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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年08月05日

フジテレビ『ファミリーミュージカル ピッピ~「長くつ下のピッピ」より~』08/01-15世田谷パブリックシアター

 篠原ともえさん主演の子供向けミュージカルです。スタッフがあまりに豪華なので嬉しくなってチケットを取りました。
 TOPページでもお知らせしましたが、篠原さんの声がものすごく枯れていて、歌が歌になっていませんでした。彼女の良さが存分に発揮される演目だと思ったんですけどね~。演出も決して成功はしていませんでした。すごく残念。

 ピッピは10歳ぐらいの元気な女の子。ミスターネルソン(猿)と白い馬と一緒に、一人でざわざわ荘というあばら家に住んでいる。というのも、お母さんは死んでしまっているし、お父さんは海賊船の船長で、嵐で海に放り出されてから行方不明だから。そこに、みなし子のピッピを「こどもの家」に連れて行こうと、警官やおばさんたちがやってきて・・・。

 “子供向け”の作品って、何歳ぐらいをターゲットにしているのかをはっきりさせるべきだと思いました。この作品はたぶん幼稚園児から小学校低学年向けですね。大人はあまり楽しめません。例えばサーカスのシーンでは数人のジャグラーはすごい技を見せてくれましたが(でもけっこう失敗していたんです)、他は大したことないですので、子供は喜ぶかもしれないけど大人には物足りないと思います。また、ストーリー展開がどうも腑に落ちない。子供でも納得のいかないことが多かったと思います。見せ場の作り方もズレを感じました。

 主役のピッピ(篠原ともえ)の声がかすれて歌が歌えない状態だったからかもしれませんが、全体的におどおどしているというか、自信なさそうな演技・動作をされている役者さんが多い気がしました。あぁそれにしてももったいない。篠原さん、一瞬だけ復活したんですけどね~・・・持続しなかった。もともと声も通るし歌も上手い方なので、残念至極。演技もやはり声に引きずられて低調でした。

 後半に入って、ロングストッキング船長(力也)が出てくるとやっとホッとできました。想像通りの“船長”姿で、大きな体で堂々としていらっしゃるので。海賊メンバーが踊って歌うところで、はじめて「ミュージカルらしい」シーンになっていましたね。楽しかったです。

 井手茂太さんの振付がすごく楽しみだったのですが、こなれていないように見えました。お稽古が足りないのか、振付の意図があまり伝わっていないのか、揃っていないし面白いわけでもないんです。

 教育ママ風のおば様3人組が良い味を出していました。特に松金よね子さんは最高!観てるだけで笑えるし、意地悪さの裏のおおらかなコメディエンヌ魂を感じました。南谷朝子さんが3役で出てるのにこっそり爆笑。だってオープニングでは小学生の格好で踊ってらしたんですよ!
 親友役の高山璃奈さん。子役の女の子ですが、歌があまりに上手くてびっくりしました。演技は・・・私にはNG。


 さて、細かいつっこみを書きたいと思います。あくまでも私個人のアイデアです。

 行儀作法を全く知らないピッピがお茶会で恥をかくシーン。ピッピは、みんなに楽しんでもらいたい、笑ってもらいたいというサービス精神で、机の上に乗ったり、ケーキを独り占めしたりするのだと思います。あの演出では、自己主張が強くて聞き分けの無いダダっ子になっていました。主役がヤな奴に見えることは避けるべきですし、共感できるヒーローでないと子供は楽しめないと思います。

 クライマックスの火事のシーン。ピッピが少年を助けるために、一人で火がメラメラ燃えたぎっている家の中に入っていくのはカッコいいいのですが、「水を浸した毛布をかぶっていく」というのは普通すぎますよね。また、家に飛び込んでしばらくしてから、入った時と同じ入り口から普通に子供を救出して出て来ても・・・全然盛り上がらないです。装置がかっこ良かっただけにものすごい肩透かしでした。ここでこそフライングを使うべきだったと思います。2階の窓から飛び出して欲しかった。

 ピッピが父親と一緒に船旅に出ることになり、村の大人も子供もピッピにお別れを言うために、家の前に集まっているシーン。親友の2人が特に、ピッピと別れたくなくてブーたれていたのですが、手にどうやら手紙らしきものを持っている。ちゃんとピッピに向かい合い、一言↓
 「ボクたち、詩を書いたんだ」
 ・・・詩?詩だとぉ!?
 子供は“詩”なんて書かないっ!書くのは“手紙”だよっっ!!
 それに、みんなの前で読み上げたりしない!そんな恥ずかしいことはできない!

 そして、盛大にお別れをしたのに、船に乗ってからすぐに村にとんぼ返りしてくるのはみっともないでしょう。私だったら、親友2人からは手紙は受け取るだけ受け取って、船に乗ってから読むようにします。そして船の上でピッピが手紙を読んでいるのと同時に、手紙を書いた2人が客席に向かって内容を語りかければ、ピッピが村に戻ろうと決めたことに納得できますし、子供の友達を想う心に感動できたと思います。


原作=アストリッド・リンドグレーン 作詞=作曲:ゲオルグ・R・E・セバスチャン 脚本=スタフォン・イェーテスタム
演出=宮田慶子、翻訳=常田景子、日本語詞=竜真知子、振付=井手茂太 音楽=久米大作、美術=松井るみ、照明=勝柴次朗、衣裳=前田文子 舞台監督=澁谷壽久
出演=篠原ともえ/土居裕子/栁澤貴彦/高山璃奈/園山晴子/鈴木浩介/二瓶鮫一/松金よね子/力也 ほか
ピッピ公式サイト:http://www.pippi2004.com/
フジテレビ内:http://www.fujitv.co.jp/events/pippi/index.html
世田谷パブリックシアター:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/

Posted by shinobu at 2004年08月05日 18:38 | TrackBack (0)