『歌舞伎四百年八月納涼歌舞伎』第三部「どんつく/野田版 鼠小僧」を拝見いたしました。
野田秀樹さんが歌舞伎の新作を作・演出されるのは2001年の『研辰の討たれ』につづき二度目です。
少々ネタバレします。
鼠小僧(ねずみこぞう)というと、江戸時代の有名な盗っ人。悪徳大名から金を盗み、それを貧しい人々に撒いたと言われています。野田版では、金のことしか頭にないドケチのかんおけ職人の三太(さんた)があれよあれよという間に盗っ人になっていた、という設定で進みます。日本伝統芸能界の超豪華キャストによるドタバタ・ハートウォーミング・コメディー歌舞伎。
すごく込み入った展開なのに頭が混乱することは全くなく、最後まで没頭したまま楽しませていただきました。笑って、ハラハラして、感心して、最後は泣かされました。あらゆる種類の遊びをふんだんに盛り込みつつ、お約束も見事に果たし、野田さんの温かいメッセージも添えられました。
「これだけは忘れずに生きていくんだ。お前のことを、いつも誰かが見ているよ。」(セリフは完全に正確ではありません。)
客席もバカ受けだし・・・非の打ち所が無いな~・・・・。NODA MAP『オイル』のように社会的な意味での衝撃はありませんが、大人も子供も楽しめるエンターテイメント舞台作品としてはこういうのを完璧っていうのかも・・・。(伝統芸能としての歌舞伎を楽しむのが目的だとすると、それにはそぐわないです)
美術が堀尾幸男さん、照明が勝柴次朗さん、衣装がひびのこづえさん。いつもの野田作品メンバーです。おた福の面が描いてある羽織りの下に、般若の面が描いてある着物を着ているのは面白いです。
中村勘九郎さん。鼠小僧の三太役。コクーン歌舞伎やその他の現代劇でよく拝見しているので勝手に親近感を持って眺めていました。面白おじさんです。やんちゃな男の子です。これからも日本の舞台芸能界でどんどん遊んでもらいたいですね。ありがとう。
坂東三津五郎さん。悪徳・大岡越前役。裃(かみしも)をまとい静かに歩く様が荘厳です。声の抑揚だけで笑わせたり唸らせたり。すごい。
中村福助さん。貞淑な後家ぶった尻軽女役。こんなに早口でまくしたてるお山は初めてでした(笑)。
中村橋之助さん。善人ぶった極悪人役。美形ですよね~。善人も悪人もぴったり。
『どんつく』でイヤホンガイドによる解説が非常に面白かったです。「ここで何を言っているかはわかる必要はないかと存じます。たいしたことはしゃべっていません。」とか言ってくれます(笑)。みどころも的確に教えてくださるので次回もぜひ借りようと思います。
『鼠小僧』はセリフのほぼ全て現代語なのでイヤホンガイドは不要です。むしろ無い方がいいです。声が聞こえづらいし「ここを見逃さないでください。」とかネタバレされちゃうし(笑)。
歌舞伎座 : http://www.kabuki-za.co.jp/
Posted by shinobu at 2003年08月18日 21:04