Innocent Sphere(イノセント・スフィア)は今年のパルテノン多摩演劇フェスティバルで最優秀作品賞、ベストスタッフワーク賞、ベストフォトジェニック賞を受賞した劇団です。
その時セリフほぼゼロで大活躍だった日高勝郎さんが出演されるので足を運びました。
面白かった~っっ!シアターモリエールでこんなに完成度の高い空間は初めてでした。演劇って、こんなに素直に楽しめるものなんだって再確認させられました。信じれば叶う。がんばったら報われる。物語には途方も無く大きくて強い力がある!1の次は2で、2の次には3が待ってるんだと信じられる、子供の頃のきれいな未来を感じさせてくれました。
新宿の地下深くの巨大な穴の中に飛び込んだら、そこは地底人たちの戦場だった。「あぶないと思ったら、いつでも戻ってくるのよ」と脳裏に聞こえる声。はたと気付くとそこはいつもの日常。一体何が起こっているんだ?
ここからネタバレします。
実はそこは弟の心の中、自ら闇に引きこもる弟の病んだ心を癒すために、兄は弟の深層心理へと入って行く・・・。
ストーリーは特に目新しいわけではなく、テーマはいわばありがちな現代の少年の病です。しかもその少年が14歳と来てますからまさにエヴァンゲリオン規格です。でもそれを素直に受け入れさせ、しかも感動させられる説得力のある構成でした。
地上の日常と地下の戦線を何度も行ったり来たりしながら徐々に核心へと迫って行き、近未来SFアクション風から精神世界モノへと変化していくのには、かなり引き込まれます。マイムや殺陣、コンビネーションの動きがとても効果的。そして、配役が良かった。適材適所でした。深層心理下での弟の存在を女優さんが演じられるのはとても良いアイデアですよね。
前回のパル多摩でもそうでしたが、オープニングがものすごくかっこいいです。映像もGOOD。オープニングに映像を使って役者紹介をするのはよくある手法なのですが、気取っていないので嫌味がないんです。ただ「かっこいい」。私は劇団員の方々の心構えの問題だと思うんです。これはオープニングに限らず全てにおいて言えることなのですが、役者に「自分をかっこよく見せたい」という気持ちがあると、表情や動作にそれが表れて、鼻につく演技になります。
だけどイノセント・スフィアの役者さんたちは、ひとつの見せものとして、作品の中の一つのパーツとして存在し、お客様にストーリーと世界観を伝えるために、役柄になりきって、心を込めて演じているんです。演劇の基本をしっかりおさえて、決しておごることなく全力でやりきっているのは非常に好感が持てます。というより感動します。
モリエールの奥行きを存分に利用して遠近感をうまく使った非常に立体的な舞台美術でした。奈落を使うのも見事。取り外し可能の舞台とはいえ、あんなに出はけに多用したらけっこう大変なはず。こだわりを感じます。衣裳もヘアメイクも良いですねー。ビジュアルと機能美の両方が備わっていました。
脚本、美術、音楽、衣裳、ヘアメイク、アクション、演技演出の全てに手抜きがなく、総合的にまとまっていてこの規模の公演としてはほぼ完璧といえる娯楽作品でした。ただ、一つだけ難を言わせてもらうとすると、音楽の種類が多すぎると思います。また、音楽が鳴っている時間が全体的に長いかなーと。特に音で効果を出したい時に目立たないですよね。もったいない。
日高勝郎さん。乙五〇七番(都井)役。悪役が似合いますね~。ギラリと光る目がかっこいい。動きも機敏です。前回の弁慶役より出番が少なくて残念でしたが、存在感がありました。また次回も期待しています。
劇団☆新感線のいのうえひでのりさんが観にいらしていました。なるほど、そういえば新感線と似ているかもしれませんね。でもイノセント・スフィアは、より素朴で素直で真面目な気がするなー。
イノセント・スフィア : http://www.innocentsphere.com/
Posted by shinobu at 2003年10月11日 17:57