2003年11月25日
現代能楽集Ⅰ『AOI/KOMACHI』11/14-30シアタートラム
世田谷パブリックシアター芸術監督の野村萬斎さんがプロデュースする現代能楽集という企画の第1段。能の演目の『葵』を基にした『AOI』と、同じく『卒塔婆小町』を元にした『KOMACHI』の二本立てです。麻実れいさんをシアタートラムで見られるだけでもかなりお得でしょう。
作・演出は川村毅さん。第三エロチカの方ですね。私は初めて拝見しました。
言葉がキレてます。しゃべる内容は下品だったり猥褻だったりするのですが、とても上品に伝わってきます。役者さんを美しく見せることに成功している演出なんですね。殺人シーンとかセックスシーンとかはかなりリアルですし、やることがけっこう激しいのにすごいです。
美術は堀尾幸男さん。ダムタイプみたいな空間でした。近未来的というか空想の世界というか『2001年宇宙の旅』の1シーンのような。クールでかっこ良いです。台形の舞台で、真っ白でつるつるの巨大な壁に2辺が囲まれています。その2枚の壁全面に大きな映像が映るのは迫力でした(『KOMACHI』)。2枚の壁の間から鏡が現れるのは面白い(『AOI』)。照明で青白い白からきなり色に変化する壁がきれいでした。
『AOI』
「何者でもないあなたを愛していた」の”何者でもない”という意味がすごく好きでした。”何者でもない者”から”男”になり、”人間”になっていった光を責める六条の気持ちに私も同感できます。女って、もっともっと男の原点を愛している気がするんです。○○に所属する、○○を所有する、○○と呼ばれる”光”ではなくて、ただ”光”である光を大切にしていたんじゃないかな。
麻実れいさん。かっこいい!!めちゃくちゃ渋い!トレンチコートはこの人のためにあるんじゃないかと思うほど。tpt『Long after Love』でも六条役をされていましたが、今回のほうが激しいしセクシーだし笑えるしで、目が離せませんでした。
森ほさちさん。葵役。演技の種類はちょっと私の好みじゃないですね。まだまだ宝塚色が抜けていないというか。でも美しい人です。
長谷川博己さん。tpt『BENT』でメガネをかけたゲイの少年の役でした。『ゴロブリョフ家の人々』ではかわいらしい弟役で、今回はナルシストな光役。キャラクターが全然違う役だけどすっかりフィットしていました。麻実れいさんとの激しいラブシーンも無理なく拝見できました。これからが楽しみな男優さんですね。ハンサムだし。
蟹江一平さん。私がちょっぴり注目している青年座の俳優さんです。やっぱり感触が残る人ですね。立ち姿のバリエーションが多い気がします。素直で柔軟だけど、質感がぶ厚くて力強いです。
『KOMACHI』
演劇というよりはパフォーマンスのような楽しみ方をしました。手塚とおるさんのセリフも詩のように流れていって、ダンスのBGMのようでした。映像が怖すぎたなー。リアル過ぎました。トリックもありましたね。
銀幕を離れた大昔の大女優とその取り巻きの老人と、たまたまその棲家に入り込んだ若い男という設定は、映画『サンセット大通り』ですね。私も大好きな映画です。
手塚とおるさん。一人でしゃべり続けていらっしゃいました。朗読もお上手だなーと思います。一人であれだけ見せられるんですものね。すごいです。
福士惠ニさん。転び方が最高。
笠井叡さん。日本では大御所のダンサーさんですね。滑稽な感覚があるのは楽しいんですが、どうしても表情が気になっちゃいますね。
世田谷パブリックシアターHP : http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/