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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年01月06日

tpt『BENT』12/28-01/19ベニサン・ピット

 私も観に行って参りましたよ、無料公演!予想よりも空いてましたが、やっぱり客層がいつもとは違いましたね。だって・・・若い!ほんと高校生ぐらいの人とかいましたもん。tpt公演では見られない層ですよね。

 ナチス政権下ドイツのゲイの若者のお話。ある日突然、追われる立場になったゲイの男がナチス将校につかまって収容所に入れられそこで本当の自分とは、愛は必要か、など、人間の尊厳について気づきを得ていきます。かなりハードな内容です。私的には18歳未満の人には薦められないです。20歳以上推奨かも。

 同じ演劇で『蜘蛛女のキス』という作品も軍事政権下の刑務所にいたゲイのお話ですが『BENT』の方が理不尽さが激しく、観ている自分も身を切られる思いでした。皮肉に次ぐ皮肉。さらにその上からまた皮肉が浴びせ掛けられます。

 石を運ぶ、過酷でしかも無意味な労働をさせられるゲイの男2人。労働の休憩時間は一日たったの3分間。しかも前を向いてきをつけをして立っていなければならない。そのわずかな時間だけ2人は会話をすることができます。観客の方に向いて棒立ちの状態での熱演。2人は少しずつ心を交わしていく・・・。そこにこのお芝居の魅力が凝縮されているんです。お芝居だらこそ体験できることだと思います。

 プラトニック(?)なセックスシーンには感動しました。体も言葉も、それを感じる心があるかどうかなんです。それが人間であるかどうかなんですね。

 ユダヤ人だけでなく同性愛者も収容所に送られていたこと、恥ずかしながら私は知りませんでした。しかも階級があったんですね。ユダヤ人が一番上で、同性愛者は一番下。ユダヤの星といえば世間では即、死を意味するほどの忌み嫌われる印だったのに収容所内ではそのマークが同性愛者に色んな利益もたらしたなんて本当に皮肉でした。人間っていうのは・・・・いつでもどこでもそういう階級社会を生み出したがるんだなと思いました。

 私は「戦争」というもの(そのもの、それを連想させるもの、またはイメージなど全て)が苦手です。だから役者の衣装を観るだけで胸が苦しくなりました。ナチスの軍服、縦ストライプの囚人服・・・つらい。でも、SS将校の制服はすごくかっこいい。かなりのデザインです。そんなところに楽しみを見出すことがいけないことのように感じるほど、真面目な公演でした。「テロ。9・11。バリ島。今、これをやらなければならない。」というtptの熱い思いがこもっています。

 tptからまた一人、スターが生まれたと思います。主役のマックス役を演じた朴 昭熙(パク・ソヒ)さん。素晴らしかった。凛とした声。育ちの良さそうな身のこなし。クールな顔立ち。そして鍛えられた肉体から否応なしにほとばしり出る、はつらつとした若さ。淡々とストイックな演技でそれらをおおい隠そうとしても、でこぼこと出て来てしまうんですね。そのギャップがとてもセクシーでした。声や表情、動作に全く出さなかったけれど、彼、舞台上で何度も涙を流していたんです。彼の胸の奥深くに静かに燃える熱さを感じました。美しい。

 なぜか客席がすごく寒いので、観に行かれる方は防寒して行ってください。特に足元。
 休憩25分間を含む2時間50分。気合いが必要です。でも、その価値はあります。

 チケット取り扱い(全席指定) tpt:03-3635-6355
 tpt(ティー・ピー・ティー)のHP http://www.tpt.co.jp


↓(掲示板の頃のレビューですので、書き込みへの返事形式です)
キャシーさん、書き込みありがとうございます!

> 6~7000円は取ってもいいと思いました。
私は5,000円ぐらいかな~。
いつものtptのお芝居に比べるとやっぱり役者さんが追いついてない気がしました。当然ですよね。ワークショップから上がってきた若い役者さん達ばかりですものね。とにかく超お得です。観るべし。

> チラシに「初めて男同士の性的な行為の描写などで…」
> と書いてあったので、少しドキドキしてたんですが
> そのシーンはすごく切なかった。泣きそうだった。
私はかなり泣いちゃいましたよ~。
特に「性的行為」の後のセリフで泣けましたね。

> 観たら、ぜひコレに続けて感想を…
> 他の方がどんなふうに観たか知りたいです。
ええ、ぜひぜひ!
ふだん演劇を観ない人にも、観る人にもお薦めですよね♪


◆ひとことモノローグより
 『BENT』は当日券のみ
  update: 2003.01.09 (Thu)

 tptの無料公演『BENT』は、既に予約は完売で当日券のみの扱いだそうです。
 今のところ、並んだお客様は全員入場できているそうなので、ご興味ある方はぜひともお早めに足をお運びください。
 千秋楽に近づけば近づくほど入場できる可能性が少なくなります。
 1/19(日)まで。


◆ひとことモノローグより
 tpt『BENT』公演延長!
  update: 2003.01.10 (Fri)

 以下、イープラスからの宣伝メールの貼り付けです。

 ナチズムとホモセクシャル、そして人間と自由の尊厳について描かれた問題作「BENT」の画期的な無料公演。あまりの好評により遂に公演4日間延長決定!

 公演日:1/20(月)~1/23(木)各19:00開演
 @ベニサンピット(最寄駅:都営新宿線・大江戸線 森下駅)

Posted by shinobu at 21:25 | TrackBack