2003年09月15日
Studio Life『LILIES』09/10-23紀伊國屋ホール
ここのところ前売りは必ず完売している美形男優集団スタジオ・ライフ。2002年に上演された作品の再演です。私は大沢健さん(客演)が主役を演じられるRougeバージョンを拝見しました。
この作品は1985年にカナダ初演。その後アメリカ、フランス、ベルギー、オランダ、メキシコ、ウルグアイ、オーストラリア、日本など多くの国々で上演されています。すごいですよね。
収容所の中。大司教の前でお芝居を演じる囚人達。実は大司教の冤罪をあばくためのもの。セルバンテスの『ラ・マンチャの男』のような劇中劇のスタイルです。クラシック音楽の流れるなか美しく、残酷に物語は進みます。
ボロボロ泣いちゃいました・・・・。愛、愛、愛。そう、愛なんですよね。人間を支えているのは。人間を人間たらしめているのは。そして真実の愛の前には、何もかも無力です。
倉田淳さんの演出は、いつも感じるのですが、内容重視なんですよね。照明や装置はストーリーを伝えるために最小限に抑えられていて、後は倉田さんご自身が脚色された脚本と、男優たちの演技にかかっています。
私が一番感動したのは伯爵夫人が自ら死を選んだ時のセリフです。
「演じるの。演じるのよ。自分の役割を。」(セリフは完全に正確ではありません。)
人間にしか出来ないことなんですよね。演じるってことは。彼女は決して品位を落とさず、自分というものを見失わない人だったのですね。実は自分を神の高みからコントロールできる立派な淑女だったんです。
違う角度から見ると、この作品は美形男優ばかり勢ぞろいで、しかもいわゆる“ホモもの”です。お約束ですよ。キスとかね。ヌードとかね。これほど熱狂的な人気があるわけだし、そりゃ観客サービスも必要だな~とは思います(私はかなり苦手なんですが)。ただ、そういう演出については最初は恥ずかしいんですが、だんだんとその意味が大きくなってきます。観客はそこに入りこむことが出来れば、その人にとってすごく感動的な作品になると思います。
役者さん、みんな背、高っっ!!紀伊国屋ホールの大きな舞台に巨人達がそびえ立っているようでした。
大沢健さん。シモン役。無実の罪で牢屋に30年間(40年?)入れられることとなる。残念ながら演技が硬くて「お決まりのコース」という印象を受けました。「美しすぎる」等、最高の形容詞をつけて呼ばれる役なのですが、それほどの輝きを感じられなかった。物語のシリアスな部分により重点を置かれていたのかもしれませんね。ただの囚人役をされている時が一番かっこ良かった気がします。
姜暢雄(きょう・のぶお)さん。シモンを愛するヴァリエ役。目が大きい。美形ですね~。背がめちゃくちゃ高い。声をあげて泣くシーンが可哀相で可愛くて、この人だからこんな風に胸キュンするんだな~と思いました。ただ、演技はまだまだこれからって感じですね。ヌードは・・・恥ずかしくって見られませんでした。
曽世海児(そぜ・かいじ)さん。夫に捨てられたフランスの伯爵夫人役。セリフの一つ一つが正確でずっしりと重く、演技が形式美としても完成されて来ているように思います。ダントツの存在感でした。息子ヴァリエ(姜暢雄)とのシーンで、必ずと言っていいほど泣かされました。
河内喜一朗さん。大司教役。いつも渋い存在感で作品を締めてくださっているんですが、最近はどうなんでしょ。演出のせいなのかしら、すっごくダルイです。セリフの間が不必要に長いんです。「どこむいてしゃべってるの?」と言いたくなるほど挙動不審なオープニングだったし。
もう一方のキャスト〈Blanc(ブラン)〉は、大沢さんの役が高根研一さん。姜さんの役が山本芳樹さん。大沢さんも違う役で登場されているそうなので、ファンとしてはぜひ観たんだけどな~。
[原作]ミシェル・マーク・ブシャルド [演出]倉田淳
〈Rouge(ルージュ)〉[出演]大沢健/姜暢雄/舟見和利/曽世海児/藤原啓児/他
〈Blanc(ブラン)〉[出演]高根研一/山本芳樹/奥田努/楢原秀佳/甲斐政彦/他
スタジオ・ライフ : http://www.studio-life.com/
ダンスプラネットNo.13『舞姫と牧神たちの午後』09/12-15新国立劇場 小劇場
キタサコ製作所さんによる「ジゼル」の衣裳を拝見したいのでチケットGETしました。
6組の男女のダンサー達の「ダンス・コンサート」でした。
演劇的に言うと新作短編のオムニバス、という感じかな。
つまり6組のカップルによる創作が楽しめるわけです。
私としては一番初めのカップルがダントツに良かったです。体が震えて涙が出ました。
それがたまたまお目当てのキタサコ製作所が衣裳を担当したカップルだったのはさらに幸い。
しかし、客席全体の反応と私の感想とが全く違った、というのが一番の驚き&勉強でした。
バレエ・ダンス界って実はコネばっかりの世界なんじゃないの??っていう疑問が湧き出ました。
そういう意味では演劇ってずいぶん自由で風通しが良い世界なのかも。貧乏だけど。
1.Giselle(軽部博美&島地保武)
「男」と「女」というジェンダー(性)への、根源的な疑問と戦い。
そのむなしくて悲しい、そして美しい結果を表現していたように思います。
人間は孤独です。男女の差はそれを補い合うように絶対的に存在します。
その性差がどんどんと無くなっていくように思われる現代において、
それから開放された喜びと、それに束縛されていた頃の幸せは両立できません。
しかし、どちらに転んでもやはり人間を二つに分断し続けるその運命と、もがきつづける私達。
真っ黒の舞台に残酷に落ちる青い照明の中、純白の衣裳をまとった男と女のダンサーが
無表情のまま激しく求め合い傷つけ合い、それは生と死の境目の愛に見えました。
衣裳は機能美と装飾美をそなえ、作品に重要な意味をもたらしていました。
音響も良かったです。Giselleのクラシック音楽とノイズが重なって、中世から現代、未来へと時間を超えました。
2.Expresso(内田香&古賀豊)
女王様気取りの女性ダンサーに怒りが込み上げました。一体お前は何様だっ!?藤原紀香か?!
演出も超ダサイです。お昼に再放送される昔のメロドラマみたい。なのにカーテンコールが3回!
3.弱法師(加賀屋香&森山開次)
寝ました・・・。演出がお涙頂戴的。シテが出てくること自体が興ざめ。
終演後、楽屋口で男のダンサーが取り巻きに囲まれていましたね~。
4.ロメオとジュリエットⅠ(イ・ユンキョン&リュ・ソックン)
第4回世界バレエ&モダンダンスコンクール モダンダンス部門 第1位金メダル・振付特別賞受賞作品だそうです。
さすが世界一、と納得させられるダンサーでした。スタミナも腕力も他のダンサーと比べようの無い差があり、
ひらひらと滑るように舞台上を舞う姿はまるでアイスダンスのよう。ただ、演出は王道でしたね。
5.ロメオとジュリエットⅡ(イ・ユンキョン&リュ・ソックン)
ロメオとジュリエットが結婚できていたとしたら?という設定で作られたダンス。
Giselleの次に感動したダンスでした。衣裳も良かったですね。
ただ、これもアイスダンスの自由演技部門みたいな感じで、私を体の底から震わせてはくれませんでした。
6.シャコンヌ(平山素子&能美健志)
男女ともにほぼ同じ動き、それもありふれた振りの繰り返し。とにかく繰り返しでした。
その繰り返しが意図的だとしても、ピナ・バウシュみたいに感動を呼ぶわけでもなく。
なのにこのカップルにだけ「ブラボー!」の掛け声が3度!なんで???
7.MAGUMA(蘭このみ&清水典人)
スペイン舞踊フラメンコとモダンダンスの融合?女性ダンサーが高齢で観ていてつらかった。
ただ、フラメンコの力は感じました。・・・大御所だからラストなの?
作品とは関係ないところの感想↓
『舞姫と牧神たちの午後』というタイトルがとにかく好き。
英語だと"Afternoon of Fauns and his Nymphs"。かっこい~。
最近の新国立のダンス&バレエのチラシのタイトル&キャッチコピーは最高ですよね!
新国立劇場 : http://www.nntt.jac.go.jp/