。キュートさを狙って絶対に成功するところがすごい。決してキュートな体格じゃないのに。大スターの貫禄を感じてしまいました。やっぱり変わりますよね。
音楽の著作権の問題でビデオ発売の予定はないそうです。カンジたい人、ぜひ観に行ってください。
以下、少々ネタバレします。
この作品は阿佐ヶ谷スパイダース旗揚げ公演『アジャピートオジョパ』のリメイクで、基になるものは同じだけれど配役やエピソード、終わり方(意味)などは大幅に書き換えられたそうです。
初演との主な違いは、2話目の長塚さん(クニハタン)と村岡さんのエピソードが追加されたことや1話目の伊達さん(監禁される不幸な男)の役はマネキンがやっていたこと、また、3話目の小島さん(足を怪我する女)と富岡さん(妖精?)のシーンは男女逆の配役だったことなど。
最後の小島さんと富岡さんのやりとり。
「触りたい。」
このお芝居の全てが無くなっても、このセリフで生まれた世界だけで満足と言える刹那でした。
舞台の転換、見事でしたねー。2回は当たり前でもあの3回目は・・・ぱーっと気が晴れました。客席と舞台をさえぎる柵のアイデアは『ダブリンの鐘つきカビ人間』とほぼ同じでし
たが使われる意味は『ポルノ』の方が大きかったですね。なにしろあんなに舞台が変化す
るんだから。
観劇後、STAFFの人に聞いた衝撃的事実。TOKYO FM HALLでは毎週木曜日に公開録音があるそうで、そのために舞台をバラして組みなおしているそうです・・・・!!つまり初日前日にバラして組んで・・・・想像しただけでも恐ろしい・・・・。
阿佐ヶ谷スパイダースHP : http://www.spiders.jp/