2003年10月03日
自転車キンクリートSTORE『人形の家』10/2-8THEATER/TOPS
自転車キンクリートSTOREがTHEATER/TOPSで観られるのって贅沢ですよね。『人形の家』はイプセン作の女性の自立を描いた小説(だっけ?)だと歴史で習った覚えがあります。
ネタバレしますので観に行くと決めていらっしゃる方はお読みにならないでください。
まず純洋風のシックな美術にうっとりしました。舞台はきれいな応接間。家具は高級なイギリス製アンティーク等を思い浮かべていただけたら。へ~、そのまま西洋の世界のお話なのか~と思いきや、最初に出て来たヒロインの三鴨さんが大正ロマンっぽい派手な着物! やられたな~♪
2時間20分休憩無し。ノンストップの緊張感はりつめたドラマでした。かなり疲れました。なぜだかすごく怖かった。平和100%の家庭に突然やってきた罠。とりつくろおうとするほどに醜くゆがんでいく世界。最後の嵐で全てが終わり、新しい何かが始まるんですね。
鈴木裕美さんの演出はまず、わかりやすいと思います。観客フレンドリー。そして登場人物一人一人にあますところなくスポットライトを当て、人間の本性を優しく炙り出していきます。ラストが圧巻でした。三鴨さんも、山本さんも、その姿からあらゆる意味と感情が湧き出ていました。
衣裳が良かったです。デザインも方向性も。着物なのに何度も早替えがあって素晴らしかった。
美術も同様に良かった。特に壁がとても凝っていました。上から下まで真っ黒な壁紙(?)なんですが、すごくデコボコしているんですよ。黒の凹凸(おうとつ)で光と影ができ、穴の中のような、頑丈な収容所のような。だけど分厚くてギラギラしているので、とても豪華なイメージもあります。その壁に金縁のデコラティブな額が3枚飾ってあるのですが、全て真ん中が抜けていて枠だけなんです。外見は美しいが中は空洞だという、この家を象徴しているのだと思いました。
三鴨絵里子さん(ラッパ屋)。声デカっ!高っ! 耳をつんざく声とはこのことですね(笑)。三鴨さんっぽい演技だろうとは思っていましたが、ほんとにいつもの三鴨さんでした。セリフも動きも上ずっていてつらかった。でも中盤を過ぎる頃からだんだんと役柄に近づいて来られました。三鴨さんだから、こんなにわかりやすくなったのかも、とも思います。
山本亨さん。正統派ハンサムもいやらしい男もお上手ですよねー。アクションはさすがですね。メリハリとパワーがあって恐ろしかった。ほんとの家庭内暴力を味わった気分。三鴨さんと何度も抱擁されるんですが、胸に触らないように気を使ってらっしゃるのが可愛かった。
大石継太さん。金を貸している男の役。怖い・・・いつも大石さんは怖い役、というのが私のイメージ。「OUT」でも「第17捕虜収容所」でも。もうちょっと可愛げを見せてくれた方が終盤に臨場感があるかも。でも、とてもお上手でした。
鬼頭典子さん(文学座)。賢い不幸な女。心に染みました。この公演で一番好きな役者さんでした。清楚で控えめで美しい。
平田敦子さんの乳母役がこのお芝居の大きな癒しでしたね~。
特にラスト、お茶を持ってきた時はすっかり術中にハマって笑ってしまいました。
私は初日を拝見しましたが、ご覧になられるならもうちょっと後の方がお薦めかも。これからどんどん良くなってくる気配がします。
自転車キンクリートSTORE : http://www.jitekin.com/