2003年11月19日
RUP『月影十番勝負第八番 ダブルアルバム』11/19-24スペース・ゼロ
月影十番勝負は劇団☆新感線の女優、高田聖子さん主演で毎年1本のペースでやっているお芝居ユニットです。
私は何年か前に『世にも不思議なアメージング・ストーリー』というのを拝見しました。『ダブルアルバム』は二兎社の永井愛さんの脚本ですが、もともとは10年前に「る・ばる」という俳優ユニット(松金よね子・岡本龍・田岡由美子)と一緒に作り上げた作品だそうです。
女二人と男一人の三人芝居です。あらすじを一言で言い表すと「異母姉妹の謎と葛藤を描いた物語」だそうですが、その「謎」と「葛藤」が私の心には痛くて痛くて、涙が何度も搾り出されるように流れ落ちました。登場人物一人一人の悲しみがセリフの一言一言に溢れかえっていました。
コメディーなので劇場には笑いがいっぱいでしたが、私には胸にグサグサと切り込むような言葉ばかりで、ホっとはするけれど笑えはしませんでした。そういう笑いを誘う行動にすら、やんごとない悲しみをたたえているように感じたんです。永井さんは人の心の痛み、その痛みから生まれる怒り、そしてその怒りゆえの滑稽な行動が見える方なんですね。
演出は木野花さんです。新感線や二兎社の舞台に出演され女優としての活躍が目立っていましたが、この作品であらためて演出家として力を見させていただきました。
女の脚本家だからこそ書ける、心の底の底をあけっぴろげにしていく残酷な言い争い。女の演出家だからこそ、それをあそこまできめ細かく柔らかく表すことができたんだと思います。
タイトルの「ダブル」は二重にダブルになっているんですね。現在の風景と過去(40年前)の風景という意味と、姉と妹のそれぞれの視点から見た家族の歴史という意味。過去と現在が交錯していく中で、姉と妹のそれぞれの母親との確執と憧憬が顕わになっていきます。
舞台美術(川口夏江さん)が良かった~。スペース・ゼロで初めてじゃないかな、美術に心を奪われてそこがスペース・ゼロだということを忘れられたのは。後ろにある大きな木、あれは何だったんだろう。ディズニーランドにあるような質感のへちまの実がいっぱいなっていました。
音楽も良かったです。先日拝見したMONO『京都11区』と同じく、暗転中BGMが鳴り響く間に涙が溢れてきました。
高田聖子さん。着物姿が美しかったー。母親役も娘役もどちらも堂々としてらして圧巻でした。
内田春菊さん。ロシアの民族衣装を着てしゃべる時と事務服を着ている時とで全く人格が変わっていました。なんとなくおぼつかないのが味わいがあって良かったです。
大森博史さん。大森さんのおかげでこんなにまとまったコメディー作品になっていたんでしょうね。
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