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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年12月30日

camp.03 UNIT 年末公演 『12.27(イチ・ニ・ニ・ナナ)』12/27新宿サンモールスタジオ

短編二人芝居の二本立てです。
camp.03(キャンプ・ゼロサン) というのは「しのぶの観劇掲示板」発祥の地でございます。お世話なっているお友達が出演されるので観に行きました。

Part.1『休日の午後』(岸田國士 原作『紙風船』) 西村晋介 vs 洪明花 
 ある若夫婦の日曜日の午後の会話。セリフも設定も現代風にアレンジされていまして、「わお、これってまさに私達夫婦と同じ!!」と、自分のことのように観ていたお客様が多かったんじゃないかな。観ている方がテレくさくなるぐらいぴったりフィット。目の前で友達がデートしていて、ちょっと本音トークしていて、のろけて・・・っていう感じ。う~、テレる。

 お芝居の内容はかなりあっさりでした。私としては『紙風船』はもっと深みとクセのある方向が好みです。
 部屋の中ではなく公園のベンチで話す設定に変更されていましたが、開放感があって良かったです。

Part.2『いかけしごむ』(別役実 作) 城和哲 vs 吉廣貫一 + 野村宗平  
 面白い脚本でした。さすが別役さんの作品ですね。不条理で、深くて。ちょっとコミカルなんだけどグロテスクで本格的ホラー。だから、ひとつひとつの言葉をもっと細かく味わいたかったです。サラリーマン役(城和哲さん)の方の演技がおぼつかない様子でした。

camp.03内『12.27』 : http://www.camp03.pos.to/info/1227.htm

Posted by shinobu at 23:01

2003年12月29日

NYLON100℃『ハルディン・ホテル』11/7-30本多劇場

 休憩10分込みで3時間10分ありました。いっぱい笑ったし最後はほんわか泣けたし、長かったけど観に行って良かったです。でもさすがに最後の30分はほとんど朦朧としてましたけど。疲れちゃって。

 役者さんが上手だからこんな長時間でも持つんだと思います。一つ一つ丁寧に笑わせてくれるし、え?と考えさせてくれるし。

 映像が良かった~。今まで私が観たナイロンのオープニングの中でダントツNo.1。役者紹介を映像でやるのはどこの劇団でもよくやるので簡単に比較できちゃうんですが、本当に心が温かくなるオープニングでした。音楽も絵も好き。

 前半にホテルがオープンした10年前のある1日を描き、後半に現在(10年後)のホテルを描きます。時が経つと人間ってみんな変わっています。だけど昔感じた本物の感動や恋のときめきは、今でも鮮やかに心に残って光り続けているんですよね。それを忘れないでいれば人間は生けていけるんだと思います。
 作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチさんはすごい人だと思います。これほど新作をたくさん書かれていても(本多劇場、明治座、青山劇場など)ハズレがすごく少ないですよね。来年に新作『カメレオンズ・リップ』で初のシアターコクーン進出ということで、とても楽しみです。

好きだったネタ:
 とげ抜きの代わりに手に持っていたヌイグルミのような物体。ぶっとび。体ごと爆笑して涙出た。
 仕掛けのある階段。1回だけで良かったですが。

ナイロン100℃のHP : http://www.sillywalk.com/nylon/

Posted by shinobu at 16:31

2003年12月28日

IQ5000『TWO DASH』12/17-21アイピット目白

腹筋善之介さんの作・演出です。

 阪神大震災で全壊状態になったアパートで昔話をしているという設定。場所はほぼ同じで時代の違う3つの世界が現れます。第二次世界大戦後の日本を復興へと導いた、とあるアパートに住む若者たちの青春と、源平の合戦中の源義経&弁慶とその仲間たちの攻防とが、震災で避難している女性たちの語りの中でそれぞれの結末へと進みます。

 3つの世界がほぼ交互に現れるのがつまらなかったです。場面が転換するだけでその3つが混ざり合うシーンがラスト近辺にしかありませんでした。もっともっと交錯して、互いに入り混じって、登場人物が重複したりしてくれないと何種類もの話を創る意味が薄れると思います。

 転換に使っていた柵のようなものが効果的でした。ぱたぱたと畳んだり振り回したり、躍動感のある転換でおおおっとびっくりしたりしました。でも、あれだけだとちょっと飽きちゃいますね。

 衣装デザインが北迫秀明さん(キタサコ製作所)なので観に行きました。今回はスポーティーにまとまっていましたね。戦後すぐのアパートの住民たちは白やベージュ系で統一した可愛いらしくてファンタジックな雰囲気。義経&弁慶一行はスウェットの形と生地に、侍の鎧のテイストを加えたものでした。袖の裏側が赤色なのが素敵。

 腹筋善之介さんの出番がほぼナシ(と言える状態)で、とても寂しかったです。前説がキュートだった。やっぱりパワーマイムが観たいです。来期の新国立劇場に出演されますね。すごく楽しみです。
 役者さんで一番良かったのはやっぱり猿飛佐助さん(ベターポーヅ)。面白いです。残念ながら他の役者さんはほぼ全員みるところがなかったですね。

アーモンド・アイ : http://www.almondeye.com/index.html

Posted by shinobu at 17:18

2003年12月21日

演為(エンタメ)『シカカノロココ』12/12-14パンプルムス

お世話になっている方が座付き制作をされているのでお邪魔しました。旗揚げ公演なんですね。

 起承転結のあるストーリーもので1時間50分ぐらいありましたかね。ものすごい傑作は別として、どんなお芝居でも1時間半にまとまっていればだいたい気持ちよく帰れます。私的感情を殺ぎ落とせばお客様フレンドリーなお芝居になるので、そのヘンは観客として声高に言いたいところです。

 江戸時代なのか室町時代なのか、とにかく着物が日常着で稲作を営む人が国民の大半だった時代の日本が舞台でした。学生の旗揚げ公演でこういう設定を選ぶ事に驚きます。現代ものにすれば演技も衣装も簡単だったのでは?とか思うのは私だけなのかなー。昔観たくろいぬパレード『欲動物』@中野ザ・ポケットも農民のお話でしたが、かなりつらかったです。踊るシーンが何度かありましたが、設定として無理があったんじゃないかなぁ。気持ち良い転換につながったこともありましたが必然性を感じられません。
 災いと争いの違いに言及し、反戦ものにつながったのは時代を反映していますね。日本人なんだなーとしみじみ感じ入り、また、若い人も戦争について敏感に感じ取っているんだなと思いました。
 ちゃんと役者さんの力で笑いを取れているところに、その説明ゼリフが後から付け足されるのはもったいなかったです。

 役者さんは・・・初めて舞台に立ったんだろうな~って感じる状態でした。舞台を見ていられないです。恥ずかしくなってうつむいてしまいます。そして、私は眠りに落ちていく・・・。クライマックスは、照明がきれいで音楽も大胆に流れたからか、役者さんも堂々と演技されるようになりました。そこは見ていられましたね。

 前売り1000円の旗揚げ公演ということを考慮すれば、あの舞台美術(菅原あやさん)はなかなか良かったと思います。衣装は・・・手作り感がにじみ出ていましたが、面を被るなどの工夫が見られて好感が持てました。
 パンプルムスってあの規模にしては音響(スピーカー?)が良いですね。聞きほれるほどいい音が出ていました。

演為 : http://page.freett.com/entamehp/index.htm

Posted by shinobu at 18:05

ホリプロ『リチャードⅢ』12/5-28 日生劇場

シェイクスピアの作品です。蜷川幸雄さん演出で市村正親さん主演の『リチャードⅢ』は再演です。
   
 ものすごくわかりやすい娯楽作品でした。日生劇場に市村さん、夏木マリさん、香寿たつきさんが出ていて客席はマダムがいっぱい。年末の同窓会で「あーら奥様お久しぶりぃ♪」みたいな。

 『リチャードⅢ』というと、ものすごい(論理的には支離滅裂な)口説き文句で、自分が殺した男の妻(香寿たつき)を妻にしたり、自分が殺した少年たちの母親(夏木マリ)をうまく説き伏せたり、普通ならありえない展開に持っていく話術が見所なんですよね。なのに市村さんと夏木さんとのやりとりだけはかろうじて見るところがありましたが、他はてんでダメでした。全く説得力なし。市村さんはがんばっているんだけど、それを受ける役者さんたちがほぼ全員弱いんです。会話が成立しないんですよね。
 そして、リチャードの母親役(東恵美子さん)の下手なこと!驚くほどマジ下手でした。自分が演じている役柄の気持ちなんて全くわかっていない様子。棒読みならまだしもヘンにわかったようなしゃべり方をするからまた見苦しい。更にリチャードが殺した先王の妃(だったかな?)マーガレット役(松下砂稚子さん)もひどかった。狂った役なのに全然狂ってないし。朗々と老女っぽくしゃべるだけ。香寿たつきさんもダメでしたねぇ。夫を殺されたのにリチャードにほだされる、という展開に全く説得力がありませんでした。
 素敵だなーと思ったのはリチャードの兄役の高橋長英さん。声が本当にきれい。かつらがお似合いでしたね。最初に利用されて裏切られる部下役の瑳川哲朗さんもいつも通り安心できる存在でした。

 オープニングはインパクトがありました。格子のパネルがそびえたつ、がらーんとした舞台に突然落ちてくる馬や牛の死体。花束。「ズシン!」「ボスっ!」等のものすごい音でした。そこにひっそりたたずむリチャード。かっこいいっ。でもラストはおなじみ蜷川メソッドですよ。『ハムレット』と同様、悪い王を倒して良い王が国を治めるようになってめでたしめでたし、というのを「その良い王」もやっぱり悪者で、人民の生活はまたもや暗雲が立ち込める・・・という展開にしちゃうんだよね。もう免疫ができました。

 リチャードが死ぬ時、兄が死んだのと同じように仰向けに倒れたのが良かった。わざわざ言うこともないんですが、そういうところが非常にわかりやすく、娯楽作品として成立しているんですよね。

 こんなに好き勝手に言っていますが、衣装(小峰リリーさん)が本当に素晴らしかったです!特にリチャード(市村正親)がはおっている赤いマントは絶品です。しなやかで、艶があって、大きいのにすごく軽そうで、ちょっと透け感があって、同じ布だけでのっぺらぼうに作っているのではなく、途中で違う織りも入っているのがまたおしゃれ。マントのはためき加減もしっかり計算されていますね。市村さんがふわっとなびかせる度にその布の気高さに見とれました。

 市村正親さん。足が悪いせむし男の役なのでずっとびっこを引いてらっしゃいました。何をやっても上手い。必ず良いポイントでユーモアを入れてくださいます。どんなお芝居でも市村さんを観られたからいいかなって、終演後には思えます。でも、今回はなー・・・・。

 実は、隣の席がゲイのカップルだったのが何よりも衝撃的でした。うーん素敵なデートね~。

日生劇場内『リチャードⅢ』 : http://www.nissaytheatre.or.jp/paf/main.html
ホリプロ内『リチャードⅢ』 : http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=32

Posted by shinobu at 17:58

阿佐ヶ谷スパイダース『ともだちが来た』12/17-30ザ・スズナリ

阿佐ヶ谷スパイダースは、長塚圭史さん(作・演出・役者)、中山祐一朗さん(役者)、伊達暁さん(役者)の3人組です。いつもは長塚さんの作・演出で、いろんな客演の役者さんを集めて公演されるのですが、今回は役者の中山さんが演出で、長塚さんと伊達さんにによる二人芝居でした。面白い企画だなーと思いました。

 ”私(長塚)”のところに”友(伊達)”が突然たずねてきた。その2人が一人暮らしの狭い和室で語らうだけの2時間。男二人芝居です。

緊張感が最後まで途切れない、上質の二人芝居でした。若い男優さん2人と同じく若い演出家とで作り上げたという点からしても素晴らしいことだなーと思います。阿佐スパというと、比較的若者向けで、基本的にグロテスク&ブラックで、乾いたギャグ満載の、ちょっぴり切なく悲しげで、だけど一貫してドライなストーリーもの、という作風だと思っていましたので(私の勝手な感想です)、それを全く裏切る作品になっていました。もちろんギャグもありましたけど、静かにツーっと、一本の重たい線が通っている感じで、セリフもかなり観念的でしめっぽいです。こういう作品をやるってことが非常に個性的だと思いました。企画としてすごい。初めて阿佐スパを観た人は「こんなことをやる若い男の人達なのか!」と感動することでしょう。いや、好みに合わない人の方が多いかもしれません。それほどクセのある公演だと思います。

 私が一番感動したのは、私”のところに”友”が来てから初めて”友”が”私”の体に触ったシーンです。物語の始まりの方で、まだ”友”が何者なのかが観客にわかる前です。”友”が「気持ちいい?」と聞くと”私”はどぎまぎしながらも「・・き、気持ちいいよ」と答えます。その後で”友”が「俺はそうじゃない・・・ペッタンコだから(等)。・・・」と、静かに本音を吐露するくだりで涙がこぼれました。「ああ、この自転車に乗ってきた少年(”友”)は、自分に、人間に、絶望しちゃったんだな。もう昔みたいにはコミュニケーションできないんだな」って感じて、そのどん底の悲しみと、それに対峙する”友”と”私”に共感したんです。そう感じる具体的理由がちゃんとあるのですが、その設定が判明する前に、会話だけで彼の気持ちが感じられたのは、伊達さんの演技が素晴らしかったからだと思います。

 麦茶が何度も無造作にたたみの上に置かれます。いつこぼすかと観ている方がハラハラするんです。静かな2人芝居ですから、そういうスリルを要所要所に入れる演出(中山)は巧いし、かっこいいなと思いました。

 舞台美術(加藤ちかさん)は仕掛けや作りなどは本当にしっかりしていました。清潔感があります。でも大学生の一人暮しの部屋には思えなかったな~。少しだけ広すぎた感じ。自転車で走ることを考えるとああでなきゃだめかもしれないけど、あの畳の組み方は不自然じゃないのかなー。いたしかたないことかもしれませんが。柿の木がリアルで良かった。
 プロジェクター映像で部屋が海の中になるシーンで、二人が入っている押入れには明るい照明が当てられて、海の中に浮かぶコックピットのようになっていたのはSF感が増してきれいでした。でも、海の映像がリアル過ぎた気がします。想像できる程度で止めてもらえる方が私好み。

 脚本は劇団八時半の鈴江俊郎さん。1月にスズナリでの公演を控えてらっしゃいます。新国立劇場演劇の来期のレパートリーにも入ってらっしゃるようです。
 
 長塚圭史さん。”私”役。高校の剣道部室で女の子を口説くシーンは絶品。だから役者の長塚さんが大好きだっ!でも全般的には伊達さんと比べるとちょっと詰めが甘いように感じました。私が観た回が本調子じゃなかったのかもしれません。
 伊達暁さん。”友”役。決まった演技(演出通りの動き)を次々と着実にこなしていくプロフェッショナル。脚本解釈が深いと思います。声がいい。セリフがいい。瞳が奥だけ重たく光っている。目が離せない。

 『ともだちが来た』というタイトル、良いなぁとしみじみ感じます。そうなんだよな。ともだちが来てくれたんだよな。

ネタバレ感想を少し


 思いつくままに細かいところを書いてみます。

 ”友”が訪ねて来る前に”私”が長い時間たたみの部屋で独り言を言っている。はっと気が向いて、部屋の出入り口のドアを空けると、そこには自転車を手で引いた”友”が立っている。そのシーンで、客席からは自転車のハンドルと手ぐらいしか見えないのが良かった。

 「おまえが来てくれて嬉しいよ」と”私”は間を空けて3度ぐらい言います。それがいい。本当にそう思っているんだよって”友”に伝えたい気持ちが伝わります。

 「死んで何を確かめたかったんだ?」というセリフが、”友”が「死んでいる」と観客にわかる前に発せられるのが良かった。

 自転車の籠の中の風船が膨らむのはすごい。あれに服を着せるのが、またすごい。ペッタンコだ。本当にペッタンコだ。

 「忘れてほしくないんだよ、お前に」は、本来なら最も心を打つセリフかもしれないのですが、私はやっぱり「ぺったんこ」が一番心にキてたので、そこは普通に通りすぎてしまいました。(セリフは完全に正確ではありません)

 なぜ”友”が海に飛び込むことを選んだのかについて”私”が答えるシーン。「ピカっと光るやつ、待ってるやつ・・・」など、同じような言葉を怒涛のように浴びせ掛けるのですが、ちょっと流れちゃっていた気がしました。あれが全部伝わっていたら、死んでしまった”友”だけでなく”私”の孤独も浮かび上がってきたんじゃないかなーと思います。

 阿佐ヶ谷スパイダース : http://www.spiders.jp/

Posted by shinobu at 17:28

2003年12月20日

騒動舎『犬みたいな格好』12/19-21スタジオはるか

 騒動舎(そうどうしゃ)というのは明治大学の劇団です。オッホもそもそもはここだったとか。第125回公演っていうのが歴史を感じます。

 はぁ。大学生、はじけてるね~って思いました。学生だからこそ出来る、そして許されるってことで。若いって美しい。

 ギャグが多かったです。途中で突然関係ないコントが始まったりします。珍しく私は笑ってましたね。面白かったんだなー、今思うと。あと、エロネタが異常に多い。まあこれも若さってことで。
 ちゃんと顛末があるストーリーものなんですよ。ある倒錯した家族のお話でした。お母さん役の女の子がピンク色のショートヘアで、右横だけ剃り上げているんです。しかも眉が薄くてマスカラが濃くて真っ黒で・・・どう見てもパンクなんです。そのキャスティングが良かったな~。ラストにその子が天使になって出てきたのも良かった。

 男の子3人でジョン・レノンの「イマジン」を歌っていました。ただのギャグシーンなんだけど、歌は長く歌ってましたね。同じく学生劇団の演為(えんため)『シカカノロココ』でも反戦の意志が入っていましたし、大竹しのぶさんもジョン・レノンを歌っていました。なんか、共有してる。

 映像のセンスがあるなーと思いました。絵の構図も音楽との相性も良かった。私が学生だった頃はこんなにきれいには撮れなかったな。今はやっぱりデジタルですねぇ。TVみたいに画像がきれい。

 仮タイトルが面白かった。『ミック・ジャガーVS羽生(仮)~ナイフみたいなクリスマスストーリー~』。このタイトルのコント集だったら私、観たいね。でも内容が犬の話だったから、このお芝居にはダメですよね。残念。

 カーテンコールで次期舎長(しゃちょう)の紹介(おひろめ)があったのですが、その男の子、全裸になってました。そういう劇団らしいとは聞いていましたが、あんなに普通にだらりとやられると、冷静になっちゃいますね。
 「こうやって”脱ぐ”文化というのはサラリーマンにも受け継がれていくんだなー」と感慨深く見ていました。いえいえ、私は男でも女でも生の裸は苦手なのでちゃんと正視するのは無理でしたよ(笑)。『業音』のようにかっこいい演出だったら大歓迎です。

 騒動舎 : http://sds.u-tokyo.com/

Posted by shinobu at 23:45

2003年12月19日

大竹しのぶ一人舞台『POP?』曲目とコメント等

 大竹しのぶさんが歌われた歌、およびそれについての彼女のコメントをご紹介します。私が覚えているものだけですので網羅はしていませんし、言葉は一つ一つ正確ではありません。ニュアンスで汲み取ったものですのでお許しください。また、コメントは歌が始まる前だったり後だったりします。それらしく想像してみてください。

 オープニングは非常にぬるい(笑)バンドの生演奏で始まりました。一曲終わったあたりで大竹さんが登場。黒いキュートなツーピース(おそらくKeitaMaruyamaデザイン)にいつものショートカットヘア。「緊張してます・・・・皆さんを緊張させちゃってすみません」と何度もおっしゃいました。2回ほど歌詞も忘れたしね(笑)。かわいい。

「コーヒールンバ」

「キャンディー」
 ・本当に最近、恋していないんです。隠してるわけじゃなくて。何かちょっとでもあればさわりだけでもお話できるんですが、デートとかも、もう何年も・・・。
 ・どうしてみんな若い子が好きなのかしら?まあ、私もどちらかというと若い方が・・・(笑)。
 ・娘(いまるちゃん)に「お母さん、もうヤバイよ」とか言われていて。
 ・だんだんと”不吉な予感”が”不安”になってきて、もう”精神世界”に行くしかないという所まで・・・(笑)。
 ・せめて歌の中だけでも恋していたいと思います。(そして次の歌へ↓)

「ガラスの林檎」(松田聖子)

「悪女」(中島みゆき)
 ・「人間をかえせ」という広島の原爆投下直後のドキュメンタリー映画を娘の中学校で上映したのですが(そのナレーションを私がしています。20歳のころだったかな)、先生が途中でやめてしまいました。「みんなこの後も見たい?」と生徒に聞き、「きもーい」「見たくなーい」と生徒が言ったから、その場でお終い。それを娘と2人で怒って怒って、「そんなの間違ってる!」と学校に乗り込んで言いに行ったりしました。・・・等。
 ・でも、私は自分を正義の味方のように思っていたんですね。「私はこう思います」と話せば良かったのに。(そして次の歌へ↓)

「花」
 ・四柱推命とかの占いで、息子は「山」、娘は「海」、私は・・・、「鉄」でした(笑)。
 ↑歌い始めで失敗して、もう一度MCからやり直されました。そこでもちゃんと笑いを取っていました。

~お色直し~ 白いセクシーなドレスへ 

「恋」

「Over the Rainbow」
 ・『こんばんは』というタイトルの映画。夜間中学校のお話。映画『学校』のモデルになった自主映画。70歳とか80歳のおじいさん、おばあさんが”This is a pen”から英語を勉強している。私もがんばらなきゃ。
 ・妹が私同様に離婚しまして。すごく元気がないんです。不幸なんです。だけど彼女が介護している、70歳ぐらいの半分ぐらいボケた、元・占い師のおばあさんに「いいことあるよ」って言われたの(笑)。
 ・野田さんとは4年ぐらい一緒に暮らしていたんですが、いまるちゃんが幼稚園の時、父の日とかにお父さんの似顔絵とか書きますよね?それで「お父さんの絵、描いてきた!」って言って帰ってきたんです。私は「あ、さんまさんの絵を描いただろうなー・・・(きまずい)」と思ったし、野田さんもそう思っていたみたいなんだけど、なんと、野田さんの絵だったんですよ。しかもいまるちゃんは野田さんに「ホラ!」って言って(いかにも「しょうがねーからよー、書いてやったゾっ♪」みたいな態度で)渡して(笑)。それで野田さんものすごく喜んで、別れちゃったけど絵だけは持っていきました(笑)。

「ハッピー・クリスマス」(ジョン・レノン)日本語訳バージョン
 ・ジョン・レノンの歌はこれから何千年たっても歌われると思います。 ♪ 戦争は終わる 今すぐに みんなの力で ♪
 ・息子が幼稚園児だった頃、湾岸戦争の生々しい映像がTVで流れているのをじーっと見て、彼は言いました。「神様は(キリスト教系の幼稚園でした)人間の手を戦争をするために作ったんじゃないよね。科学ではなく魔法が発達したら良かったのに」。本当にその通りだと思いました。そんな彼も今の将来の夢は「金持ちになること」ですが(笑)。

「見上げてごらん」

~アンコール~ チャイナドレス風の衣装に着替えて

「(?)」←有名な歌なんですがタイトルを忘れました。

「明日があるさ」 この曲で終演。


谷川俊太郎の詩集『女に』より、リーディング
 音楽とのコラボレーションでした。なかなか美しい詩で、崇高な男女の愛の物語でした。
 ・でも、別れちゃったんですけどね(谷川さんご夫婦)。
  昔なら「あんなに愛し合ってたくせに」と思っていましたが、今は「それも人生!」と思います。

『サンタクロースっているんでしょうか?』という本。
 ・「サンタクロースはいるんですか?」という9歳の少女の投稿文に対して社説で返事をした新聞記者のお話。
 ・目に見えないものが本当に大切なんだなーと思います。

『さらばじゃ』
 娘が去年の夏休みに、”My name is Imaru.””I'm thirteen years old.”しか言えない状態でカナダに2週間ホームステイに行った時。成田まで親友が送っていったんだけど、私の心配などよそに、全く寂しそうになどせず「さらばじゃ!」と言って旅立ちました。あの時、私は「子供に追いてかれたー!」と思いました。先のことしか頭にない。どうなってもいいっていう覚悟ですよね(笑)。

私の今年の出来事ベスト1&2
 1.ギリシアに行って世界最古の(2500年前の)劇場に行ったこと
 2.三重苦の9歳の男の子に会ったこと

・これからもいっぱい学んで、目的を持って、生きていきたいなって心から思います。
・なぜ歌を歌うかというと・・・歌って、直接じゃないですか。私自身。
・演技をしている私ではなくて、そのままの私を見て欲しいし、話したい。話したがりなんです(笑)。
・私は、今、ここにいる(舞台に立って、あなたたちと一緒にいる)ことが、一番幸せです。本当に来てくださってありがとう。
・子供とか夫とかどうでもいいんです。私(客席)が、私(大竹さん自身)が、幸せになりましょう!


 通路で歌っていた大竹さんに(しかもお尻に)触ったおばさんがいたのですが、大竹さんはわざわざその人のところに戻ってきてその人に手を差し伸べ、握手をされました。なんて心が広いんだ。
 スパイラルホールは200~300人ぐらい入るんだと思うのですが、大竹さんはその一人一人と対等に、平等に会話をされていました。私も大竹さんと直接サシで話をした気持ちです。こんな言い方えらそうなのですが「イイヤツだな」って思いました。私も一緒にがんばろうって思いました。
 
SIS COMPANY : http://www.siscompany.com/03produce/05pop/index.htm
スパイラルホール : http://www.spiral.co.jp/

Posted by shinobu at 18:41

2003年12月18日

大竹しのぶ一人舞台『POP?』12/18-24スパイラルホール

スケジュールに「大竹しのぶ一人芝居」と書いていましたが「一人舞台」の間違いでした。ごめんなさい。

 私は大竹しのぶさんという女優さんが苦手だったため、こまつ座『太鼓たたいて笛ふいて』、蜷川演出『欲望という名の電車』&『エレクトラ』を見逃した人間でした(それで読売演劇大賞とか受賞されているので後悔もしましたが)。
 だけど野田秀樹さん作・演出による一人芝居『売り言葉』が面白かったために(会場も同じくスパイラルなので)今回は観に行くことにしたのですが、なんと、お芝居じゃなかったんです。大竹さんが一人で歌ったり詩の朗読(リーディング)をしたりする、言ってみれば”大竹しのぶリサイタル”でした。

 そして・・・・ファンになっちゃいましたね~・・・・。女優さんとしてではなく、一人の女性として。心から応援したくなってしまいました。やはり「女優」という生き物でらっしゃることには変わりないのですが(笑)、素直で正直で負けず嫌いで、愛されることを心から求めている女性だと感じたからです。そしてそれを恐れずに告白する。かっこいいじゃないですかっ。「しゃべりたがり」って自らおっしゃってましたけど(笑)。

 この「舞台」を観終わったばかりの、今の私の気持ちを照れくさいながらも文章にするとすると↓
 『あなたの「愛されたい気持ち」は、あなたの私(達)への愛として伝わりました。私もあなたに愛されたいと願い、そして愛されたと感じています。これからも一緒にがんばって、生きていきましょう!』
 という感じです。はは、はずかしい・・・。

 ネタバレ感想に歌われた曲目や彼女の私生活(?)のお話を書こうと思います。

SIS COMPANY : http://www.siscompany.com/03produce/05pop/index.htm
スパイラルホール : http://www.spiral.co.jp/

Posted by shinobu at 22:41

2003年12月17日

新国立劇場バレエ『シンデレラ』2003年12/12-14, 2004年1/9-12新国立劇場オペラ劇場

 誰もが知っているペローの童話『シンデレラ』のバレエです。フレデリック・アシュトン振付版。

 装置と衣装がものすごく豪華で、それだけでも幸せな気持ちでした。と思ったらなるほど、装置・衣裳製作は英国ロイヤルバレエなんですね。本場そのものというわけです。

 基本的にリアルな絵が描かれた紗幕が場面を現す背景画になっているのですが、12時の鐘が鳴る演出が特にかっこよかったです。大きな時計が描かれた透き通る幕の後ろを、シンデレラがおののき走り回りまわるのに、こっちらもどぎまぎ。
 ガラスの靴の持ち主を探しまわる王子が、やっとシンデレラとめぐり合い、二人が互いを愛おしく見つめ合うのに感動。「ああ、あなたこそあの夜の姫君!」とセリフが聞こえるように感じるほどリアルでした。王道に完全にハマちゃいましたね。

 ただ、クラシック・バレエって実は私、ちょっぴり苦手でして・・・けっこう寝ちゃうんですよね~。ま、それでもあの世界を味わえただけで大満足です。

 「マクドナルド・スペシャルナイト」の日はなんとチケット代が半額なんですよ!これはクリスマス・シーズンの恒例行事にしたいですね。

新国立劇場 : http://www.nntt.jac.go.jp/

Posted by shinobu at 15:02

ホリプロ『法王庁の避妊法』12/11-28世田谷パブリックシアター

 うわーーーーーんっっ!
 とにかくボロボロ大泣き!
 脚本が素晴らしい!
 演出も楽しくて優しい!
 役者さんも素敵!

 チケットが余っているなんてもったいなさ過ぎです.
 皆さん、どうか観に行ってください!!

 自転車キンクリートの飯島早苗さんと鈴木裕美さんの共同脚本で、鈴木裕美さん演出です。94年初演で今回がおそらく2度目の再演ですが、他の劇団(劇団NLTなど)でもどんどん上演されている傑作戯曲です。

 作品の深い優しさに心の底から癒されました。物語の世界およびそれを作り上げている人、物、音など全てが無条件の愛に満ちているんです。井上ひさし作品にちょっと似ている雰囲気です。

 舞台は荻野(オギノ)先生の産婦人科。さまざまな悩み、考えを持った患者や医者が来院します。
 「子供ができないからお姑さんにいじめられるの」VS「子供がどんどん生まれてしまって、生活に困っているんです。」
 「子供は神からの授かり物。人が(堕胎で)殺めることは許されない」VS「望まれない子供もいる。そんな子供は生まれてきたらどんなに不幸になることか」
 「排卵日が特定できれば妊娠したいときに妊娠できるし、避妊も可能になる」VS「子供は神様が授けてくださるものなのに、人が作るものだと言うのですか?」

 妊娠、出産は人間の生命の価値についての大テーマです。登場人物一人一人の立場からのっぴきならない意見がバンバン出てきて、いやがおうにも観客は自分に当てはめて考えることになります。科学の進歩によって、人間はどんどんファンタジーの中では生きていられない存在になってきています。そこで自分の気持ちをどう納得させて、これからを生きていくのか。それについての一つの答えを出してくれています。
 また、「先生はどうしてこんな研究を続けているんですか?無謀ですよ。」「なぜって・・・それが謎だからだ。」にも感動。(セリフは正確ではありません。)

 勝村政信さん。オギノ先生。面白かった~。熱かった~。泣けた~・・・。勝村さんに泣かされたのは蜷川演出『マクベス』以来です。ひとめぼれのシーンや排卵日発見のシーンなど、勝村さんだからこそ作り出すことの出来る面白くて感動的な瞬間がいっぱいです。
 稲森いずみさん。オギノ先生の妻。細くて白くてきれい・・・(うっとり)。怒ったり暴れたりするのは今一つ難しかったみたいですね。でも清純でまじめな日本女性をそのまま体現してくださいました。着物姿が美しい!
 横堀悦夫さん。キリスト教徒の医者。『ロンサム・ウエスト』の神父役で注目していたら『パートタイマー・秋子』でもすごいキャラで、そして今回。もうお顔もお名前も覚えました。うまいです。はずさないです。
 西尾まりさん。フェミニスト看護婦。がんばり屋さんの役がいつもぴったりですよね。いつも必死なのが好き。神野三鈴さんみたいに。
 三上市朗さん。要領よく生きたい医者。うまいところで出てきてうまくこなすって感じ。さすがだなーと思いつつ、私は冷めた目でしか見られませんでした。なんか技術ばかりが目立ってしまって。
 西牟田恵さん。妊娠したくない女。どんとこい系おっかさん役。笑わせるところはしっかり。泣かせるところはずっしり。でも美人役の西牟田さんが、私は好きなんです。
 持田真樹さん。妊娠したい女。ストレートでおきゃんな演技が、すがすがしく、可愛らしかったです。ものすごく小さい人なんですね。でも鮮やかに光っていました。

 なんでチケットが売れてないんだろう・・・と友達と話したのですが、結論は「タイトルが悪い」。ほんとえらそうなことですみません。演劇ファンならキャストとスタッフを見ただけですごそうだってわかりますけど、一般の人は『避妊』っていう漢字を見ただけでちょっと引きますよね。私ならそうです。どんなに可愛らしくてロマンチックなチラシビジュアルでも、『避妊法』についてのお芝居を彼氏と観に行くわけには行かないし・・・(笑)。

世田谷パブリックシアターHP内公演情報ページ

Posted by shinobu at 15:02

2003年12月13日

RUP『セブンストーリーズ』12/12-20紀伊国屋サザンシアター

 モーリス・パニッチさんの作品ということで、最近カナダの戯曲が注目されているんですね。『ハイ・ライフ』や『サラ』もそうみたい。『セブンストーリーズ』の原題では"7 stories"。7階という意味と7つのお話という意味が掛けられているんですね。

 2時間弱のお話でしたが、1時間ぐらいは寝ちゃったかも・・・。体調が良くなかったのもありますが、やっぱり退屈だったな~。ものすごいいびきをかいて寝ているおじさんもいました。何しろ展開がないんですよね。だけど最後は・・・・感涙!素敵!!夢を見ました。幻が見えました。
 ビルの7階で飛び降りようとしている男。ベランダのある7つの部屋からそれぞれの住人達が勝手気ままに話しかけてくる。(あとは寝てたのでよくわからない・・・)

 宮田慶子さんの演出は最後に大きな力を発揮しました。ネタバレになるので書きませんが、演劇だからこそできる夢がそこにありました。戯曲だからユーモラスに語ることができる、深刻なテーマも胸を打ちました。
 「鏡を見ればそこには私を閉じ込めている体という牢獄がある。」
 「忘れれば。何もかも忘れれば。今まで自分がやったこと、今の自分の状態。全て忘れれば、飛べる。」(セリフは正確ではありません。)

 舞台装置(加藤ちかさん)がすごかった!!あれで動いたりしてくれたら退屈しなかったと思うんだけど、それでも観られただけでも価値がある美術でした。7階から下を眺める状態が真横から観られるんです。あーうまく言葉では言い表せない~。とにかく一見の価値あり!

 相島一之さん。7階から飛び降りようとしている男の役。死のうとしている男で、ずーっと7階のベランダの枠の外で、いつ飛び降りようかと思いながら住人達と会話を続けます。すごい緊張状態のはずなんだけど、常にどこかユーモラスで可愛いらしいんです。最後の長ゼリフに泣けたなー・・・。相島さんで良かった。
 深浦加奈子さん。おばあさん役。ゆったりとおばあさん口調で話す内容が、味があって面白くて、最後の奇跡へとすんなり飛翔しました。

RUP : http://www.rup.co.jp/index2.html

Posted by shinobu at 14:50

ク・ナウカ『マハーバーラタ~大洋の王子ナラの冒険』11/4-16東京国立博物館東洋館地下1階

宮城聰さんが演出を手がけるク・ナウカ。2人(動く人と話す人)で1役を演じるというスタイルを確立されています。美加理(みかり)さんという高い技術を持った素晴らしい女優さんがいらっしゃって、彼女を観られるだけでも至高の幸せです。

 あぁ楽しかった~・・・感動した~・・・・。
 マハーバーラタってこんなあらすじだったのかー。痛快!自然と顔に笑みが溢れました。体中で感動して何度か泣きました。

 アジア系ムード音楽のような素朴でゆったりとした調べが美術館ロビーに広がりました。もちろん生演奏です。それが突然ケチャのような早いリズムに変わってお芝居の幕開け。ものすごく官能的でした。奥の階段から現れる白装束の役者さんたち。なんと和紙でできた衣裳なんです。

 名君と名高いナラ王は、悪魔に取り付かれたせいで賭け事に夢中になり、あっという間に落ちぶれてしまう。王宮を追い出された王と、けなげにも彼に付いて行った王妃(美加理)は、森の中ではぐれてしまうが、幾多の苦難を乗り越えて二人は再びめぐり合う。
 先がわかっているのにドキドキして、大団円を迎えて涙するという黄金律です。悪魔が去って行くのがあっけらかんとしてて良かったなー。

 「私がかつて慣れ親しんだこの味!」と、その料理を作ったのが夫だとわかるくだりは、なんとも民族性が現れていますよね。味覚って本当に大切。その人の文化そのもの。大切にしなきゃなー。

 「ダイナマイトだよ~」の歌とか、かなりナンセンスな笑いも盛り込まれていました。昔からやってらしたのでしょうけど、新たなク・ナウカの一面を発見した気持ち。デキる人達は何でもデキちゃうってこと。

 美加理さん。無表情なムーバーの役をよく拝見してきましたが、今回はセリフもけっこうしゃべりますし、表情も豊か。目の力や口の開け方など、ものすごく細かい顔の動きで感情をあますところなく表現されていました。和紙の着物をヒョイとつまみ、ぴょーん!とパーカッションを飛び越えるのがキュート。見とれるばかりでした。
 阿部一徳さん。たった一人で弁士状態。感動的です。 

 こんなこと、実現していることが奇跡。見たら誰もが幸せになれる舞台だと思いました。レビューが遅れてすみません。大評判で当日券GETもかなり大変だったとの噂です。

 東京国立博物館の館長さん(であろう方)の挨拶がありました。「平常展入場券つきですので、ぜひまたここ(博物館)にいらしてください!」すごく熱意の有る言葉でしたので、ぜひ行こうと思っています。というか本来なら開場前にゆったりと館内で過ごすのがベストですよねぇ。残念ながら叶わなかったのでまた今度。

ク・ナウカHP : http://www.kunauka.or.jp/

Posted by shinobu at 14:29

流山児★事務所『ハイ・ライフ』12/2-10下北沢ザ・スズナリ

作:リー・マクドゥーガル 訳:吉原豊司
台本・演出:流山児祥 音楽:トムソン・ハイウエイ

 モルヒネ中毒の男たちの4人芝居。
 熱い男たちでした。ものすごい汗とテンション。いい年したいい男達が汗だくで繰り広げる渋いお芝居でした。 

 疲れましたねー・・・。観ている方も大変です。あんなに走って暴れて、殴り合うんだもの。私はそもそもジャンキーの話って好きじゃないんです。恐いし、つらいことが多いから。だから素材として扱っているんだと理解して、他の見所を探すことにしています。

 開場時間に映画「荒馬と女」の映像がずっと流れていました。マリリン・モンローのあまりの美しさにすっかり心を奪われて夢見ごこちになっていると、いきなり映像が消えて、乱暴で騒々しくて殺伐としたお芝居が始まりました。最初はその激しさに身を少々引いていたのですが、慣れてくると腕の良い俳優さんたちのユーモラスな側面に惹かれて楽しくなってきました。そのユーモアは、登場人物はもちろん、私たちのささくれだった心を包み込んでくれました。その暖かさが胸に痛いです。こういうワルのお芝居の、流山児祥さんの演出はしっくり来ますよね。

 黄色い壁と白い床。大きくて古い冷蔵庫。4脚の丸イス。何もない空間に部屋、銀行、車の中などが現れました。みんな役者さんたちの迫真の演技のたまもの。
 ラストに真ん中の床を透き通って照明が当てられていたのがかっこ良かった。

 塩野谷正幸さん。キレたら何をしでかすかわからない(とりあえず殺してしまう)バグ役。『涙の谷、銀河の丘』での生き残り兵士役が強烈な印象だったのですが、今回間近で拝見してその凄さをさらに実感しました。恐いくらいの技術。
 千葉哲也さん。リーダーのディック役。ごっついワル役をやらせると右に出る人がいないですよねー。でもちょっとそういう役ばかりが続いている気がするので他のも観たいです。
 若杉宏二さん。病気もちのドニー役。見事なお間抜けさんでキュートでした。こういう役ははじめて見たなー。クールなワル役ばかりを拝見していたので、そのギャップが素敵だと思いました。
 小川輝晃さん。美形ホモのビリー役。踊る踊る。脚が上がる。ATMできどってしゃべるシーンは笑えました。他の3人に比べるとやっぱりちょっと浅めかなー。

 千葉さんのファンでらっしゃる演劇依存症さんは、何度もご覧になってるのかしら・・・?

流山児★事務所 : http://www.ryuzanji.com/

Posted by shinobu at 14:24

プッチーニ作曲『トスカ』11/9-16新国立劇場オペラ劇場

 『トスカ』はプッチーニがどうしても作曲したくて、ねばり勝ちで手に入れた作品だそうです。

 こんなに情熱的で残酷なお話だとは知りませんでした。今も昔も変わらず、人間の心は熱いと思います。
 私がオペラを観るたびに必ず涙してしまうのは、その素直さからです。特に恋慕う気持ちが素直に歌い上げられると、それだけで感謝の気持ちが湧いてきます。ここは現代の舞台作品とはちょっと違うところですよね。新しいタイプのお芝居を観ている時などは、屈折すればするほど面白くてゾクゾクしたりします。それはそれで感涙もの。

 トスカがスカルピオ(悪徳総統)をナイフで刺し殺し、逃げようとするけれど、スカルピオの死体がストールの上に乗っかってしまって、なかなかストールを引っ張り出せない、という演出は非常に効果的でした。そこで逃げられないまま幕が下りるのも素敵です。

 牢屋から処刑台へと移る演出は新国立のオペラ劇場の装置だからこそ出来る仕組みだとか。演劇で見慣れているので特に気にならなかったのですが、舞台が互い違いに上下するというのはオペラでは珍しいのかも。かっこ良かったです。

 名曲「歌に生き、恋に生き」をやっと生で聴くことができました。あー・・・感涙。これを聴くために観客は待ってたという感じですね。『トスカ』ではソプラノのアリアがこの曲しかないそうです。

 マリア・カラスの一番の当たり役が『トスカ』だとか。

新国立劇場HP : http://www.nntt.jac.go.jp/

Posted by shinobu at 14:22

2003年12月10日

G2プロデュース『止まれない12人』12/10-23スペース・ゼロ

 豪華キャストだからいつも観に行くG2プロデュース。とっても良く出来た娯楽作品で、本当に面白かったです。素直に楽しく拝見いたしました。私が今までに観たG2プロデュース作品の中で一番好きかもしれません。
 満員御礼なんですねー。StudioLifeの役者さんたちが通路の桟敷席にぎっしり座ってらしてびっくり。客席も豪華(笑)。

 劇場の真ん中に舞台装置(列車)があって、2方向から客席に挟まれています。電車が揺れるのを役者さんの演技(と照明&音響)で見せるんですが、皆さんとても息が合った動作で、本当に猛スピードで走っているように見えます。わくわくします。大揺れするときにストロボ照明になるのがすごく良かったなー・・・。ノンストップ・ジェットコースター(トレインですが)・ムービーみたい。

 装置はシュプリーム・エクスプレス『雷神号』という時速500kmで走る未来の列車の一号車両なのですが、その電車自体が本当に良く出来ています。頑丈さをそなえたなめらかな曲線と細かい作り込みに感動。触れるほど近くから見られますから(劇場に出入りする時)、これから観られる方はぜひ車体をじっくりどうぞ。

 あ、肝心のお芝居の内容ですが、後藤ひろひとさんの脚本で何度も再演されている作品ですのでストーリーは保証つきです。キャストも皆さんはまり役。安心してお友達を誘って見に行ける、珍しい(貴重な)娯楽演劇だと思います。

 久ヶ沢徹さん。仮装(○○隊員)をしていた男役。いつもサモ・アリナンズで拝見していて、上手いなーって思っていたんですが、今回とうとう私の中で炸裂!パンフを買うまで久ヶ沢さんだとわかりませんでした。参った。上手すぎる。
 曽世海児さん(StudioLife)。いつものすがすがしく美しい演技。化けると熱くて見とれちゃう。クールでかっこいいです。社内で寝ながら揺れ続けるのもさすがの形式美。

 パンフレットがきれいです。役者さんたちの写真でカレンダーになっています。内容も充実。

G2プロデュースHP : http://www.g2produce.com/

Posted by shinobu at 22:26

2003年12月09日

東京タンバリン『水の庭』12/5-14明石スタジオ

 ある施設のお話。例えば、病院から退院したものの、なかなか社会復帰が出来ない人がしばらく滞在する宿泊施設という設定でした。「病院ではない」と言い張っているけど完全に精神病院のような場所なんです。そこに入居している人達の会話劇。

 ・・・うんざりしちゃいました。どうして、こんなイヤな感情ばかりを大々的に表す必要があるのでしょうか。登場人物はみんな悪い人じゃないのに、その人の悪い部分だけを切り取って、わざわざありえない展開やセリフまで持ち出して、誇大に表現するんです(例:初めて会った恋人のお兄さんを批判する)。一番不快だったのは病院の「リーダー」役。有名な女優さんですよね。汚い、悪い、怖いところばかりを強調させています。そんなの観たくないんですよね・・・。

 おそらく「静かな演劇」というジャンルに入るお芝居だと思います。オープニングからしばらくは、音響ほぼゼロの中、ものすごく小さい声で自然な会話がなされるのですが、何しろ精神的な病気の人達ばかりですから微動だにしない状態。話す内容もものすごくマイナス思考。息が詰まります。先日の青年団『南島俘虜記』と手法もスタンスも似ています。悪意に満ちているというか。

 音楽が鳴るタイミングがちょっとわざとらしかったでのですが、中盤以降良くなってきました。金髪の元気な人が新しく施設に入ってきて、お話自体が生き生きとしてきたからに他なりません。だんだんと役者さんもほぐれた顔をしてきました。
 脚本は映画「カッコーの巣の上で」をモチーフに書かれていますね。ある精神病院に健常者の男(ジャック・ニコルソン)が入ってきて、彼の影響で精神病患者が自我に目覚めていく。しかし婦長はそれを許さず、健常者の男を問題児と決め付け、さまざまな「治療」によって彼は・・・。このお話はほとんど同じです。「カッコー・・・」を元にしたということをパンフレットに書くべきなんじゃないかな。映画の薀蓄(うんちく)をたくさんセリフに盛り込んでいらしたので、脚本・演出の方はかなりの映画好きなのでしょう。知らないうちにストーリーが似ていたというわけではないはずです。

 美術が良かったです。窓の外にある釣り下がったオブジェが心を慰めてくれました。
 照明も良かった。派手にしないながらも決めるところはしたたかに美しかった。
 衣装の色使いがおしゃれでした。ああいうおしゃれが私にもできればいいのに~と思います。
 ダンスが一度挟まれたのは楽しかったです。音楽はブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにも入っている有名な曲ですね。大好きです。

 後藤飛鳥さん。「かわいい」と連呼される役。そういう扱いはどうなんだろうと疑問も少し沸きました。なんか良い意味に聞こえないんですよね。バカにしているような空気もあり。ラスト近く、彼女の「読んでみて」という言葉と笑顔で私の顔は初めてほころびました。救われました。紫とピンクを基調にした衣装がすごく良かった。特にパンツが。

東京タンバリン : http://www.stageinfo.jp/tanbarin/

Posted by shinobu at 21:33

2003年12月07日

Attic Theater『返事がない』12/3-9下北沢OFF OFF劇場

 仲良くしていただいている劇団です。Attic Theaterを拝見したのはこれで5作品目になります。今回はいつも通り黒川竹春さんが演出でしたが、役者の古屋純一さんの脚本でした。

 蛍が一年中見られるというのが売りのペンション。ペンションのオーナーも個性的だけど、なんだか宿泊客もワケありな人ばかり・・・。

 ストーリーは後半に突然込み入った展開になるのですが、最後はサラリとしちゃいましたね。古屋さんのユーモアが随所にイヤといほど(笑)散りばめられていて、客席には笑いがいっぱい。私も好き勝手に個人的なツボで笑わせていただきました。前回の『にもかかわらずわらうこと(再演)』が一番好きだったのですが、今作品は2番目になりそうです。役者さんがみんなのびのびしていて楽しそうだったから。こういうライブ感覚って大切だと思います。

 ペンションのセットが良かったです。OFF OFF劇場の構造の柱に合わせて壁が作られていて、舞台が広く見えました。

 古屋純一さん。夜釣りをする宿泊客役。やっぱり脚本を書かれたということで、役者に専念されていない印象を持ちました。どこかドギマギした感じ。作品を客観する視点からはずれていない状態。でも、ネタが素直で楽しかったです。
 日高勝郎さん。ペンションのオーナー役。おやじキャラ炸裂。古屋さんと好き勝手やってらっしゃいました(笑)。やりきって引っ込まない、そして優しい存在でいるのが良いと思います。私はInnocent Sphereでのかっこいい日高さんが好きなので、今回はまあまあですかね。
 川上冠仁さん。大学院生役。一人冷静な役で、お芝居の中で良いアンカーだったと思います。相変わらず笑顔が素敵です。色白でらっしゃるから赤と茶色のボーダー柄のセーターがよくお似合いでした。
 土屋美穂子さん。チャイナドレスの女。全力投球の風俗の女。かわいい。明るい。スタイルいい。

アティックシアター : http://www9.ocn.ne.jp/~atticweb/index.html

Posted by shinobu at 12:53

2003年12月05日

雷電『雷電支度部屋』12/2-7下北沢「劇」小劇場スタジオ

 演出は堤泰之さん(プラチナペーパーズ) 。3本立てなのですがその3本が完全につながっていて、1本のお芝居を観た気分でした。

 私は「お芝居」とか「舞台」を題材にした話はすごく苦手なんです。よっぽど作りこんだコメディーとかサスペンスなら大丈夫かもしれませんが、他人事とは思えないというか、ハラハラしちゃって楽しめないんですよね。残念ながらこの作品は生々しい楽屋裏のお話だったので、感情移入は出来ませんでした。観客ほぼ不在っていうのが一番受け入れづらかったです。

 男子楽屋、女子楽屋、スタッフ楽屋の三箇所での、それぞれの開場から開演までの30分間を描きます。少しずつ重なったりシンクロしたりしているのも見所です。時間がぴったりなのが素晴らしかった。開演5分押しで開演のブザーが鳴るんですが、3幕ともちゃんと時計が19時5分なんですよね。

■男子楽屋
 作:大田善也(散歩道楽)
 
 このお芝居の全てを説明する幕になりますから、自然と情報収集をするためにじっくり観られました。
 つかみあいの喧嘩をする演出は良くなかったと思います。無理がありました。

 本間剛さん。演劇経験があるコンビニ店員役。本間さんのことは何度か拝見しているのですが、いつもうまいなーとうならせられます。KERA MAP『青十字』で大阪弁を話すヤクザのボス役でした。あの時もしびれたんだよなー。今回は「もちろん」を言い間違えた演技が特に良かったです。
 成清正紀さん(KAKUTA)。侍の衣装を着たメイクの濃い男役。演技がうまいですね。しっかりと作った演技で安心できます。新劇の技術があるんだなーと思いました。


■女子楽屋
 作:桑原裕子(KAKUTA)

 ストーリーが無理でしたー・・・。開演直前に役者が「私達、舞台降ります!」と言い出すんです。それだけでもう観られない。つらすぎました。

 鈴置洋孝さん。自分勝手な演出家役。この幕のキーパーソンなんですが、私はどうしてもこの方の演技が合いませんでした。正視できなかった。ガンダムのブライト・ノア役の声優さんなんですって。早く知っておけば耳をそばだてたのに~。


■スタッフ楽屋
 作:塩塚晃平(桜丘社中)

 2幕のダメージが最後まで響いてしまいました。常に客観視をする自分から抜け出せず、楽しめませんでしたね。

 桑原裕子さん(KAKUTA)。舞台監督助手の役。トボけてて素直で本当にかわいらしかったです。心の底からセクシーに見えました。どうやら惚れたね。


 いろいろ文句を書いてますが、結局こういうお芝居は私の好みじゃないってことに尽きると思います。『煙が目にしみる』は大好きだったんですけどね。ちょっと押し付けがましく感じちゃいました。

雷電 : http://www.sanpodouraku.com/raiden/

Posted by shinobu at 00:14

2003年12月04日

プリセタ『オートマチック』12/2-7下北沢駅前劇場

プリセタは俳優の戸田昌広さんが主催する演劇ユニットで、座付き作家はペンギンプルペイルパイルズの脚本・演出家の倉持裕さん。倉持さんの脚本目当てで観に行きました。

 面白かった~・・・・。展開が全く読めませんでした。こういう賢くって、男の子らしいお芝居ってなかなかないと思います。したたかに成功しているのに決してしたり顔をしないのが素敵。うっとりとため息が出ますね。

 舞台は大きなトラックの荷台の中。まずそれにブルッときました。すごいじゃないですか、駅前劇場の舞台が殺風景なトラックの箱の中なんですよ。荷物がトラックの動きに合わせて上下(かみしも)に動くのがキュート。手作り感覚をチラホラ残しているところも良いです。でもトラックのドアはすごく頑丈に出来ていました。そういう風に決めるところをきちっと決めることが出来ているから、ところどころはずすのが生きるんですよね。

 田舎にポツンと置き去りにされたサラリーマン2人がヒッチハイクをしてトラックに乗せてもらうところからお話が始まります。どんどんトラックに乗る人が増えてくるんですが、その増え方が奇妙にさりげないんです。ストーリー展開のリズムが変拍子なんですよねー。そこが倉持さんの脚本のミソな気がします。
 一人一人が自分のやった罪の告白をするシーンでは、すごく深刻なのにどんどん笑えてくるんですよね。幽霊(?)が出てきた演出がめちゃくちゃバカバカしくて、大切なシーンなんだけど、とにかく私は思いっきり笑っていました。不謹慎なところほど笑えるように仕組まれているんじゃないかな。やっぱり脚本がキレてると思います。

 玉置孝匡さん。夜釣りに行っていた(?)湯本役。うまいなー・・・。ほれぼれします。ペンギンプルペイルパイルズで拝見していた時は予想外の動きに目を奪われていました。『青十字』ではものすごい虚言癖のある役(千葉雅子さんの夫役)で強烈な印象でした。一言一言にハズレがないんです。今回は「取り返しのつかないリアリティーだな」というセリフがツボでした。
 富士タクヤさん。運転手役。涙腺ドレスという劇団のお芝居でお見かけした気がするのですが、キャラがすごく生かされていました。
 倉持裕さん。かわいかった。こういう風に脚本家や演出家が出演するのって好きです。

プリセタ : http://02.members.goo.ne.jp/www/goo/p/r/puriseta/main.html

Posted by shinobu at 23:42

2003年12月02日

作:山崎正和 演出:栗山民也『世阿弥』11/27-12/21新国立劇場

 客席をも巻き込む初日のピリピリとした緊張感は快感です。初日の客層は独特ですしね。坂東三津五郎さんが出演されているからか、和服姿のご婦人の多いこと。嬉しいです

 室町時代、能を大成した世阿弥のお話です。山崎正和さんの脚本によって成される「見られること」によってのみ存在する役者という存在についての深い考察。見る側(観客・パトロン)を光、見られる側(役者)を影として描きます。役者(俳優)を職業として選ぶ方は世阿弥の本を読んだ方がいいなーと思いました。

 ものすごい重厚な舞台装置と日本刀のように細く尖がった風合いの照明の中、重低音の弦楽器(だと思う)の音色が響きます。極上の衣装をまとった日本でも指折りの技術を持つ役者さんたちのテンション最高潮の演技が繰り広げられ、観ている方もものすごい緊張感でした。しかも脚本が非常に難しい。途中休憩の時に「名前しかわからないよー」という声がチラホラ聞こえました。
 前半は、隣の席のおじさんがめちゃくちゃうるさくってムカつきながらも、役者さんたち(特に坂東三津五郎さんと寺嶋しのぶさん)の鬼気迫る演技に吸い込まれるように舞台に集中していました。

 後半も前半に引き続きやはり緊張感ビシバシで始まったのですが、クライマックスが・・・あっけにとられて、唖然。開いた口がふさがらないとはこのこと!一番前の席でガクっと腰砕けっ!(先行予約、本気でやめようと思います。一番前はイヤ!)

 ネタバレします。

 巨大な穴倉のような舞台装置が上にあがり始め、舞台奥から白い光とともにたくさんの人影が現れました。鴻上尚史 作・演出『ピルグリム』のエンディングに似た感じ。そしてドカドカと、どう見ても場にそぐわない風貌の人間たちが駆け寄ってきて、突然激しく踊り始めたんです。
 えええええっっ!?一体あの踊りは何!?衣装もヘン!メイクもサッカーのサポーターみたいな塗り!世阿弥の長男がアフリカ人のような、ネイティブ・アメリカンのような、それでいて部分的に和風な衣装で、お世辞にも上手とは言えない踊りを先導して踊っていたら、驚いたことに、亡霊になった次男、恋人などがそれぞれに思いのたけを叫びながらゆらりと出てきて・・・もー全く意味不明の大空間に変貌しました。(平たく言うと回想シーンなんでしょうね。)
 服装にしろ踊りにしろ、どの国籍にも属さないものを目指されたのかもしれないなー。栗山民也さんの演出ですし、てんやわんや、何でもござれの日本の祭り状態にしたかったのではと思いましたが、決して正解じゃなかったですねぇ・・・。前半をもっと猥雑に滑稽にリラックスした形にしておけば、はじけちゃえるのかもしれません。最後の最後、大きな足音をかき鳴らしながら民衆が舞台前面に集まってくるのはとても良かったです。
 私としてはもっと山崎さんの脚本をじっくり味わいたかったので、演出自体に心奪われるのは期待通りじゃなかったです。公演期間が一ヶ月ぐらいありますから後半ぐらいからは、こなれて良くなってくるのではないでしょうか。この演出で成功したらものすごい作品になると思います。

 信じられないほど豪華な出演陣です。目移りしちゃって幸せでした。

 坂東三津五郎さん。ほんっとに演技がお上手でした。中年から老年までを演じられたのですが70歳を過ぎた老人に本当に見えるんです。感動しました。ただ、上手すぎて例の「踊り」の演出と全然かみ合ってなかった気がします。重厚すぎたんです。歌舞伎役者さんなので「大和屋!」と3回ほど声がかかったのが楽しかった。
 風間杜夫さん。最近観た『死と乙女』ではあんまりだったのですが、今回はキレてましたねー。かっこ良かった。相槌を打つようなところはちょっと予定調和が見え隠れしちゃってましたが。
 山路和弘さん。世阿弥の次男役。宮本亜門 演出『ファンタスティックス』で素敵だなーと思っていたのですが、今回も渋いハンサムでした。亡霊で出てきた時も血の滴りがきれいだった。
 田代隆秀さん。風間杜夫さんの兄役。前半の最初の方にしか出てこられませんでしたが、最後の最後までその存在感が消えませんでした。上品な声がまだ心に残っています。

 寺島しのぶさん、宮本裕子さん、倉野章子さんの3人の女優さんが神々しいほどの輝きでした。

 寺島しのぶさん。知性ある狂女の、しかもどん底の悲しみを胸に抱いた様子を演じさせたら彼女に並ぶ人はいないと思います。かなり具体的な制限つきな誉め言葉ですが(笑)、坂手洋二 演出『マッチ売りの少女』でもそうでした。立ち姿があまりに恐ろしく美しく、存在そのものが鋭利な刃物の切っ先のよう。
 宮本裕子さん。劇場之隅々まで響き渡る清らかではりのある歌声。スタイルもいい。鋭い表情にあの美しいおみあし。ダンスもかろやか。表情は童顔なのに究極の色っぽさ。
 倉野章子さん。声に凄みがあるんです。抜群の説得力があります。幕開け一番に登場した時の老婆の後ろ姿に目を奪われました。

新国立劇場HP : http://www.nntt.jac.go.jp/

Posted by shinobu at 18:05

ブラジル『性病は何よりの証拠』11/28-12/1阿佐ヶ谷アートスペースプロット

 ブラジリィー・アン・山田さんが作・演出をする演劇ユニット”ブラジル”。『苦笑系喜劇』というジャンルだそうです。前回の『ロマンティック海岸/科学ノトリコ』が最高に面白かったのですごく楽しみにしていたのですが、期待を裏切らない内容でした。もー・・・やり過ぎ大歓迎!!

 「陸ひとつ見えない海に浮かぶ、たったひとつの小さなボートの上、8人の男女の疑心渦巻く密室劇。」ということで、本当に劇場のド真ん中にゴムボートがあるだけの舞台装置でした。そこに8人がすし詰め。見ているだけで暑苦しいのに、そこでさらに熱く激しく繰り広げられる、目も当てられない、見るも無残な、笑ってる場合じゃないのに笑えてしまう、実質的”密室”の惨劇。あぁ~・・・ちょっぴり罪悪感がともなう密閉感にニヤニヤしちゃいました。

 ここからネタバレします。

 赤裸々なエロ発言がめいっぱい出てきますが、笑える範囲内にちゃんと収まります。しかも大声でおおっぴらに笑える状況ではなく、「苦笑」するしかないように持っていくんですね。大人のしたたかさがかっこ良いです。
 病気に松竹梅のランクがあるという架空の設定にはうなりました。梅毒のひとつ上のランクの竹毒(チクドク)て・・・ネーミングも苦笑です。ファンタジーにすることで演劇的な楽しみが増えています。
 そして、しっかりと計算された芸、ならぬゲロ、でした。役者さん、大変だな~とおもんぱかりつつ、実は「もっとやって!!」とわくわくしちゃう、観客心理そのままに楽しませていただきました。

 「渚のバルコニー」が流れる中、残された2人が狂いかけつつ踊るエンディングは圧巻でした。あともうちょっとで私もトランスできたと思うんですが、そこまでは行かなかったなー。こういうお芝居は少しの呼吸や間の違いでイけるかどうかが変わってくるんですよね。でも満足のレベルです。

 辰巳智秋さん。社長。大きな体型を生かしたキャラと演技で圧倒されます。汗がっ、汗がっ!
 諫山幸治さん(青島レコード)。遭難3回目男。うまいなーと思いました。相当おトボケさんだったのに最後は熱血&爆発。
 近藤美月さん(bird's-eye view)。最初のチクドク女。何をやっても、やらなくても、注目せずにいられない女優さん。一言一言が面白くてたまらない。
 吉田久代さん(ククルカン)。不倫している女。すごい美人でセクシー。涙を流して迫真の演技でした。
 長嶺加奈子さん。妊娠している女。この方も可愛いらしかった。可愛い女の子、大好きです。

ブラジル : http://www.medianetjapan.com/10/drama_art/brazil/

Posted by shinobu at 16:35

2003年12月01日

地人会『心と意志』11/18-30紀伊国屋ホール

燐光群の坂手洋二さんの書き下ろし新作です。坂手さんご自身による演出で地人会の主催。

 昭和天皇の四十九日の法要「大葬の礼」が行われた15年前の一日のお話でした。ある家庭のガレージが舞台。大学生の息子が地下室に閉じこもって出てこない。彼は「大葬の礼」に対する反対運動をしていて、そのせいで家族には無言電話や警察による尾行等の圧力がかかっている。両親は昔ドキュメンタリー映画を製作していた仲間同士。その日は久しぶりに友人たちを撮影することになっており、息子が隠れているガレージに人が集まってくる。実はそこに引きこもったのは息子が初めてではなく・・・。

 あの時「自粛」という言葉で表されましたが「報道規制」がありましたね。TV番組が全て昭和・皇室に関するものだけになったり。言論の自由が瞬間的になくなった期間でした。道頓堀の電飾(グリコとか雪印とか)が全部消えていたのは知っていましたが、演劇公演も休演になっていたんですね。そりゃ大変だー。払い戻しとか追加公演になったかと思うと、その損害と労力を想像するだけでゾっとします。

 いつものことですが、やっぱり坂手さんの脚本は難しいですねー。複雑で深いです。今回は「大葬の礼」「子供を自殺で失った親」「ドキュメンタリー映画」「引きこもり」「夢(劇中劇)」などの沢山のトピックがからみあって、それが『心と意志』という壮大なテーマにつながっていく形でした。
 出演者の方から少しお話を伺えたのですが、脚本に「はい」「いいえ」などの受け答えがほぼ無いらしく、演じるのも難しいそうです。そういえばそうでした。登場人物はお互いに意見を言いっぱなし。「そうね」とか「違うよ」とかの具体的な返事はしないんですよね。その分、演技によって幅が広がる可能性がありますから、より難しいのでしょう。観る方は非常に面白いですが。
 『心と意志(Hearts and Minds)』というタイトルの意味はとても重いし大切だし、考えるところも多かったです。人間には心と意志がある。それが人間が人間たる所以だというのは感動的なことだと思います。でもその言葉を何度も連呼されるのはちょっとヤだったな。

 装置が地味でした。ガレージそのもの。松井るみさんが作っている意味はあったのでしょうか??雪が降ったのは楽しかった。

 うーん・・・坂手さん作・演出の作品は燐光群で観るのが適しているのかも。新国立劇場での『ピカドン・キジムナー』は、今考えたらソフトな作品でしたね。

 平田満さん。うまい。やっぱりすごい。普通のサラリーマンのような様相だけど、したたかに狂ってる。リラックスしているのも実は全て計算なんですね。
 神野三鈴さん。美人だしスタイルもいいんだけど、何よりも心がきれいなんだよなー。そして何をやる時も本気。大好きです。
 内田滋啓さん。美しいです。内田さんが舞台に出るだけでそこにファンタジーが生まれます。夢の中のマサオと現実のマサオにくっきりと違いがあって、私は現実のマサオの素朴な存在がいとおしかった。
 藤井びんさん。さすがは燐光群常連ですよね。重々しく厳しくとんがった世界を方言の柔らかさとともに体現されていました。

地人会HP : http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~CJK/

Posted by shinobu at 22:36