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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2002年12月09日

飛ぶ劇場『ミモココロモ』東京芸術劇場小ホール2 12/6-8

 副題がついていました。『ミモココロモ Mi-mo Kokoro-mo (Heart and Hand)』。「飛ぶ劇場」は北九州を拠点とする劇団です。15周年記念公演だそうです。東京にはもう何度も来ていらっしゃいますね。

 私は作・演出の泊篤志さんが気になっていたのと、チラシに惹かれたのと、松下好さん(bird's-eye view/エルカンパニー)が出演されるので観に行きました。

 いやー・・・・ストーリーの要素はそれぞれかなりハードなものでしたが、非常に素朴な青春モノでした。(もう東京での千秋楽が終わってますのでネタバレします。)まっすぐにしか生きられない若者たちの真摯な気持ちとそれゆえ起こってしまう悲劇。大学の映画サークルでの三角関係から発展する殺人事件。これだけ言うとベタな展開なんだけど、説教臭くなくそれを素直に真面目に描いているところが胸を打ちます。あと、適度な笑いも物語を伝わりやすくしていました。またその笑いも素朴なんですよね。

 ところどころ流れる文字映像がポエティックで良かったです。「ぼくたちはゼリーの海を漂っている。知らないうちにどんどん深く沈んでいって一筋の光が差すのを底から見ている。」とか。(文章は全く正確ではありませんが意味はこんな感じ。)

 部室の壁が丸くなっているのが良かった。映像も見やすかったし。窓の向こうを通る人影がとても効果的。舞台で役者が演技をしていると同時に映像が流れたところがあったのですが、それについては映像が単なる説明として使われていた気がして残念でした。「映画サークル」という設定だからしょうがないと言えばしょうがないかもしれません。

 松下好さん、ちょっと生意気な下級生役がぴったりでしたね。存在自体に説得力がありました。先輩に面と向かって悪口を言うところ、胸が苦しくなりました。そうなんだよね。あれくらい勢いよくズバズバ言っちゃうんだよね。だって暴発したら止まらないんだもの。「私、悪くないのに」と何度も言うのがまた切ない。あと、スリップ姿のスタイルが良くって見とれてしまいました(頬赤)。

 アラジン(新田仁)役の寺田剛史さんの演技がちょっと私の苦手タイプでした。道化の振りして実はナルシスティックな感じというか。ダスティン・ホフマンみたいな。あ、イメージ違います?だからラストに冷めちゃって、私にとっては感動的なエンディングにはならなかったんですね。残念。

 音楽は、洗練されている選曲だとはとても思えないものでしたが、なんだか暖かい感じがしたのが不思議でした。そういうところに地方色が出ている気がして、このリージョナル・シアターという企画の意味があると思いました。クライマックスに流れる歌"Why do fools fall in love?"がものすごく切なくてよかったです。「人を好きになんかならない人間になれればいいのに」ね。あぁ青春!!

 ※英語字幕つきの日本語公演を始めて観ました。素晴らしいです。ちょっと気が散ったけど(笑)。

飛ぶ劇場HP : http://www.tobugeki.com/


《下記、掲示板形式でした》

だだ さん、いらっしゃいませ!

> タイトルの通り、「ミ」と「ココロ」に引き裂かれる大学生たちの話。
> タイトルいいと思う。
私も!お芝居を観たあとにチラシを観て、あぁ・・・良いタイトルだな~・・・と、しみじみ。

> テーマの落としどころとしては、微妙なかんじ。
> かなりやばいっ。
ええ。ハードな終わり方で、私にとってはちょっと納得いかないまとめ方でもありました。

> でも入りやすい芝居だから、そんなの気にしなければ単純にせつなくていい。
うん。そうそう。そうですよね。それだけで素晴らしいと思います。

> ボクは面白かったけど、たぶん「オエッ」とかんじる人もいると思う。
> あんなサークルに入りたくないし。(笑)
そうなんですよね~(笑)。たしかに設定やストーリーはベタだと思います。でも心にすごく伝わってきたんですよね。けなげな心というか、愛というか。作・演出家の泊さんはかなりのマイナス思考だなーと思いましたが、それゆえの反動的ポジティブ思考であると言えますよね。ちりばめられた珠玉のセリフたちと、それを支える清潔で素直な世界観がこのお芝居のみどころかなと思います。

> それにどちらかというと男寄りに恋愛を描いてるから、都合いいんだよね。
> 特に主人公(?)の新井は好意的に描きすぎじゃないか?
そこもまた同意。アラジン役の人ですよね。そうなんですよ。私もそこで無理が出ちゃいました。


あおしさん、いらっしゃいませ!

> こちらは、はじめまして。
BBSには何度か来てくださってますよね。嬉しいです。

> ほんと、参りました。キュンキュンでしたね。
> 思わずCD買って帰りましたよ。最前列でダァダァ涙を流してきましたよ。
おおおおお・・・・・そうでしたかー・・・・。なんだかダダさんもあおしさんも相当ハマっちゃったようですね。私はお2人ほどではなかったですが、でも観てよかったお芝居でした。

> どうすることも出来ない人は 生きている不幸を噛み締めて 泣けばいい
私も好きでした。文字映像の文章は本当に良かったですよね。「生きるのに意味なんてないんだ。」というのも結構好きだったかも。

だだ さん、あおしさん、またいらしてくださいね!!

Posted by shinobu at 21:06 | TrackBack

Studio Life『Three men in a boat +ワン』ウッディシアター中目黒12/04-15

 女性演出家の倉田淳さん率いる男優集団スタジオ・ライフ。男優オンリーで本気の耽美派演劇をやる劇団です。今公演は隅田リバー・バージョンとテームズリバー・バージョンの2バージョンあるのですが、私はテームズ版を拝見しました。

 楽しかった~♪ 笑ったし見とれたし聞きほれたし、参加したし。ほんっとに楽しかった。女性なら一度は体験して欲しいエンターテイメントですね。そう薦めたくなるくらいの舞台でした。

 演出家が女性だというのが一番のミソだと思います。男性のどういう姿に女性がうっとりするのかをわかっていらっしゃる。だってあの犬の役なんて、はっきり言って反則だよ(笑)。だけどそれをウェルメイドに成立させちゃうんだからすごいんです。倉田さんバンザイ。

 アートスフィアやシアター・アプルで興行する劇団がキャパ100人以下の劇場を使う時点ですごい企画なのにその上、完全観客参加型。ファンからしたら、あこがれの俳優さんにかぶりつき状態ですよ。黄色い声援炸裂ですよ。私も歌ったり踊ったり(?)演奏したり色々やりました。また観客をそうやって盛り上げるのがうまいんだよねー。あんなにやってくれたらファンになっちゃうよ。ファンにならない理由がないもの。

 また、スタジオ・ライフの公演でいつも感動することは観客へのサービス精神の徹底です。その上、作品の質もすごく良いというのがこの劇団の特徴というか、他との差別化ができている点ですよね。演劇というものを世間に普及させることにものすごく貢献していると思います。演劇好きの私としては、心から感謝の気持ちが湧いてきます。

 次回公演はは今回とは打って変わって『トーマの心臓』の再演ですね。2月~3月にかけてアートスフィアで。少女漫画家の萩尾望都(はぎお・もと)さんの文学的傑作漫画の舞台化です。これはスタジオ・ライフの代表作の一つです。マジでお薦めです。男性もぜひご覧になっていただきたい。そして女が求める「いい男」像ってこんなのなんだってこと、少しでも知っていただけたらメリット更に大、だと思います♪

 ※荷物をあずかってくださったのが笠原浩夫さんだったのにビックリ!私、ムダに緊張してしまいました(笑)。

スタジオ・ライフ:http://www.studio-life.com/

Posted by shinobu at 13:11 | TrackBack