鈴木勝秀さんが構成・演出するお芝居です。鈴勝(スズカツ・suzukatz.)というのがニックネームのようですね。
佐藤アツヒロさんはすっかり舞台の人になられましたね。元・光GENJIというイメージもそろそろ不要なほど。
ある若い男オガワ(佐藤アツヒロ)の部屋。彼は覚せい剤中毒で、売人(伊藤ヨタロウ)から薬を買う毎日。ある日、自分の家に見知らぬ長身の男エンドウ(橋本さとし)がやってきて、同居生活が始まる。薬からの更生を勧める職業安定所職員(鈴木浩介)と薬物更生クリニックの所長(佐藤誓)がオガワの部屋を訪れるが、彼は全く言うことを聞かない。
ストーリーは一応ありますが、あまり重要じゃなかったです。鈴木さんが「脚本ではなく構成」とおっしゃるのがよくわかります。全てモノトーンで統一された円形の空間に、静かに点るように現れる一人の男の暗くて孤独な内面世界。笑いも楽しいアイデアも沢山ちりばめられています。
鈴木勝秀さんの演出作品は同じく青山円形劇場での『欲望という名の電車』を拝見しましたが、確かに鈴木さんのおっしゃるように“鈴勝(スズカツ)”色が全面に表れた感じでした。最近だと大竹しのぶ一人舞台『POP?』もそうですよね。全く違う作品なのに共通する何かが感じられます。
聞きなれたロック・ミュージック(など)が惜しみなく流れるのは、『欲望・・・』では私はあまり好きではなかったんですけれど、慣れるとすごく心地よく感じますね。素直にかっこいいと思いますし、知っている曲が流れると親近感を覚えます。それが狙いなのかもしれません。
衣裳(尾崎由佳子)が良かったな~・・・。生地やデザイン、小物がすっごくおしゃれで見とれてしまいました。作られたのか買ってここられたのかわかりませんが、とにかく上質でスタイリッシュで遊び心もあってカッコいいんです。こういう服をさらりと着てくれる男性にホレるね。
橋本さとしさん(背の高い男)が面白すぎて、笑いすぎて、涙が出てきて、むせてしまいました。物語の行く末がさっぱり見当もつかなくなるほど爆発力のある、とっぴなギャグが凄いです。何を考えて生きてるの!?と聞きたくなっちゃう(笑)。帝国劇場の『ミス・サイゴン』も、橋本さんの回を取ればよかったかも!?ってちょっと後悔するぐらい。
パンフレットに鈴勝さんと役者さんとの対談がたっぷり載っていて面白いです。作品の意図や世界観が、これを読んでやっとわかる感じです。
「基本的にデュシャンやウォーホール好きの僕は<作りかえること>に興味があるのだと理解している。オリジナリティの追求よりもコピーしたり言葉をコレクションし続けることが楽しいのだ。」(パンフレットより抜粋)
LYNKSは絶滅寸前の動物「オオヤマネコ」の学術名です。
構成・演出:鈴木勝秀
出演:佐藤アツヒロ 橋本さとし 伊藤ヨタロウ 佐藤誓 鈴木浩介
照明:倉本泰史(エアー・パワー・サプライ) 音響:井上正弘(オフィス新音) 美術:石井みほ 衣裳:尾崎由佳子 舞台監督:安田美和子 演出助手:阿部洋平 宣伝美術:鳥井和昌 制作助手:坂本恵美 制作:大島尚子(こどもの城劇場事業本部)
青山円形劇場内:http://www.aoyama.org/japanese/schedule/s2004/enkei/4lynx/lynx.html