2002年11月29日
劇団NLT『オスカー』俳優座劇場11/29-12/8
村井国夫さんと大沢健さんが客演されているので観に行きました。チラシにでっかく(客演)と書かれているのがちょっと面白い(笑)。
e割引券というNLTのHPだけで扱われている激安チケットがあったので、かなりお得でした。(通常5,300円のところ2,800円)
「オスカー」はクロード・マニエというフランス人劇作家の、1950年代に初演されたコメディーです。パリで19~20世紀前半に流行ったいわゆる軽演劇やメロドラマの種類で、ブールヴァール演劇と呼ばれるそうです。今の日本でいうと商業演劇のドタバタ喜劇のイメージかな。2分に1度は笑わせる、というような。
村井国夫さんのすごさに圧倒された2時間半でした・・・。とにかく口をあんぐりして、ただただ目を奪われました。このおじちゃん、すっご~いっっっ!って感じで(笑)。何もかもどうでもいいです。村井さんがすごいので。もう、ただもう・・・・尊敬するッス。あそこまでバカやって体張って客を楽しませて自分も楽しんで。プロの中のプロ!
大沢健さん、いつも通り確実でした。期待通り。やっぱり好きです。いじめられっこ系インテリで、なよっとした三枚目をやらせたらNo.1だと思います。あ、範囲狭すぎ?
演出の鵜山仁さんの、特にコメディーを作り上げる腕は絶品だと思います。陣内孝則さん主演の『おばかさんの夕食会』なんて笑い死にするかと思ったほどでしたし。この作品では『おばかさん・・・』ほどは笑えなかったけど、でも笑わせ方のセンスはすごく好きでした。
舞台装置が良かったです。最初はただの悪趣味になってしまうかと思ったのですが、よ~く見てみるとフランスらしいエスプリとクールな遊び心が乗っかっていて、そしてファッショナブル。照明とのからみや衣装とのバランスもしっかり計算されていました。
あぁ、衣装、衣装も良かった。生地が豪華なんだよね。あの色合わせと地模様は日本のセンスじゃないよ。おフランス式。
そう言えばオープニングもフランス語のポップスで始まりましたね。あの音は斬新でした。
劇団エヌ・エル・ティーHP : http://www.nlt.co.jp/
公式:http://www.nlt.co.jp/old/oskar/index.html
扉座『いちご畑よ永遠に』12/19-27紀伊國屋サザンシアター
まず、チラシのビジュアルがあまりに私の好みでなさすぎました。いくら伴美奈子さん大ファンの私でも、これはどうだろう??・・・という風に、行こうかどうか迷っていたのですが、イープラスの得チケで半額だったので喜び勇んで紀伊国屋サザンシアターに足を運びました。
泣いた、泣いた、泣いた・・・!
山田まりやさんのあまりの一途で純粋な姿に!!
作・演出の横内謙介さんのジョン・レノンへの愛、人間への愛、感じました。
タイトルからもわかりますが、ジョン・レノンの半生を描いた扉座テイストのファンタジック大河ドラマでした。ジョンの生い立ちを軽くなぞり、不良だった大学時代、最初の妻シンシアとの恋と結婚を軸にした前半。ビートルズのデビューから世界的スターになるまでの輝かしい歴史を簡単に紹介し、最後にはヨーコ・オノとの出会いとジョンの変化、そして死・・・でまとめた後半。シンシアと、彼女にしか見えない(見えなかった)天使がストーリー・テラーとして物語を観客に伝えるスタイルは去年の冬の扉座公演『TSUTOMU』と同じですが、今回はすごくうまく作用していたと思います。
ジョンやジョンを取り巻く人たちの青春やその頃の心の触れ合いをストレートにドラマチックに描きつつ、それをビートルズの名曲が生まれた背景として舞台で表現する演出・構成は感動的でした。
"Lucy in the Sky with Diamonds"は、ビートルズがLSD(覚せい剤)にハマってた頃にそのL,S,Dという文字を頭文字として並べたタイトルになっている(と予想されている)のは有名なエピソードですが、覚せい剤に逃げ込むしかなかった当時のビートルズの状態を描く中、"Lucy・・・"が大音量で流れます。派手派手しさのド真ん中で彼らがどんなに苦悩し葛藤していたのか。身に沁みて伝わってきました。これは脚本家の横内さん個人のビートルズ論だと思いますが、その優しさが嬉しいのです。
セリフが素直でストレートで、心に気持ちよく飛び込んで来ました。私、思わず上演台本を買っちゃったら、横内さんがサインしてくれました。思わずサインするお顔をじっくり眺めてしまったんですが、美形なんですね~。
山田まりやさん、シンシア役を熱演。華があってパワフルで動きも機敏で、ものすごく綺麗な声なんです。そう、純粋で素直で優しくて真面目な人に違いないです。ほんっと独断ですが
(笑)。
私いちおしの伴美奈子さん、前半はすごい端役で、悲しくなっちゃいそうだったのですが後半にヨーコ・オノ役で登場!黒い長髪に黒装束。凄みがありましたね~。でも伴さんならもっとオーラを出せたと思うんだな~。そこはちょっぴり不満、かな。
≪ひとことモノローグ≫ 2002/11/26
ジョン・レノンの半生を描くファンタジック大河ドラマ。
面白かった!
山田まりやさん最高!!涙で前が見えなかったよっっ!
私が今まで観た扉座の作品の中でNo.1です。
東京公演は明日で千秋楽。
「まだ席があるから観に来て欲しい」と上演後に挨拶もありました。
ぜひ紀伊国屋サザンシアターに足を運んでくださいませ♪
扉座HP : http://www.tobiraza.co.jp/
2002年11月28日
サードステージSHOWCASE『今度は愛妻家』俳優座劇場11/14-24
中谷まゆみさんの脚本で板垣恭一さん演出。
私はこのシリーズの中では第1段の『ビューティフル・サンデー』が好きでした。
今回も泣かされました・・・。やっぱり「一途さ」を見るのは嬉しい。特に男の。でも、池田成志さんばっかりが目立ってしまった感あり。他の人のドラマももっと欲しかったな。そしてラスト、私はすっきりしませんでした。だって、戻ってきちゃいましたよね?(ネタバレなのでここまで)
舞台装置、かっこ良かった~。カメラマンの家(部屋)ということでデザイナーズ・マンションのようにスタイリッシュでした。STAFFにインテリア・コーディネーターがついてましたね。やっぱり。さすが。俳優座劇場がこんなに横に広く見えたのは初めてでした。そもそも俳優座だってことを忘れるほど。
音響と照明については、鳥の声がピチピチとするのに窓から差すライトの加減が中途半端で、果たして朝なのか夕方なのかわからなかったのは、ちょっとヤでしたかね。
池田成志さん、狙いがしっかりした演技が素晴らしいですね。笑いの間も的確だし。泣かせてもらいました。
長野里美さん、ちょっとマンネリかな。何度も彼女を観過ぎたかも。
高橋英長さん、意外なオカマ役。けっこうハマってらっしゃいました。余裕が感じられて安心できました。
横塚進之介さん、声は相変わらず良いですね。もっと目立つ演技をされてもいいと思いました。太られたかしら?
真木よう子さん、巨乳でスタイル最高。こんな人、なかなかいないよね!と思えるぐらい。ほんと、目の保養。感じ悪い役を最高に感じ悪く演じてらっしゃいました。ちょっと声が苦手、かな。
客入れの音楽がFairground Attractionのアルバム”The first of the Million Kisses”だったのが嬉しかった。しかも最後に流れた”Perfect”できっちり開演♪
客席が豪華でした。長塚圭史さん、中山祐一朗さん、北村有起哉さん等。
サードステージHP : http://www.thirdstage.com/
2002年11月07日
こまつ座『雨』10/27-11/08紀伊國屋ホール
『雨』は1976年初演で今回で8演目。井上ひさしさんの傑作戯曲の一つです。女優の三田和代さん目当てで当日券をGETしました。辻萬長(つじ・かずなが)さんも好きなんですけど。
紀伊国屋ホールの一番前の席なんて初体験。すんごい迫力でした。また当日を狙おうかな。
舞台は江戸時代の今でいう山形県のあたり。拾い乞食のトク(辻萬長)は、ある雨の日に紅屋喜左衛門という紅花作りの名人と間違えられる。喜左衛門には美しいオタカという妻がいるそうな。トクはまんまと喜左衛門になりすまそうと企んで・・・という筋書きで始まるちょっとHな時代ものサスペンス。
でもね、先が読めちゃったんですぅ・・・だからサスペンスとしては楽しめませんでした。
最初っから期待しすぎてたからかな。前売り完売だったし。
いわゆる井上戯曲でした。歌あり踊りあり、愛あり恋あり、主張あり。トクが人をどんどん殺していく様が怖かった。辻さんの早替え見事でしたね。一番前の席だと仕掛けがわかっちゃって残念でした。幕が開くなり雨の演出。気持ちよかったです。でも何度もだと飽きちゃう。
三田和代さんにお会いできただけで天にも上る気持ちでした。彼女が演じるのはオタカ。そう、絶世の美女役。登場するなり思いっきり訛った山形弁を美しい声でとどろかせて、観客の笑いを独り占め。その立ち姿、表情、潤んで輝く瞳、聞く人全ての心を癒してくれる声。涙なしには見つめられません。なんでこんな素晴らしい女性がこの世にいるんだろう。神様は日本を見捨ててないよっ!
当日券に並んでいる人にイスを用意してくれました。こまつ座さん、ご親切をありがとうございました。
紀伊国屋書店 : http://www.kinokuniya.co.jp/
2002年11月05日
ク・ナウカ『欲望という名の電車』10/31-11/10ザ・スズナリ
テネシー・ウィリアムズ作『欲望という名の電車(以下『欲望』)』、よく上演されますね。最近は蜷川幸雄 演出の大竹しのぶブランチや、篠井英介ブランチもありました。私は新国立劇場での栗山民也 演出の樋口可南子ブランチしか観てないんですが、大好きな演目です。素晴らしい戯曲だと思います。
そして今公演・・・片時も目が離せない3時間20分(15分間の途中休憩を含む)でした。スズナリという小さな箱庭でバイオレントに繰り広げられる取るに足らない人形遊び・・・と申しましょうか。いかにも「ク・ナウカらしい」とも言える、全く新しい視点から見る『欲望』でした。
看板女優の美加理(みかり)さん。言動(mover/speaker)一致のブランチ役。最高でした。身のこなし、声色、語尾、癖、性格(感情)、などまで細かく作りこまれていて今までの私のブランチ像を完全に払い去ってしまいました。能面のようなアルカイック・スマイルを浮かべながら体の隅々まで意識を行き届かせたmoverとしての動きも顕在。それがすごくセクシーなんです。技術だけではなく美も兼ね備えている彼女は演劇界の宝ですね。
野性的な南部男スタンリーが家の中を荒らすのが、ものスゴかった。ナイフ、フォークは当たり前、今度はイスかと思ったらブランチも投げる!暴力が生々しいんです。もぉドキドキしました。その荒っぽさがあるからこそブランチが狂うことにうなづけるんですよね。
ブランチの「死の反対は欲望」というセリフ(今公演のキャッチコピーにもなっています)でお腹の辺りから、いかんともし難い感情がぐっと込み上げてきました。感動で涙が出そうになりながらも気持ち悪くて吐き気がするのを我慢するというか。美加理さんの機械仕掛けの人形のような動きと意志のしっかり乗った言葉を突きつけられて私自身の感情(こころ)と肉体(からだ)との分化を迫られたというか。いや、こころあってのからだなんですよ。からだあってのこころですし。だけど普段はそれを意識することがないから、その事実を見せつけられて嘔吐するんですね。
ブランチの衣装、素晴らしかった。着替える度に見とれました。最後の青いドレスはまるでシスター(尼)のようで、アイロニックでよかった。舞台装置、というよりも舞台空間が四角くて狭くて良かったです。音響はちょっとくどかったかも。でも合ってました。
以下、少々ネタバレします。
主要な役者4人(ブランチ、ステラ、スタンリー、ミッチ)以外を言動一致の黒子として使っていたのが、この舞台をよりシンプルにわかりやすくしていたと思います。それに、面白い。
自分は娼婦だったのだと自分から言いはじめるところでブランチが豹変します。「タランチュラ・アームズよ、私が泊っていたのは。フラミンゴじゃないわ。」というセリフで身ぶるいしました。
ラスト間近のシーンで、栗山民也 演出だとブランチは無理やりシャワー室でスタンリーに犯されますが、宮城 聰 演出ではあきらめたというか、娼婦だった自分を認め、自らスタンリーに身を任せます。私は宮城版の方が説得力があると思いました。犯されて狂うのは普通の人ですものね。
ク・ナウカ : http://www.kunauka.or.jp/