長塚圭史さんが作・演出をする阿佐ヶ谷スパイダースの本公演です。全国9箇所も回るんですね。
いや~・・・濃密でハードな2時間半でした。満腹で帰宅です。でも、つ、つかれた・・・。
雪国のつぶれたりんご農園の事務所。なぜか必死で“しぶい”リンゴを作ろうとしている男たち。借金が返済できなければこの事務所も取られてしまう。そんな時にトラックの荷台の荷物を捨てるだけで大金が入る、という話が舞い込んできた。(これ以降、ネタバレします。)
長塚さんのお芝居は男がかっこいいです。日陰者と言っても言いすぎでないダメな男たちの、とある非日常の極限状態。ユーモアをぞんぶんに散りばめながら、命がけの馬鹿さわぎがどんどんと人間の哀しみや苦しみの核心に迫っていきます。
ある意味“夢オチ”ですが、私は完全なファンタジーにならなくて本当に良かったな~と思います。山崎一さんプロデュースの長塚さん作・演出作品『メオト奇想曲』では目黒区VS世田谷区の戦争という架空の設定がそのまま劇中の事実としてエンディングでしたが、今回は現実に戻りました。だからこそ最後の「許す」という言葉が胸に響くのだと思います。
長塚さんの脚本はだんだんと「荒削り」ではなくなって来ましたよね。貫禄を感じます。才能と努力が両立されると、すごいことになるんですね。
聖子ちゃんの『ガラスの林檎』大熱唱はかっこ良かったな~。
必殺の産業廃棄物を食べるシーンは涙モンですよね。ダメ男たちが英雄に見えました。こういうのを武士道っていうのかなと思います。武士は食わねど高楊枝、です。食うけど(笑)。
音響(加藤温)が良かったと思います。音楽はエレキギターとかドラムの激しい音ですよね。ああいうリズムを何と呼ぶのかは知らないのですが、あのノイズがなぜか切なく響いてくるんです。そして音楽を含めて全体の音のバランスが良いと思います。シリアスシーンとか緊張が高まるシーンとかの音があざとくないし、鳴る場所も音量も非常に繊細です。バシっと大音量で決めるときは決めるし。狙いもはっきりしていて好きです。
美術(加藤ちか)が凝りに凝ってましたね~。大きな仕掛けも小さな工夫も色々楽しませていただきました。なんと言ってもあの車はすごい!細かいところだと、ストーブの明かりの色がオレンジ(現実)から緑(夢)に変わってるのがステキでした。
伊達暁さん。トラックに乗って来た金髪の弟役。やっぱり何をやっても面白い!泣くのが可愛い!リアルです。
富岡晃一郎さん。デブのイヤな男役。ほんっとにヤな感じだけど、憎めない。彼のおかげでスプラッターもギャグになります。本当に演技がお上手ですよね。
長塚圭史さん。ちょいと出てきてくださって本当に嬉しいです。長塚さんの軽快さがすごく好きです。
作・演出:長塚圭史 出演:池田成志 中村まこと 松村武 中山祐一郎 池田鉄洋 長塚圭史 伊達暁 富岡晃一郎 志甫真弓子
【舞台美術】加藤ちか 【照明】佐藤啓 【音響】加藤温 【衣裳】木村猛志(A.C.T.) 【演出助手】山田美紀(至福団)【舞台監督】福澤諭志+至福団 【宣伝美術】Coa Graphics(藤枝憲 高橋有紀子 河野舞)【宣伝写真】三橋純 【特殊効果】武藤晃司 【編集】森山裕之 【web】山川裕康 【制作助手】山岡まゆみ 西川悦代 辻未央 【制作】伊藤達哉 岡麻生子 【製作】阿佐ヶ谷スパイダース
阿佐ヶ谷スパイダース:http://www.spiders.jp/