『ピルグリム』は第三舞台の1989年初演の作品です。
オンタイムな内容に鴻上尚史さん自ら書き換えての上演。
新国立で観たくはないタイプのオープニング。えええぇぇ・・・・・って感じ。のっけからイヤんなりました。でも、どんどんと鴻上さんのセリフに引き込まれて、震えて、最後には大拍手。とうとう鴻上さんでヒットですよ。今まで長かったな~。
「オアシス」を求めて旅をする人々。色んな試練(邪魔)が入ります。
いきなり可愛い女の子が踊って歌います。「帰れ。裏切られたふるさとへ」。この歌でまずじ~んと来てしまいました。辿り着いたそこはオアシスだったのか?ここじゃないとすればオアシスは一体どこに?
目に見える自分と目に見えない自分がいる。その片方が片方を殺そうとしている。殺したところにオアシスが・・・?私も大事な人がよく言っていたことを思い出しました。「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」と。自分で自分にSTOPをかけている。自分で自分を否定している。自分で自分を殺しているんですね。
「死んでも何にもならないよ」「死んじゃだめだ」。そんな率直な言葉に言葉そのままの力がありました。 ラストのセリフ、「したたかに、狂ってしまおう。次の旅が始まる。」あぁ恍惚。
役者を吊るのって私は正直好きじゃないんです。だってだいたい吊ってる線が見えちゃってるので夢に入れないし。でも、このお芝居ではそれも成立していました。おもちゃ主役のおとぎ話のような要素がいっぱいなので。
いかにも照明効果ですといわんばかりの派手で機械的な照明に久々に感動しました。演劇の醍醐味だよなー。照明そのものの力を感じられました。
それにしても舞台装置や衣装はなんであんなにチャチに見えるのでしょうかねぇ・・・。単に座席が最前列だったのが致命的だったかも(苦笑)。でも私好みじゃなかったです。色合いもあんまり。
衣装は材質が悪いんだよねー。あと、キュートな動物着ぐるみはもうそろそろ時代遅れだと思うんですが。私だけ?
選曲は、私が今まで観た鴻上さんの芝居の中で一番良かったです。優しくPOPな中に死を感じさせる音。
市川右近さん。仮面をつけての演技で、声がすごく良かった。さすが歌舞伎役者。
富田靖子さん。安心して観られます。若いなー。
山本耕史さん。オープニング以降、この人のおかげで楽しくなってきました。さすがの華。
山下裕子さん。最初の演技にはひきましたが、どんどんと凄みを増していって女優の力を見せられました。
大森博さん(黒マント)。最高。めちゃくちゃ遊んでてかっこいい。最後シビれた。
・・・とにかく、なんと言い表せばいいのか全くわからない高揚を感じました。震えて顔がしばれて涙が流れました。そうなるともう装置とか衣装とかどうでもよくなっちゃうんですよ(笑)。80年代、熱狂的人気があった頃の第三舞台の空気ってこういうのだったのかも?と思いました。
鴻上さん、発売初日にチケット売り切れないどころか今も俄然チケット余ってます。
もったいない!コレ、面白いです。
ぜひぜひお時間のある方は観に行ってみてください。
新国立劇場HP : http://www.nntt.jac.go.jp/
Posted by shinobu at 2003年01月14日 23:45 | TrackBack (0)