shelf(シェルフ)は“作家でなく、また作・演出家でもなく、ただ「演出家」のユニット”だそうです。その演出家・代表は矢野靖人さん。
岸田國士 作の『紙風船』を坪内志郎さん(劇団 新エマニエル夫人)が脚色し、それを矢野靖人さんが構成・演出するという試み。“シム”はシミュレーションのシムだそうです。良いタイトルですね。
男と女の2人芝居でした。原作から連想される複数の物語がランダムに構成されている形式。あるエピソードの途中で突然違うエピソードになったりもします。
ギャラリーの壁面は全て白。床には少々茶色がかった白い布が敷き詰められています。その上に同じく白いランプが数個。シェードは和紙のようなもの。衣裳は材質で遊びつつ、左右非対称なカッティングで、色はやっぱり白。役者が演じる場所は客席と平たくつながっているので、舞台と客席がとても近く、劇場というよりは白で綴(と)じられた狭い部屋でした。ムードがありますよね。
やりたいと思ったことを全種類、だけど少しずつ取り入れていらっしゃる感じでした。舞台空間も衣裳もしかり。突然脈絡なく笑ったり歌ったり。ライターの火をつけたり消したり。電子ノイズや奇抜な日本の曲を流したり。残念なことに私にとってはほぼ全てがどこかで観たこと、聞いたことのあるものでした。
あと、役者さんの演技が生っぽかったです。口元がゆるい。それが演出意図だとすると私の好みではないですね。あの密室で少人数の観客と一緒に作り出して共有するのは、お友達感覚のぬるさではなく、その痛さを心地よいと感じるほどの緊張感であって欲しかった。まあこれは相性の問題でもありますが。
終演後に矢野さんとお話することができたのですが、作品が私の好みではなかったにしろ、どんどん色んな事にチャレンジしようとしてらっしゃる方のようで、これからが楽しみだなと思いました。
京さんによる宣伝美術(チラシ)が良かったです。チラシのビジュアルと文字情報だけで行こうかな、と思っていました。
出演=関根好香/ 岡田宗介
原作=岸田國士「紙風船」 戯曲=岸田國士/坪内志郎(劇団 新エマニエル夫人) 構成・演出=矢野靖人 音=伊藤由紀子 (cokiyu web) 照明=鈴村淳 装置・美術=柏井勇魚(lt-s)/斎田創 (突貫屋) 衣装=太田家世(自由創作師) 写真=伊藤雅章 宣伝美術=京 制作=日和庵 製作=shelf