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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年05月29日

劇団山の手事情社『トロイアの女』05/25-06/01シアタートラム

 劇団山の手事情社の本公演、初見です。

 エウリピデス原作。「トロイの木馬」事件の後のお話。10年にも及んだギリシアとトロイヤの激しい戦争だったが、武装したギリシア兵士が隠れている豪華な木馬を、それとは知らずに領地内に入れてしまい一夜にしてトロイヤは滅びることとなった。トロイアの王妃ヘカベに耐え難い苦難がふりかかる。
 人間はなぜ生きるのか。生きていても地獄でしかないとわかる状況で、どうして生きることを選ぶのか。

 言葉やセリフだけでなく、身体表現でさまざまな事象や出来事を表します。役者は人形のような動き。黒子がつねに舞台上で動いています。主要人物以外の出演者の役名が全員「運命」となっていたのが良いですね。床でぐるぐる回って時間の経過を表す動きがすごく面白かったです。あの閃きを観られて満足。

 シアタートラムをめいっぱいスタイリッシュに使っていました。舞台を取り巻く照明が間接照明になっていたのもクール。衣裳のコンセプトがはっきりしていて、シンプルで機能美がありました。(全身黒服の状態から簡単に羽織ったり被ったりして、演じる役の変化を表します。)

 王妃ヘカベ役だけがクローズアップされる展開というか、他は皆んな「その他大勢」という演出でしたね。技術の在る役者さんがいっぱい揃っている山の手事情社・・・・のはずだったのですが、残念ながらこの公演では1人1人が目立つわけではありませんでした。だからなのかもしれませんが、全体的にのっぺりと単調なイメージで、少し退屈しました。

 コロス的な存在が常に動きながら舞台上に居るのは、ちょっとワサワサし過ぎな感じがしました。背景や模様になるぐらいに洗練された動きを、全員でやれるなら凄いですが。繰り返しの動作は、官能的だと感じられるレベルまで上げてもらえたら・・・・嬉しい。衣裳を黒子が着替えさせるのを最初から最後までやり続けていましたが、そういう様式は一度見れば分かりますから、中盤過ぎたらもう見せてもらわなくていい気がします。

 王妃ヘカベ役の山本芳郎さんが良かった。色香を感じさせる佇まい。最後のシーンは見とれてしまいました。
 客席に出てくるポセイドン役の鴫島隆文さんの声がとても良かったです。

 高度なことにチャレンジされているので、ついつい辛口になってしまいましたが体験できたことに価値を感じられた作品でした。

劇団山の手事情社HP : http://www.yamanote-j.org/

Posted by shinobu at 2003年05月29日 18:12 | TrackBack (0)