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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年02月11日

Bunkamura『ニンゲン御破算』02/04-24シアターコクーン

 松尾スズキ&中村勘九郎+大人計画常連陣+α!『キレイ』に引続きコクーンでミュージカルとのこと。歌舞伎役者とどうやりあうのか。

 ・・・松尾スズキさんの一人勝ちでしょう。松尾さんの暴走をただ見て思い知る3時間半でした。

 ストーリーは覚えてないです。『エロスの果て』もそうだったけど。ストーリーってもちろん大切なんだけど、それがどうでもよくなる瞬間が多発し過ぎで、ほとんど脳内テロ状態。全く統一感なく撒き散らされる(ように感じる)言葉、歌、踊り、そして水。

 つながっていないもの、それぞれ独立した個別のものの羅列がストーリーのように見えるだけなんです。というかストーリーだと思いたいだけ。それを受け入れられる役者が少なかった。はちゃめちゃこそルールだと、松尾さんを信じて自分の全てを投げ出せる人ばかりじゃなかった。いや、ほとんど無理な相談なんだと思います。投げ出すなんて、ね。

 私はつながってないことが大事なんじゃないかと思うんです。同時多発的に起こる相反する事象。それの連続。つまり不連続。当事者にとっては青天の霹靂、天変地異、ありえないこと、のように思うかもしれませんが、遠くからそれを眺めると実は非常に順序良く、道理にかなったことに見えるかもしれないん。だから、そのままやりきることで初めてそれを舞台にライブで表現できるのだと思います。

 シアターコクーンだからこその水。そう、水、水、水っっ!!『マシーン日記』の雑誌もそうでしたが、何事もある量を超えた時、一線を超えた時に、プツンとキレるんですよね。昇華するんです。小道具とか、たぶん私が今まで観たお芝居の中で一番量が多かったと思います。

 松尾スズキさん。天才。それだけ。それ以外に感想はありません。
 中村勘九郎さん。いっぱいいっぱい。セリフ間違うし。忘れるし。コクーン歌舞伎でのあの勇姿とは打って変わって子供のようでした。つながっているはずだ、と思って試行錯誤しているんじゃないかと思いました。

 阿部サダヲさん。いつも通りのカッコよさ。でも出番が少ない。単に物足りなかった。
 宮藤官九郎さん。松尾さんの合いの手でしかなかった。もっとメインでいて欲しい。阿部さんと同じく。
 荒川良々さん。いつものキャラですっきり満足でした。こういうマイペースがいいんですよね。考えないでいいんです。

 秋山菜津子さん。「刀くさっ!」最高。彼女についてももっと観たかった。
 片桐はいりさん。早口すぎました。どうしたんだろう?もったいなかった。
 浅野和之さん。この人も中村勘九郎さんと同じじゃないかなー。ついて行けてなかった。
 小松和重(サモ・アリナンズ)さんは自分のスタイルを出すこととが出来ていたと思います。

 宮藤官九郎さんが「大人計画に入ってしまったら大人計画の芝居を観られないよ」と、どこかで書かれていました。そうなんですよね。大人計画の世界は大人計画でしか作れないんだと思います。

文化村HP : http://www.bunkamura.co.jp/

Posted by shinobu at 18:01 | TrackBack

後藤真希 主演ミュージカル『けん&メリーのメリケン粉オンステージ!』02/05-12ル・テアトル銀座

 後藤真希というとモーニング娘。を卒業(って何?)してソロになったアイドルですね。通称ゴマキ。アイドル主役のミュージカルなのにいったい何なのよこのタイトル!?というタイトルです。副題は「黄金のS41 青春グラフィティー」。すごい。お友だちの幸野友之さん(方南ぐみ)が出演されるので観に行きました。

 おおよそ96%は男性客。そう。「おっかけ」と言っても過言ではない超ゴマキ・ファンの方々。ちなみに残り4%は子供連れ・その他です。「後藤真希 命」とか書かれたハチマキをした小学生とその母親とか。

 舞台は昭和40年代の東京。古くからあるもんじゃ焼き屋と大阪から来たばかりのお好み焼き屋との戦い。ゴマキの淡い恋心をからめて商店街の人々のほがらかな日常を描きます。

 開演の時、音楽が徐々に大音量になり会場が暗くなり始めたとたんに割れんばかりの拍手。さすがゴマキ。「ごっつぁんの初ミュージカル、一言一句聞き漏らさずに見守るよっ!」というファンの心遣いと緊張からでしょうか、最初の1時間ぐらいは客席の反応がさぶかった。盛り上がり始めたのが開演から1時間後。

 でもさすが樫田正剛さん(方南ぐみ)の脚本です。ソフトな吉本新喜劇っぽいわっかりやす~い内容で、ゴマキのヒット曲(サン・トワ・マミー等)をきれいにからめて見せ場も作って、最後はちゃ~んといい話に持って行くんです。泣いてるお客さんもいました。だいたいゴマキ主役なのに昭和40年代のお好み焼き屋という発想が素晴らしい。ギャップを狙ったんですね。

 だっさい格好したゴマキ。棒立ち棒読みのゴマキ。演技している時と歌っている時が全然別人格(キャラ)のゴマキ。一言で言うと人形みたいな人でした。目に表情が無いんですよね。鉄面皮というか。私的にはほぼ目に入らず無反応に通り過ぎてしまう種類の女の子なんだけど、あんなに熱狂的なファンがいるんですから、そういうところこそが魅力なのかもしれません。

 方南ぐみの役者さんがアイドルの舞台に出ているのが楽しかったです。客席との溝とかも露骨で。
 幸野友之さん。ゴマキとデュエットするって言ってたけどあの素の態度は笑えました。どこまで彼女に近づいていいのか、どこまでデュエット感を出さなきゃならないのか。計りながらの合唱。ゴマキのお父さん役の人が彼女の頭をなでるシーンで、おそるおそる手を伸ばして結局なでる振りだけして触らなかったり(笑)。そうよね、ちょっとでも彼女に触れるようなことがあったらファンに殺されますよね。

 ミュージカルのあっさりとしたエンディング。緞帳が下りていく。これで終わりだな~と思ったら10分間の休憩。え?なんと「後藤真希オンステージ」が待っていたんです! こ、これがメインなのね・・・。北島三郎特別出演とか、歌舞伎町のコマ劇場でやる興行と同じスタイル。つんく♂すごい!

 で、その盛り上がりは・・・・あの蛍光に光る棒、知ってます?みなさん(客席の70%)あれを準備し始めました。もちろんコンサート用の服装に着替えてます。Tシャツがすごかった。
 「GM連合 後藤真希 僕の存在 あなたのために・・・」
 「モーニング娘。私設応援団 ~MEG~ あさみ(←Tシャツを着ている人の名前)」
 「MAKI 510」
 皆さん、作ってるんですねー。思わず紙にこっそりしたためた私。

 客電が消えたとたんに総立ち。「まきちゃーん!!」「ごっつぁ~ん!!」のふっとい声援。汗だくになって縦ノリにジャンプしまくる筋肉むきむきの青年。蛍光棒を両手の指にはさんで(計8本)振り付けどおりに踊りシャウトするおじさん。・・・本当の意味で圧倒されました。初めてなまこを食べた子供みたいに。

 内容は照明ガンガン音楽ドンドンの普通のコンサートでしたね。ゴマキはどんどん着替える(脱ぐ)んだけど最後は体のラインがほとんど丸見えの衣装。若いって怖い。そしてエンディングはミュージカル出演者が出て来てテーマソングをみんなで踊って歌っての豪華ファイナル。
 「♪輝く未来。昭和40年代!夢の時代。昭和40年代!!」
 なんでやねん!思いっきり今風のコンサートしておいて昭和って・・・・。「オケピ!」ばりに笑えました。いやいやでもすごい大団円でした。素晴らしいエンターテイメントでした。心置きなく拍手です。

 後藤真希グッズがロビーにいっぱい。パンフは2,500円で中身はほとんど彼女の写真ばかり。全部セットというのがあって9,300円。すご。きっと全部買うんだろうな。

 実は、ミュージカル本編の時から隣りの人の口臭がつらくて仕方なかった。そして汗、汗、怒号。貴重な体験をさせていただきました。

 ※樫田さんの「樫」の字が違うのですが、私のPCではそのフォントがないので臨時に使わせて頂いています。

後藤真希 公式 : http://www.helloproject.com/gotomaki/

Posted by shinobu at 12:05 | TrackBack