2003年03月29日
SPARKO『RENTAL SPACE』03/26-30中野ザ・ポケット
ガールズ・コンセプチュアル・ポップの新たな地平を切り開く、スパーコ。高羽泰雄さんの脚本がすばらしいので通っています。今回が第三回公演。
脚本は今までで一番難解でした。が、やっぱりのめり込んでしまいました!舞台美術と照明が凝っていてセンスもいい!!3,000円で観られるのはありがたいと感じられる質の高さだと思います。オリジナル音楽もいつものテイストで良かった。サントラが欲しいですね、公演ビデオまで買っちゃった者としては。あ~・・・ファンなんですよ、もう(笑)。
『RENTAL SPACE』って『借りる(借りられる・賃貸の)宇宙』ですもんね。このSPACE(スペース)という単語がすごく曖昧というか、色んな意味になります。宇宙、空間、場所、隙間、間・・・etc.。あらゆる意味で当てはまり、使われていると思います。時空を越えた存在としての王子とそれを守る小熊隊(?)の女戦士たち。果たして王 子の宇宙を守ることができるのか。
一方向に流れる「時間」と、上下・縦横のある三次元の中に存在する「肉体」。その、人間にとって絶対と言える制限がある中で、実は私たちはそれを超えたところ(=SPACE)に居るのかもしれない・・・。そう思わせてくれる夢の体験。無限の想像力で自分の体を抜け出す、そんな体験。
女優さん達のあのアイコン的な、ロボット調の動きとセリフまわしは、演出意図として馴染んでくると、もう答えられない魅力です。自然と観客の想像力を駆り立て、観客の脳を芝居と同じ速さで使わせるように働きます。集中せずにいられない。頭の普段使っていない部分の体操、ともいえるかも。
そして彼女たち、顔もカラダも美しいです。演技や小ネタも可愛いです。男性だけじゃなく女性も必見。こういう芝居もアリだよって。こういう演技でも熱いドラマが通じるんだって。涙を誘うんだって。
毎回感じることですが、オープニングの一発をドカンとやって欲しいです。あれだと初見の人は引いちゃうんじゃないかな。相当高度な、アブノーマルなことやってるんですから、徹底して最初からスパーコ・ワールドに連れて行って欲しい。そこは出演者の方々の力がものを言うところかもしれません。
佐藤陽子さん(天然ロボット)が急病で降板して菊川朝子さん(Hula Hooper)が代役をされていましたが、1日であれを覚えてやるなんてスゴイ!だってほとんど主役ですもの。ただ、私としてはやっぱり佐藤さんで見たかったな~。私、かなり彼女、好きなんで。今までのSPARKO作品に全て出演されていて、天然ロボット『ホルマリンの少女』でも良かったし。
SPARKO : http://www.apartment.gr.jp/sparko
2003年03月27日
ペンギンプルペイルパイルズ『ドリルの上の兄妹』03/25-30THEATER/TOPS
阿佐ヶ谷スパイダースの中山祐一朗さんが出演するので観に行きました。ペンギンプルペイルパイルズ(以下PPPP)は2度目です。
不条理劇でした。前に拝見した『不満足な旅』もそうでしたが、それよりも、もっと。有り得ない設定で有り得ないリアクション、だけど一瞬一瞬に役者の存在にリアリティーを感じてしまう。脚本はもちろんですが、演出の妙ですね。倉持裕さん、面白いです。
ただ、これは本当に個人的なことなんですが、私は眠ってしまいました。残念です。すみません。ただの疲労と寝不足せいなんですけどね。その状態を吹き飛ばすほどの迫力はない、というか。そもそも勢いとかで見せるお芝居じゃないんです。本気で楽しむには観客の方の努力も必要だと思います。相当アンバランスだし、脈絡ないし、熱いですから。それって私的には面白いってことなんですけど。う~ん、あのリズムに乗れなかったな。
現代日本の不条理劇というと岩松了さんですが、岩松さんバリに不条理です。でも岩松さんのお芝居よりも外向きで観客フレンドリーだと思います。岩松作品は姿勢として常連客に超フレンドリーなんですが、あくまでも内向きですよね。それはそれでGOODなんだけど。PPPPはそれに大人計画的要素(大胆・肉体派・生っぽい等)や、オッホのようなザワザワ&イライラ感がプラスされてる感じ。
作風を説明しようとして小劇場的に有名な名称を並べてみたんですが、いかがでしょうか。
役者さんの細かな演技で楽しめました。音楽も良かった。サントラが800円で売られてました。奇想天外なオープニングが好き。このお芝居は中央で見るべきだなー。
Penguin Pull Pale Piles : http://www.penguinppp.com/
2003年03月24日
THE SHAMPOO HAT『青空』03/18-24ザ・スズナリ
シャンプーハットといえばスズナリのお馴染み空間ですよね。やっぱり今回も濃ゆ~く、じめじめしてました。
古びた安アパートの一室。ゲイの男がソファにうずくまっている。弟が10年ぶりに会いに来る。恨みを晴らすために。お別れのために。
1時間半と言えど観ている方もかなり緊張させられる、凝縮された空間です。私はちょっと疲れたかな~・・・。無意図で無意識の悪意が充満し過ぎました。目の前で戦争を見ているような気持ちっていうか。特に、ドキュメンタリー映画を撮りに来る男の悪さっぷりには呆然。胸が苦しくなるほど。
でもその中に笑いが薄く確実に差し込まれるのは作・演出の赤堀雅秋さんの力ですよね。
ゲイの男の中学の頃の友人で、農家で働いている藤田くん(福田暢秀さん)に爆笑。福田さん、舞台美術屋さんだけど演技も素晴らしいです。お人柄が出ますよね。心の底から大らかで、あの声の清らかさは絶対に心がきれいだからだ、と私は1人で納得。
今回から正式メンバーになられた紅一点の滝沢恵さんがステキでした。『蝿男』の時のインパクトもすごかったですよね。
客席には小劇場で有名な人がいっぱい。みんなシャンプーハットが好きなんだろうな~。
ビデオ撮影が入っていました。「演技者。」からの花も豪華。
THE SHAMPOO HATのHP : http://www33.ocn.ne.jp/~shampoohat/ (2006/03/20追加)
2003年03月22日
ブラジル『ロマンティック海岸/科学ノトリコ』03/20-23王子小劇場
近藤美月さん(bird's-eye view)が出演されるので観に行きました。ブラジル初見です。
めっちゃくちゃ面白かった!!!
久々に「小劇場」の存在価値を再確認しました!
もー・・・・ほんっと思いっきり笑えましたし、最後はほろり・・・。狙いが思いっきり玄人です。そして、生なんです。手作業だし体張ってます。すごい!これぞ見世物。
簡単な言い方をすると(失礼だったらすみません)大人計画のような、というか。度を越した時、自分の受け入れられる許容量を超えた時、人間は笑うしかないんですよね。そういう笑いを体験しました。
2年ぶりの再演だそうで、1人以外全部がオリジナルキャスト。作・演出のブラジリィー・アン・山田さんにお話を聞くことができたのですが、今回はあくまでもエンターテイメントを目指したということです。前回公演『ロマンチック☆草津』の方がもっと濃い、コアな感じだったそうなので、今作品はブラジル初見の方にぜひお薦めだと思います。
いや、とにかく楽しかった。東京の小劇場演劇界というある意味、真っ暗闇の中に、一筋の光を見が気がしました。脚本もセリフも面白いし、なんといっても役者さんの細かな演技と壊れ方が潔いです。観客でよかった、王子まで観に来てよかった、と思えます。
早稲田の劇研つながりなんですね。双数姉妹、東京オレンジ、少年社中、チャリT企画、クリータン・クリート、みたいな。そういうコミュニティーがあるってこと自体を私はあまり知らなかったのですが、最近、よく聞きます。まあそれは小劇場経験者だからでしょうけど。その枠を越えて面白いです。ぜひ足をお運びください。
HPによると「椅子席を42席、桟敷席を約40席ご用意する予定」だそうです。桟敷はつらかった・・・ぜひお早めに劇場へ足をお運びください!
2003年03月17日
パルコ『オケピ!(再演)』03/11-31青山劇場
真田広之さん&松たか子さんという豪華キャストで三谷幸喜さんが岸田戯曲賞まで取ってしまった『オケピ!』の早々の再演です。
今回は、観に行く価値がないとまでは言いませんが、率直に言うと面白くなかったです。2度目だからストーリーがわかっていたのも原因かもしれませんが、重要な演出が初演の時とは変わっていて、私にはそれがつまらなかったんです。
ネタバレします。
オケピはオーケストラ・ピットの略。つまりミュージカルやオペラなどを上演する際に音楽を生演奏するオーケストラが居る場所のこと。舞台の手前、客席との間に作られた1階下の部分。穴(ピット)のような場所のことですね。
この作品の舞台はオケピです。初演の時はそのオケピの上に舞台が見えていて劇中のミュージカルに出ている役者の足が見え隠れしたりしました。客席から見ると実際に生演奏するオケピの上の舞台に装置のオケピがあり、そしてその上に劇中の舞台が見えているという3重の構造になっているのがとっても面白かったんです。なのに今回はその天井側に見えている舞台の床がなかった。天井が異常に高いオケピだけがあったんです。しかも真っ黒なので、見た目がまず地味で圧迫感があります。そして何の変化も起きない。普通。
また、布施明さんの娘との再会エピソードのシーンで、初演の時にはあった舞台底からイスとテーブルがせり上がって来る演出がなかった。ミュージカルの堂々とした嘘をパロディにした笑いがあったのに、ただ、譜面台を喫茶店に見せかけただけでした。至極普通。
「ミュージカルなんだからリアルにしなくても、そもそもが嘘なんだし、必要ないから無くした」というようなことがパンフに書かれていましたがそれは『オケピ!』がミュージカルだったらOKですが、『オケピ!』は普通のミュージカルじゃないからNGだと思います。だって普通のミュージカルと比べると、歌は下手だし踊りも下手(というか踊る場所がない)。装置は単調で全く動きがなく、大量のダンサーによる群舞もない。衣装も振付も至極地味で歌の内容もほとんどふざけたものばかり(面白いんですけどね)。ミュージカルではないんですよ、最初から。お芝居なのに突然歌を歌ったり、意味もなく踊ったりするから面白かったのに。
「三谷さんが作った三谷テイストのミュージカルお芝居」であることが、この「オケピ!」という作品の最大のアイデンティティーだったのに、それを失うことになったんだと思います。とても残念です。
天海祐希さん。演技が上品。歌も上手いし踊りも上手い。スタイルも抜群。背の高さが笑いを誘いました。 腰までスリットの入ったロングスカートで足を思いっきり上げられた時はドキっとしました。ステキ!でも松たか子さんの役はやっぱり松たか子さんの役だと思います。あの毒は出せないですよね。
白井晃さん。好きな男優さんなのですが、さすがに真田さんの代わりは出来なかったですね。
戸田恵子さん。前回は松たか子さんに押さえ込まれていましたが、今回は水を得た魚のように伸び伸びされていてすごく良かったです。
布施明さんの歌にはまた泣かされました。なんであんなに優しいのでしょう。なんであんなに心に響いてくるのでしょう。
出演:白井晃 天海祐希 戸田恵子 川平慈英 小日向文世 寺脇康文 小林隆 相島一之 温水洋一 小橋賢児 瀬戸カトリーヌ 岡田誠 布施明
作・演出:三谷幸喜
パルコ劇場 : http://www.parco-city.co.jp/play/
2003年03月16日
東宝ミュージカル『ミー&マイガール』03/02-30帝国劇場
唐沢寿明さんと木村佳乃さんが主演のミュージカルです。
帝国劇場に久し振りに行きました。いい劇場だなー。1階席だといいですね。ホント。
ちゃんとした典型的なミュージカルでした。踊りと歌のレビュー(というのかな?)が楽しかった。ストーリーはあってもなくてもどうでもいいようなモンですが、それはそれということで(笑)。
山田和也さんのミュージカルの演出は素晴らしいと思います。『ジキルとハイド』も感動したし。彼ならミュージカルは間違いないですね。客席にどんどん役者が降りてきて踊って歌うんですよ。唐沢さんが極近くに来て踊る!なんてこった!!最高のサービス♪
衣装も私は大ファンの小峰リリーさん。見とれました。舞台装置や照明、ストーリーに調和させた色使いが絶妙だと思います。あと布使いも。ラインも。大勢(50人ぐらい)で全員違う服を着ているんだけど、グループごとに鮮やかに違いがあり、だけど全体としても調和している。すごい。
装置はいわゆる回る舞台でまさに帝国劇場テイスト。『レ・ミゼラブル』の明るい版というか。圧巻ですよね。あれだけ大きな装置がばんばん動くんだから。夜の星空の演出であんなに莫大な数の小さな電球を散りばめられたら、他の劇場での同じ演出のシーンを見られなくなっちゃう。
唐沢寿明さん。この人は主役しかできない人ですね~。光ってる。スターです。居るだけで満足させてくれます。下町の若者がだんだんと上品な貴族に変わっていく様子は気持ちいいですね。だんだんと唐沢さんになってくる、というか。そういえば最初の下品な若者役の時の見栄の切りかたとかが山崎銀之丞さんに似てました。すっごく。(山崎銀之丞さんが、似てるのかな)
木村佳乃さん。うーん・・・あんまりでしたね。がんばってらっしゃるけど、がさつで元気っていう役は合ってないと思います。『恋人たちの予感』ではすごくキュートだったのに。ああいうのまたやって欲しい。至極おしとやかな薄幸の美少女役とか、高慢ちきで意地悪な女とかも。ファンみたいね、私(笑)。
涼風真世さん。スタイルいいなー。色白で歌も上手くてダンスも上手いし、ミュージカルのための女優さん。さすが宝塚。
本間憲一さん。『彦馬がゆく』では踊られなかったからよくわからなかったけど、踊りはもちろんお上手で、コミカルな演技が最高。三越劇場の『人魚姫』で王子様役やってらっしゃったのが思い出されて笑えました。(すみません。)
東宝『ミー&マイガール』:http://www.toho.co.jp/stage/me_and_my_girl/welcome-j.html
2003年03月13日
AMP『白鳥の湖』02/25-03/14オーチャードホール
『白鳥の湖』というと世界中で知らない大人はいないと言えるチャイコフスキー作曲のバレエの傑作ですが、この作品はその『白鳥・・・』の音楽をそのままに、ストーリーや登場人物を全く変えて演出されたものです。
そもそもこの公演は、出演者はもとより脚本・演出・振付のマシュー・ボーンさんが目玉なんですよね。そして・・・評判どおり素晴らしかった!残念ながら私はバレエについての知識不足のため、バレエ作品としてどういう品質なのかは名言できないのですが舞台作品としては美しく楽しく面白い、文句なしの芸術エンターテイメント作品だと思いました。
チャイコフスキーの音楽、ハイセンスで耽美な美術、豪華な衣装、最高品質の踊り、女装(女形)、劇中劇、という舞台芸術のフルコースの上にマザコン、同性愛、皇族スキャンダル、愛憎のもつれによる殺人、ロボトミー手術、動物変化・・・という誰もが覗き見したくなるような危険な要素がこれでもかと散りばめられています。
軸となるのは白鳥と王子の愛、しかも男同士の恋愛ですからファンタジーの上にタブーまで重なって、それはもう禁断の芳香プンプンです。妖しくなまめかしい男のエロスとドラマティック・ノアール・エンターテイメント、な、バレエ。そしてプラチナ・キャストですから人気なわけです。
古典バレエの振付に加えてコンテンポラリー・ダンスや、群舞での物語表現もありました。白鳥の振付は本当に白鳥のようで、バレエは想像力を喚起する力が非常に大きな芸術なのだと再認識しました。まるで無声映画のようだったな~。バレエって声を出しませんものね。狂おしいほど熱い思いを動きだけで表現していくんです。そのストイックさが日本の古典芸能と同様、現在に、歴史に残っている所以なのだと思います。
美術、衣装については言うことなく素晴らしかったです。あれは日本人にはない色彩感覚ですよね。シックでエスプリが利いています。ロボトミー手術(であろう)のシーンの、視覚的な遊びで本質を突く、影の演出は非常に面白かった。
王子が眠るベッドの下から白鳥が出てきたときも背筋がゾクゾクしましたね~。むずむずと無表情にうごめく白鳥たち。裏切り者を容赦なくいためつけるその野生。
クライマックスはヒッチコック映画ばりの緊張感でした。
主役がトリプルキャストで当日にならないとその日のキャストがわからないという観客泣かせのスケジュールで、当日券にはいつも長蛇の列、お客様はお目当ての人が出るまで毎日通いつづけるとか。
私が拝見したのはアダム・クーパーさんの出演日で、すごく運がいいと言われました。大スター・アダムは鍛えぬかれた大柄の身体で華麗に力強い踊りを見せてくださいました。技術もすごいですがルックスもパーフェクト。ありゃ女なら誰でもファンになっちゃいますね。
そして彼が美しいのは彼自身の技術やルックスだけでなく、彼の繊細な演技が素晴らしいからだと思いました。
脚本・演出・振付:マシュー・ボーン
文化村HP : http://www.bunkamura.co.jp/
ウォーキング・スタッフプロデュース『SPACER ~スペーサー~』03/06-16THEATER/TOPS
和田憲明さんが作・演出をするプロデュース公演です。読売演劇大賞最優秀作品賞の受賞経験のある方で、その芝居作りには定評があるのでしょう。私は初見です。
あのチラシとタイトル、キャッチコピーにだまされた・・・大人向けの恋愛モノだと思ってたのに、良質の本格派SFホラーでした(泣)。ネタバレしたくないのであまり深くは書けませんが、とにかくリアルでバイオレント。心理サスペンスでもあり盛り沢山です。実は某有名SF映画にそっくり。それに感づき始めたときシラけちゃいそうになったんですが、物語の結末に心に響くメッセージが秘められていて、それはそれは感心させられました。
人間、どっか間違っちゃったんじゃないかな。つまらないことを消費して浪費して不満でキレて。朝の目覚まし用缶コーヒー、女性用のむやみな体型矯正下着、想像力不要の動画TVゲーム。そしてテロ。戦争。マイナスに考えるのではなくあくまでもプラスに考えられると思うんです。これから変ればいいんだって。そして実行ですよね。
爆発とか放電とかガラスが割れたりとか、もーその他いろいろ消えモノも満載。とにかくこんな小空間でばっちりやられちゃうと前売4,200円は安いと思えました。壮絶です。
植本潤さん(花組芝居)。ちゃんと不気味でした。オープニングのナレーションやラストの映像での話し方などは、やはり技術のある方だと思える落ち着きがあってメッセージをちゃんと受け取ることができました。
内田滋啓さん。美しいですよねー。美しいゆえか悲惨な役が多い気がするのは私だけ?もっと出番があったらよかったのにな~。
伊達暁さん(阿佐ヶ谷スパイダース)。いつも脇を固めるキャラとして存在することの多い方なので、ファンとしては大満足でした。演出の和田さんが伊達さんの魅力を十分に引き出し、発揮させてくださったんだと思います(えらそうですみません)。得体の知れない飄々とした風貌で時には不気味に、時には冷静沈着に笑みを浮かべて迷演技をしたかと思えば、熱い感情的な表現も極度の緊張のガス抜きになる笑いも秀逸。反射神経もすごくいいんですよね。動きで目を奪われます。最初は脇役でだんだんと主役になっていく持っていき方も良かった。構成がうまいんだと思います。
他の役者さんは皆さんリアルですごかったです。ただバーテンダー役の鈴木省吾さん、笑い方が単調だった気がしますね。でもそれぐらいですが。
シアタートップス : http://theatertops.tripod.co.jp/
2003年03月06日
Studio Life『トーマの心臓』02/27-03/09アートスフィア
男優集団スタジオ・ライフ、日本テレビでもじゃんじゃんCMやってるようですね。『トーマの心臓』は萩尾望都さん原作の少女漫画です。スタジオ・ライフの代表作であり今回が5度目の再演。私は『トーマ・・・』は二度目です。あの時はとにかくボロボロに泣かされました。だから再演でも喜び勇んで劇場に伺いました。
今回はキャストが総勢30人でA~Dの4バージョンあるんです。う~ん、観客泣かせ(笑)。私は笠原浩夫さん、林勇輔さん、そして客演のNIROさん目当てでCバージョンの日に伺いました。
う~ん・・・・長かった・・・。なんかハズしちゃった感じですね~。少しずつ、ズレていたというか。「私が2度目だったから」ではないんですよね~・・・。残念。
まず、私の勝手な想像ですが、美術が計算外だったのではないでしょうか。アートスフィアという大きな劇場ということで前回とは違う、回り舞台にされてましたが、あれではお芝居が下手に寄りっぱなしになっちゃうし、何より転換の音がうるさかった・・・(泣)。静けさが全てのようなお芝居ですし、その辺はとにかくもったいないですよね。
あと、主役(だと思う)のユリスモール役の山本芳樹さんの演技が弱かった。私が前に観たのは曽世海児さんだったんですよ。彼は良かったんだよな~、情熱的で。でも山本さん人気あるみたいですね。ブロマイド売り切れてたし。あ、ブロマイドの売り行きがロビーでオンタイムでわかる状況って、役者にとって残酷だなぁと思いました。
それから、私にとっての最大のマイナス要因は音楽でした・・・。アヴェ・マリアの同じ部分を流しすぎです。痛い。本当に痛い。前回も同じ音楽を使ってましたが今回ほど耳障りではなかったです。どうしたのかにゃー。
林勇輔さん(レドヴィ)。やっぱサイコー。声もいいし、歩き方も立ち方もいい。見とれて聞きほれました。今回、演技でちゃんと劇場を支配できたのは彼だけだったんじゃないかな。残念ながら。この後は無名塾のミュージカルに出演され日本中を周られるため、スタジオライフは1年ほどお休みだそうです。ぐすん。
深山洋貴さん(アンテ)。ちょっぴりイヤミな役をあんなに可愛く出来るのは、スタジオ・ライフでは深山さんだけっ。もっと出て欲しかったな。林さんと深山さん、笠原さん(オスカー)、及川さん(トーマ)の4人が出てらっしゃるシーンは空気が香り立ちました。
NIROさん。神々しいほどのポエティックな耽美さという、この『トーマ・・・』のイメージとは合ってなかったかも。スタジオ・ライフの作品でも他のなら良かったかもしれません。演劇実験室◎万有引力の『さよならの城』では本当に素敵だったのに残念。
さて、次回作はまたまた少女漫画!なんと、樹(いつき)なつみさん原作の『OZ-オズ-』です!こりゃまた必見ですよ、私も大好きなSF漫画で今も単行本を持ってます。あぁ・・・また倉田さんにヤラれた!!
Studio LifeのHP : http://www.studio-life.com/
2003年03月05日
ホリプロ『奇跡の人』03/02-04/05シアターコクーン
『奇跡の人』は乳児期の大病が原因で盲・聾・唖の三重苦となった女性ヘレン・ケラーとその家庭教師アニー・サリヴァンという実在の人物を題材にしたウィリアム・ギブソンの傑作戯曲です。みなさんご存知ですよね。
去年は大竹しのぶさんがサリヴァン先生、ヘレンを官野美穂さんが演じられて大好評でした。私は残念ながら拝見していませんが。今回キャストはほとんど一新、ヘレンを鈴木杏さんが演じました。
はらほろ~・・・泣かされました~・・・・会場中、涙ぼろぼろですよ。なんて素晴らしい戯曲なんでしょう。原作本を買ってしまいました。言葉こそ人間が人間である理由なんです。そう、それだけ。なんて潔くて雄弁なんでしょう。
非常に観客の年齢層が広いです。お年寄りから子供まで楽しめます。すごいことだと思います。鈴木裕美さんの演出は本当にわかりやすく、しかもハイセンス。子供には笑えるよう、大人には考えられるよう、細かいところまで心が行き届いています。
舞台装置が良かった~。一見、手抜きに見えたのですが全くの間違いでした。ものすごく計算されています。どんなに暴れても大丈夫なように頑丈な作りで、すばやく場面転換ができて、シンプルゆえに人物のドラマに注目が集まりやすい。唸りました。
大竹しのぶさん。こういうパワフルな頑張りやさんでコメディー・タッチな役は抜群ですね。確実な演技でした。
鈴木杏さん。本当にヘレンに見えました。ごく自然にヘレンである彼女。全く無理がない。キャラがどうとか、そういう視点が必要ないんです。噂どおり天才かも。
キムラ緑子さん。ヘレンの母親役。いつも最初の瞬間キムラさんだと気づかないんです。それぐらい化けてらっしゃる。今回は最高にエレガントでしたね。「返して!」のセリフが素晴らしかった。温和で冷静な母親が娘を愛するあまり、我慢ならずに吐露してしまった激しい思い。絞り出されるようなセリフでした。
長塚圭史さん。ヘレンの腹違いの兄役。なんとも優しくて弱くて、だから強がって憎まれ口ばかりたたく人間らしいダメ男でした。愛さずにはいられないです。一番の決め台詞も笑いに持っていくしたたかさ。歌も最高。なんか衣装とかヘアメイクなど全体的に羽場裕一さんに似てたな~。緊張してらっしゃる感じがありましたが、初日ですし、これからどんどん目立っていかれると思います。
演劇をご覧になったことのない方にも安心してお薦めできる作品です。小学校高学年から十分楽しめます。ご家族でもカップルでもお友達とでも誰とでも、ぜひ。