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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年05月08日

松竹・テレビ朝日『アマデウス』ル テアトル銀座05/05-27

 1981年トニー賞受賞作品。映画もアカデミー賞をたくさん受賞してますよね。日本では1992年初演で今回は6年振り、9度目の再演。この公演の千秋楽で上演回数400回を記録するそうです。アマデウスは「神の寵児」の意味。
 同じ分野の芸術家が片方の才能を嫉妬するお話で、親子(父子)共演するなんて・・・マゾなんじゃないの!?って思います(笑)。

 出演者は豪華だし、衣裳も美術もル テアトル銀座では久々のヒットだったし、脚本もさすがに面白くって、予想をしていたよりもずっと楽しく拝見させていただきました。

 映画を観た頃は私はまだ子供だったので、オペラのシーンを観ても「衣裳や舞台が豪華でキレイ!」ぐらいにしか思っていなかったのですが、オペラを経験した今では「あのオペラにはこんな背景があったのか!」と夢中になりました。
 『フィガロの結婚』:サリエーリ「彼は日常から芸術を作り、私は伝説から凡作を作った。」
           (理髪師が主人公のラブ・コメディーだから。)
 『ドン・ジョヴァンニ』:モーツァルトは亡くなった厳格な父親の影を登場させた。
 『魔笛』:それはモーツァルト自身のこと。サリエーリ「彼は神の吹く“笛”だったのだ。」

 作者ピーター・シェファーさんの文章に「日本の『アマデウス』はオリジナルのジョン・ベリーによる装置、衣裳、照明デザイン、またハリスン・バートウィッスルの音楽アレンジメントを使っている唯一のカンパニーです」とありました(パンフレットより)。
 なるほど、衣裳も装置も本当にうっとりするほどのクオリティーだったのはこのせいだったのね~。ものすごく私好みでした。

 そして音楽!そうですよ、モーツァルトだもの!モーツァルトを前にサリエーリが報われない想いを独白するシーンが何度もあるのですが、涙が溢れて溢れて、顔がくしゃっとなって、なんでこんなに!?と自分でも驚くほど心が震えました。後半になって気づいたのですが、それらのシーンでは必ずモーツァルトの音楽がかかっていたのです。
 幸四郎さんのサリエーリも染五郎さんのモーツァルトも、モーツァルトの調べの前には同じ人間でした。神の前にひざまずき、ありのままの姿をさらけ出した彼らは、まるで私自身、というよりは“人間”そのもののように感じられました。

 下品なところが多々あったのですが・・・私は苦手ですぅ。染五郎さんを正視できませんでした(笑)。モーツァルトが、卑猥な言葉ばかり連発する、行儀の悪い、軽率な、子供っぽい青年である(パンフレットより)というのが本もとの設定ですから仕方ないんですけどね。あれでも外国バージョンよりはずっとマシなのだそうです。

 松本幸四郎さん。サリエーリの気づきと苦悩を、情熱的にしたたかに演じてくださいました。私はあまり幸四郎さんってタイプじゃないんですよ、声とか演技とか。だけどこのサリエーリ役には本当に感動させられました。ものすごい適役なんですね。演出をされているのも良かったんじゃないかなー。

 市川染五郎さん。登場シーンで緊張が伝わってきました。気が張っていて笑えない。声が割れてたのも残念。やっぱり2日目って役者さんは不調ぎみなのかも(笑)。でも中盤を越える頃からそんなのどうでもよくなりました。だってキレイなんだもの!彼は染五郎じゃなくなっていました。モーツァルトでした。不幸な少年でした。
 染五郎さんは「前回までは天才だけれど最後に死ぬところでは、人間として見せようと演じました。でも今回は、人間的な部分をまったく感じさせないモーツァルトで行こうと思います。」と記者会見でおっしゃっていたそうですが、私はこの解釈がとても良かったと思います。

 馬渕英里何さん。残念ながら気品が感じられなかったです。だから、スタイルがとっても良い方なのにドレスがあまり似合わないんですよね~。劇団☆新感線での味をそのまま乗っけてしまっているのが問題なのではないかしら。コンスタンツェは褒められると必ず「最高!」という言葉を返すキャラクターなのですが、ちゃんと言えてなかったと思います。

 ※引用したセリフは完全に正確ではありません。

作:ピーター・シェファー 演出:松本幸四郎
出演:松本幸四郎(サリエーリ) 市川染五郎(モーツァルト) 馬渕英里何(コンスタンツェ) 堀越大史 新井康弘 長克己 外山誠二 奥野匡 日野道夫 田中耕二 河野正明 植本潤 松本幸太郎 春海四方  五十嵐りさ 杉浦悦子 那智ゆかり 松本錦一 松本染二郎 桑原一人 加瀬竜彦 池田真一 辰巳蒼 松川真也
翻訳:倉橋健 甲斐萬里江 美術:畑野一恵 照明:沢田祐二
音響:辻亨二 内藤博司 メーク:青木満寿子 演出助手:赤羽宏郎 松本紀保 舞台監督:松坂哲生 制作:吉川博宗 寺川 知男 制作協力:(株)松竹パフォーマンス 協力:シアター・ナインス 主催:松竹株式会社 テレビ朝日
松竹内公式サイト:http://www.shochiku.co.jp/play/others/le_theatre/amadeus/

Posted by shinobu at 2004年05月08日 19:24