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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年03月22日

燐光群『だるまさんがころんだ』02/20-03/07下北沢ザ・スズナリ

 坂手洋二さん久々の燐光群での書き下ろし新作です。
 地雷をテーマにした短編がせめぎ合うオムニバス・ファンタジー。

 黒いアスファルトのイメージのシンプルな八百屋舞台で繰り広げられる「地雷」をテーマにした短編たちは、地雷の今を伝えてくれます。
 突然の爆撃音でお芝居は始まりました。客席からは「きゃ!」とか「えっ!」声が漏れて、私も体がビクっとなりました。驚かされるのって本当に苦手なんですよ、私。心がムカムカして怒っちゃうほど。でもこのオープニングには納得です。そうやって突然に体が吹っ飛ぶんですよね、地雷に当たると。

 私が覚えている短編の登場人物を挙げると↓
 地雷原に迷い込んでしまった自衛隊員。
 日本で唯一の地雷製造メーカーで働いている父親。
 地雷撤去に命を燃やす義足の女。何度も地雷に当たり、サイボーグになる。
 親分に地雷をとって来いと命令された極道の男。
 地雷商人の2人組(実はすでに地雷で死んでいる)。
 地雷原で暮らす人々。双子の兄弟。
 地雷を見つけて食べる巨大トカゲ。
 セントラル・パークに埋まる地雷。 など

 地雷についてのリアルな知識をじゃんじゃん垂れ流すように教えてくれます。物語としてはちょっと説明くさすぎるなーと思いながらも、やっぱり知りたいし引き込まれます。
 地雷って・・・数が尋常じゃないですね。ひとつの地雷で2人に1人は死ぬ。死ななかったとしても手足がなくなったり目が見えなくなったりします。以下、パンフレットより→今、世界中に約1億数千万個の地雷が埋められている。20分間に1人の割合で負傷or死亡。1個作るのに3ドル。取り除くには千ドル以上。1分間に千個以上が撒かれる。
 「地雷にあたるのは日頃の行いが良くないからだ、と親に教えられるから、足が無くなった子は恥ずかしそうに義足の順番待ちをしている」そうです。胸が締め付けられました。

 目を背けたくなる現実を生々しく伝えながら、笑いも満載でした。地雷ラップは楽しかった。特に極道の男と義足の女のロマンスには胸がときめきました。「君はだるまさんだ。俺は君を転がしたい。」まさか一番のけなし言葉がくどき文句になるとは。

 地雷商人の2人組のシーンで彼らが大切そうに地雷を扱っているのを見ていると、不思議なことに、地雷に心があるような気がしてきました。作られて埋められて時限装置で自爆させられて。責務を果たせぬまま眠り続けるのもあれば、突然目覚めさせられるものもある。

 世界の多くの国々で遊ばれる「だるまさんがころんだ」の言葉の洪水でエンディング。人間同士、傷つけ合いたくないです。愛し合いたいです。そんな気恥ずかしくなるぐらいの素直な気持ちがすんなりと心から溢れてきます。だから坂手さんの作品は見逃せないです。ずっとずっと。

<作・演出>坂手洋二
<出演>中山マリ 川中健次郎 猪熊恒和 下総源太朗 大西孝洋 鴨川てんし 江口敦子 JOHN OGLEVEE 樋尾麻衣子 宇賀神範子 内海常葉 向井孝成 瀧口修央 宮島千栄 工藤清美 裴優宇 桐畑理佳 久保島隆 杉山英之 小金井篤 亀ヶ谷美也子 塚田菜津子
<スタッフ>照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)音響=島猛(ステージオフィス)美術=じょん万次郎 舞台監督=海老澤栄 衣裳=大野典子 演出助手=吉田智久 文芸助手=久保志乃ぶ 宣伝意匠=プリグラフィックス 美術協力=加藤ちか・丸岡祥宏 制作=古元道広・国光千世・大場さと子・川崎百世

燐光群 : http://www.alles.or.jp/~rinkogun/

Posted by shinobu at 2004年03月22日 23:41