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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年01月25日

松竹『おはつ』01/2-27新橋演舞場

 マキノノゾミ(脚本)&鈴木裕美(演出)コンビで松たか子さん主演の新橋演舞場公演。
 脇を固める俳優も超豪華。チラシもまた豪華で美しいのでちょっぴり期待して伺ったのですが、全般的に地味でしたね。

 時は幕末。胸の病を持つ女郎のおはつ(松たか子)の夢は、命が尽きる前に「曽根崎心中」のお初、徳兵衛のような激しい恋をすること。おはつには結婚を誓い合った正太郎(小市慢太郎)がいるが、2人の間に近藤勇(渡辺いっけい)が割り込んでくる。しかし、その仲裁に入った正太郎の幼なじみの直助(佐々木蔵之介)の方に、おはつは惹かれてしまい・・・。

 おはつと直助の狂おしく熱い恋をメインに描く演出だったようですが、新春の興行としては狙いが細やかすぎたんじゃないかと思います。細やかなのは本当は大好きなんですけど、お正月の新橋演舞場ということで、もっと華やかなものを期待していた私にとってはちょっと残念でした。

 おはつと直助は、お互いのせっぱつまった環境から、恋をするために恋をしているという印象を受けました。だから本当に恋に落ちているように見えにくかったです。でも、一目ぼれをしたその夜に褥(しとね)をともにするシーンのあの野獣っぽさはかっこ良かったな~。

 美術(松井るみ)はわざと作りこみ過ぎない、地味な感じにされたようですね。紐が垂れているのはさすが女性ならではの繊細な狙いだと思います。色もきれい。でも空間が抜けすぎていた気がします。

 きらびやかな遊郭から一転して貧しい2人暮らしになり、最後は本当に悲しい幕切れになります。全編通してメランコリックな音楽が何度も流れ続けるのがつらかった。

 直助(佐々木蔵之介)が最後に、本当にあっけなく沖田総司(北村有起哉)に殺されたのが素晴らしかったです。決闘をする人って、自分が死ぬとは思ってないんですよね。

 松たか子さん(おはつ)。一本調子過ぎたような気がします。私には残念ながら恋しているように見えなかったんですよね。直助が切られた後に沖田総司に向かっていく演技は熱くてとても良かったです。
 佐々木蔵之介さん(直助)。私は優しい蔵之介さんが好きですね。大きな目をさらにギョロリとされるのは、アクション系芝居の時に存分に発揮していただけたらいいなと思います。今回はちょっと怖すぎたな~。

 小市慢太郎さん(正太郎)。優しさゆえ弱い男っぷりが愛らしかったです。でもちょっと間が長すぎたかなぁ。
 北村有起哉さん(沖田総司)。とにかく輝いていました。瑞々しい若さと体全体からあふれる優しさに、胸が晴れやかになりました。コミカルな演技も暖かかったです。朝日新聞でも「新しい沖田総司像」と評されていましたが、本当にその通り。北村さんのこの演技を観られただけで幸せです。
 渡辺いっけいさん(近藤勇)。花道で拍手したくなったのはいっけいさんだけでした。渋かったな~。

 当日パンフレット(筋書き)のカバーがものすごく素敵でした。紙質もいいしデザインも上品で、新橋演舞場のパンフは大好きです。

作:マキノノゾミ 演出:鈴木裕美
出演:松たか子/佐々木蔵之介/小市慢太郎/北村有起哉/佐藤江梨子/渡辺いっけい/江波杏子/田鍋謙一郎/八十田勇一/武田浩二/松島正芳/平田敦子/歌川椎子/福井貴一
美術:松井るみ 照明:中川隆一 効果:井上正弘 衣裳:宮本宣子 ヘアメイク:河村陽子 殺陣指導:川原正嗣、前田悟 方言指導:大原穣子 演出助手:坂本聖子 演出部:赤羽宏郎、宇野奈津子 舞台監督:菅野将機、浅香哲也 制作:岡崎哲也(松竹)、吉川博宗(松竹)、佐藤玄(パルコ)

松竹(歌舞伎・演劇) : http://www.shochiku.co.jp/play/

Posted by shinobu at 2004年01月25日 23:36