2003年03月17日
パルコ『オケピ!(再演)』03/11-31青山劇場
真田広之さん&松たか子さんという豪華キャストで三谷幸喜さんが岸田戯曲賞まで取ってしまった『オケピ!』の早々の再演です。
今回は、観に行く価値がないとまでは言いませんが、率直に言うと面白くなかったです。2度目だからストーリーがわかっていたのも原因かもしれませんが、重要な演出が初演の時とは変わっていて、私にはそれがつまらなかったんです。
ネタバレします。
オケピはオーケストラ・ピットの略。つまりミュージカルやオペラなどを上演する際に音楽を生演奏するオーケストラが居る場所のこと。舞台の手前、客席との間に作られた1階下の部分。穴(ピット)のような場所のことですね。
この作品の舞台はオケピです。初演の時はそのオケピの上に舞台が見えていて劇中のミュージカルに出ている役者の足が見え隠れしたりしました。客席から見ると実際に生演奏するオケピの上の舞台に装置のオケピがあり、そしてその上に劇中の舞台が見えているという3重の構造になっているのがとっても面白かったんです。なのに今回はその天井側に見えている舞台の床がなかった。天井が異常に高いオケピだけがあったんです。しかも真っ黒なので、見た目がまず地味で圧迫感があります。そして何の変化も起きない。普通。
また、布施明さんの娘との再会エピソードのシーンで、初演の時にはあった舞台底からイスとテーブルがせり上がって来る演出がなかった。ミュージカルの堂々とした嘘をパロディにした笑いがあったのに、ただ、譜面台を喫茶店に見せかけただけでした。至極普通。
「ミュージカルなんだからリアルにしなくても、そもそもが嘘なんだし、必要ないから無くした」というようなことがパンフに書かれていましたがそれは『オケピ!』がミュージカルだったらOKですが、『オケピ!』は普通のミュージカルじゃないからNGだと思います。だって普通のミュージカルと比べると、歌は下手だし踊りも下手(というか踊る場所がない)。装置は単調で全く動きがなく、大量のダンサーによる群舞もない。衣装も振付も至極地味で歌の内容もほとんどふざけたものばかり(面白いんですけどね)。ミュージカルではないんですよ、最初から。お芝居なのに突然歌を歌ったり、意味もなく踊ったりするから面白かったのに。
「三谷さんが作った三谷テイストのミュージカルお芝居」であることが、この「オケピ!」という作品の最大のアイデンティティーだったのに、それを失うことになったんだと思います。とても残念です。
天海祐希さん。演技が上品。歌も上手いし踊りも上手い。スタイルも抜群。背の高さが笑いを誘いました。 腰までスリットの入ったロングスカートで足を思いっきり上げられた時はドキっとしました。ステキ!でも松たか子さんの役はやっぱり松たか子さんの役だと思います。あの毒は出せないですよね。
白井晃さん。好きな男優さんなのですが、さすがに真田さんの代わりは出来なかったですね。
戸田恵子さん。前回は松たか子さんに押さえ込まれていましたが、今回は水を得た魚のように伸び伸びされていてすごく良かったです。
布施明さんの歌にはまた泣かされました。なんであんなに優しいのでしょう。なんであんなに心に響いてくるのでしょう。
出演:白井晃 天海祐希 戸田恵子 川平慈英 小日向文世 寺脇康文 小林隆 相島一之 温水洋一 小橋賢児 瀬戸カトリーヌ 岡田誠 布施明
作・演出:三谷幸喜
パルコ劇場 : http://www.parco-city.co.jp/play/