今年の目玉です。イギリスを代表する演出家 ジョナサン・ケントと、日本を代表する狂言師(俳優)野村萬斎の共同作業。そして目を見張る、豪華すぎる男優陣と豪華なスタッフ陣。
結果は・・・・・・最高!めちゃくちゃ面白い『ハムレット』でした!!笑った笑った、泣いた泣いた、見とれた見とれた!色んな欲望を全部満たしてくれた感じでした。あ、それは私が女だからかもしれませんが(笑)。
美術がすごかったです。巨大な箱が開いたり閉じたりすることで全てを表現するのですがその箱の材質がすごい。あれは木?だとすると細密画のようになっているから相当豪華ですよね。関係者の方から少しお話を伺うことが出来たのですがあんな豪華な美術で世田谷パブリックシアターのキャパシティー(約700人)というのは、どうやら採算度外視だそうです。つまり、それだけでも一見の価値アリ。
音が少ない作品でしたね。音楽が鳴っていた時間がすごく短く、音というと効果音ばかりでした。なのにあの美術の転換!見事です。アンサンブルの人たちが扉を動かすのですが、扇子で顔を隠したりするのがエロティックでした。
脚本がとても聞きやすくてわかりやすかったです。軽快さもありました。パンフレットによると、翻訳の河合祥一郎さんの文章を萬斎さんがちくいちチェックしたそうです。
『ハムレット』は私も何度も拝見している有名演目ですが、今回ほど意味がわかりやすく伝わったのは初めてでした。いつも流されがちなフォーティンブラスが絶妙の存在感だったことなどは、まさに演出の力だと思います。
野村萬斎さん。めっちゃくちゃ魅力的な、セクシーなハムレット!目を奪われました。もーうっとり・・・・♪大体、あのヘアスタイルだけで私は既にノックアウトでした。キュートできゃしゃで、抱きしめたくなっちゃう。白いシャツの裾が半分だけズボンからはみ出てる時なんて、もー・・・・反則!なんて母性本能をくすぐる男の子なんだっ!?そりゃガートルード王妃も溺愛するわよっっ!・・・あ、あの・・・・言っておきますけど、私は萬斎さんの大ファンってわけじゃなかったんですよ、ホントんとこ。すっごく冷静に「素晴らしい天才的な役者さんだなぁ」ぐらいに思っていたんです。だけど今回は・・・・・胸キュンもんっスよ!全く!!
全て萬斎さんの思うツボだと思います。完全に狙いどおり。そう、そんなハムレット像を作り上げたんですね。前半はとにかくその個性的で魅力的なハムレットに心を奪われ見とれるばかりでした。後半のはじめ頃はちょっとテンションが下がり気味でしたが、最後に完全に挽回。レアティーズとの決闘は涙が出るほど美しかった。「あとは、沈黙。」も、良かった・・・。
吉田鋼太郎さん。クローディアス(ハムレットの叔父・悪役)を演じるのはもう4度目だそうです。さすがでした。クローディアスの長セリフで泣かされたのは初めて。
篠井英介さんのガートルード王妃は、ハムレットの母親であることがクローズアップされていて言ってみれば非常に控えめな演技でした。寝室でのハムレットとの言い争いは本当に母と息子のよう。切なくて良かった。
中村芝のぶさん。着物をはおった和風のオフィーリア。女にしか見えませんでした。正常な時と狂った時の差がちょっと激しかったけれど、私が観たオフィーリアの中で一番美しく、悲しかった。
増沢望さん。レアティーズ役ということで、美形の増沢さんにはぴったりのはずなんですが、このごろ光が足りないんですよねー・・・・。もうひと頑張り。
横田栄司さん。ハムレットの本当の友、ホレイシオを好感度高く演じてくださり、最後にハムレットから遺言を託されたことに説得力がありました。
津嘉山正種さん。ハムレットの父王を含む三役。暖かい父親像を感じられました。その声にしたがって復讐に手を染め、命を落としてしまうハムレットが、デリケートで父親思いの良い息子に見えました。
壤晴彦さん。めちゃくちゃ生き生きしていてコメディー・センスばっちりのポローニアス。最高!
植本潤さん。劇中妃ということで。う~ん・・・地味でしたね。もうちょっと型にはめた演技でも良かったような。
初日はカーテンコールが4回、もちろんスタンディング・オベーション。この後にロンドンでの公演が決まっています。必見!
作=W・シェイクスピア 翻訳=河合祥一郎 演出=ジョナサン・ケント 美術=ポール・ブラウン
出演=野村萬斎/篠井英介/吉田鋼太郎/中村芝のぶ/増沢望/横田栄司/植本潤/大森博/壤晴彦/津嘉山正種/品川徹/大友龍三郎/沢田冬樹/大川浩樹/鈴木豊/廣哲也/朝廣亮二/鍛治直人/松川真也/時田光洋
世田谷パブリックシアター:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/03-2-4-8.html
ホリプロ内『ハムレット』ページ:http://www.horipro.co.jp/hamlet/