2003年11月11日
アトリエ・ダンカン『欲望という名の電車』11/07-30青山円形劇場
テネシー・ウィリアムズ作の有名な戯曲です。(以下、タイトルは『欲望』と省略します。)篠井英介さんが日本で男性として初めて主役ブランチを演じた作品で、今回が初めての再演です。妹ステラ役は初演と同じく久世星佳さん、ステラの夫スタンリー役に古田新太さんという超豪華キャスト。
遊びも多くてかなりリラックスした『欲望』でした。演出は鈴木勝秀さん。私にとっては「アイデア」どまりでしたね~。ところどころがポコボコ出っ張っているようなイメージの『欲望』でした。
舞台美術は50年代から60年代のアメリカンスタイル。今はやりのミッドセンチュリーものの家具ばかり。ひとつひとつは魅力的だけど、作品全体と溶け込んでいなかった気がします。天井から屋根状の大きな板が降りてくる演出は、タイミングがあからさますぎてヤだったなー。照明が透けてとおるのは雰囲気があってとっても良かったんですけどね。残念。
衣裳も軽い感じでしたがブランチの衣裳だけは一風変わっていましたね。ずーっと黒い衣装でした。デザインはまあまあ。材質が良くなかったですね。ピラピラしちゃってる。私の好みではないです。黒装束だったブランチが最後に白のドレスになり、カラフルな衣装だった他の役者は全員黒の衣裳になる、というアイデアは面白いですがブランチは登場シーンで白、退場シーンでは青の衣裳だという風に脚本に書かれているはずなんですよね。私はどんな白かどんな青か、どんな形なのか、とかを楽しみにしていたので最初に黒い服で篠井さんが出てきてびっくりしました。
音響は悪かったなー。選曲という意味ではなく音として。スピーカーとかの問題なんじゃないのかな。円形劇場ってすごく難しいそうです。
フランス語を話す若い男を場面転換で登場させたり、花売りの女役をさせたりして、物語を外から客観視する人間を置くことでより死のイメージを際立たせていたように感じました。
篠井英介さん。初演でも評判でしたが、念願のブランチということで、気合の入り方はすごかったですね。全体的に流れるような(浪曲のような)セリフ回しをされるのはいつものことで、(あまり好みではないです)それ以外のしっかり止まりながらのセリフは演技の方が胸にどっしり来ました。ミッチに過去を告白するあたりでは圧倒されました。でもねー。なんだか派手すぎる感じがする。演出がそうなのかもしれませんが、大衆受けを狙い過ぎなんじゃないかな。
古田新太さん。うーん・・・・私には彼をスタンリーだと思うことが出来ませんでした。まずルックスが受け入れられない。スタンリーって”いい男”だと思うんですよ。古田さんは”いいヤツ”なんですよね。ラブ・ロマンスがらみで古田さんを見るのはもしかすると初めてだったかも。残念ながら正視できませんでした。
久世星佳さん。ブランチの妹のステラ役。上手いんだけど・・・いい人過ぎる気がします。もっとブランチに対して憎しみを持っていいはず。キャラクターが薄い。スタンリーとの愛が見えませんでした。キスシーンもなんだかとってつけた感じだし。古田スタンリーを受け入れられなかった私が原因なのかもしれませんが。
田中哲司さん。ブランチと恋に落ちるミッチ役。ミッチもスタンリーのように乱暴で単細胞な南部男だった、という展開かと思いきや、この演出ではミッチがとても良い人でした。ブランチのことが本気で好きだけど、どうしても許せない。だから苦しみながらも拒絶する、という演技でしたね。可愛いです。悩める若い青年。でも、本当はこんな素敵な恋の形じゃないと思う。もっと残酷なはず。
山﨑康一さん(Studio Life)。スペイン語を話す、スタンリー達のポーカー仲間の役。かなり好きな役者さんです。うっすらと生やされた髭も良かった。演技もシンプルかつリアルで良かったです。
「こんな『欲望』もあっていいんじゃない?」という一つの提案だと受け止めました。私個人としては「『欲望』といえば、この作品!」とはなりませんね。
青山円形劇場HP : http://www.aoyama.org/