深沢襟さんの演出による安部公房の『友達』です。出演者はク・ナウカの俳優と三村聡さん(山の手事情社) 。五反田の東京デザインセンターはいつ行ってもキレイだな~と思います。もっと早くに行ってお店を見たりしたかった。
さて作品ですが・・・不快でつらかったです。そもそも私はこのストーリーがものすごく苦手なんですよ。『ジョジョの奇妙な冒険』で有名な荒木飛呂彦さんの漫画『魔少年B.T.(ビー・ティー)』で読んだんですよね。なるほど、あれはこの『友達』という戯曲をパクった話だったのか~って今さら知りました。
突然、全く知らない連中が入り込んできて、家を乗っとってしまうお話なんです。ほんっとにヤです。不条理とかナンセンスとかそういうんじゃなくて、そのあつかましさにハラワタが煮えくり返っちゃうんです。会場の都合上、途中で出ることが出来なかったので我慢して最後まで居ました。
演出(深沢襟)には、個性の強さを感じました。戯曲には難解な言葉や決して理路整然とはしていない展開があり、それを歌を歌って表現するのは良いアイデアだと思いました。場面転換も本当にいろんな種類があって、その都度じっくり味わえました。
終盤になって乗っとり家族が軍服姿になっていったのはどうしてなのかな。大っぴらに戦争を表しているとしたらちょっと素直すぎで驚きですが、その方向性は好きです。匍匐(ほふく)前進をして登場したり敬礼をしたりするのも面白い。
このように、演出のひとつひとつを取り上げてみると面白いと感じるところが沢山あったのですが、私は決して好きにはなれませんでした。開演前に戦隊ヒーローものの主題歌が流れていて、ガレリアに全く不似合いな空気を作り出していました。劇中で流れる「8時だよ!全員集合」の音楽もなんだか媚びているようで気が散りました。強烈にアンチなものを提示することで場の奇抜さや不可解さを体感させていたのかなぁと思いましたが、それって、私にはあんまり魅力ないです。
役者さんの演技が全体的に生々しく暴力的だったので、見苦しいシーンが多かったです。きれいな朗読や群舞などで見せるところもいっぱいありましたので、全て計算されたものなのでしょう。私は観ていたいとは思いませんでした。だって美しくないんだもの。ガレリアでやることないと思います。それも敢えてやっているのでしょうけれど、私は悪趣味だと思います。
三村聡さん(山の手事情社)。いつもどんな演技を見せてくださるのか楽しみな役者さんですが、今回はわざと喉の奥で出されている声が息苦しく感じました。あんなに激昂しているのならキチガイ家族を追い出せそうなものなのに、なぜか服従するので、観ていて納得できないんですよね。
むむぅ・・・私はとにかくこの戯曲が苦手なのでしょうね。あの漫画のことはほとんどトラウマのように覚えているんですもの。ストーリーはもちろんのこと、コマ割から人物の表情までこと細かく。実は、大好きだったからなんですけどね。だって最後にB.T.は、華麗なテクニックで見事に彼らを追い払ってくれたから(笑)。原作とはえらい違いです。
作:安部公房 演出:深沢襟
出演:中村優子、野原有未、寺内亜矢子、加藤幸夫、牧野隆二、佐々木リクウ、高橋昭安、大沢由加子、三村聡(山の手事情社)
衣裳:忠内もも 美術:深沢襟 舞台監督:弘光哲也 音楽協力:Tomoya イラスト:三田秀夫 制作:久我晴子 大和田尚子 田中美季
ク・ナウカ:http://www.kunauka.or.jp
東京デザインセンター:http://www.design-center.co.jp/