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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年07月24日

文学座『モンテ・クリスト伯』07/22-28アートスフィア

 今やミュージカル界の大スターにもなられた内野聖陽(うちの・まさあき)さんがタイトル・ロールです。アレキサンドル・ドュマの小説の舞台化。2001年が初演で今回が初めての再演です。
 3時間余りある長い作品で、しかも私は初演も観たことがあったのですが、すごく面白かったです!

 若い船乗りのエドモン・ダンテス(内野聖陽)は、罠にはめられて地下牢に14年ものあいだ投獄される。自らの力で奇跡的ともいえる脱獄を成功させたエドモンは、モンテ・クリスト伯爵と名を変えて次々と復讐を果たしていくが・・・。

 まずオープニングで既にじ~んとしびれちゃいましたね~。いかにもなクラシック音楽がかかって回り舞台がゴゴゴーっと回ったかと思うと、2階レベルの舞台上で内野さんが「バババーン!俺が“モンテ・クリスト伯”だぜっっ!!」って感じで凄んでらっしゃるんです。あぁなんてカッコいいんだ、このお兄様は・・・!さすが内野さんです。もうここで私は完敗でした。内野さんがこれから何をしようと、おそらく最後まで魅せられっぱなしでしょうから(笑)。
 
 脚色・演出の高瀬久男さんが「エピソードを全部入れていったら上演するのに最低でも3日はかかろうでしょう」(パンフレットより)とおっしゃるように、演劇上演用にすごくスリムに仕上げられています。とにかくわかりやすくって楽しいです。約25年に渡る壮大な大河ドラマを観せていただきました。

 演技も、悪役は悪役らしく、良い人は良い人っぽく、しっかりと作りこまれています。初演の時よりはるかに役者さんが生き生きしていた気がしました。きっとそれぞれの役柄について初演の時よりもずっと深く掘り下げて体得することが出来たんでしょうね。

 作品自体が示す人間のあり方(“人間の法の前にまず自然の法がある”等)にも深く納得でした。勧善懲悪の爽快なストーリーに乗せて悪事は必ずあばかれ、罪には罰が科せられるのだということを丁寧に伝えてくれます。エドモン・ダンテスは最後に「待て、そして希望せよ」という境地に至るわけですが、すごく説得力がありました。

 さて、下記はちょっとひとりごとです。私はたいてい王道で感動して、細か~いところで笑っています。
 私が感情移入して泣いちゃったポイントは↓

・地下牢で一緒だったファリア司祭(関輝雄)が、死ぬ間際に自分の隠し財産をエドモン(内野聖陽)に譲るところ。エドモンがすかさず「私にはその(財産を受け取る)資格がありません」と言ったのに感動。なんてつつましいんだ!!そしてファリア司祭が「お前は私の息子だ!」と返したのに再び感動。

・エドモンの宿敵フェルナン(その時はモルセール伯爵になっています。演じるのは瀬戸口郁)の息子アルベール(浅野雅博)が、モルセール家の名誉に掛けてエドモンに決闘を申し込んだところ。死を決意したのであろうアルベールのさわやかな笑顔に感動。

・モンテ・クリスト伯(内野聖陽)の正体を見破っていたメルセデス(塩田朋子)が「息子のアルベールを殺さないで欲しい」と嘆願しに来たところ。これは圧巻の演技合戦でした。お二人とも涙を流されていました。

 私が人知れず(声を殺して)爆笑したところは↓

・幸せの絶頂の21歳のエドモン(内野聖陽)の動きは、ほぼ全てが爆笑ポイントでした(笑)。いちいち大きく手を広げるし、むやみに回転するし、去り際に少し振り返ってウィンクしながら照れくさそうに笑ったりとか!!内野さ~ん・・・面白い!!そこから投獄、復活、復讐の鬼となっていくんですからね。ギャップが必要なんですよね。

・年を取ってなぜか坊主頭になったダングラール(高橋耕次郎)が、自分の財産を奪われたり、名誉を汚されたりして錯乱している様子。はじけ過ぎなんですよーっっ(笑)。クライマックスが盛り上がりましたし、とても効果的だったと思います。私は面白かった♪

 ところで、折込チラシに『巖窟王』というアニメ映画のチラシが入っていました。かなり素敵なビジュアルで、目を奪われました。今年の秋ロードショーです。

作:アレクサンドル・デュマ (訳:山内義雄「岩波文庫版」より)  脚色・演出:高瀬久男
出演:三木敏彦・関輝雄・石川武・高橋耕次郎・大原康裕・吉野正弘・瀬戸口郁・若松泰弘・鈴木弘秋・内野聖陽・浅野雅博・松井工・石橋徹郎・椎原克知・城全能成・亀田佳明・長谷川博己・南一恵・塩田朋子・金沢映子・奥山美代子・岡寛恵・佐古真弓・山田里奈
装置:倉本政典 ファイティングコリオグラファー :渥美博 照明:金英秀 振付:新海絵理子 衣裳:宮本宣子 舞台監督:寺田修 ヘアメイク:林裕子 演出補:北則昭 音楽:車川知寿子 制作:白田聡 矢部修治 音響効果:斉藤美佐男 票券:松田みず穂
文学座:http://www.bungakuza.com/

Posted by shinobu at 2004年07月24日 21:52