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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2002年08月12日

パルコプロデュース『W;t(ウィット)』パルコ劇場08/10-19

 ガンとの闘病がテーマのこのお芝居のチケットを取るのは勇気がいりましたが、『ペギーからお電話?』を観て以来、草笛光子さんにぞっこんの私。彼女に会いたい一心でチケットを取りました。
 チラシはこちらでご覧になれます。※2005/07/13加筆

 ・・・泣いた~・・・・つらい~・・・・・。
 でも観てよかった~・・・・。

 今の医療では、ガンを倒そうとしてガン以外の正常な細胞も殺してしまうんです。つまり、強烈な副作用で死んでしまう。死因はガンですが直接的原因はガンじゃないことも多いんですね。でもそれが最先端なんです。他の選択肢が無いという悲しすぎる現実。あからさまな矛盾。完全なパラドックス。極シンプルな舞台上でガン患者への医療の現状が非常にリアルに描き出されます。

 う~・・・もーしゃれになんないッス!マぁジひどすぎ~っっ。一見謙虚なバイト君&女子高生言葉で濁しでもしなければ、私の憤りは生々しすぎて映倫にひっかかります。ので、ガンうんぬんについてはここまで。「後は沈黙。」

 タイトルの「W;t(ウィット)」は、イギリス人にとっては非常に大切なことなのでしょうね。ウィットについての学問があるぐらいだし、教養人にとっての必須条件みたい。こんなにシリアスで暗~いテーマを笑いいっぱいでやる、ということ自体がウィット。もっとも深刻な場面でこそ笑いが起こるようにする、という演出もウィット。

 「今の私に一番必要なのは、こんなことは口にしたことはないのだけれど、優しさ、です。」
 これが一番メロドラマティックなセリフだったと思います。決しておおげさに泣き叫んだり、むやみに擦り寄ったりしない。それもウィット。

 やっぱり草笛さんは最高に素晴らしい女優さんでした。ただ巧いだけじゃないです。挑んでます。ご自分の限界に。お芝居の可能性に。そして最後、全てを観客にゆだねます。かっちょいー!ほんとのプロ!!

 田中律子さん。これが初舞台だそうですが適役でしたね。素でやってらっしゃる感じだけど決してナーバスにならないところが素晴らしい。決めるところは決めるし。
 若いヤな医者役の佐藤一平さん。はきはきとして大きな演技は魅力ですね。ちょっと注目しちゃお。

 日本を代表する舞台女優、草笛光子さんの生の意気込みを感じる舞台。お盆にお時間があったらぜひシリアスな大人のウィットを体験してみてください。

出演:草笛光子、田中律子、鵜澤秀行、本山可久子、佐藤一平、瀬戸口郁、鍛治直人、八幡朋昭、太田佳伸
作:マーガレット・エドソン、訳:鈴木小百合 演出:西川信廣、美術:朝倉摂、照明:沢田祐二、音響:高橋巖、衣裳:宇野善子、舞台監督:伊達一成、宣伝美術:鳥井和昌、宣伝写真:野口博 企画・製作:(株)パルコ
パルコ劇場:http://www.parco-city.co.jp/play/

Posted by shinobu at 2002年08月12日 22:46 | TrackBack (0)