劇団八時半は京都の劇団です。今年の新国立劇場のラインナップにも入っている鈴江俊郎さんの作品を拝見したいので伺いました。
舞台は売れっこマンガ家さんのアトリエ。年中無休で夜も寝ずに働いているアシスタントさん達と作家先生の日常。住み込み家政婦は作家の姉。雑誌の編集者も女性で、職場は女ばかり。夜な夜な訪れる一人の男を除けば。
セリフを味わいました。フタを空けると登場人物全員がそれぞれに深い問題を抱えていたというのは、よくある展開とも言えますが、素朴で淡々としていて、地に脚のついたほんわかギャグともあいまって、独特の不幸の感触でした。観ている方がつらくならないのってとても優しいと思います。
「久保君はおもらしする。小さい子はおもらしするんだよ。小さいから隠そうとしてもちゃんと隠せない。」「そんな久保君のために描こう。そう思って始めたのに・・・」(セリフは正確ではありません。)
時々涙がこぼれました。現代の人間ならではの個人的な悩みをポツポツと並べていき、その解決法のなさを嘆きつつも、常に優しく登場人物たちを見つめる脚本でした。
ただ、演技の演出がどうも私には合いませんでした。関西の小劇場の役者さんの演技の仕方って、特有の色があるな~と思います。まず、声が大きい。叫ぶ。セリフがいかにもセリフとして聞こえてきちゃいます。簡単にいうと不自然。このお芝居については桃園会という劇団のタッチと似ていました(2002年11月『blue film』@シアタートラム)。
また、静かにしゃべる演技と怒鳴ってしゃべる演技がきっちり区別できるほど明確に分かれていて、しかもそれらが交互に出て来るのがパターン化していました。残念なことに私は途中で何度も覚めちゃいました。そして、あの露骨な棒読みは効果的ではない気がします。誰か特定の人物がそういうキャラクターなのだというわけでもないんです。いろんな人が棒読みしちゃうので。
舞台装置がちょっとおしゃれな感じでした。丸く大きな穴から照明が差し込むのってかわいいですよね。壁の小窓も奥まっている感じがメルヘンチック。ソファがシャーベット・グリーン色っていうのも気持ちいい。いっぱいいっぱい散らかして、明るめの転換の中でちゃんと片付けてから次のシーンになるのは新鮮でした。
遊佐未森さんみたいな感じの歌がオープニングとエンディングで流れて、雰囲気に合っているなと思いました。オルゴールの音楽が良かったな。
作・演出:鈴江俊郎
出演:中村美保/東理子/浦本和典/金城幸子/長沼久実子/茨木薫/田之室かおり
舞台監督:永易健介 舞台美術:柴田隆弘 照明:西岡奈美 音響:狩場直史(KTカムパニー) 制作:大屋さよ/三輪繭苗/福田尚子
劇団八時半 : http://hatijihan.at.infoseek.co.jp/
Posted by shinobu at 2004年01月12日 18:02