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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年01月12日

ラッパ屋『裸でスキップ』01/3-25THEATER/TOPS

 下町の家具工場で働くイケてないオヤジさん達のセミ・ドラマティックな日常を、ブロードウェイの大ヒット・ミュージカルのメロディーに乗せて描く、笑いあり涙ありの傑作・大人向けコメディーでした。今年の初笑いには最適ですね。少々ネタバレしますが、読んでから行かれても大丈夫だと思います。

 舞台は下町の零細企業の社員寮。男を部屋に連れこんでも「あらら、ヤっちゃったのね~」で済んでしまうおおらかな場所(笑)。
 オープニングの“ゆきづりの恋”で、まずうっとり胸きゅん。鈴木聡さんの脚本って本当に優しいです。生まれた時からごく平々凡々に生きてきた男(区役所づとめ)と、埋もれるのが嫌で他人と違った人生を歩んできた破天荒な女(家具デザイナー)の出会いから始まり、その後の2人のもろもろの展開を軸にして、家具工場の行く末とそこで働く人々を描きます。

 一夜の恋、結婚、浮気、不倫、離婚・・・不渡り、リストラ、脱サラ、倒産・・・。現代社会の日常となってしまっている、本来なら決して笑えない不幸な出来事を、ぐっとこらえて地道に乗り越えていく愛らしい日本のオヤジたちに感動です。もちろん鈴木さんの創作ですが、私は現代サラリーマンの様子をよく表していると思います。大人ってこんなにスゴイんだぜっ!って胸を張りたくなります。同時に可愛らしくって情けなくって涙も出ますが(笑)。

 悲鳴を上げたり罵声を浴びせたりせず『裸でスキップ』しちゃう日本人に乾杯!人間はお祭りが好きです。どうにも納まり切らない感情をお祭りで昇華させるのだと思います。笑いながら、涙、涙です。
 「なんだかいい話が始まりそうだけど、私、行くわ。」と、本題のところでぶった切るのがかっこ良かった。ハッピーともアンハッピーとも取れる途中のままのラスト。変にまとめることなく、本当に気持ちのいい仕切りでした。

 メロドラマチックなミュージカルの大音量の中、歌に合わせてセリフのやりとりが歌の緩急にぴったりだったのは痛快です。音楽が大音量になるタイミングが笑えます。選曲は時には笑えるし、時にはしみじみ。
 舞台装置に味がありました。その部屋を愛することが出来ました。照明で季節と時間の経過がきっちりわかりました。キメなきゃダメなところを逃さずキメています。

 かわいらしかったセリフたち。(完全に正確ではありません)
 「自分の中に夢がないのではない。まだ見つかっていないだけ。」
 「僕は言うよ。君は素敵だ!君には才能がある!!僕は54歳だよ。だけど僕には”君に振り向いてもらいたい”という夢がある。」
 「ばかやろう」「ふざけるな」「このやろう」等のあらゆる罵声。兄弟、幼馴染みの愛情が惜しみなく伝わりました。
 「お前、俺ら全員を亭主だと思ってたのか?」経理のおばちゃんの女っぷりに脱帽。

 大人の可愛らしさと優しさを堪能できる、年明けのハッピーコメディーです。普段はお芝居になじみのない方々にもガンガンお薦めできます。


作・演出:鈴木聡
出演:三鴨絵里子/木村靖司/おかやまはじめ/岩橋道子/弘中麻紀/俵木藤汰/他
舞台美術:キヤマ晃二 照明:佐藤公穂 音響:島猛(ステージオフィス) 衣装:木村猛志(A.C.T.) 演出助手:則岡正昭 舞台監督助手:山本修司、村西恵 舞台監督:村岡晋 宣伝美術:芹沢ケージ、冨宇加淳

ラッパ屋 : http://homepage3.nifty.com/rappaya/

Posted by shinobu at 2004年01月12日 19:21