1885年初演。「第三舞台」という、今となっては伝説的な劇団の代表作の一つです。イギリスのエジンバラ演劇祭でも上演されました。
うーん・・・退屈はしなかったけど、楽しくなかったですね。ミュージカルにする意味があるかどうかを語るより「面白くない」ということに尽きる気がします。
ストーリーが今の時代には合ってないんじゃないかなー。題材がタイムリーすぎて笑えないんですよね。15年前なら「人類が滅亡した後の世界」と言ってもファンタジーに成り得たけど、今はシャレじゃないですからねー。明日そうなるかもしれないっていうリアルなものですから。オープニングでいきなり「テロ」とか「爆弾」とか「放射能」の歌を歌うなんて、恐いですよ。現実が襲ってきてミュージカルの夢の世界へなんて全く行けませんでした。
あと、ストーリー展開の重要なポイントにクスリ(麻薬・覚せい剤のたぐい)が出てくるのはもうねー・・・やり尽くされてますからねー・・・。80年代は良かったかもしれないけどもう21世紀ですから。役名もちょっとね。「電通太郎」とか悲しくなりますよね。
作・演出・作詞は鴻上尚史さん。「みんなが大好きだったあの作品がミュージカルになって帰って来たよ!!」と、高らかに叫んでいるような演出でした。それって内輪ウケですよね。私は冷めちゃいました。そもそも、ものすごく暗い話をミュージカルにすること自体がかなりの冒険なわけです。歌と音楽と踊りを加えて、アイドル芝居にして、見た目もパーっと派手にして、笑えるネタも入れて、ストーリーの質も高くして、それで常連の演劇ファンと一般客の両方にウケる作品にする、なんてちょっと欲張りすぎじゃないかな。結果、何もかもが散漫な作品になってしまっていたように思います。
衣裳と美術が蛍光色でビッカビカでした。ドぎつい虹色や目がチカチカしちゃう色あわせが大きな舞台全面に。出てくる小道具などもギラギラしていて、キッチュでもなくカワイくもなかった。美術は松井るみさんだし衣裳は原まさみさんだし、二人とも上質なストレートプレイ等もやりつくしている方々ですから、意図的にやってるんですよね?鴻上さんの好みってこういう系統なの??・・・って確かめたくなるぐらい悪趣味でした。オープニングの着ぐるみが特につらかった。
そして、その広い舞台が埋まらないんです。空洞でした。私が勝手に想像するに、鴻上さんの作りたい世界がちゃんと役者&スタッフに伝わっていないじゃないかなー。役者さんたち自身がこの作品が面白いのかどうか不安になっている感じがしました。歌が始まる瞬間に居心地が悪いことも多かったですし。
芸能人の舞台作品にありがちなネタが多かったです。キャイ~ンの天野さんが出ているから「キャイ~ン」ポーズとかね。色んな人が何度もやってました。客席からは笑い声が聞こえましたが、こんなにも込み入ったハードなストーリーなんだし、私としてはそういうノリはやめる方向に持って行ってもらいたかったです。
天野ひろゆきさん(キャイ~ン)。声がきれい!歌がうまい!純名りささんとのデュエット、風花舞さんとのデュエットがとても良かった。
辺見えみりさん。ハスキー・ボイスが素敵。お色気満載の歌が一番良かったです。
橋本さとしさんと京晋佑さん。がんばり過ぎで引いちゃいました。他のメンツを盛り上げようとハッスルされていたのかな。
大高洋夫さん。これに出るために『夢の泪』に出なかったのかしら?だったらちょっと悲しい。
私は初日に拝見いたしました。もう2週間は経ってますから内容がブラッシュアップされている可能性大です。
サードステージ : http://www.thirdstage.com/
ホリプロ内公演公式サイト : http://www.horipro.co.jp/tenshi/