2003年12月09日
東京タンバリン『水の庭』12/5-14明石スタジオ
ある施設のお話。例えば、病院から退院したものの、なかなか社会復帰が出来ない人がしばらく滞在する宿泊施設という設定でした。「病院ではない」と言い張っているけど完全に精神病院のような場所なんです。そこに入居している人達の会話劇。
・・・うんざりしちゃいました。どうして、こんなイヤな感情ばかりを大々的に表す必要があるのでしょうか。登場人物はみんな悪い人じゃないのに、その人の悪い部分だけを切り取って、わざわざありえない展開やセリフまで持ち出して、誇大に表現するんです(例:初めて会った恋人のお兄さんを批判する)。一番不快だったのは病院の「リーダー」役。有名な女優さんですよね。汚い、悪い、怖いところばかりを強調させています。そんなの観たくないんですよね・・・。
おそらく「静かな演劇」というジャンルに入るお芝居だと思います。オープニングからしばらくは、音響ほぼゼロの中、ものすごく小さい声で自然な会話がなされるのですが、何しろ精神的な病気の人達ばかりですから微動だにしない状態。話す内容もものすごくマイナス思考。息が詰まります。先日の青年団『南島俘虜記』と手法もスタンスも似ています。悪意に満ちているというか。
音楽が鳴るタイミングがちょっとわざとらしかったでのですが、中盤以降良くなってきました。金髪の元気な人が新しく施設に入ってきて、お話自体が生き生きとしてきたからに他なりません。だんだんと役者さんもほぐれた顔をしてきました。
脚本は映画「カッコーの巣の上で」をモチーフに書かれていますね。ある精神病院に健常者の男(ジャック・ニコルソン)が入ってきて、彼の影響で精神病患者が自我に目覚めていく。しかし婦長はそれを許さず、健常者の男を問題児と決め付け、さまざまな「治療」によって彼は・・・。このお話はほとんど同じです。「カッコー・・・」を元にしたということをパンフレットに書くべきなんじゃないかな。映画の薀蓄(うんちく)をたくさんセリフに盛り込んでいらしたので、脚本・演出の方はかなりの映画好きなのでしょう。知らないうちにストーリーが似ていたというわけではないはずです。
美術が良かったです。窓の外にある釣り下がったオブジェが心を慰めてくれました。
照明も良かった。派手にしないながらも決めるところはしたたかに美しかった。
衣装の色使いがおしゃれでした。ああいうおしゃれが私にもできればいいのに~と思います。
ダンスが一度挟まれたのは楽しかったです。音楽はブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにも入っている有名な曲ですね。大好きです。
後藤飛鳥さん。「かわいい」と連呼される役。そういう扱いはどうなんだろうと疑問も少し沸きました。なんか良い意味に聞こえないんですよね。バカにしているような空気もあり。ラスト近く、彼女の「読んでみて」という言葉と笑顔で私の顔は初めてほころびました。救われました。紫とピンクを基調にした衣装がすごく良かった。特にパンツが。
東京タンバリン : http://www.stageinfo.jp/tanbarin/