2004年06月27日
メルマガ『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』始めます♪
今年の初めから計画していたメルマガの準備が整いました。
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ちょっと主張の強いタイトルで恐縮なのですが、メルマガ攻略本などを参考にしながら(笑)、まぐまぐで検索にかかりやすそうな言葉を選びました。
月刊号(毎月1日発行):その月のお薦め舞台情報10本と先月のベスト3を発表します。
号 外(不定期発行):面白い作品に出会ったら、その翌日の午前中までに号外を発行します。
“しのぶの演劇レビュー”をチェックしなくても、自動的に大当たりの作品がわかるというすっごく便利なシステム!(にしたい!)
あくまでも私の好みを基準にしていますが、演劇ファンにとっての一つの視点であると共に、あまり演劇になじみの無い方が演劇に触れる時の、一つの指標になれたらと思っています。
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2004年06月25日
パルコ/ニッポン放送『HEDWIG AND THE ANGRY INCH 新宿ナイツ』6/23, 24東京厚生年金会館
トリビュート・アルバムも映画のサントラ盤も買って、聴けば聴くほどヘドウィグ熱が再燃してしまい、とうとう行っちゃいましたよ追加公演。
私が最初に観に行ったのが初日明けてすぐで、三上さんもまだこなれてない時期だったんですよね。だから地方公演4ヶ所から帰って来た皆さんは、ものすごくリラックスされているようでした。も~、のびのびしすぎ!ってぐらい。
やっぱり、三上さんは素晴らしかったです。歌は上手いし、声量もすごくあるし、なんと言ってもあの言葉が強い。
演技については、素笑い(のように見せるの)が多くなってました。セリフも完全に自分のものになっているし、アドリブっぽく見せる方法も身に付いている様でした。そういう意味ではパルコ劇場で観た時の方がシビれるような臨場感があってよかったです。まあロック・ミュージカルですしね、厚生年金会館にライブを観に来たんだと思えば大満足です。
下ネタ、増加していましたね(笑)。ひととおり激しく色々ヤった後に、正座して「お下品?」と首をちょっと斜めにかしげながら観客に聞いてみる三上さん、キュートです。
演出はわかりやすくなっていました。ヘドウィグがイツァークに金髪ウィッグを被せる動作が追加されていましたし、イツァークがウィッグを付けて、全身ピンクの衣装の女性になって現われた“後”に、男と女が一体化する映像が流れました。ミラーボールが切ないシーンだけで使われてて良かったな~。
トミーを想って泣いてヘコんでしまったヘドウィグの代わりに、バックバンドのギター奏者が歌を歌うシーンがありますよね。そのギター奏者さん(近田潔人)の歌がすごく良かったです。ため息まじりにサラっと歌うのがかっこいいし、甘いきれいな声に聞きほれました。ヘドウィグのことを大切に思っているバックバンドの気持ちが伝わってきました。
東京でもアンコールがありました!「新宿ナイツ」って名前つけるぐらいですから絶対あると思ってましたが、嬉しかったな~。ラストはシルバー系統のド派手な紙ふぶきがドッサリ!テープ(?)も用意されていて圧巻でした!最後の最後にめちゃくちゃ燃えましたね~。
ちょっぴり難を言わせてもらうと、4回目まで待たせたのは長かったですね。隣りに座っていた及川光博さん(ミッチー)、帰っちゃいましたよ。拍手して待ってた者勝ちっていうんじゃなくて、みんなにアンコールを楽しませて欲しかったな。
映像にI will be back.(また戻ってくるよ)って書いてあったので、きっと再演あるんじゃないかしら♪ あぁしばらくこの熱は下がりそうにありません。私がCDウォークマンをつけてたら、それはHEDWIGですよ!
作 ジョン.キャメロン・ミッチェル 作詞・作曲 スティーヴン・トラスク
《出演》ヘドウィグ:三上博史 ROCK BAND“THE ANGRY INCH”→ イツァーク , Piano , Chorus :エミ・エレオノーラ Bass :横山英規 Drums:中幸一郎 Guitar:テラシィイ Guitar:近田潔人
翻訳・演出:青井陽治 音楽監督・編曲:横山英規 美術:二村周作 照明:吉川ひろ子 音響:山本浩一 ヘアー:赤間賢次郎 メイク:久保田直美 演出助手:槙 圭一郎 舞台監督:北条 孝/上田光成 制作:田中希世子/村田篤史 企画協力:ポスターハリス・カンパニー 企画.製作:パルコ/ニッポン放送
パルコ劇場内公式サイト:http://www.parco-city.co.jp/play/hedwig/
2004年06月23日
サッカリンサーカスのザムザ阿佐ヶ谷ナイト『毛皮のマリー』06/22ザムザ阿佐ヶ谷
サッカリンサーカスは伊地知ナナコさんが作・演出する早稲田大学系の劇団です。
ワンステージのみのイベントでしたね。(昼間に公開ゲネがあったみたいです。)
『毛皮のマリー』は寺山修司さんの超有名な作品です。美輪明宏さんのオハコですし、篠井英介さんも数年前に演じられています。公演のたびに美少年役が誰なのかが話題になりますが(え?ならない?私にとってはそれが最重要事項です!)、私が観たのは美輪さんVS及川光博さんでした。武田真治さんも及川さんの前に演じられていますよね。篠井さんの時は内田滋啓さんでした。
作品について。ひとことで言うと荒かったです。準備不足、だったのでしょう。主役のマリー役の倉持健吾さんはほんの数日前まで他のお芝居(本多劇場)で本番中だったそうです。なるほど何度もセリフを間違ってましたしね。噛むだけじゃなく飛ばしたり。かなきり声を張り上げてばかりの発声とあせるばかりの所作では、マリーにはなれないんじゃないかな。力の有る俳優さんだと思うので、とても残念な気持ちでした。
ロックンロール&シャウト系の演出でした。たまにベタにメランコリックな音楽が流れたりしましたが。時々、禁断の恍惚感覚も感じられたのですが、あと2ステージ後ぐらいに観られれば全体的にしっくり来たかもしれません。ただし、女の子が股をおっぴろげ過ぎです。あれじゃぁエロスがありません。はっきりと言葉を伝えられる女優さんだったので悲しいです。松葉杖をつかれていましたが本当に骨折されていたそうです。どうぞお大事に。
1回きりの120名様限定公演で、内輪の客しか来ないという見通しだったからか、制作まわりもちょっと手抜きでしたね。まず、チケットも整理券もありませんでした。受付した順番にちゃんと並ばせてくれなかったので、苦情(のつもり)を言ったのですが、「今いらっしゃるお客様のお席は確実にありますので」のひと言で済まされてしまいました。うーん・・・私は良い席に座るために受付開始前に劇場前に行ったんです。「次もサッカリンサーカスを観に行きたい」と思わせるには、不親切すぎたんじゃないでしょうか。内輪客ばかりだとしても、誰にでもオープンな公演であるべきだと思うのです。でないと、せっかく新しくファンになったお客様を取り逃がしてしまいます。
明石修平さん(オードブル)。マリーに監禁される美少年役。私は明石さん目当てで伺いましたので、そういう意味では大満足でした。在り方がごく自然です。ナチュラル(天才)と言えるのかもしれません。美しいだけではなく、壊れそうで狂っていました。好色女に襲われる姿は悩ましく、襲い掛かる姿は痛ましく、すごくセクシーでした。胸元が広く開いた純白のドレスも似合いすぎで、悩殺されそうでした(笑)。危険・必見な男優さんです。
作・寺山修司 演出:伊地知ナナコ
出演:倉持健吾(流山児★事務所) 佐藤華子(流山児★事務所)田辺幸太郎(少年社中) 明石修平(オードブル) 酒井和哉(サッカリンサーカス) 伊地知ナナコ(サッカリンサーカス) 内木明子
舞台監督:杣谷昌洋 照明:工藤雅弘(サッカリンサーカス) 音響:宮坂佳奈(Sound Cube) 演出助手:平野智子 衣裳:鈴木美和子 舞台美術:水落智彦
(サッカリンサーカス) 宣伝美術:クワタナヲえ 企画制作:香西章子(サッカリンサーカス) 水落智彦(サッカリンサーカス)
サッカリンサーカス:http://www.h3.dion.ne.jp/~saccarin/
2004年06月21日
演劇企画集団THE・ガジラ『国粋主義者のための戦争寓話』05/05-19ベニサン・ピット
作・演出の鐘下辰男さん恐怖症でずっと避けてきたTHE・ガジラ。先入観を捨てるためにやっと初見です。新国立劇場での鐘下さん作・演出の作品で一度目は途中退出、二度目は最後まで我慢したものの不快感炸裂だったので。でも先日の『サド侯爵夫人』はすごく良かったです。
tpt以外でのベニサン・ピット公演を観たいというのもあって伺いました。
長崎に原爆が落とされた翌日の東京。飛行時間が7分間しかないロケット戦闘機に乗って、原爆を搭載したB29を撃墜せよとの命を受けた龍巳少尉(横田栄司)は、部下を数名連れて山の奥深くに建設された極秘の発射台に向かった。3日かけてやっとたどり着くと、先に到着しているはずの先行隊30名は食料とともに跡形もなく消えていた。近くの村人は「彼らは化け物に飲み込まれたのだ」と言うが・・・。
極限状態の世界。客席でも小さな緊張がずっと途切れることなく続くような、2時間15分休憩無しの体験でした。
思い込み。自意識過剰。下手なプライド。差別。兵隊同士での仲間割れ。学生上がりの間違ったエリート意識。
姿を現さない“原住民”という存在がこの作品世界を広大にし、戦時中の日本だけのお話に留まらない普遍的なテーマを感じさせました。
“あちら側”と“こちら側”というワードが飛び交いました。 『THE OTHER SIDE/線の向こう側』と同じですね。
チラシに載っている鐘下さんの文章です。
『「戦争反対」を声高に口にしている者達の中にも、実は「暴力行為」の可能性が秘められているということを、私たちは今、自覚すべきではないのだろうか。』
少尉の回想を(妹の死の真相など)その場の登場人物で表現しきるのがすごく面白いし、臨場感も醍醐味もありました。言い切り方が強引で渋くてかっこよくて、演出力ってこういうところに現れるんだな、と感じました。
舞台美術はベニサン・ピットを奥の奥まで全部利用していました。まず壁に直接色が塗られているのがこの劇場ならではですよね。古びたコンクリートや廃墟イメージがすごく自然です。
大き目のシンプルな勉強机を沢山並べ、それの上に役者さんが乗ったり、机をすべらせて移動させたりして変化をつけていきますが、照明とその机との兼ね合いが面白かったです。
そう、照明がこの作品では非常に重要な役割を果たしていました。まるで神話を朗読する語り手のような大きな存在でした。鐘下辰男さんの重厚な空間作りには、この大胆不敵な照明プランがものを言っている気がします。ストイックで頑固そうで、四字熟語なら「質実剛健」でしょうか。私はすごく好きですね。
若松武史さん。龍巳少尉の兄役。この人にしか出来ない!という演技を見せてくださいます。とにかく好きでした。あぁ若松さんだな~と思うと楽しくて。
いつもソフトな印象の近江谷太朗さんと寺十 吾(じつなし・さとる)さんが堅い兵隊役で出てらっしゃるのは新鮮でした。キャスティングも面白かったです。
内容が非常に暗いし怖いし窮屈だし深刻だし、一般の観客が簡単に「良かった」とは言いづらいであろう重たい作品だったのですが、私は「好き」でした。ストーリーとか登場人物の物語とかを楽しむよりも、質感や雰囲気が好きだったんですよね。鐘下さん恐怖症、克服できそうです。
作・演出 鐘下辰男
出演:若松武史 横田栄司(文学座)久保酎吉 河野洋一郎(南河内万歳一座)近江谷太朗 寺十 吾 栗原 茂(流山児★事務所) 加地竜也 神野美紀 占部房子
美術:島次郎 照明:中川隆一 音響:井上正弘(オフィス新音) 衣裳:伊藤早苗 演出助手:永元絵里子 舞台監督:村田明(クロスオーバー) プロデューサー:綿貫凛 舞台監督助手:八須賀俊恵(クロスオーバー) 演出部:阿久津由美(バックステージ) 照明操作:宇野梨良 音響操作:清水麻理子(オフィス新音) プロンプター:岩橋毬 宣伝美術:マッチアンドカンパニー 宣伝写真:北川浩司 制作デスク:木寺美由紀 制作アシスタント:石坂実穂 山崎志保 票券管理:中谷陽子 大道具製作:株式会社俳優座大道具 小道具:株式会社高津映画装飾 履物:神田屋靴店 特殊小道具製作:土屋工房 衣裳:東宝コスチューム 衣裳協力:大野典子 主催:有限会社ガジラ ベニサン・ピット:支配人 瀬戸雅嘉
THE・ガジラ:http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/gajira.html
松竹・サンシャイン劇場提携公演『謎の変奏曲』05/21-06/06サンシャイン劇場
フランスの劇作家エリック=エマニュエル・シュミットさんの作品。1996年パリ初演で、日本初演は1998年の風間杜夫&仲代達也 主演、宮田慶子 演出バージョンでした。今回が始めての再演で、演出は同じく宮田慶子、キャストは沢田研二&杉浦直樹です。
『謎の変奏曲(VARIATIONS ENIGMATIQUES)』は実在するクラシックの名曲のタイトルです。サー・エドワード・エルガー作曲。14個の変奏からなり、主旋律が隠されたままで、今でも主旋律が何の曲なのかは解明されていません。日本でも『エニグマ(謎の)変奏曲』として知られているそうです。
愛について深く深く語りつくす、ウィットに富んだ大人向けの会話劇に、涙が次々と溢れてハンカチなしには観られません。そして大どんでん返しの連続です。こんな傑作脚本はいつかまた上演されるでしょうから、今回観られなかった方は、内容には決して触れないようにして、再々演をどうぞお待ち下さい。でも、仕掛けを知ってしまった後でも他の楽しみがあるので、私もまた観に行くと思います(笑)。
スウェーデンの孤島に住むノーベル賞受賞作家アベル・ズノルコ(杉浦)の家に、片田舎の冴えない新聞記者エリック・ラルセン(沢田研二)が、単独インタビューに訪れる。出会うはずがないほど性格も立場も違う二人だが、会話が進むについれて互いの秘密が明かされていき・・・。
休憩を含んで3時間弱ある長編2人芝居は、ズノルコとエリックと共に、自分も15年の歳月を生きたように感じるほど濃密でシックな時間でした。その上、これでもかこれでもかと急展開が重なっていきますので、気持ちよく疲労困憊です(笑)。
キャッチコピーになっている「人は誰を愛しているのかわからない。永遠に・・・」は、舞台には登場しない、ある重要人物のセリフでもあるのですが、心の奥の方ですごく共感しました。
また、大作家ズノルコが皮肉っぽく語る愛についての言葉は、どれもこれも深い洞察力から生まれたものに違いなく、共感しつつ感化されつつ聞き入りました。戯曲本が欲しいです。
音楽はタイトル曲『謎の変奏曲』を舞台上でレコードで流されるのが中心で、他はかもめの声や波、雨、風の音、そして銃声などの効果音です。舞台は木製のしっかりした造りの豪邸の、ピアノのあるリビング。白夜なのでずっと日が落ちず、黄昏時の照明が続き、窓の外には海の水面が輝いています。サンシャイン劇場のような高さのある空間で、これほど上質なイメージに統一して作られている美術だと、それだけで観ている方もゴージャスな気分になります。
沢田研二さん。60~70年代の日本の大スター歌手です(今も活動されています)が、今は舞台俳優としてもご活躍です。型にはまった、沢田さんっぽいしぐさや予定調和な口調をされるのはあまり好きではなかったのですが、セリフの意味を丁寧にはっきりと伝えてくださいました。ユーモアも可愛らしかったです。
杉浦直樹さん。いつもながら貫禄の存在です。この膨大なセリフを覚えて演じられているなんて72歳とはとても思えないお元気さ。気難しい大作家を確実に演じながらキュートな面もしっかりと表現してくださいました。ひとつひとつの言葉にこだわりをお持ちで、細かい演技についての集中力がすごいと思いました。
私の隣に座っていた学生風の若い男女は、おそらく関係者扱いで無料入場された様子。開演前は他の席の友達と手を振り合ったりしていたのですが、中盤以降は二人とも涙をすすりながら真剣にご覧になっていました。カーテンコールでは会場中が感動の嵐で割れんばかりの大拍手。私ももう少しでスタンディングしそうでした。
来月、同じくエリック=エマニュエル・シュミットさんの作品『ヴァローニュの夜』(07/10-18@紀伊国屋ホール)がシアター21によって上演されますね。こちらも楽しみです。
出演:杉浦直樹 沢田研二
作:エリック=エマニュエル・シュミット 訳:高橋啓 演出:宮田慶子
美術:島川とおる 衣裳:緒方規矩子 照明:中川隆一 音響:高橋巌 音楽アドバイザー:沢田完 舞台監督:鈴木政憲 制作:寺川知男 本田景久 制作協力:(株)松竹パフォーマンス
松竹(演劇):http://www.shochiku.co.jp/play/index.html
りゅーとぴあレジデンシャル・ダンス・カンパニー Noism 04『SHIKAKU』06/16-20新宿パークタワーホール
世界的な振付家でありダンサーである金森穣さんは、新潟市民芸術文化会館“りゅーとぴあ”の舞踏部門の芸術監督になられたんですね。
日本初のプロフェッショナル・ダンス・カンパニーのお披露目公演です。そう思うと感慨深いです。
NHKのトップランナーという番組で初めて金森さんと彼の作品のダイジェストを拝見して、素敵だなぁと思ったのでチケットを取りました。大人気で追加公演があったんですね。(そういえば今度はコンドルズがトップランナー出演とか?)
「全席立ち見」ということで動きやすい格好のお客様が多かったのですが、おしゃれな人が多い!おそらくダンサーさんだろう方々も沢山いらっしゃいました。
劇場の扉が開くと、目の前にまず白い壁。壁伝いにゆっくりと中へと足を進めていくと、大きな発砲スチロールの板を重ねて作った壁によって囲まれた、部屋にたどり着きます。パークタワーホールは大小さまざまな4つの部屋に区切られていました。観客はその部屋を自由に歩き回っていいのです。一人ずつ、少しずつ、ダンサーが現れて、それぞれ即興っぽいダンスを踊り始めます。ダンサーは全員が髪と眉毛を白に近い金髪に染めていて、衣裳もそれに順ずる灰色でしたので、壁と同化していました。人間じゃない感じ。壁にはところどころ穴(覗き穴)が空いていて、そこから他の部屋のダンスを覗くこともできます。目の前、というか体が触れる近さで踊ってくれるのですから、すごい体験です。ダンサーがすばやく移動する時に、腕をつかまれたりも!
15分間ぐらい歩きながら観ていて、自分は男のダンサーがいるところ、特に女のダンサーと一緒に踊っているところに足が向くことに気づきました。女のダンサーはのソロはあんまり魅力なかったですね。力も迫力もあんまりで。男のダンサーは何か燃えたぎるものがありました。
30分ぐらい経って、そろそろ歩いて見るのも飽きたな~・・・と思い始めた頃に全体が暗転し、巨大な白い壁が全部、上へと上がっていったのです。壁の床面に蓄光塗料が塗られていたらしく、下から眺めると部屋の間取りがくっきりと光って示されて、私はまるで満天の星空を見上げるように見とれました(アフタートークで美術の田根さんがおっしゃったのですが、あの蓄光は中国の奥地から取り寄せたスーパーブルーという特別なものだったそうです。道理で蓄光の独特の蛍光緑とは違う、薄いめの良い色が出ていたわけです)。そして現れたのが素っ裸のパークタワーホール全体。なんてかっこいいんだ!!ここから観客は壁側へと誘導され、だだっぴろい真四角の空間がステージになりました。タイトルが『SHIKAKU(しかく)』ということで様々なシカク(四角、死角、詩を書く、資格、視覚・・・)がテーマになっていたのですね。ホール全体を使って全員で何らかのルールにのっとって踊るのは面白かったです。振付ってシステムだよなぁと漠然と感じました。
今回、実はお目当てのダンサーさんがいたんです。トップランナーの実演コーナーにも出演されていた島地保武さん。2003年9月の『舞姫と牧神達の午後』@新国立劇場でファンになりました。で、今回の島地さんは・・・怖かったです(苦笑)。何しろ眉毛が白いので、目をひん剥くとヤクザみたい・・・。でもダンスはやっぱり素晴らしかったです。体も大きいので目立ちますし、『牧神・・・』の時よりもずいぶんダイナミックで豪傑な印象でした。ラストに一人だけドレスを羽織ったのも島地さんでしたよね。あのピンクのゴム(赤い糸)を持って(?)白い魚のようなドレスを着て歩いていくラストは美しかった。
衣裳およびヘアメイクについて一言。私は女性ダンサーの髪型は失敗だったと思います。ほぼ全員が短い目のざんぎり頭なので、「女」に見えないのです。美人もブスも、みんなブスに見えるというか。男は一人一人特徴があるドレッドヘアーだったので誰が誰だか見分けがつくのですが、女はほとんど同じで、女でも人間でもないものになってしまっていました。衣裳については女にスカートを身に着けさせて男との区別をつけていたのだから、個人の区別もちゃんとつくようにしてもらいたかったです。
金森さんと美術の田根剛さん、音楽の平本正宏さんの3人を迎えてのアフタートークがありました。美術の田根さんが一番多く質問をされていましたが、その哲学的な意図というか、建築家らしい深い考えがこの舞台作品に反映されているのを知れてよかったです。そして、金森さんって、賢い人なんだなぁとしきりに感心してしまいました。「自分のカンパニーのダンサーに一番に求めるものは何ですか?」という質問に対して「プロ意識」とお答えになったのには感動。新潟市民じゃなくても税金払いたくなります。以下、完全に正確ではないですが、金森語録です。
・「全く新しいもの」なんてもう生まれない。自分が新しいと思っていても、既に誰かがやっているから。例えばこういう実験的な空間は20年前に寺山修司がやっていたりする。モノとモノのバランスでしか、オリジナリティは出せない。
・自分ひとりでは決して作ることはできなかった。ダンサーやスタッフ、田根さん、平本さんという天才と一緒に作ったからこれが出来た。そして何よりもこの作品については観客がいないと成立しない。その観客についても、今日のこのステージの観客が一人でも欠けていたらこのステージは完成しなかった。
・「No-ism(ノーイズム)」とは、何のイズムにも捕われないことによって、どんなイズムも肯定するということです。(挟み込まれたチラシ“キリン・アートニュース・レター”より抜粋)
私が言うことでもないのですが、お客様の質が良いと思いました。アフタートークで質問される内容がとても興味深いし、劇場内での立ち姿、歩き方などを拝見していても、行儀が良いし、かといってかしこまり過ぎないし、一人で堂々と立っている方が多かったです。携帯の音ももちろん鳴りませんでしたし、携帯で写真を撮る人もいませんでした。金森さんが堂々としてらして、思慮深く、知的な方だからかなぁと思いました。だって自分も背筋も正さなければという気持ちにさせられるんですもの。
上演中に、篠山紀信さんがデジタルビデオカメラとデジタルカメラでじゃんじゃん撮影をされていました。それはそれで臨場感があって面白かったです。ビデオも撮られるんですね。助手が2人ついていました。
次回の新作もまず新潟で発表されてから、滋賀、山口、宮崎、高知、岐阜、東京、長野を廻る全国ツアー(2004年10月~12月)があります。
演出:金森穣 振付:Noism04
出演:青木尚哉 井関佐和子 木下佳子 佐藤菜美 島地保武 清家悠圭 高橋聡子 辻本知彦 平原慎太郎 松室美香 金森穣
美術:田根剛 照明デザイン:沢田祐二(沢田オフィス) 音楽:平本正宏 衣裳デザイン:北村道子 美粧デザイン:市川土筆(MILD Inc.) 舞台監督:やまだてるお(モモプランニング) 音響:金子敏文(りゅーとぴあ) 装置制作:C-COM 小道具製作:新創 プロダクションマネージャー:須藤聡子 広報:横木裕子(りゅーとぴあ) 制作:真田弘彦 野本妙子(りゅーとぴあ) エグゼクティブ・プロデューサー:丸田滋彦
金森譲(jokanamori.com):http://www.jokanamori.com/
2004年06月18日
THE SHAMPOO HAT『肉屋の息子』06/15-23ザ・スズナリ
赤堀雅秋さんが作・演出するザ・シャンプーハット。フジテレビ「劇団演技者。」でも有名ですね。
私はこれまでに6本ぐらい拝見していると思うのですが、毎回、必ず感動します。今回も然り。赤堀さんって本当にすごいです。
今回も暑苦しい、むさくるしい、息苦しい、日本の隅っこの家に、どん底の人間たちの生々しい生活がありました。無骨で滑稽なやり取りの中に、悲しい心が静かに息づいていました。暗くてじめじめした内容ですが、いつもどおり笑えます。
あらすじです。↓ ここから少々ネタバレします。
母親が死んだとの知らせを受けて、放送作家の明(野中孝光)は十数年ぶりに実家に帰った。実家は肉屋で、弟の清(黒田大輔)が継いでいる。清のぶっきらぼうな女房(滝沢 恵)と、20年前からずーっとアルバイトをしている池田(児玉貴志)が、しがない店をやりくりしている。しかし、母親が死んだというのに清は葬式もしないと言うのだ・・・。
父親(赤堀雅秋)が出てくるきっかけは、すごく迫力がありました。突然にドアをドンドンドン!と叩く音がしたかと思うと、壁や天井もドンドンドンドン!とひっきりなしに叩く音が鳴り響いてきました。その真っ只中に一人で居た明は、異常な事態に何も出来ず驚くばかり。すると、床下からのっそりと、ジャイアンツのキャップをかぶった中年男が現れる・・・。普通の人間ではないモノが現れたということを、シャンプーハットらしい生々しさを以って演劇ならではの方法で表現されていました。シビレますね~。
加山雄三の“君といつまでも”を歌い上げる父親を前に、泣きじゃくる明。ここで、終始クールだった明の過去や、死んでいる母親の存在がリアルになっていきます。あぁ、すごい構成だな~・・・と感心してる場合じゃなかたったです。私も一緒にポロポロ涙を流していました。
「人生は素晴らしいのです!」なんていうセリフが青臭くなく伝えられるのはすごいですよね。赤堀さんの脚本と演出には、軽い嘘臭さがないから本気で入り込めます。明が父親に「さっさと消えろ」と言うのだけれど、父親は「お前が勝手に見てるだけだ」と返すのも深いです。
私は“静かな演劇”と呼ばれるジャンルに入る作品はあまり得意ではないのですが、シャンプーハットの作品では、日常生活の中に生まれる人間のきめ細かな感情とその可笑しみ、そして新しい演出のアイデアを発見したりできるので、見逃せないんですよね。
カーテンコールで役者さんが全員出て来てくださって嬉しかったです。次回は12月にシアタートップスだそうです。
作・演出 赤堀雅秋
出演:日比大介 児玉貴志 多門 優 野中孝光 黒田大輔 滝沢 恵 赤堀雅秋
照明:杉本公亮 音響:田上篤志(atSound) 舞台監督:森下紀彦 舞台美術:福田暢秀(F.A.T STUDIO) 宣伝美術:斉藤いづみ 宣伝PD:野中孝光 舞台写真:引地信彦 制作助手:市川絵美 相田英子 制作:HOT LIPS 協力:アカプルコ 東京書籍印刷 岩堀美紀 荒木友香里 企画制作:THE SHAMPOO HAT
THE SHAMPOO HAT:http://www33.ocn.ne.jp/~shampoohat/
2004年06月17日
ベターポーヅ『ちぎれるほど愛して』06/15-20THEATER/TOPS
西島明さんが作・演出をされる劇団です。劇団ホームページに“独特の「気分」の表現を実現していく”書かれています。そうですよね、空気というか雰囲気というか。
初めてベタポを観た時の私の感想は「なんじゃコレ??」でした。でも今は「今日はベタポだ、嬉しいな♪♪」です。
テーマは「愛」だったようで。登場人物に役者さんの実名を使っているのが、いつものベターポーヅっぽくなくて、不思議であると同時になんだか生々しくも感じました。中心となるストーリーとしては、猿飛佐助さんと吉原朱美さんとの愛の物語でしたが、本編に入るまでが長かったですね。中盤以降にほろりと切ない感が伝わってきましたが、ちょっと遅かった気がします。あと、初日だったからか全体的に堅かったのではないでしょうか。客席全体をそんな雰囲気が支配してしまっていて、私一人だけが長時間、肩を震わせて笑っている時もあり、ちょっと寂しい感じでしたね。
浮浪者って具体的に目に美しくないですよね。しのぶいちおしの北迫秀明さんデザインの衣装なのですが、浮浪者についてはどうがんばったって「浮浪者」なので美しくない。これは寂しい限りなのです。ベターポーヅというと私にとってはかわいらしい不思議少女たちの禁断エロエロ至福タイムなので(笑)、汚いのはイヤなんです。ロリータ男爵の『タナベさんが水を漏らした』でも思ったことですが、汚いものはできるだけ観たくないというのが私の個人的心情です。だって、本当に美しいものを作れる人達なのに。
役者さんは皆さん演技が上手いと思います。巨大な新聞紙の掛け布団の下に、吉原朱美さんをかくまって、浮浪者ねえさん達が不良っぽいしゃべり方をするのがかっこ良かったです。何でもできるんだなーって思います。
ダンスは山田うんさんの振付で、すごくキュートで面白いし、ごく普通の些細な動きの組み合わせで楽しかったり、悲しかったり、様々なニュアンスが出ていました。でも、シーンとしては長く感じました。音楽に合わせ過ぎたのかなぁ。
最初のレスリングの映像はあまり最後にはつながらなかったですね。シアタートップスでは先日シベリア少女鉄道を観たばかりで、しかも体操関係だし(笑)。最後に何かあるに違いないと勝手に思い込んでいましたが、なかったような・・・。映像の前で猿飛さんがソロで踊られていたのはかっこ良かったな~。
“教会風下着パブ”サイコーっ!この発想がすごいんですよね、西島さんって。おデブ衣裳も可愛すぎ。
謎の宇宙人(?)“きたちゃこ”は・・・ものすごかったです。西島さんが暗黒舞踏風の動きで、ちゃんと白塗りをしていて、えっと、これ以上は書いてもしょうがないですね。とにかく一見の価値アリ(笑)。私はひくひく笑い続けてしまいました。“きたちゃこ”って、衣裳の北迫さんのことですよね、こんなところにも実名が・・・(笑)。でも、“きたちゃこ”の衣裳は北迫さんではなく美術の方が作られたそうです。
どこで静止しても絵になる、動画でありながら静物画のような舞台。ベターポーヅでしか体験できないと断言できるほど、その世界を確立されていますよね。ただ、前回の『おやや ヒューマン スヰッチ』方が良かったと私は思いました。また次(2005年2月)が楽しみです。
作・演出:西島明 振付:山田うん
出演:渡辺道子 阿部光代 猿飛佐助 加藤直美 松浦和香子 山崎和如 大日向美名子 吉原朱美 西島明
美術監督・宣伝美術 東大路道恵 舞台監督:上林英昭 舞台監督助手:金坂友美 照明:大塚之英(ストーリー・レーン) 音響:齋藤貴博(ステージオフィス) 衣装:キタサコ製作所 衣装デザイン:北迫秀明 舞台写真:佐渡谷威昶 映像:ムーチョ村松(トーキョースタイル) 吉田りえ(トーキョースタイル) 美術・小道具助手:市川菜穂 井上真理 辻本直樹 藤原孝子 演出助手:花房ちはる(菩薩友の会) 制作:亀川朝子 制作助手:山崎睦美 協賛:高原書店 協力:蒲田演劇工場
ベターポーヅ:http://www.betapo.com/
2004年06月16日
デス電所『ちょっちゅ念』06/15-17下北沢駅前劇場
大阪の劇団です。前回の東京公演を見逃したので伺いました。
タイトルが・・・ギャグなのでしょうか。すごくインパクトありますよね。
とある島で魚から発症した石化症(人が石のように動かなくなる)が蔓延している近未来の日本。そのエピソードと平行して、ある不幸な老女の生涯の惨憺たる出来事を追っていく。(あぁ、やっぱりタイトルには全く関係ないですね・・・。)
最初は非常に困りました。怒鳴る、わめく、叫ぶ、どたばたするばかりで、すごく不快だったんです。でも開演30分後に始まったオープニングで、タイトル曲『ちょっちゅ念』を役者総動員で踊って歌って、大盛り上がり。元気印の女優さんがキュートに活発に踊ってくれて、プロジェクターで映されるモノクロのCGアニメーションも可愛かったし、パーっと明るくなって、あぁ楽しい・・・というわけで、最後まで観ることが出来ました。
音楽劇とまではいきませんが、かなり歌が多いスタイルです。ギター、ベース、キーボードとヴォーカルでオリジナルの曲を演奏しながら、少々病的で暴力的な2つの物語が進んでいきます。ちゃんと舞台上で生演奏されますし、当日パンフレットは歌詞カードにもなってます。面白いと感じるものもありましたが、やっぱり音楽は上手じゃないと聴きづらいです。一人、歌がお上手な方(キーボードの丸山英彦さん)がいらっしゃって、その方の歌は気持ちよく聴けました。丸山さんがヤクザの息子役で悪魔的な歌を歌うところは楽しかったです。
2つの物語は全く接点が無さそうでしたが、最後の方でほぼ無理やりにつながりましたね。後半は、老女の壮絶な人生の説明と石化症の原因究明とが交互にとっかえひっかえ現れて、観ていて疲れました。別にがんばってつなげなくても良かったんじゃないかしら。後になって色々付け足したりしたんじゃないかな、と感じざるを得ないまとめ方でした。
沖縄の方言(?)を話す女の子(山田千絵)がいたのですが、方言ってすごく可愛いいですね。女優さんは全員で3人だたったのですが、3人とも目が輝いていて凄みがある方々でした。でも、これは大阪の劇団によくある特徴なのですが、女優さんががさつ一辺倒です。そんなことまでやるの!?というパワーは確かに魅力的ですが、女性らしさも大切にしてもらいたいと切に思います。
身体的な感想が最初に立ってしまうのが残念ですが、2時間たっぷりあって長く感じました。そして、クーラーが効きすぎていて寒かったです。あと、隣りの席に劇団Tシャツを着た人が座られたのですが、上演中、一挙手一投足をじ~っと観られているように感じたんですよね。見るからにスタッフだとわかる方は、ちょっと脇の方に座られた方が良いと思います。
作・演出:竹内佑 出演:丸山英彦 豊田真吾 米田晋平 福田靖久 山村涼子 山田千絵 田嶋杏子 松下隆 竹内佑
舞台監督:中村貴彦 美術:清花也 照明:西山茂 音響:佐藤真弓 衣裳:遊光 音楽:和田俊輔 映像:松下隆 イラスト:河井克夫 宣伝美術:イトウユウヤ 制作:西川悦代 製作:デス電所
デス電所:http://deathtic.727.net
2004年06月12日
三条会『班女・卒塔婆小町』06/10-13こまばアゴラ劇場
三条会は千葉県を拠点に活動している劇団です。すべての公演の演出・構成は主宰の関 美能留さん。『班女』と『卒塔婆小町』は三島由紀夫の「近代能楽集」に収録されている戯曲です。
「今、客席でどうしたらいいのか、何を感じ取ったらいいのか、全然わからない!でも、なんか集中しちゃう!目が離せない!!」というのが、私が三条会を観ている時の気持ちです。ほんとに、意外なことだらけなんですよね。アンバランスばかりでバランスが取れているというか、いえ、そんな理屈など全く必要としない、有無を言わさない力強い存在なのだと思います。
何もない黒い空間。タキシードを着た坊主頭の男がにやりと笑いながら舞台に出てくる。次に出てきたのは白いドレスを着た、これまた坊主頭の男。激しく早口でまくしたてたり、不敵な笑みを浮かべながら朗々と語ったり、さまざまなしゃべり方と予想外の動作から、シンプルな空間に奇妙な空気が立ち現れます。重厚で熱い、1時間10分でした。
シンプルかつ地味な、じっとりしっかりのお芝居の中に、ものすごく熱いパッションを感じるんですよね。チラシや上演する戯曲などから想像すると、真面目なアート路線の劇団かと思いますが、そうでもないです。いえ「真面目なアート路線」には間違いないのですが(笑)、とにかく可笑しいんですよ。私は自分が突然に笑い出すのが不思議でした。真面目さと堅さからは想像できないブッ飛び具合に、圧倒されるのだと思います。
日本の歌謡曲(?)が流れるのですが長谷川清さんの曲だそうです。ヘナチョコで、ほんっとにダメダメ感が漂う歌です。さらりと歌い上げられているのがさらに情けない(笑)。
『卒塔婆小町』の“今夜”というセリフに掛けて『ウエストサイド・ストーリー』の"TONIGHT"がかかるのも非常にイレギュラー。ヘンな盛り上がりを見せながら、音楽の強弱や展開にセリフと演技がぴったり合わさっているのが、また妙で、すごいのです。
役者さんは一人一人がものすごい個性の持ち主で、きちんと一人の舞台俳優として舞台上に存在されていますね。聞き応え、見ごたえのある堂々とした方々が揃っています。
私は老婆役の岡野暢さんの笑顔がすごく好きです。どうしようもなく嘘っぽくてズルイ、おやじ笑顔(笑)。あのお顔を見ると胸がスッとするのです。「したたかに、ヤってくれるね!!」って、頼もしくなるので。
作/三島由紀夫 演出/関美能留
出演:大川潤子 榊原毅 岡野暢 橋口久男 中村岳人
照明:佐野一敏 音響操作:立崎真紀子 制作:高辻千浩 カンパニーメンバー:舟川晶子 阿左見真紀
企画制作:三条会/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
三条会:http://homepage2.nifty.com/sanjokai/
こまばアゴラ劇場:http://www.letre.co.jp/agora/
メタリック農家『男』06/10-13中野テルプシコール
“メタリック農家”という劇団名とチラシのビジュアルに何度かピピっと惹かれていたので、伺いました。
スティンガーというヒーローが活躍する戦隊ものテレビ番組の撮影現場。ピンチになると巨大ロボットを操縦して敵を倒すというお決まりの子供向け番組だが、大人の中にも根強いファンがいる。スティンガーを愛するあまり、実物大のスティンガー・ロボを作りあげた科学者がいたのだ・・・(以下ネタバレします)。
今が旬の時事ネタばかり盛り込まれていましたね。ペ・ヨンジュン氏(冬のソナタ)、北朝鮮の核爆弾など。他にもいっぱいありましたけど忘れました。私はそういうのでは笑えないし、面白みを感じないので。
脚本は言葉遣いやギャグも含めて面白いところが沢山あると思うのですが、役者さんがそれを表現できていないです。一人でも上手な人がいればよかったのですが・・・。これからなのでしょうね。
核爆弾を搭載した北朝鮮の戦闘機にスティンガー・ロボが単独で立ち向かう!・・・というところまでお話を盛り上げておいて、操縦する俳優がふんどし一丁になり「俺は丸腰だ!だから戦うつもりなんてないから、そっちも北朝鮮に帰ってくれ!」と叫んで、すんなり解決しちゃうなんて・・・なんじゃそりゃ!?その上、スライドの文字映像で「そして戦闘機は人質を置いて去っていった」と一筆流して終わるのは、演出が安直すぎるのではないでしょうか。中盤からハチャメチャ・ナンセンスな味を出していればそれでも成立したかもしれませんが、そんなパワーは感じませんでした。
クライマックスはふんどしでお尻出して終わり、カーテンコールは祭り太鼓で踊りまくって終わり、というのは・・・つらいです。祭りはそんな風に使ってはいけないと思います。
舞台の中央奥と下手の2箇所に、2階レベル(高さ)のキャットウォーク幅の舞台が作られていて、その上と下を使った演出はとても面白かったです。戦闘機の下に人質がぶら下がっているのを、観客の頭上を通るおもちゃの飛行機と、舞台上の役者とで一緒に表現したのは楽しいですよね。
スライド映像は、劇場の入り口付近の桟敷席からだと役者さんの影になって見えませんでした。2,000円でテルプシコールの公演だしね・・・というような半ばあきらめの気持ちになりましたが、それじゃぁイカンと思うのです。
古市海見子さん。代役をGETするショッカー(?)役&おっかけ主婦役。元・猫ニャーの西部トシヒロさんと、げんこつ団の植木早苗さんに似てます。変な言い方ですが本当にそう思いました。目がすごい。
中島徹さん。ペ・ヨンジュン似の男役。美形で嬉しかったです。
脚本・演出:葛木英(くずき・あきら)
出演:岩田裕耳 前川健二 土肥サチコ 大川祐佳里 横島裕 中島徹 永山盛平 伊藤一将 古市海見子 石澤美和 宮本理絵 萱嶋尚史 他
舞台監督:野坂知矢(東京圏外) 舞台美術:裏方専門劇団?なぐり 音響効果:天野高志(AXL) 映像:mixed 小道具:遠藤智林 特殊メイク:横山佳代 イラスト:リタ・ジェイ 題字:斎藤真紀 演出助手:萱嶋尚史 制作:藤井敦子 製作:メタリック農家
メタリック農家:http://www.hpmix.com/home/metallic/
2004年06月10日
新国立劇場演劇『INTO THE WOODS』06/09-26新国立劇場 中劇場
2000年の『太平洋序曲』に引き続き、作詞・作曲:スティーブン・ソンドハイム、演出・振付:宮本亜門のミュージカルです。『太平洋序曲』はこの秋、新演出でブロードウェイに進出しますね。
グリム童話(『シンデレラ』『ジャックと豆の木』『赤ずきん』『白雪姫』など)の登場人物がドンドコ出て来て“森の中へ”入っていきます。大人も子供も楽しめる大娯楽傑作でした。楽しかった~っ!お薦めです!
パン屋の夫婦(『ヘンゼルとグレーテル』?)、赤ずきん、ジャック(と豆の木)、シンデレラ達が、森の中でそれぞれの望みを叶えていきます。一種のパロディーですね。しかし後半からは全く新しいストーリーが用意されていてハラハラドキドキでした。(以下、ネタバレします。)
笑い満載のミュージカルで、ストーリーもメッセージ性があって感動させられました。何度も涙が出ましたね~。
“森の中で欲しいものを得て、大切なものを失い、孤独に気づき、人生を知る。
自分のことは自分だけで決めるんだ。
だけどこれは覚えておいて。君は一人じゃないよ。”
役者さんは決して説教くさくならず、あくまでもサラっと素直に発声されるので、心に柔らかく伝わってきました。
後半では人がどんどんと死んでいく急展開になるのですが、それもあくまでも童話風にさらりと。かっこいいです。
美術(礒沼陽子)と照明(中川隆一)が素晴らしかったです。“森の中”はまるでテーマパークのアトラクション!巨大な木が動いて場面転換しますが、そのダイナミックさにわくわくします。そして照明は色や模様が鮮やかで美しく、暗転のタイミングが絶妙なんですよね~。ちょうど盛り上がるところでパッと暗転するので残像が美しく残るのです。前半のラストの旗(?)が落ちるのがカッコ良かったな~。こういう仕掛けを見せられた時に、亜門さんって本当に素敵だと思います。
全体として中劇場の良さを有効に活かしきった使い方だと思いました。まず舞台は客席側に丸く大きくせり出していて、床のレベル(高さ)が客席の床と同じです。役者さんが舞台からそのまま走り込んで来ますので、観客と役者さんとの距離がものすごく近いのです。
そして中劇場といえばあの巨大な奥行きですよね。野田秀樹 作品や劇団☆新感線でも大胆に使われていましたが、この公演ではラストに役者さんが舞台奥の暗闇に向かってず~っとまっすぐ走り去って行くところだけに使われていました。私はこういう奥ゆかしい、狙いがピンポイントな使い方が好きです。実は大男の妻(大女)にも使われていますよね。あんなに大きな影を幕に映そうと思ったら、かなりの奥行きが必要なはず。
美術の礒沼さんは先日の『てのひらのこびと』も手がけてらっしゃいますね。ぜひ追いかけたい美術さんです。
衣装(朝月真次郎)も面白いし、かっこいいし、凝っているので、誰を見ても楽しかったです。牛や狼、魔女の仮面とかものすごいリアルで映画の特殊メイクみたいでしたね。
歌に関しては、これは仕方の無いことなのですが、英語を日本語に翻訳している時点で色んな無理を感じます。歌唱力についても聞きほれる声を披露してくださったのはほんの数人でした。日本でも(劇団四季 以外で)ロングランが根付くと、ミュージカル文化も人材も育つと思うんですけど(そうなって欲しい!)。
ただ、この作品については亜門さんの、溢れ出るエンターティナー精神と優しさ、力強さを体中で受け止められましたから、役者さんの技術については気にする必要がありませんでした。
カーテンコールでは2度目に亜門さんと台本を書かれたジェイムズ・ラパインさんも舞台に出ていらっしゃいました。もちろんスタンディング・オベーション。そうそう、SAYAKAさんが泣いてましたね。う~ん、若いっ。亜門さんに手をつながれて大喜びの高畑淳子さんが可愛かった。やっぱり初日はいいな~としみじみ思いました。
諏訪マリーさん。魔女役。最高にかっこいいです。ドスの効いた声もしゃがれ声も、高く大きく広がる高音も完璧。『INTO THE WOODS』といえば諏訪マリー、ですね!
高畑淳子さん。パン屋の妻役。やっぱり凄いコメディエンヌです。なぜあんなに優しく大らかな笑顔ができるのでしょう。キスシーンがいっぱい(笑)。
シルビア・グラブさん。シンデレラ役。美しい歌声。なんとなくキムラ緑子さんに似てらっしゃいますよね?
えっと、これは蛇足ですが、松田聖子さんが客席にいらしてですねぇ。ちょっとしたお祭り騒ぎでした(笑)。幕間の休憩ではガードマン(というのかな?)らしきスーツ姿の男性6人ぐらいに囲まれて移動されました。だって客席で「聖子ちゃ~ん!!」とか言う人いるんだもの!びっくりだよっ!そっとしておいてあげなよっっ! 大スターって大変なのね~と少し同情しちゃいました。だって一人娘の初舞台なのに、カーテンコールの時は客席にいられなかったんだもの。
でも聖子さん、ほんっと~にお人形さんみたいに美しい方でした。めちゃくちゃ色白で折れそうなほど細い体で・・・そして目が大きい!!20代に見えるといっても過言ではないです。はは、私もミーハーですね(笑)。
演出・振付:宮本亜門 作詞・作曲:スティーブン・ソンドハイム 台本:ジェイムズ・ラパイン
出演:諏訪マリー 小堺一機 高畑淳子 藤田弓子 シルビア・グラブ 藤本隆宏 SAYAKA 上山竜司 吉岡小鼓音 広田勇二 荒井洸子 鈴木慎平 大森博史 藤田淑子 仁科有理 山崎ちか 二瓶鮫一 山田麻由 飯野愛
翻訳:橋本邦彦 公演音楽監督:山下康介 美術:礒沼陽子 照明:中川隆一 音響:大坪正仁 歌唱指導:楊淑美 衣裳:朝月真次郎 ヘアメイク:憑啓孝 演出助手 :伊藤和美 舞台監督:瀬崎将孝
新国立劇場:http://www.nntt.jac.go.jp/
2004年06月08日
世田谷パブリックシアター・プロデュース企画 シリーズ「レパートリーの創造I」『時の物置』06/05-20世田谷パブリックシアター
永井愛さんの作品を連続して上演する世田谷パブリックシアターの企画の第一弾。江守徹さんが演出・出演されます。 『時の物置』は1999年に読売演劇大賞優秀作品賞を受賞した作品です。
公演に合わせてレクチャー(6/9永井愛、6/10栗山民也、6/14江守徹)も開催されます。これは大変贅沢な企画だと思います。
舞台は1961年の東京、テレビがある家に人が集まってくる時代。新庄家とその近所に住む人々のとある日常の風景。祖母、父、息子の3世代にわたる登場人物のそれぞれの立場と想いを描くことによって、高度経済成長の真っ只中の東京が浮かび上がります。
貧乏だが士族の生まれであることを誇りに思っている闊達な祖母(有馬稲子)、プロレタリア文学から私小説に鞍替えした教師の父(辰巳琢郎)、学生運動に巻き込まれていく息子(佐川和正)、母を追って新劇の女優を目指す娘(佐藤麻衣子)、労働者運動を支持していたが経営者(江守徹)と結婚してしまった姉(河合美智子)など。
舞台の登場人物にとっては命に関わるような大変な出来事がさんざんに起こりますが、のどもと過ぎれば特に何も起こらない平和な日々だった、と通り過ごされます。そうやって私達は戦後、高度成長期、バブル&バブル崩壊という時代を消化してきたのだなと感じ入りました。このような視点から過去を振り返る必要があると思います。『時の物置』とはまさにその記憶の記録ではないでしょうか。
時間がゆったりと贅沢に流れますがリズムが単調なのでちょっと退屈。また、哀しい時に哀しい音楽、楽しい時に楽しい音楽というのはあまり面白くないですね。曲はとっても優しいし素敵なのですが。
永井愛さんの大ファンの私としては、もっと猥雑で悲惨で困惑するような状況や、それを笑って吹き飛ばすような暴力的な演出が見たかったです。永井さんの作品では自分の世界や常識がぐちゃぐちゃになる感覚を味わいたいので(笑)。
舞台は、装置も小道具も何もかも超リアルに作られていました(妹尾河童さんの美術です)。しかし、最後に秀星(息子)がスキーをやめて学校に行くシーンで、初めて抽象化されます。大きく開く窓の外には黒幕が見えますし、それまで決して使わなかった家の前(舞台つら)を道として使い、秀星がまっすぐ歩いて行きます。私はそこに現代へと向かう道筋が表された気がしました。「渡る世間は鬼ばかり」等のTVホームドラマのように遠くにあった舞台が、突然、私のそばまで歩み寄って来たように感じて嬉しくなりました。そこで初めてこの作品が私の過去と重なったように思いました。
客席には年配のお客様がいっぱい。昔なつかしのテレビ番組や歌謡曲、家財道具に彩られた、あの日あの時の日常を存分に味わわれたことと思います。その時代を知らない若い世代にもお薦めですね。新たな発見ばかりになるかもしれません。
作:永井愛 演出:江守徹
美術:妹尾河童 照明:成瀬一裕 音楽:笠松泰洋 音響:内藤博司 衣裳:半田悦子 舞台監督:澁谷壽久 演出助手:水谷勝
出演:有馬稲子/辰巳琢郎/佐川和正/佐藤麻衣子/雛形あきこ/根岸季衣/木津誠之/藤川三郎/太刀川亞希/川辺邦弘/植田真介/田根楽子/駒塚由衣/かんのひとみ/河合美智子/江守徹
世田谷パブリックシアター内公式サイト:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/04-2-4-16.html
2004年06月06日
strange GARDEN『シェル』06/04-07タイニイアリス
前回公演の「あなたの魂を狙撃する」というキャッチフレーズが怖かったのですが、知人関係で伺いました。
開演前に観客に冷房が寒いかどうかを聞いて、寒いと言ったお客様に上着をレンタルしたのが素晴らしいと思いました。その後「本日のお菓子」と言って飴とまんじゅうを配られたのにびっくり。しかしながら、まんじゅうが完全なネタフリだったので後でがっくり。
内容は昔の第三舞台っぽかったです。80年代の香り。役者さんの演技は大きな声を張り上げて、熱いです。オープニングのダンスに私は中学時代を思い出しました。主人公の漫画家(?)の部屋の本棚においてある漫画の種類からすると、作家さんは私と同世代の方かしら(「タッチ」「みゆき」「スラムダンク」「AKIRA」「甲殻機動隊」その他、少年ジャンプ系統 等)。
劇団全体の雰囲気としてはキャラメルボックスっぽいと思いました。観客サービスの仕方やカーテンコールで感じたのですが、自分たちとそのファンたち(観客)という感覚ですね。終演後、出口で冷たい麦茶を振舞ってくださったのですが、その真横でカンパを募っていることに驚きました。
脚本は何かにつけて下ネタになります。実際に長時間、一人の男優さんが半裸でした。そして、これには本当に驚かされたのですが、まっすぐに、大真面目に、堂々と、夢オチでした。空想と現実世界の交錯も、ドタバタ支離滅裂トラブルも、仕掛けも結論も何もかも吹き飛ばして、全てが「前フリ」となって終わりだったんです。
かつ舌が悪い上に早口でしかも噛むので、言葉が伝わらない役者さんが数人いらっしゃいました。劇団としてもっと深刻に捕らえられた方が良いのではないかなと思います。
会場には笑いが起きていましたが、私は笑えなかったです。主人公が普通にしゃべった「もれ聞いた」というセリフは面白かったですが。
開場時間からスモークが思いっきり焚かれていました。足元が見えないほど。高さのないタイニイアリスという小屋で光の筋がくっきり見えましたし、赤い照明で空間全体が真っ赤になったりしましたので、照明の効果を出す意味で成功されていたと思います。
最後に壁の中央部分がはずれて行き、十字架のように開いた所から白い光が神々しく照らされるのはきれいでした。
作・演出:佐藤隆輔
出演:樋泉 秀幸 五味田 扶美子 舟橋 晋 尾木 亜紀子 金崎 剛 佐藤 隆輔 蝶名林 舞(劇団フジ)
舞台監督:小林 英雄(Anjuta Arts) 照明:鈴木 悟 音響:松岡 之豊寛(teamTKzone) 制作:浅見 絵梨子 小佐々 宏美
strange GARDEN:http://www.strangegarden.net/
2004年06月04日
トム・プロジェクト『狐狸狐狸ばなし』05/29-06/06本多劇場
チラシを見ても何の芝居なのか全くわからなかったのですが、関西地方を舞台にした、化かし合いの喜劇のようです。時代設定は江戸末期。
篠井英介さん、ラサール石井さん等の豪華キャストでケラリーノ・サンドロヴィッチさんの演出です。
サービス精神旺盛すぎる演技というかネタというか、ドタバタ喜劇に疲れちゃいました。トム・プロジェクトというと高年齢層の観客が多いそうなので、ちょっと私の嗜好に合わなかったのかもしれません。
私は篠井英介さんの大ファンで、特に篠井さんの上品な佇まいというか、女形ならではの控えめな色っぽさや決して前に出しゃばらない知性に、いつもうっとりしていますので、今回のようなこれ見よがしの悪女役はちょっと好みに合いませんでした。それこそサービス多すぎというか、例えば奇声を上げる回数が多かったり、濡れ場的シーンが露骨だったり(特にラサール石井さんとの最初のやりとりは気持ち悪くなっちゃいました)、目と耳に嬉しくない場面がありました。
もちろん篠井さんの高度なテクニックがなければ成立しないであろうネタが本当に多いですし、キワモノなのにキュートに見えるんだからやっぱり凄い方だなぁと思います。そういえば美しい所作が無駄に満載で、かえって笑いを誘ったりもしました(笑)。
ラサール石井さんのまるで歌のように流暢な関西弁が聞き応えアリでした。しかもねっとりおねだり系の語り口には参ります。これが大阪のシツコイ男!!いくら夫でも嫌いになる気持ちはわかります(笑)。でも男役なのに、どうしてあんなに女っぽい口調だったのでしょうか。最初はお手伝いのおばさん役かと思いました。
美術の色の組み合わせ(オレンジ・濃紺・緑などのあざやかな原色)が和風っぽくありながらグロテスクで、今までに観たことのない雰囲気でした。あまり私の好みではありませんでしたが、作品の味付けとしてすごく有効だなと思いました。
ラサール石井さんが初めて登場したシーン(および終盤)で流れていた歌は、たぶんミュージカル音楽ですよね?あぁ思い出せない・・・すごく良かったです。ケラさんのお芝居では必ず素敵な音楽が心に残ります。
野間口徹さん。病床の絵描き。肺ガン君役。その他色々な役で登場されましたが、どの役も美しい!道端に落ちたものを拾い食いする女の子役なんて、パクっと何かを口に入れた後のにっこり笑顔が絶妙。野間口さんが出てくる度に嬉しくなりました。
六角精児さん。頭の弱い使用人役。堂々とボケきるのが凄い!面白い!扉座で拝見すると必ずかっこいい人役(そうでなければ、かっこ悪くても最後には良い人になる役)が多いのですが、完全におバカなのがめちゃくちゃ素敵です。あ、そういえばこの作品でも最後だけなぜか正常な人間として出てこられましたね。あれはあんまり・・・なのです。
脚本:北條秀司 演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:篠井英介 ラサール石井 板尾創路 六角精児 真山章志 大出勉 廣川三憲 野間口徹 小林俊祐 吉井有子 皆戸麻衣 植木夏十 白石幸子
美術 加藤ちか 照明 関口裕二 音響 水越佳一 衣裳 コブラ会 舞台監督 松本仁志 宣伝美術 雨堤千砂子 プロデューサー 岡田 潔 制作 トム・プロジェクト
トム・プロジェクト:http://www.tomproject.com/
2004年06月03日
KAKUTA花やしき公演・浅草花やしき提携『ムーンライトコースター』05/27-30ゆうえんち浅草花やしき
KAKUTA(カクタ)は桑原裕子さんが作・演出する劇団です。
「KAKUTAが梅雨に野外公演」という仮チラシは拝見していましたが、まさか遊園地とは!話題沸騰の公演、逃さず伺えてよかったです。
花やしきというと浅草にあるすっごく小さな遊園地です。私は初めて伺いましたが、本当にスモールサイズでところ狭しとアトラクションがせめぎ合っていました。
さて、遊園地で演劇公演なんて一体どんなスタイルにするのだろう?!と興味津々でしたが、形式としては短編集、いわゆるオムニバスでした。下記の6作品(だったと思います)。
・遊園地やデパート等で興行するピエロ・チーム。息が合わない彼らだが話をしている内に・・・。
・幼なじみのデートを覗き見する男女二人。将来のことを話すうちに二人の間にも恋が?
・ド田舎の島から行方不明の父親を探しに東京に出てきた兄妹。でも父親は見つからない。
・真面目なフリーター男と気まぐれな高給取り女の痴話げんか。予想外のプロポーズ。
・リストラされた男が女子高生と援助交際しようとするが、実は自分は幽霊(になりかけ)だった。
・これが最後のデートだと決めたカップル。なかなかお別れが出来ない。
観客は一度座ったら動けません。役者さんが園内をぐるぐると回ります。つまり同じ短編を6度上演するわけですね。一つの作品が終わるごとに大きな音量で音楽が遊園地中に鳴り響きますので、それぞれの上演時間が同じなのでしょう。
座るエリアによって見え方が違うのは当然ですが、上演するのは同じ6作品ですので、一番差が出るのはオープニングとエンディングですね。私はぎりぎりに入園したので出口付近に座っていましたが、エンディングで幽体離脱(?)から復活したリストラ・サラリーマンと女子高生が“はじめて”出会うシーンが観られました。すごく良かったな~。きっと他のシーンのラストも良いのでしょうね。何度も通うお客様がいらっしゃるのにもうなづけます。
作品の内容は心温まる恋&愛のドラマでした。伝わってくるのは人の優しさです。素直で暖かい、等身大のセリフおよび言葉遣い、そして現実に極近いストーリーに、淡い夢とまぼろしが振り掛けられます。これはKAKUTAのオリジナルの作風だと思います。
最後に無人のジェットコースターが、園内を颯爽と、気持ち良さそうに走ってくれました。花やしきで生まれた皆の恋を暖かく見守ってくれているようでした。そう、花やしきが生きているような気がしたのです。これこそ演劇の意味ではないですか?劇場と観客とともにある、そこに息づく舞台。あぁ、理想の形のひとつですよね。
でも、これはものすごく自分でも不思議だったのですが、実は、観ている最中も観終わってからも、すごくすごく寂しかったのです。楽しそうに走り回っている役者さん達に嫉妬したのでしょうか?それとも遊園地のおおらかな存在に負けたのでしょうか? う~ん・・・たぶん、作品が私の方を向いてくれているように感じなかったからかな。役者さんが観客の方ではなく、大空めがけて演技されているような気がしたからだと思います。でも、野外公演ってそういうことなのかもしれませんよね。
会場誘導だけで一体何人のスタッフさんがいたのだろう?絶対10人以上はいただろうな・・・チケットの種類も多いので受付スタッフも多かったです。それこそ入り口から受付までで10人以上いました(私は10人以上数えられないらしい)。それもそのはず、終演後に遊園地からぞくぞくと出てきた観客の多いこと!えええ??300人は余裕で動員しているのでは?? いやはや、色々感動&勉強させていだきました。
構成・演出:桑原裕子
出演:成清正紀 若狭勝也 松田昌樹 川本裕之 佐藤滋 原扶貴子 高山奈央子 大枝佳織 野澤爽子 田村友佳 横山真二 佐藤陽子 桑原裕子
ゲスト:実近順治 馬場恒行 水野美穂
音響:島貫聡 選曲:真生 舞台監督:坂野早織 衣装:山崎留里子 宣伝美術:川本裕之 宣伝写真:相川博昭 制作:前川裕作 五十嵐正至 佐藤陽子 田村友佳
提携:浅草花やしき 企画・製作:K.K.T.
KAKUTA(角田家):http://www.kakuta.tv/
ゆうえんち浅草花やしき:http://www.hanayashiki.net/
2004年06月02日
マレビトの会『島式振動器官』06/02-06こまばアゴラ劇場
マレビトの会は、劇作家の松田正隆さんの作品を上演するためのプロデュース・グループです。京都の劇場 アトリエ劇研を拠点に活動し、アトリエ劇研がソフト・ハード、運営全てにおいて協働するプロジェクトだそうです(当日パンフレットより部分的に抜粋)。
芸術家と劇場が手を組んで共に舞台作品を作り上げることは、東京の劇場でもどんどん実現してもらいたいですね。
飛べない巨大な鳥が住む町。鳥ハンターとして生計を立てている犬男(いぬお・枡谷雄一郎)は、その怪鳥のくちばしで胸を貫かれて瀕死の状態。横たわる犬男の部屋に男と女が訪ねてきて・・・。
初日、満員のこまばアゴラ劇場でした。開演直前の完全なる静けさが何とも味わい深かった。
松田正隆さんの脚本を平田オリザさんが演出される作品はよく目にしますが、松田さんご自身が作・演出される作品は私は初めてでした。
かなり長い、独白のような散文調のセリフを、役者さんが静かにたたずみながら(横たわりながら)しゃべります。ひとつひとつの単語、文字が過剰な装飾なしに発せられます。皆さん、声に張りがあるというか、おそらくその人自身の等身大の存在としてしゃべっているからか、すごくダイレクトに声が響いてきます。そこに居る、目の前の人間(役者)に惹きつけられました。ただ、話している内容はとても難しかったので意味が全て理解できたわけではなかったです。
瓶が数十本、テーブルの上に置いてあるのがきれいでした。最後は地震のように揺れましたよね?音響の効果だったのでしょうか。きれいでした。
実は、どうしても眠気に勝てませんでした。昼間に肉体労働的な仕事をしていたことが主な原因ですが(泣)、集中力が持たなかったです。私のように平日働いている人間がマレビトの会を見るのは、休日の昼公演が良いかもしれません。体調万全で挑みたいものです。
作・演出:松田正隆
出演:山本麻貴 武田暁(魚灯) 田中遊(正直者の会) F・ジャパン(劇団衛星) 枡谷雄一郎
舞台美術:奥村泰彦 照明:吉本有輝子 照明オペレーター:高原文江 音響:堂岡俊弘 音響オペレーター:小早川保隆 演出助手:牛尾千聖 舞台監督:清水忠文 宣伝美術:古関剛(greenroom) 制作:杉山準 岡本司 安藤きく 企画:松田正隆 杉山順 提携:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
アトリエ劇研:http://www.gekken.net
2004年06月01日
日本総合悲劇協会『ドライブイン カリフォルニア』04/28-5/16本多劇場
日本総合悲劇協会(略称:ニッソーヒ)は大人計画がプロデュースする演劇ユニットです。大人計画以外の役者さんも出演します。
今回が4度目の公演で、第1回作品の再演です。
地方のドライブインを舞台に繰り広げられる、親子3代にわたる我孫子一族の怨念のお話・・・かな?
オープニングがすごかったです。壁が全て透けてバックの竹林が見えるのにはゾっとしました。美術の奇抜な色合いと白い照明がどこかトゲトゲした感覚を生み出しています。役者さんのひょうひょうとしながらも突然ドカンと爆発するような明るい演技が刺激的で、目をぱちくりしちゃいます。
全体として「バラバラだった」というのが主な印象です。プロデュース公演にありがちだと思うのですが、役者さんやスタッフさんなど、一つの作品に参加している人たち全員の気持ちや状態が、同じ方向に昇華されないというか、望まれる段階にいたっていないように感じました。私が観た回がたまたまそうだったのかもしれませんが、初めて観た日本総合悲劇協会の『業音』@草月ホールから考えると、寂しかったですね。
最後に心打たれるセリフがあったのですが、それも覚えていられるほどの印象にはならなかったんですよね。残念です。
歌手になって東京に出たのだが、子供を連れて帰ってきたマリエ(秋山菜津子)が、当時の歌手のコスチュームで出てくるのが痛々しくてきれいで面白かったです。ヘンな歌ばかりなのもいい。秋山さんと田口トモロヲさんとの下着姿のレイプ(?)シーンも大人計画ならではですよね、期待していたので嬉しかった。
役者さんの中では仲村トオルさんがとにかく良かったです。初舞台の『羅生門』@日生劇場もチェックしていたのですが、松尾さんって本当にすごいと思いました。そのままの仲村さんを使って、作品を面白くしているんです。何をしゃべっても、どんな動きをしても、面白かったな~・・・。
そして猫背椿さんが素晴らしかったです。優しくて面白くて、体張ってて。またまたすごく好きになりました。「大人計画らしさ」を代表して表現されていたように感じました。
パンフレットの松尾スズキさんと辛酸なめ子さんのご対面トークが面白すぎました。電車で読んではいけませんね(笑)。
作.演出/松尾スズキ
<出演>小日向文世 秋山菜津子 片桐はいり 小池栄子 猫背椿 村杉蝉之介 田村たがめ 荒川良々 大塚辰哉 松尾スズキ 田口トモロヲ 仲村トオル
舞台監督:青木義博 照明:佐藤啓 音響:藤田赤目 舞台美術:島次郎 衣裳:戸田京子 写真撮影:田中亜紀 イラスト:高野華生瑠 演出う:舛田勝敏 神保愛子 演出助手:大堀光威 佐藤涼子 照明操作:溝口由利子 音響オペレーター:水谷雄治 増田郁子 衣裳助手:伊澤潤子 梅田和加子 美術助手:木村絵美子 劇中歌作曲:星野源 ヘアメイク:武井優子 かつら:山田かつら(佐野則夫) 宣伝写真:種市幸治 宣伝ヘアメイク:大和田一美 宣伝美術:吉澤正美 大道具:C-COM 制作協力(広島・福岡):(株)森崎事務所(大矢亜由美) 製作助手:河端ナツキ 北條智子 草野佳代子 制作:長坂まき子 企画・製作:大人計画 (有)モチロン
大人計画:http://www9.big.or.jp/~otona/
Attic Theater『lenz~トリコ仕掛けの屋根裏~』05/26-30中野MOMO
アティックシアターはサードステージや二兎社で演出助手をされている黒川竹春さんが演出をされる劇団です。だからなのか、いつも豪華な出演陣で惹かれます。
今回も前回に引き続き古屋純一さんの脚本です。
舞台はシンプル&モダンな屋根裏部屋。自主映画の撮影をしているのだが、いい加減な映画監督や遅刻する主演女優のせいで、撮影はプロデューサーの思惑とは全く違う方向へ進んでしまう。見知らぬ男の乱入(実はその部屋の持ち主)や女子高生誘拐事件などとからんでいき・・・。
ドタバタコメディーの色合いが濃い作品でした。何よりも出演者がみな個性的でした。ヰタマキのように新しいキャラクターを作りこむのではなく、役者さんの持ち物を生かす方向の演出だったと思います。
照明がすごく上品で効果的だったので見とれました。最近、派手だったり大胆だったりアイデアがあったりする照明には出会うのですが、上品なのは久しぶりです。
日替わりゲストも豪華。私が観た回は元・ドロンズの大島直也さんでしたが、漫才師さんなだけあってネタが多い(というか濃い)ので、ちょっとしんどかったかも(笑)。欲を言えば京晋佑さんの時に行きたかったな~。だってMOMOで京さんなんて・・・近すぎる!
川上冠仁さん。チャランポランな映画監督役。ほんっとーに可愛らしい方だと思います。笑顔が素敵。何をしてもにくめないというか、嫌みを言っても許せちゃう。
高橋拓自さん(動物電気)。部屋の持ち主役。ドロップキックがうまく決まっていました(笑)。ピタッピタッと静止する体がとても魅力的です。笑いもさすが。
吉冨亜希子さん。スタッフなのに主演女優になってしまうヒロイン。アイドルのように可愛かったです。あの水色の襟のセーラー服を着てるとこちらまでイヤンという気持ちになるほど(笑)。『マホロバ』のヒロインだったんですね。
宮下今日子さん(サードステージ)。女プロデューサー役。スタイル抜群の美人がやる強烈なおとぼけキャラは魅力的。一人芝居をされている時はもっとはじけて欲しかったな~。
作:古屋純一 演出:黒川竹春
出演:川上冠仁 土屋美穂子 古屋純一 吉冨亜希子 横塚進之介(サードステージ) 高橋拓自(動物電気) 西野将史 内野陽子 宮下今日子(サードステージ) 日替わりゲスト
照明:岡野昌代 音響:尾林真理 舞台装置:阿部一郎 舞台監督:金坂友美 宣伝美術:氏家裕太 制作:猪原健 角田菜穂
Attic Theater(劇団アティックシアター):http://www9.ocn.ne.jp/~atticweb/