イギリスを代表する喜劇作家レイ・クーニーのドタバタ・シチュエーション・コメディーを山田和也さんが演出。それで主役が上川隆也さんですから、こりゃー観に行くでしょ!って張り切って劇場に行ったのですが・・・途中休憩で帰りました。
“ダメかも”って予感がなかったわけじゃないんですけどね、まさか上川さんが原因になるとは思わなかったんです。まあ、脚本の内容自体にも打ち解けられなかったんですけどね。上川さんが・・・・どうしちゃったのかなぁ。
まず、主役でセリフが膨大なんですが、セリフをよく間違ってらっしゃいました。主人公のデーヴィッドは隠し子のことを隠すために、周りにどんどん嘘をついていくのですが、シチュエーションコメディーのお約束ということで、その嘘が部分的にバレたり嘘が嘘を呼んだり、何をやってもうまく切り抜けられずに、だんだんと逃げ場が無くなっていきます。
こういうお芝居で大切なのは、やってることは悪いこと(嘘をついている等)なんだけど、どうしても主人公を憎めない、それどころか可哀想、可愛らしいと思えることなのです。でも、上川さんが可哀想じゃないんです。イヤな奴のままだったんです。うーん・・・高貴なイメージが良い働きをしないこともあるのかもしれません。
あと、舞台が病院ってのも私にはきつかった。病棟がいくつもあるような大病院の医者と患者の世界でドタバタコメディーってのは、信憑性が無さ過ぎるんですよね。あんなに明るいはずないんです。これを言っちゃぁおしまいなんですけど(苦笑)。脚本が書かれた80年代とは状況が違う気がします。
"It runs in the family(蛙の子は蛙。血は争えないもんだね。)"の意味がわからないうちに劇場を出てしまいました。いつか誰かに聞こうっと。
舞台装置がとても豪華でした。医師だけが使うことができる談話室なのですが、ル テアトル銀座の高くて広い舞台全体がリッチ&ゴージャスな客間になっていました。イギリスの大病院のイケメン医師はこういうところで葉巻吸ってそう!って思えました。粉雪が降り続けるのも素敵。あのカーテンもシックな柄で良かった。
近江谷太朗さん。同僚の医師ヒューバート役。憎めないおとぼけキャラ。お約束をきっちり果たしつつ、楽しんでらっしゃるようでした。
峯村リエさん。婦長役。りりしいコメディエンヌ。ナイロン風のビシッ!!と決まる笑いに胸がすく思いです。
綾田俊樹さん。老衰しかけている患者役。出てきてくださっただけで感動。その優しさは底なし沼。綾田さん見たさに後半も残ろうかと迷ったのですが、力及ばず・・・。
たしか上川隆也さんと羽田美智子さんって、金田一耕助と悪女という役柄でテレビドラマに出てらっしゃいました。その時の方がお二人とも素晴らしかった。
作・脚本:レイ・クーニー 翻訳:小田島雄志/小田島恒志 演出:山田和也
美術:太田創 照明:高見和義 衣裳:黒須はな子 音楽:川崎晴美 音響:高橋巌 演出助手:則岡正昭 舞台監督:小林清隆 アートディレクション:田部良子 宣伝写真:加藤孝 製作:伊東勇 制作:祖父江友秀/山家かおり 主催:TBS 企画制作:パルコ/Me&Herコーポレーション 製作:パルコ
出演:上川隆也/羽田美智子/濱田マリ/石田圭祐/海津義孝/峯村リエ/近江谷太朗/湯澤幸一郎/一太郎/江口のりこ/山本与志恵/綾田俊樹
《地方公演→福岡、大阪、名古屋》
パルコ劇場:http://www.parco-city.co.jp/play/