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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年12月21日

ホリプロ『リチャードⅢ』12/5-28 日生劇場

シェイクスピアの作品です。蜷川幸雄さん演出で市村正親さん主演の『リチャードⅢ』は再演です。
   
 ものすごくわかりやすい娯楽作品でした。日生劇場に市村さん、夏木マリさん、香寿たつきさんが出ていて客席はマダムがいっぱい。年末の同窓会で「あーら奥様お久しぶりぃ♪」みたいな。

 『リチャードⅢ』というと、ものすごい(論理的には支離滅裂な)口説き文句で、自分が殺した男の妻(香寿たつき)を妻にしたり、自分が殺した少年たちの母親(夏木マリ)をうまく説き伏せたり、普通ならありえない展開に持っていく話術が見所なんですよね。なのに市村さんと夏木さんとのやりとりだけはかろうじて見るところがありましたが、他はてんでダメでした。全く説得力なし。市村さんはがんばっているんだけど、それを受ける役者さんたちがほぼ全員弱いんです。会話が成立しないんですよね。
 そして、リチャードの母親役(東恵美子さん)の下手なこと!驚くほどマジ下手でした。自分が演じている役柄の気持ちなんて全くわかっていない様子。棒読みならまだしもヘンにわかったようなしゃべり方をするからまた見苦しい。更にリチャードが殺した先王の妃(だったかな?)マーガレット役(松下砂稚子さん)もひどかった。狂った役なのに全然狂ってないし。朗々と老女っぽくしゃべるだけ。香寿たつきさんもダメでしたねぇ。夫を殺されたのにリチャードにほだされる、という展開に全く説得力がありませんでした。
 素敵だなーと思ったのはリチャードの兄役の高橋長英さん。声が本当にきれい。かつらがお似合いでしたね。最初に利用されて裏切られる部下役の瑳川哲朗さんもいつも通り安心できる存在でした。

 オープニングはインパクトがありました。格子のパネルがそびえたつ、がらーんとした舞台に突然落ちてくる馬や牛の死体。花束。「ズシン!」「ボスっ!」等のものすごい音でした。そこにひっそりたたずむリチャード。かっこいいっ。でもラストはおなじみ蜷川メソッドですよ。『ハムレット』と同様、悪い王を倒して良い王が国を治めるようになってめでたしめでたし、というのを「その良い王」もやっぱり悪者で、人民の生活はまたもや暗雲が立ち込める・・・という展開にしちゃうんだよね。もう免疫ができました。

 リチャードが死ぬ時、兄が死んだのと同じように仰向けに倒れたのが良かった。わざわざ言うこともないんですが、そういうところが非常にわかりやすく、娯楽作品として成立しているんですよね。

 こんなに好き勝手に言っていますが、衣装(小峰リリーさん)が本当に素晴らしかったです!特にリチャード(市村正親)がはおっている赤いマントは絶品です。しなやかで、艶があって、大きいのにすごく軽そうで、ちょっと透け感があって、同じ布だけでのっぺらぼうに作っているのではなく、途中で違う織りも入っているのがまたおしゃれ。マントのはためき加減もしっかり計算されていますね。市村さんがふわっとなびかせる度にその布の気高さに見とれました。

 市村正親さん。足が悪いせむし男の役なのでずっとびっこを引いてらっしゃいました。何をやっても上手い。必ず良いポイントでユーモアを入れてくださいます。どんなお芝居でも市村さんを観られたからいいかなって、終演後には思えます。でも、今回はなー・・・・。

 実は、隣の席がゲイのカップルだったのが何よりも衝撃的でした。うーん素敵なデートね~。

日生劇場内『リチャードⅢ』 : http://www.nissaytheatre.or.jp/paf/main.html
ホリプロ内『リチャードⅢ』 : http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=32

Posted by shinobu at 2003年12月21日 17:58