2003年12月13日
RUP『セブンストーリーズ』12/12-20紀伊国屋サザンシアター
モーリス・パニッチさんの作品ということで、最近カナダの戯曲が注目されているんですね。『ハイ・ライフ』や『サラ』もそうみたい。『セブンストーリーズ』の原題では"7 stories"。7階という意味と7つのお話という意味が掛けられているんですね。
2時間弱のお話でしたが、1時間ぐらいは寝ちゃったかも・・・。体調が良くなかったのもありますが、やっぱり退屈だったな~。ものすごいいびきをかいて寝ているおじさんもいました。何しろ展開がないんですよね。だけど最後は・・・・感涙!素敵!!夢を見ました。幻が見えました。
ビルの7階で飛び降りようとしている男。ベランダのある7つの部屋からそれぞれの住人達が勝手気ままに話しかけてくる。(あとは寝てたのでよくわからない・・・)
宮田慶子さんの演出は最後に大きな力を発揮しました。ネタバレになるので書きませんが、演劇だからこそできる夢がそこにありました。戯曲だからユーモラスに語ることができる、深刻なテーマも胸を打ちました。
「鏡を見ればそこには私を閉じ込めている体という牢獄がある。」
「忘れれば。何もかも忘れれば。今まで自分がやったこと、今の自分の状態。全て忘れれば、飛べる。」(セリフは正確ではありません。)
舞台装置(加藤ちかさん)がすごかった!!あれで動いたりしてくれたら退屈しなかったと思うんだけど、それでも観られただけでも価値がある美術でした。7階から下を眺める状態が真横から観られるんです。あーうまく言葉では言い表せない~。とにかく一見の価値あり!
相島一之さん。7階から飛び降りようとしている男の役。死のうとしている男で、ずーっと7階のベランダの枠の外で、いつ飛び降りようかと思いながら住人達と会話を続けます。すごい緊張状態のはずなんだけど、常にどこかユーモラスで可愛いらしいんです。最後の長ゼリフに泣けたなー・・・。相島さんで良かった。
深浦加奈子さん。おばあさん役。ゆったりとおばあさん口調で話す内容が、味があって面白くて、最後の奇跡へとすんなり飛翔しました。
RUP : http://www.rup.co.jp/index2.html
ク・ナウカ『マハーバーラタ~大洋の王子ナラの冒険』11/4-16東京国立博物館東洋館地下1階
宮城聰さんが演出を手がけるク・ナウカ。2人(動く人と話す人)で1役を演じるというスタイルを確立されています。美加理(みかり)さんという高い技術を持った素晴らしい女優さんがいらっしゃって、彼女を観られるだけでも至高の幸せです。
あぁ楽しかった~・・・感動した~・・・・。
マハーバーラタってこんなあらすじだったのかー。痛快!自然と顔に笑みが溢れました。体中で感動して何度か泣きました。
アジア系ムード音楽のような素朴でゆったりとした調べが美術館ロビーに広がりました。もちろん生演奏です。それが突然ケチャのような早いリズムに変わってお芝居の幕開け。ものすごく官能的でした。奥の階段から現れる白装束の役者さんたち。なんと和紙でできた衣裳なんです。
名君と名高いナラ王は、悪魔に取り付かれたせいで賭け事に夢中になり、あっという間に落ちぶれてしまう。王宮を追い出された王と、けなげにも彼に付いて行った王妃(美加理)は、森の中ではぐれてしまうが、幾多の苦難を乗り越えて二人は再びめぐり合う。
先がわかっているのにドキドキして、大団円を迎えて涙するという黄金律です。悪魔が去って行くのがあっけらかんとしてて良かったなー。
「私がかつて慣れ親しんだこの味!」と、その料理を作ったのが夫だとわかるくだりは、なんとも民族性が現れていますよね。味覚って本当に大切。その人の文化そのもの。大切にしなきゃなー。
「ダイナマイトだよ~」の歌とか、かなりナンセンスな笑いも盛り込まれていました。昔からやってらしたのでしょうけど、新たなク・ナウカの一面を発見した気持ち。デキる人達は何でもデキちゃうってこと。
美加理さん。無表情なムーバーの役をよく拝見してきましたが、今回はセリフもけっこうしゃべりますし、表情も豊か。目の力や口の開け方など、ものすごく細かい顔の動きで感情をあますところなく表現されていました。和紙の着物をヒョイとつまみ、ぴょーん!とパーカッションを飛び越えるのがキュート。見とれるばかりでした。
阿部一徳さん。たった一人で弁士状態。感動的です。
こんなこと、実現していることが奇跡。見たら誰もが幸せになれる舞台だと思いました。レビューが遅れてすみません。大評判で当日券GETもかなり大変だったとの噂です。
東京国立博物館の館長さん(であろう方)の挨拶がありました。「平常展入場券つきですので、ぜひまたここ(博物館)にいらしてください!」すごく熱意の有る言葉でしたので、ぜひ行こうと思っています。というか本来なら開場前にゆったりと館内で過ごすのがベストですよねぇ。残念ながら叶わなかったのでまた今度。
ク・ナウカHP : http://www.kunauka.or.jp/
流山児★事務所『ハイ・ライフ』12/2-10下北沢ザ・スズナリ
作:リー・マクドゥーガル 訳:吉原豊司
台本・演出:流山児祥 音楽:トムソン・ハイウエイ
モルヒネ中毒の男たちの4人芝居。
熱い男たちでした。ものすごい汗とテンション。いい年したいい男達が汗だくで繰り広げる渋いお芝居でした。
疲れましたねー・・・。観ている方も大変です。あんなに走って暴れて、殴り合うんだもの。私はそもそもジャンキーの話って好きじゃないんです。恐いし、つらいことが多いから。だから素材として扱っているんだと理解して、他の見所を探すことにしています。
開場時間に映画「荒馬と女」の映像がずっと流れていました。マリリン・モンローのあまりの美しさにすっかり心を奪われて夢見ごこちになっていると、いきなり映像が消えて、乱暴で騒々しくて殺伐としたお芝居が始まりました。最初はその激しさに身を少々引いていたのですが、慣れてくると腕の良い俳優さんたちのユーモラスな側面に惹かれて楽しくなってきました。そのユーモアは、登場人物はもちろん、私たちのささくれだった心を包み込んでくれました。その暖かさが胸に痛いです。こういうワルのお芝居の、流山児祥さんの演出はしっくり来ますよね。
黄色い壁と白い床。大きくて古い冷蔵庫。4脚の丸イス。何もない空間に部屋、銀行、車の中などが現れました。みんな役者さんたちの迫真の演技のたまもの。
ラストに真ん中の床を透き通って照明が当てられていたのがかっこ良かった。
塩野谷正幸さん。キレたら何をしでかすかわからない(とりあえず殺してしまう)バグ役。『涙の谷、銀河の丘』での生き残り兵士役が強烈な印象だったのですが、今回間近で拝見してその凄さをさらに実感しました。恐いくらいの技術。
千葉哲也さん。リーダーのディック役。ごっついワル役をやらせると右に出る人がいないですよねー。でもちょっとそういう役ばかりが続いている気がするので他のも観たいです。
若杉宏二さん。病気もちのドニー役。見事なお間抜けさんでキュートでした。こういう役ははじめて見たなー。クールなワル役ばかりを拝見していたので、そのギャップが素敵だと思いました。
小川輝晃さん。美形ホモのビリー役。踊る踊る。脚が上がる。ATMできどってしゃべるシーンは笑えました。他の3人に比べるとやっぱりちょっと浅めかなー。
千葉さんのファンでらっしゃる演劇依存症さんは、何度もご覧になってるのかしら・・・?
流山児★事務所 : http://www.ryuzanji.com/
プッチーニ作曲『トスカ』11/9-16新国立劇場オペラ劇場
『トスカ』はプッチーニがどうしても作曲したくて、ねばり勝ちで手に入れた作品だそうです。
こんなに情熱的で残酷なお話だとは知りませんでした。今も昔も変わらず、人間の心は熱いと思います。
私がオペラを観るたびに必ず涙してしまうのは、その素直さからです。特に恋慕う気持ちが素直に歌い上げられると、それだけで感謝の気持ちが湧いてきます。ここは現代の舞台作品とはちょっと違うところですよね。新しいタイプのお芝居を観ている時などは、屈折すればするほど面白くてゾクゾクしたりします。それはそれで感涙もの。
トスカがスカルピオ(悪徳総統)をナイフで刺し殺し、逃げようとするけれど、スカルピオの死体がストールの上に乗っかってしまって、なかなかストールを引っ張り出せない、という演出は非常に効果的でした。そこで逃げられないまま幕が下りるのも素敵です。
牢屋から処刑台へと移る演出は新国立のオペラ劇場の装置だからこそ出来る仕組みだとか。演劇で見慣れているので特に気にならなかったのですが、舞台が互い違いに上下するというのはオペラでは珍しいのかも。かっこ良かったです。
名曲「歌に生き、恋に生き」をやっと生で聴くことができました。あー・・・感涙。これを聴くために観客は待ってたという感じですね。『トスカ』ではソプラノのアリアがこの曲しかないそうです。
マリア・カラスの一番の当たり役が『トスカ』だとか。
新国立劇場HP : http://www.nntt.jac.go.jp/