2003年01月25日
遊園地再生事業団『トーキョー・ボディ』01/22-02/02シアタートラム
活動を休止していた遊園地再生事業団の3年ぶりの新作公演。
竹中直人さんらとラジカル・ガジベリンバ・システムなどをやってらした宮沢章夫さん作・演出です。
イープラスの宣伝によると「戯曲、パフォーミング、映像がコラボレートした作品」とのこと。確かにそうでした。
口をあんぐりさせられるようなビックリの連続。
こっそり足の裏をくすぐられるような、快感を伴う小さな笑いとエロス。
軽やかにしたたかに知的好奇心を満たす斬新でクールなアイデア。
劇場という小空間の視座から肌で感じる刺激を通じて、東京、地球、宇宙へと無理なく広がる人間の想い。
今までに私が体験したことがなかった演劇公演でした。
そして、なんだろ、あの客席の熱気。
一緒に舞台を作っている気持ち。
主体的、能動的な、客。
初日だったからかな。
かなりコアな宮沢さんファンが集まったのかもしれません。
でも、そうだとしても、あの客席は楽しかった。
現代詩のアンサンブルというのでしょうか、棒読みのセリフの堂々とした羅列。不条理劇のような、だけどコントのような。
一応(決して「一応」じゃないと思いますが)ストーリーはあります。両目を失明した元教師の中年男性が、家出をして行方不明中の娘、鳥子(とりこ)を探して東京へ行く。なぜか、元教え子たちに会い、一緒に鳥子を探すのだけれど・・・。いや、でも、探さないんですよね。
目的があってそこ(TOKYO)にいるのだけれど、いつの間にかその目的なんて忘れてしまって、感情や欲望のままに、ほとんど無意識に、浮遊している。それがTOKYO。
スズナリでのリーディング公演を観ていたので、演出の面白さを堪能しました。リーディングははっきりいって面白くなかったんです。寝ちゃってた(笑)。「あのセリフをあんな風に言わせたら、これほど笑えるなんて!」など、目をぱちくり、カラダをビリビリさせられる出し物の連続!
舞台装置。チラシがそのままパネルになっているのはすごく良かった。そうですよ、東京の体に触れるんですよね。赤・青・黄のお馴染みのパターンが使われていたことについて最初はどうかと思ったのですが、大きな画面が現れてそれに慣れてきたら、実はそれさえもパロディーだったんだと思えて、かっこ良いと思いました。
お芝居が進むのをそのまま録画して、それがそのままスクリーンに映されます。演技をしている場所が柱でほとんど隠されていて、隙間からしか覗けないんです。それがものすごく面白い。あれは新しいし、楽しいし、問題提議でもあります。すごい。
思わず声を出して笑った(笑いそうになったのをこらえた)ところ↓
離婚届に判を押せ、と言い合っているところで元教師が男を平手打ち。レスリング。カーテンコールの女の子。
心に残しておきたいと思ったセリフ↓
「絶望ではない。癒しでもない。破壊への希望だ。」
えんげきのページの1行レビューでどなたかが
「これはテンポを極端に落として2時間に引き伸ばした1曲のダンス。」と表現していらっしゃいましたが、私もその感覚があります。
あと、本当に長いと感じましたね(笑)。19:30開演で劇場を出たら22:05でした。
遊園地再生事業団HP : http://www.u-ench.com/
(宮沢さんの赤裸々な日記があります。観た人、ぜひ読んでみてください。)
ク・ナウカ『サロメ』01/23-26東京デザインセンター・ガレリアホール
ク・ナウカは見逃さないようにしています。『サロメ』は大好きな演目。フランス・オペラもあります。オスカー・ワイルド原作のビアズリーの挿絵が入っている戯曲はあまりに有名。
何度も眠りに落ちてしまいました・・・。ク・ナウカなのに。不覚だし、ショック。でも、それほどつまらなかったのかもしれません。そういう可能性もあります。
まず、美術が疑問でしたね。不気味ですよ。狙っているとはいえ。とりあえず入口に入ったら人間が入ったオブジェや、馬のお尻が目に入り、「怖っ!」と声をあげてしまいました。現代アートっぽく「サロメ」をやるのは確かに面白いですが、それならもっと全体的にミニマムにやる手もあったのではないでしょうか。
衣装もちょっとハズし気味。凝っているしそれ自体は素晴らしいんだけど、美術や動きと合ってない気がしました。まぁ役者が衣装に負けてましたしねぇ。王妃役の方がサロメ役よりも良かったな。
オープニングは凝縮していて良かった。金魚も、あんなの観たことなかったし楽しかった。でも語り(speaker)が出て来て声を出し始めたらちょっと・・・・完成度が低かったんだと思います。最初の空気がありませんでした。
一番良かったのはサロメ役のおっぱい。いやー・・・きれいだったー・・・女の私も惚れ惚れします。人形みたいに整った顔に、小さめの体、そしてあの白い肌に丸い乳房。最高でしょう。
東京デザインセンター大好き。あんまり行かないんだけど行けば必ず発見がある。とにかくおしゃれでかっこいい。地下にガレリアホールなんてあったんですね。知りませんでした。演劇に使ったのはすごいと思いますが、やっぱり難しいですよね。あそこならギリシア悲劇とかでも良かったかも。
ク・ナウカ : http://www.kunauka.or.jp/
2003年01月23日
ペンギンプルペイルパイルズ『不満足な旅』OFF OFFシアター01/16-20
ペンギンプルペイルパイルズ、初見です。第3回公演ですね。
阿佐ヶ谷スパイダースの中山祐一朗さん目当てでチケットを取ったのですが相変わらずステキでした。ちょっと似たキャラが多いかなーとも思いましたが、満足。
ちょいヤバめの異国への旅行。熱狂パレード。密室。すっとんきょうな女神。キレる男。
小劇場的アングラっぽい匂いがふわ~っと漂うのですが、クールでコミカルに仕上げているので最後まで楽しんで拝見いたしました。ギャグもかなりマニアックで技巧的。演技も細かい。登場人物たちのしっちゃかめっちゃかな存在理由もすっと受け入れられました。
でも、それだけ・・・・。役者も脚本も上手いと思うんだけど、私の人生にはあまり必要のない時間だったかも・・・。ナイロン100℃と阿佐ヶ谷スパイダースを混ぜた感じ。あと、遊園地再生事業団も?
音楽が良かったです。知らない国の知らない祭りでなんだかトリップしちゃう感じがよく伝わりました。あの狭いオフオフ劇場の舞台が、ちゃんと異国の安宿の一室に感じられました。
う~む・・・。全て上手いと思うのですが、「だから、何?」と思っちゃいました。残念。
作・演出=倉持裕
出演=中山祐一朗/小林高鹿/ぼくもとさきこ/ほか
青年座『見よ、飛行機の高く飛べるを』01/22-26本多劇場
作:永井愛(二兎社)、演出:黒岩亮 の、平成9年度芸術祭大賞受賞作品の再演です。
私は永井愛さんの大ファンです。戯曲本を集めちゃってるほど。本多劇場が通路まで満員の初日でした。見るからに役者さんがいっぱい。勉強しに来てるのかなー。
舞台は明治44年、日清・日露戦争に勝利して欧米諸国を手本とした体制をますます整えんとする日本。
「飛行機が空を飛ぶ時代。女性も飛ばにゃならんのです。」
女子師範学校で新しい日本を展望するエリート女学生たちがそれぞれの夢をつかむべく立ち上がるが・・・。
私はこの作品の戯曲本を読んでいたので、オープニングの音楽が流れて幕が上がっただけでほろりと来てしまいました~。だって、あの初々しくてはつらつとした明治の女学生たちがここに出てくるんだ!と思っただけでウキウキわくわく。そしてその期待は裏切られませんでした。もー暗転のたびに涙ポロポロですよ。客席も鼻をすする音でいっぱい。
ありのままであるということは、どういうことなのか。自分の生きたいように生きるとはどういうことなのか。自分は1人の人間であるということに気づき、同時にその自分は世界・国家・社会の中に在るのだと知らされます。若さゆえの好奇心と熱狂、そしてもろさ。でもその輝きは何事にも替えられない奇跡なのです。ハッピーともアンハッピーともとれるエンディングは永井さんの戯曲の特徴だと思います。
ここからネタバレします。
ラブシーンがすごくロマンチックで、胸が切なく震える刹那の恋にときめきました。さすが女性劇作家。衝撃的な接吻(キスではなくて接吻)シーンと底なしにプラトニックなプロポーズ。いや~ん赤面。
いわゆるシチュエーション・コメディー的リアルな舞台なのですが、ラストシーンは演劇的な余裕(遊び)のあるシーンになってましてそこの演出は私の予想と全然違っていて、すごく良かったです。潔くて、切なくて、優しくて、甘酸っぱくて。そして、決別のシーンで笑えると思わなかった。腰から頭までじ~んときながら涙流しながらのカーテンコール。あぁ永井さん(脚本)、黒岩さん(演出)、ありがとう!
タイトル『見よ、飛行機の高く飛べるを』は夏目漱石の詩から引用されているそうです。
劇団青年座:http://www.seinenza.com/
2003年01月16日
北区つかこうへい劇団 千円劇場『熱海殺人事件 蛍が帰ってくる日』01/10-15北とぴあ つつじホール
つかこうへい事務所「渋谷亜希スペシャル第一弾 前進か死か!!」と銘打った公演。当日券のみで1,000円です。3バージョンあるのですが、私が観に行ったのはひよこクラブ(赤塚篤紀、武智健二、高野愛、他)バージョン。だって赤塚&武智ですもの。つか劇団の美形注目株ですもの♪渋谷亜希スペシャルなのに渋谷さんが出ない回だと思ってたら、突然のキャスト変更で高野愛さんじゃなくて渋谷さんの方でした。
いやー・・・・さすが1,000円でしたねー・・・・。脚本とか全く関係なかったですねー・・・・ただただ「熱」、でしたねー・・・・。
『熱海殺人事件シリーズ』というと私は、木村伝兵衛のセリフを聞きたくて足を運びます。
「愛とは、安らぎのことではありません。恋とは、優しさのことではありません。男と女が明日を切り開こうとする強い意志のことです。」
「たとえ水野君がお幸せな日々を過ごしていらっしゃろうとも、いつでも呼びつけて抱きますから。」
この2つですよ。これが聞きたいんですよっ。
でも赤塚さん、これ、おととしの方が感動したんだよな~・・・。無念。
それにしても出演者全員について、キャラクターの読み込みが甘い気がしました。『熱海』を知った気になりすぎているんじゃないでしょうか。毎回違うと思うんですよ、おとしどころが。もっともっと良くなるのに、という残念な気持ちで最後まで。中盤から水野朋子役のがんばりで「つか芝居」らしさをやっと感じられて、でも最後には届かなかったかな。
赤塚篤紀さん。前のシアターX公演での演技の方が良かったです。残念。たま~に目の輝きにうっとりしましたが、物足りませんでした。でも殺陣はいいなー。瞬発力がいい。熱さがいい。
武智健二さん。JAE所属のアクション俳優さんです。美形。でもあの声がねぇ・・・聞きづらかったな~。『蒲田行進曲』の映画監督役の方がずっと良かったですね。役柄的にも合ってました。殺陣はさすがにすごいんだけど、段取りが見えすぎでした。止まるだろうな~と思ったら止まるんですもの。それじゃ~魅せられない。でも、足があんなに上がるのは本当に見ものです。きっと日ごろの鍛錬ですよね。。
渋谷亜希さん。スタイル抜群!超ミニというかあれはホットパンツに近いよね。スカートだけど。あの長くて細いおみ足を見られるだけでも1,000円は安いかも、と女に思わせるぐらいでした。おっぱいもバランスよい大きさで、ラブシーンに最適。顔も切なげでセクシー(いやらしい)。『熱海』にぴったりです。でも、演技はあと一歩かな・・・。他のお客さんが終演後に女子トイレで力説していたのですが(笑)、「泣き顔でごまかしてる」と感じちゃうんです。小西真奈美さんもそうだったかも。
つかさんのお芝居に出てくる女性って、一見、男よりも強くって鼻っ柱が強くって、だけど狂おしいほど女らしくていやらしいんです。正義感に燃えているんだけど、弱い自分もそのまま受け入れちゃう矛盾だらけの美の生き物。難しいんですよね。
次回は3月に『ストリッパー物語』@紀伊国屋ホールで渋谷亜希さん主演です。これは迷いどころだな。
つかこうへい事務所HP : http://www.tsuka.co.jp/
2003年01月14日
鴻上尚史作・演出『ピルグリム』01/14-02/02新国立劇場
『ピルグリム』は第三舞台の1989年初演の作品です。
オンタイムな内容に鴻上尚史さん自ら書き換えての上演。
新国立で観たくはないタイプのオープニング。えええぇぇ・・・・・って感じ。のっけからイヤんなりました。でも、どんどんと鴻上さんのセリフに引き込まれて、震えて、最後には大拍手。とうとう鴻上さんでヒットですよ。今まで長かったな~。
「オアシス」を求めて旅をする人々。色んな試練(邪魔)が入ります。
いきなり可愛い女の子が踊って歌います。「帰れ。裏切られたふるさとへ」。この歌でまずじ~んと来てしまいました。辿り着いたそこはオアシスだったのか?ここじゃないとすればオアシスは一体どこに?
目に見える自分と目に見えない自分がいる。その片方が片方を殺そうとしている。殺したところにオアシスが・・・?私も大事な人がよく言っていたことを思い出しました。「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」と。自分で自分にSTOPをかけている。自分で自分を否定している。自分で自分を殺しているんですね。
「死んでも何にもならないよ」「死んじゃだめだ」。そんな率直な言葉に言葉そのままの力がありました。 ラストのセリフ、「したたかに、狂ってしまおう。次の旅が始まる。」あぁ恍惚。
役者を吊るのって私は正直好きじゃないんです。だってだいたい吊ってる線が見えちゃってるので夢に入れないし。でも、このお芝居ではそれも成立していました。おもちゃ主役のおとぎ話のような要素がいっぱいなので。
いかにも照明効果ですといわんばかりの派手で機械的な照明に久々に感動しました。演劇の醍醐味だよなー。照明そのものの力を感じられました。
それにしても舞台装置や衣装はなんであんなにチャチに見えるのでしょうかねぇ・・・。単に座席が最前列だったのが致命的だったかも(苦笑)。でも私好みじゃなかったです。色合いもあんまり。
衣装は材質が悪いんだよねー。あと、キュートな動物着ぐるみはもうそろそろ時代遅れだと思うんですが。私だけ?
選曲は、私が今まで観た鴻上さんの芝居の中で一番良かったです。優しくPOPな中に死を感じさせる音。
市川右近さん。仮面をつけての演技で、声がすごく良かった。さすが歌舞伎役者。
富田靖子さん。安心して観られます。若いなー。
山本耕史さん。オープニング以降、この人のおかげで楽しくなってきました。さすがの華。
山下裕子さん。最初の演技にはひきましたが、どんどんと凄みを増していって女優の力を見せられました。
大森博さん(黒マント)。最高。めちゃくちゃ遊んでてかっこいい。最後シビれた。
・・・とにかく、なんと言い表せばいいのか全くわからない高揚を感じました。震えて顔がしばれて涙が流れました。そうなるともう装置とか衣装とかどうでもよくなっちゃうんですよ(笑)。80年代、熱狂的人気があった頃の第三舞台の空気ってこういうのだったのかも?と思いました。
鴻上さん、発売初日にチケット売り切れないどころか今も俄然チケット余ってます。
もったいない!コレ、面白いです。
ぜひぜひお時間のある方は観に行ってみてください。
新国立劇場HP : http://www.nntt.jac.go.jp/
2002年しのぶの観劇ベストテン
2002年のしのぶの観劇シーンはいかがなものだったのか・・・?
「2002年観劇ベスト10」の発表です!
2002年は2001年に比べて観劇本数が減ったことも原因かと思いますが、ベスト9と10については該当作品なしです。悲しいかな。
去年に引続きベスト10以外に数個、部門を設けました。
しのぶが偏屈になって来ているのでしょうか・・・いや、そうじゃない!きっと!!
今年もアマチュア視点でいきますよっっ!
さ、いってみよっ!
■芝居■
①大人計画<日本総合悲劇協会vol.3>『業音』草月ホール10/9-26
②三谷幸喜 作・演出『彦馬がゆく』パルコ劇場1/8-2/3
③tpt『蜘蛛女のキス』ベニサンピット10/9-20
④NYLON100℃『フローズン・ビーチ』紀伊國屋ホール7/12-28
⑤土田英生 作・演出『南半球の渦』シアタートラム11/28-12/10
⑥蜷川幸雄 演出『夏の夜の夢』シアターコクーン8/16-9/1
⑦ひょうご舞台芸術第26回公演『ジェイプス』パルコ劇場7/26-8/4
⑧ク・ナウカ『欲望という名の電車』ザ・スズナリ10/31-11/10
⑨、⑩該当作品なし
■演出■
宮城聰
(ク・ナウカ『欲望という名の電車』ザ・スズナリ10/31-11/10)
※次点 宮田慶子 (ひょうご舞台芸術『ジェイプス』パルコ劇場7/26-8/4)
■男優■
八嶋智人
(シス・カンパニー・プロデュース『おかしな2人(女編)』パルコ劇場8/31-10/14)
■女優■
美加理
(ク・ナウカ『欲望という名の電車』ザ・スズナリ10/31-11/10)
■脚本■
高羽泰雄
(SPARKO『PLAY SET』中野ザ・ポケット7/24-28
SPARKO『Ex-Sight-Seeing(エキサイト・シーイング)』しもきた空間リバティ11/7-10)
■美術■
横田あつみ
(ひょうご舞台芸術第26回公演『ジェイプス』パルコ劇場7/26-8/4)
※次点 松井るみ
(フィリップ・リドリー作『ピッチ・フォーク・ディズニー』シアタートラム5/24-6/23)
■衣装■
前田文子
(蜷川幸雄 演出『オイディプス王』シアターコクーン6/7-30
チェーホフ作・栗山民也 演出『櫻の園』新国立劇場・小劇場6/21-7/21)
※次点 壺会『エトワール探偵団』武蔵野芸能劇場6/28-30
■ヘア・メイク■
林 裕子
(チェーホフ作・栗山民也 演出『櫻の園』新国立劇場・小劇場6/21-7/21)
●オペラ●
ボローニャ歌劇場『清教徒』東京文化会館5/29-6/11
●実験的作品●
ジンジャントロプスボイセイ『ハムレット・マシーン』神宮前EX'REALM10/14-20
★小劇場系(3作品 劇団名あいうえお順)★
青島レコード『FAT OLD SUN』シアタートップス8/7-11
むっちりみえっぱり『その男 浮く』王子小劇場5/3-6
ロリータ男爵『愛探偵 天乃川学-RETURNS-』下北沢駅前劇場12/5-9
※ 団体、個人等についての表記は敬称略です。
2003年01月06日
tpt『BENT』12/28-01/19ベニサン・ピット
私も観に行って参りましたよ、無料公演!予想よりも空いてましたが、やっぱり客層がいつもとは違いましたね。だって・・・若い!ほんと高校生ぐらいの人とかいましたもん。tpt公演では見られない層ですよね。
ナチス政権下ドイツのゲイの若者のお話。ある日突然、追われる立場になったゲイの男がナチス将校につかまって収容所に入れられそこで本当の自分とは、愛は必要か、など、人間の尊厳について気づきを得ていきます。かなりハードな内容です。私的には18歳未満の人には薦められないです。20歳以上推奨かも。
同じ演劇で『蜘蛛女のキス』という作品も軍事政権下の刑務所にいたゲイのお話ですが『BENT』の方が理不尽さが激しく、観ている自分も身を切られる思いでした。皮肉に次ぐ皮肉。さらにその上からまた皮肉が浴びせ掛けられます。
石を運ぶ、過酷でしかも無意味な労働をさせられるゲイの男2人。労働の休憩時間は一日たったの3分間。しかも前を向いてきをつけをして立っていなければならない。そのわずかな時間だけ2人は会話をすることができます。観客の方に向いて棒立ちの状態での熱演。2人は少しずつ心を交わしていく・・・。そこにこのお芝居の魅力が凝縮されているんです。お芝居だらこそ体験できることだと思います。
プラトニック(?)なセックスシーンには感動しました。体も言葉も、それを感じる心があるかどうかなんです。それが人間であるかどうかなんですね。
ユダヤ人だけでなく同性愛者も収容所に送られていたこと、恥ずかしながら私は知りませんでした。しかも階級があったんですね。ユダヤ人が一番上で、同性愛者は一番下。ユダヤの星といえば世間では即、死を意味するほどの忌み嫌われる印だったのに収容所内ではそのマークが同性愛者に色んな利益もたらしたなんて本当に皮肉でした。人間っていうのは・・・・いつでもどこでもそういう階級社会を生み出したがるんだなと思いました。
私は「戦争」というもの(そのもの、それを連想させるもの、またはイメージなど全て)が苦手です。だから役者の衣装を観るだけで胸が苦しくなりました。ナチスの軍服、縦ストライプの囚人服・・・つらい。でも、SS将校の制服はすごくかっこいい。かなりのデザインです。そんなところに楽しみを見出すことがいけないことのように感じるほど、真面目な公演でした。「テロ。9・11。バリ島。今、これをやらなければならない。」というtptの熱い思いがこもっています。
tptからまた一人、スターが生まれたと思います。主役のマックス役を演じた朴 昭熙(パク・ソヒ)さん。素晴らしかった。凛とした声。育ちの良さそうな身のこなし。クールな顔立ち。そして鍛えられた肉体から否応なしにほとばしり出る、はつらつとした若さ。淡々とストイックな演技でそれらをおおい隠そうとしても、でこぼこと出て来てしまうんですね。そのギャップがとてもセクシーでした。声や表情、動作に全く出さなかったけれど、彼、舞台上で何度も涙を流していたんです。彼の胸の奥深くに静かに燃える熱さを感じました。美しい。
なぜか客席がすごく寒いので、観に行かれる方は防寒して行ってください。特に足元。
休憩25分間を含む2時間50分。気合いが必要です。でも、その価値はあります。
チケット取り扱い(全席指定) tpt:03-3635-6355
tpt(ティー・ピー・ティー)のHP http://www.tpt.co.jp
↓(掲示板の頃のレビューですので、書き込みへの返事形式です)
キャシーさん、書き込みありがとうございます!
> 6~7000円は取ってもいいと思いました。
私は5,000円ぐらいかな~。
いつものtptのお芝居に比べるとやっぱり役者さんが追いついてない気がしました。当然ですよね。ワークショップから上がってきた若い役者さん達ばかりですものね。とにかく超お得です。観るべし。
> チラシに「初めて男同士の性的な行為の描写などで…」
> と書いてあったので、少しドキドキしてたんですが
> そのシーンはすごく切なかった。泣きそうだった。
私はかなり泣いちゃいましたよ~。
特に「性的行為」の後のセリフで泣けましたね。
> 観たら、ぜひコレに続けて感想を…
> 他の方がどんなふうに観たか知りたいです。
ええ、ぜひぜひ!
ふだん演劇を観ない人にも、観る人にもお薦めですよね♪
◆ひとことモノローグより
『BENT』は当日券のみ
update: 2003.01.09 (Thu)
tptの無料公演『BENT』は、既に予約は完売で当日券のみの扱いだそうです。
今のところ、並んだお客様は全員入場できているそうなので、ご興味ある方はぜひともお早めに足をお運びください。
千秋楽に近づけば近づくほど入場できる可能性が少なくなります。
1/19(日)まで。
◆ひとことモノローグより
tpt『BENT』公演延長!
update: 2003.01.10 (Fri)
以下、イープラスからの宣伝メールの貼り付けです。
ナチズムとホモセクシャル、そして人間と自由の尊厳について描かれた問題作「BENT」の画期的な無料公演。あまりの好評により遂に公演4日間延長決定!
公演日:1/20(月)~1/23(木)各19:00開演
@ベニサンピット(最寄駅:都営新宿線・大江戸線 森下駅)
2003年01月05日
ステージワーク・シミュレーションvol.4『衣裳編』10/5青年座劇場
青年座劇場で行われた講義です。
ステージワーク・シミュレーションはもう4度目なんですね。私は今回が初めての受講です。
前田文子さんの衣裳、大好きなんですよ。宮田さんも大ファンだし。
青年座 : http://www.seinenza.com/
まず前田さんがきれい。おしゃれだし、美人。目に嬉しい。語り口も好き。講義の最後の方ではどんどんと本音(グチ)が出てきてすごく親しみが湧きました(笑)。休憩を挟んで合計およそ4時間ありましたが、勉強になりましたし楽しかったです。
受講者のほとんどは衣裳づくりを将来やって行きたいと考えている若者ばかりでした。皆さんの真剣なまなざしに、演劇スタッフ界の将来は暗くないんだなーと頼もしい気持ちになりました。
■講師 前田文子(まえだ・あやこ) 衣裳プランナー。
1995年伊藤熹朔新人賞、2002年読売演劇大賞スタッフ賞優秀賞を受賞。
1995年に文化庁派遣芸術家在外研修員としてイギリス留学。
■司会 宮田慶子(みやた・けいこ) 演出家。
1994年『MOTHER』で第29回紀伊国屋演劇賞個人賞、
1997年『フユヒコ』で第5回読売演劇大賞優秀演出家賞、芸術選奨文部大臣新人賞、
2001年『赤シャツ』『悔しい女』『サラ』『セイムタイム・ネクストイヤー』で平成13年度毎日芸術賞千田是也賞、第9回読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞。
【前田さんの本音トーク】
衣裳に一番大切なのは質感である。質感がデザインの90%を決める。
インドシルク・シャンタンが私の大好きな生地。
西洋の服のポイントはウエスト。胸とお尻を大きくしてウエストを細く見せるのが基本。
西洋の服は立体造型である。和服は平面。
時代物を作る場合はシルエットと質感だけを残して、後は自分でデザインする。
クラシックと現代が交わって新しいものが生まれる。根ざしているものが必要。
小劇場で好き勝手にやっていた。今思えば自由だった。勢い、パワーがあった。
皆さんに言いたいのは「発想は自由なんだ」ということ。
知ればいくらでも広がる。しかし、なんとなく狭くなる部分もある。
しかしながら言葉を知らなければ詩を書けないのと同じように、方法を知らなければ表現はできない。
だから私はテクニック、知識があった中で自分を操作していきたい。
お芝居を見た後に「面白かった」「つまらなかった」「よかった」「好きでした」とか感想を言われる事があるけれど「ほっといてください!」って思う。どんなお芝居でも賛否両論。人それぞれの感想があるのだから。
毎回、自分にとっての目的を設定する。(例:「アールヌーボーでやるぞ。」とか)
その目的をみんなと共有していくことが幸せ。そういう仲間達と仕事をやっていきたい。
スタイルを持たないのが私のスタイル。でも、尻尾は出ちゃうぞ、みたいな(笑)。
演劇の一つの要素であること。ケース・バイ・ケースにできること。
演出作業の一部になっていること。そういうのが私の今のスタイル。
宮田「その”尻尾”が何よりも大切なんです。そこが前田さんとやりたい理由。」
※もっともっと沢山お話をいただいたのですが(これの5倍ぐらいの量)WEB上に載せるのはここまでにさせていただきます。しのぶ