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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2002年08月07日

阿佐ヶ谷スパイダース『ポルノ』TOKYO FM HALL8/2-17

 今や押しも押されぬ大スターとなってしまった長塚圭史さん作・演出のユニット阿佐スパ
 私、TOKYO FMのホールは初めてでした。普段は音楽ライブに使われてるんですよね。演劇で使われるのは10年ぐらい振りだそうです。

 いつのまにか私の絶対観に行くリストに入ってしまっている長塚作品ですが、正直なところ、昔はストーリーや世界観が苦手だったんです。でも役者さんの生き生きとした姿に惹かれて必ず通っています。

 あー・・・・かなりオトナな感じ。いつも通りにとんがってるけど、芯は暖かい。思いっきり湿っぽい。じとじと。じめじめ。でも瞬発的にからっからに乾ききります。

 設定はいつもちょっと異常。そこに登場するやはり尋常じゃない人たち。歪んだ想いとそれに答えてしまう矛盾。だけど私たちが普段からよく親しんでいる感情が根底にゆるがず流れています。そこにあぶり出されてくるアブノーマルな関係。アンバランスな感情交換。完全にすれ違った解決策。

 監禁→禁断の愛→精神的破綻・・・など、よく使われる設定ではあるのですが、そこに描かれている人間の心は普遍に通ずるものなんですね。特に男と女の恋愛関係については長塚さんはすっごくロマンティックに、大切に描いてくれている気がします。エログロちょい濃い目で。

 伊達暁さん。しびれました・・・・あー・・・・やっぱりすごいです。超『いちおし』です。岩道さん(国旗の妻)とのやりとりで私は涙してしまいました。
  逃げて。「だって・・・。」 逃げて。「はい。」 言わないで。「言いますよ!」 言わないで。「はい!」
 ・・・すみません。書いてもわからないですよね(セリフも曖昧だし)。ぜひ観てください。ビリビリしびれて泣けちゃったんです。心は静まることができずに溢れ出して、だけど繊細であまりに儚く、結果、セクシーすぎて。

 長塚圭之さん。キュートさを狙って絶対に成功するところがすごい。決してキュートな体格じゃないのに。大スターの貫禄を感じてしまいました。やっぱり変わりますよね。

 音楽の著作権の問題でビデオ発売の予定はないそうです。カンジたい人、ぜひ観に行ってください。

 以下、少々ネタバレします。

 この作品は阿佐ヶ谷スパイダース旗揚げ公演『アジャピートオジョパ』のリメイクで、基になるものは同じだけれど配役やエピソード、終わり方(意味)などは大幅に書き換えられたそうです。
 初演との主な違いは、2話目の長塚さん(クニハタン)と村岡さんのエピソードが追加されたことや1話目の伊達さん(監禁される不幸な男)の役はマネキンがやっていたこと、また、3話目の小島さん(足を怪我する女)と富岡さん(妖精?)のシーンは男女逆の配役だったことなど。

 最後の小島さんと富岡さんのやりとり。
 「触りたい。」
 このお芝居の全てが無くなっても、このセリフで生まれた世界だけで満足と言える刹那でした。

 舞台の転換、見事でしたねー。2回は当たり前でもあの3回目は・・・ぱーっと気が晴れました。客席と舞台をさえぎる柵のアイデアは『ダブリンの鐘つきカビ人間』とほぼ同じでし
たが使われる意味は『ポルノ』の方が大きかったですね。なにしろあんなに舞台が変化す
るんだから。

 観劇後、STAFFの人に聞いた衝撃的事実。TOKYO FM HALLでは毎週木曜日に公開録音があるそうで、そのために舞台をバラして組みなおしているそうです・・・・!!つまり初日前日にバラして組んで・・・・想像しただけでも恐ろしい・・・・。

阿佐ヶ谷スパイダースHP : http://www.spiders.jp/

Posted by shinobu at 2002年08月07日 14:55 | TrackBack (0)