2004年09月29日
ホリプロ・テレビ朝日・朝日新聞社・TOKYO FM『デフ・ウェスト・シアター「ミュージカル ビッグ・リバー」』09/28-10/24青山劇場
正式タイトルは“BIG RIVER THE ADVENTURES OF Huckleberry Finn”です。マーク・トウェイン原作の「ハックルベリー・フィンの冒険」をもとにしたミュージカルで、舞台版オリジナルは1985年に発表され、トニー賞を受賞しています。1988年には真田広之さんも出演されているんですね。知らなかった。
興奮冷めやらぬ初日の夜が明けて、メルマガ号外(2004/09/29)を出しました!
ディスカウント・チケット情報はこちらへ!
オープニングで、マーク・トウェイン役のダニエル・ジェンキンズさん(この方が主役のハックルベリー・フィンの声も担当します)が登場して話し始めた段階で、涙が出そうになりました。すっごく不思議な感覚でしたね・・・たぶん何かがすんなりと心に、体に沁み込んだのです。まだお話も始まっていないし歌さえ歌われていないのに泣くなんて、いくら私でもありえない(笑)。きっと今までにあまり感じたことのない何かだったと思います。
デフ・ウェスト・シアターの「デフ」は英語でdeaf、つまり聾者(ろうしゃ。耳の聞こえない方)という意味です。聾者の俳優さんは声を出さずにアメリカ式手話(American Sign Language)で語り、聴者(耳の聞こえる健常者)の俳優さんが聾者の俳優さんの裏、または横でセリフをしゃべったり歌ったりします。
大人数でそろって手話をするのはとてもきれいでした。アメリカ式手話がいわばダンスの振付になっているのですね。これがこの作品の大きな特徴であり、私が何とも表現しがたい感覚に襲われた原因だと思います。普通の振付には感情や意味が付加されますが、手話の場合はさらにその上に「言葉」が追加されます。その「言葉」は歌声でありながら、同時に身体でもあるのです。ミュージカルの要素がひとつ増えたような感覚といえば良いでしょうか。
《ここからネタバレします。この下の段落です。》
ラスト近くの大合唱の中、あるひと時だけ音楽と歌が消える瞬間があります。劇場全体がシーンと静まりかえる中、聾者の方々は変わらず全身全霊で手話をします。そこには「あなた(観客)に、伝えたい」という心がありました。舞台上にいる俳優さんたちから、全力投球の無償の愛がゴーっ!と(無)音をたてて、私のところまで一目散に飛んできてくれたように感じました。またもや涙がボロボロです。こんなに安らかな気持ちになって、ありのままの私でいられる青山劇場は初めてでした。
手話の話ばかり書きましたが、音楽も歌も素晴らしかったんですよ。明るいアメリカン・カントリー・ミュージックにソウルフルな黒人のゴスペルが合わさり、思わず顔がほころんでしまうような優しさと、体にじ~んとくる力強さがありました。生演奏も軽快ですごく楽しかったです。舞台上の俳優さんたちとアイコンタクトで息を合わせているのを見るのも嬉しくなります。
ストーリーは、黒人奴隷売買をしていた時代のアメリカの南部が舞台ですので、つらいエピソードも有るのですが、決して重すぎたり嫌みにはなったりせずに、一つ一つ危険を乗り越えていく少年の冒険物語の形を守りました。私が世界名作アニメ劇場「トム・ソーヤの冒険」を観ていた頃に想像していた、アメリカの良い部分が前面に出ていた感じです。
装置は東京ディズニーランドの「くまのプーさんのハニーハント」に似ていました。舞台上に等身大の大きな本があり、そびえているページが開いたり、移動したりして場面転換します。マーク・トウェインの小説を旅しながら、目の前にいる聾者の聞こえない歌声に心を振るわせました。
演出は普通のミュージカルらしいもので、「今から歌うよ~っ」という掛け声が聞こえてきそうなぐらいあからさまなタイミングで歌い始めますし、決してクールだとは言えないのですが、かえって技巧に走らずに自然に歌いあげるスタイルが、どんどんと感動を呼びます。かっこつけてないんですよね。楽しんでもらいたい、分かち合いたいと思ってらっしゃるのが伝わってきます。
初日ということで豪華絢爛な客席でした。秋篠宮紀子様がいらしていたのが一番の目玉でしたね。青いスーツが美しかった。なんと紀子様はアメリカ式手話がおできになるそうなんです。素晴らしい!!終演後、あまりに感動されて、すぐにはお席をお立ちにならなかったとか。
ホリプロ主催公演ということで女優の石原さとみさんもチラリ。思ったよりも小さい方で、めちゃくちゃキュートでした。下くちびるが分厚いのが可愛らしかったです。
初日が開けてすぐトラックバック等を頂きました。
→ クワストさんの「ビッグ・リバー」応援サイト
→ インターミッション~ 幕間のおしゃべり~「祝:東京公演初日!!」
→ U.Kaye Presents ニューヨークへ行きたいっ!「ビッグ・リバー絶賛公演中!」
レビューもあがってきています(2004/10/04)
→ 藤田一樹の観劇レポート
観に行くことに決めた方も!
→ stage note archives [雑談]今月の予定
ユリイカ!のぴーとさんのご予定です。
演出・振付:ジェフ・カルフーン 音楽監督・指揮:スティーブン・ランドー 音楽・作詞:ロジャー・ミラー 脚本:ウィリアム・ホープトマン 原作:マーク・トウェイン
出演:タイロン・ジョルダーノ(ハック)、ダニエル・ジェンキンズ(マーク・トウェイン)、マイケル・マッケロイ(黒人奴隷のジム)、他
招聘・制作:ホリプロ
『ビッグ・リバー』公式:http://www.big-river.jp/
2004年09月27日
らくだ工務店『かりすま』09/24-26新宿シアターモリエール
仲良くさせていただいてる らくだ工務店は、石曽根有也さんが作・演出・出演する劇団です。今年3月に第13回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルに出場されました。
石曽根さんはホームページ製作やチラシ・デザインもお仕事にされている多彩な方です。
あまり流行っていない商店街の中の、本当に流行っていない理髪店「バーバー富士(だったと思う)」が舞台。1年前に父親を亡くして跡継ぎになった長男 (一法師豊)は、相変わらず冴えない毎日を過ごしている。そこに妹の(長峰稔枝)への見合い話が飛び込んできて、平凡な日々にちょっとした波風が立つ。
商店街の出し物を決めるために、魚屋、酒屋、居酒屋、喫茶店の跡継ぎの若者たちがいつもどおり散髪屋の2階に集まる。商店街の悲喜こもごも。
物語が進む途中で数分間の映像が数回挟まれました。舞台に登場する役者さんが映像でも同じ人物として登場し、衣装も髪型もぴったりそろっていますので、映像と舞台とが同時進行しているような作りでした。
床屋の長男(一法師豊)が、恋心を寄せる花屋の女の子(瓜田尚美)にギターの弾き語りでザ・スパイダースの「なんとなく なんとなく」を歌う演技がすごく良かったです。最初はプレーンに→ちょっと気取って→そしてノリノリになっていく彼を見て、ぐんぐん引いて(冷めて)いく女の子も良かった(笑)。
喫茶店(エンペラー?)の跡継ぎの中国人(たしか広東省出身)のワンちゃん(兼島宏典)のキャラクターが面白かったです。
舞台にいる役者さん優しいお人柄が伝わってきて、観ている内にほんわかと嬉しくなってくるのが、らくだ工務店のカラーとして定着してきた感があります。
いつもながらのリアルな舞台美術(福田暢秀)が嬉しいです。昔から何も変わっていない床屋さん。椅子が電動でちゃんと上に上がったのには驚きました。私も小学校低学年の頃に通っていたお店にそっくりでしたねぇ・・・懐かしい。
“ソクラテス”と呼ばれていた女性の横顔イラストの味のあるポスターは一体どこから調達したんだろう、誰かが描いたのかしら?と思っていたら、なんと劇団員の私物だそうです。草刈正雄さんの若かりし頃のギラギラしたポスターが数枚壁に貼ってあったのですが、それも同じ方の私物だとか・・・すごいコレクションですね(笑)。
日本語の歌にこだわった選曲が良かったです。歌詞を味わいました。ただ、曲に合わせるためにシーンを長くしているのではないかと思えるところが数箇所ありました。特にラストの、全員が床屋さんに集ってスローモーションになるシーンは長く感じましたね。
作・演出:石曽根有也
出演:一法師豊 志村健一 今村裕次郎 兼島宏典 石曽根有也 瓜田尚美 山内三知 福島悠騎 長峰稔枝(ペテカン)
舞台美術:福田暢秀 美術製作:F.A.T Studio 音響:菊池秀樹 照明:三瓶栄 宣伝美術・映像:C-FLAT 制作:音光堂・高橋邦浩 協力:ペテカン・株式会社クリオネ 企画・製作:らくだ工務店
らくだ工務店:http://www.rakuda.onkoudo.gr.jp
2004年09月24日
シス・カンパニー『ママがわたしに言ったこと』09/04-10/03青山円形劇場
木内みどり(祖母)、渡辺えり子(母)、大竹しのぶ(娘)、富田靖子(孫娘)の4人芝居です。
ロンドン生まれの女性作家シャーロット・キートリーさんが1985年に書かれた脚本で(当時25歳)、1987年にマンチェスターで初演、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなど多くの国々で翻訳・上演されています。2000年に英国ナショナルシアターが選ぶ“20世紀の最も偉大な戯曲20本”に選ばれており、今作品が日本初演です。
厳格な母ドリス(木内みどり)のもと、戦時中のイギリスで育ったマーガレット(渡辺えり子)は、家族のためだけに人生を費やしている母親に反発し、働く女性になる夢を持ちながら、やがてアメリカ人と結婚する。マーガレットの娘ジャッキー(大竹しのぶ)はマーガレット以上に自由奔放な性格で、美術学校に進んだが在学中に未婚の母となってしまう。生まれて間もない子供を母親のマーガレットに預け、ジャッキーは画家としての成功をめざし「働く女性」となる。ジャッキーの娘ロージー(富田靖子)はマーガレットの娘としてすくすくと育っていた。彼女が16歳になる日に出生の秘密が明かされ、ロージーはジャッキーのもとに返される約束になっているのだが・・・。
青山円形劇場でこんな豪華なキャストは今までになかったのでは、との噂です。4人の大女優の迫真の演技を目の前で堪能いたしました。戦時中を含む約半世紀の時の流れの中で、それぞれの時代に、それぞれの夢をもって、懸命に生きた4人の女性の生き様を描き出します。観客の誰もが自分の人生とどこかしら重ね合わせて感情移入して観ることができていたと思います。私も色々思うところあって、考えさせられたり共感したり、どっぷり作品の中に入り込みました。
パンフレットの鈴木勝秀さんのインタビュー(相手は篠井英介さん)にありましたが、鈴木さんはこの作品では、時代背景や舞台のイギリスらしさなどの脚本のバックグラウンドを極力排除する演出を心がけたそうです。その意図は大成功していたと思います。
天井とステージが刺繍布を挟んだ丸い刺繍枠になっています。天井は太陽で、地面は草のデザイン。天井の布から刺繍張りが突き刺さっています。乙女チックなファンタジー空間の中に、白に統一された衣裳が映えます。ピアノの上の真ん丸い照明器具が夢の世界のポイントになっていて可愛かった。この作品が照明、美術、音響、衣装、ヘアメイク等のスタッフワークと、演出、俳優との共同創作であることが、全体の輝きとして現れていました。今までに観た鈴木勝彦さん演出の作品の中で一番共感できました。(パンフレットにスタッフさんの顔写真が載っているのがすごく嬉しいです)
娘役を演じていた女優さんが突然母親役の演技を始めたり、時代を逆行したりもする大胆な構成の脚本です。そこに、ストーリーと直接関係のないシーンもところどころ挿入されます。4人の女優がみな白いスモッグを被り、大きなリボンのカチューシャをつけて、女児を演じるのです。そこで表されるのは母親に対する漠然とした、でも確かに存在する恐怖と殺意です。母親の腹から生まれ母乳で育つ私たちは、世の中に出てくる時点で母親なしには生きられない状況におかれます。しかも自分が女だった場合、いずれ子供を生んで母親になるという命のループに繋がれていることに気づき、母親という呪縛から逃れられないことに悩むのだと思います。
女の人生において、結婚、出産、子供の結婚、子供の出産という人生の通過儀礼は、嫉妬と意地悪がつきものだと私は感じています。それが女児のシーンでは隠喩として表され、マーガレットとジャッキーの関係の中に具体的に現れます。観ていてすごくつらかった。こんな罪は犯したくないと強く思いました。
中盤ぐらいまででものすごく感動して、涙もポロポロ出ていましたので、もしかしたらメルマガ号外出せるかも?と思ったのですが、ジャッキー(大竹しのぶ)が生んだ赤ちゃんを母親のマーガレット(渡辺えり子)が自分の子として育てるという展開に、私の心は冷めてしまいました。そういう属人的な事件に焦点をを当ててしまったため、“ある家族のドラマ”という枠内に納まってしまい、普遍性が感じられなくなってしまったのです。母娘の4代にわたるお話を通じて、女だからこそ語ることができる女の歴史、性(さが)を表すならば、そういう事件よりも一人一人の人生や心の中を描く方向が良かったんじゃないかと思います。←これは脚本についての意見です。
木内みどりさん(祖母ドリス役)の在り方に一番納得できました。ラストの独白に涙、涙でした。「選ぶことができなかった」人生を生きた女性・ドリスが、マーガレットに言う「お前は欲張りなのよ。ジャッキーはもっと欲張り」というセリフに深く納得しました。女性はどんどんと自由と権利を得られるようになってきていますが、だからといってそれが幸せに直結しているわけではないんですよね。自分が生きているこの時代の中での、自分自身の幸せを手に入れたいと思いました。
作:シャーロット・キートリー(Charlotte Keatley) ~My mother said, I never should~
翻訳:常田景子 演出:鈴木勝秀 美術:松井るみ 照明:倉本泰史 衣裳:前田文子 音響:井上正弘 舞台監督:瀧原寿子 プロデューサー:北村明子 企画・製作:シス・カンパニー
出演:木内みどり/渡辺えり子/大竹しのぶ/富田靖子
ママが私に言ったこと:http://www.siscompany.com/03produce/08mama/00.htm
2004年09月23日
STスポット/reset-N『reset-Nの火星年代記』09/16-17横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール
reset-N(リセット・エヌ)は夏井孝裕さんが作・演出される劇団で、私は賛助会員(Support-N)になっています。
今回はレイ・ブラッドベリ原作のSF小説『火星年代記』をreset-N風に脚色・演出されるとのことで、前回のバロウズ原作『裸のランチ』も面白かったので、期待して横浜に出向きました。
1999年から2026年までの火星の歴史を年ごとに辿って行くスタイルでした。客席から舞台に向かって正面の壁に貼ってある、小さな黒板に白いチョークで年月を書いて(例:Aug. 1999)、シーンが進むごとにそれを消して書き直します。全体は時系列に進む計14個のエピソード集のようになっていました。初めて地球人が火星に到着したのが1999年、2005年に地球で核戦争が起こり、壊滅的なダメージを受けた地球からある家族が火星に移住してくる2026年でラストです。
シーンを細かく作って積み上げていくというよりは、登場人物や場面設定を朗読で説明し、淡々とエピソードの紹介をしていくスタイルでした。
舞台は劇場のレンガの壁がそのまま露出している状態で、ステージ上にはおしゃれなスツールや、ビーチによくあるビニール製の長イスなどが気楽な感じで置かれています。照明も『裸のランチ』同様に明かり自体が美しいものが揃っていて、reset-Nらしいクールで洗練された空間が出来上がっていました。
原作は読んだ事がなかったのですが、レイ・ブラッドベリ短編集は目を通す程度に知っていました。物語が進むについれて、ブラッドベリらしさがだんだんと肌で感じられるようになり、やっぱり夏井さんは原作をすごく大切にされてるんだなぁと思いました。バロウズの『裸のランチ』についてもそうだったと思うんですよね。reset-Nならではの舞台空間でありながら、伝わってくるのは原作のイメージだというのは、既存の本(映画でも音楽でも何でもいいのですが、ここでは本にしました)を上演する場合の一つの理想の形だと思います。
上演時間はきっちり2時間ぐらいだったかと思います。朗読劇のように緊張が持続するタイプのお芝居だったからか、ちょっと長く感じました。でもストーリー自体がすごく面白いし、目に入ってくるもの、耳に届いてくるものがとても繊細で美しいので、最後まで退屈しませんでした。
声があれほど反響しちゃったのは計算違いだったんじゃないかなぁ。役者さんの力量が作品の質を露骨に左右してしまいます。演技が上手い役者さんでも、実は発声ができていなかったりするんですね。新人さんの朗読はやっぱりきつかったです。所属役者さんがこれを踏まえてどんどんと技術を身につけて行ってくれれば、reset-Nの世界はもっともっと完成度が高くなると思います。
異常な猛暑だったこの夏を過ごした私たちには、残念ながらブラッドベリのSF世界が非常に身近に感じられるようになってしまいました。私たちが地球を破壊するスピードは確実に速まっています。それを予言するかのような作品を今上演するという所に、reset-Nの理念を感じます。私はそこに共感しています。
※賛助会員について
半年に一度発行される賛助会員のための会報をいただきました。内容は夏井さんのインタビューやグランドデザインを手がけるデザインチームmassigla lab.についての解説など非常に充実していて、なんと前回公演の脚本も同封されていました。終演後に夏井さんとお話させていただけましたし、劇団員の皆様をご紹介いただくなど、心のこもったおもてなしを受けました。賛助会員になって良かった♪
※横浜への旅路について
まず赤レンガ倉庫にたどり着くまでの道のりで感動しました。みなとみらい線が東急東横線と直通なので渋谷から一本で馬車道駅まで着きましたし、駅も新しいだけでなくデザインが凝っていて面白いんです。横浜市ってすごい!こんなに町が美しいなんて!!また観光にも来ようと心に誓いました。
そして会場の赤レンガ倉庫ですが、これがまた信じられないほどカッコいい!こんなにきれいでおしゃれで、しかも昔のものを観光資源として再利用しながら、現代のものと融合させている奇跡的な建物があるなんて!!今まで知らなかった(知ろうとしなかった)私を悲しく思いました。どうか皆さんも、ちょうどスパーキング21という演劇フェスティバルもあることですし、横浜に訪れてください。
スパーキング21 vol.15 特別企画公演
脚本・演出:夏井孝裕 原作:レイ・ブラッドベリ 翻訳:小笠原豊樹
出演:町田カナ 久保田芳之 篠原麻美 原田紀行 平原哲 綾田將一 生田和余 長谷川有希子
舞台監督/小野八着(JetStream) グランドデザイン/massigla lab.(舞台美術・照明・音響のトータルデザイン) 音響協力/荒木まや(ステージオフィス) 照明協力/木藤歩(balance,inc.DESIGN) 衣装/福井希(massigla lab.) 小道具/M'z garden 宣伝写真/山本尚明 制作/秋本独人・河合千佳・森下富美子
共催:横浜市/(財)横浜市芸術文化振興財団 助成:独立行政法人日本芸術文化振興会/(財)セゾン文化財団/神奈川県
公演公式サイト:http://www.reset-n.org/jp/kasei/index.html
2004年09月22日
TBS/Bunkamura『ヤック トゥア デ~ン 「赤鬼」タイバージョン』09/14-22シアターコクーン
野田秀樹さん作・演出の『赤鬼』3ヴァージョン連続公演です。
ロンドン・ヴァージョンに続いてタイ・ヴァージョン。あまりに感動したので、メルマガ号外(9/22号)を出しました!
BunkamuraのHP内のページ「赤鬼とは」に『赤鬼』のこれまでの上演歴とあらすじが書かれています。
あらすじを引用します↓
“村人に疎んじられる「あの女」と頭の弱いその兄「とんび」、女につきまとう嘘つきの「水銀(ミズカネ)」が暮らしていた海辺の村に、異国の男が打ち上げられたことから物語が始まる。
言葉の通じない男を村人達は「赤鬼」と呼び、恐れ、ある時はあがめ、最後には処刑しようとする。彼と唯一話ができる「あの女」も同様に処刑されそうになる。「水銀」と「とんび」は捕らえられた二人を救い出し、赤鬼の仲間の船が待つ沖に向かって小船を漕ぎ出すが、船影はすでになく、四人は大海原を漂流するのだが…。”
純白の気持ちよさそうな木綿の衣裳に実を包んだ、褐色の肌の快活なタイ人の俳優さん達が、太鼓を鳴らしながら楽しげに飛び跳ねて舞台に登場してきた時点で、もう私は涙ぐんでいました。何なんだ、この空気感は?!透き通るような、清々しい明るさです。舞台は客席とほぼ同じレベルで、真っ白の正方形。床はつるつると滑る素材で、役者さんは裸足で軽やかに闊歩しています。
ロンドン・ヴァージョンと同じく、浜に打ち上げられた「あの女」「水銀」「とんび」の3人が村人に助けられ、フカヒレを食べた「あの女」が身を投げるところから始まりました。ストーリーを全てわかった上でどんな具合に楽しませてくれるのかな~と、うきうきしながら観始めました。
ひざの高さぐらいの銀色の真ん丸いテーブルをロンドン・ヴァージョンでのワードローブのように使っていました。足が6本ぐらい付いていて、なんとその長さがちぐはぐなのです。赤鬼(野田秀樹)と「あの女」(ドゥァンジャイ・ヒランスリ)が台の上に乗って演技する時はグラグラ、ガタガタ揺れまくりです。そして天板と足が外れるようになっていました。天板はただの丸い円盤になり、足の方は全てが丸い輪に接続されいて、6本の棒が直径1.5mほどの輪に垂直になるようにひっ付けられた小道具になりました。それが縦向きに置かれて洞窟の入り口になったり、足が天井を向くように床に置かれて牢屋になったりします。
ロンドン・ヴァージョンの時は『赤鬼』自体を初めて観るのでイヤホンガイドを借りたのですが、今回はだいたいわかるしな~と思って借りずに観る事にしました。・・・浅はかでした。だってタイ語なんだもの。セリフが全然わかりません。セリフの意味がわからないので、みんなが笑っているところで私はシーンとしていたりして、途中でちょっぴり後悔しましたね(笑)。
でも、かえって役者さんの演技をしっかり見ることができました。これがラストに近づくにしたがって、より強い感動を呼んだと思います。だんだんと役者さんが登場人物にぴったりフィットしてくるんです。意味の分からないセリフもなぜか頭にすーっと沁み込んでくるようになり、赤鬼と「あの女」を裁く裁判のあたりから、完全にこのお芝居の世界にどっぷり頭が浸かり込んでいました。
「あの女」役のドゥァンジャイ・ヒランスリさんから目を離せませんでした。凛とした立ち姿の中に、生まれながらに人間が持っている野生が静かに燃えています。自分が赤鬼の肉を食らったのだと知ってしまった瞬間、彼女の震える背中からその憤りと悲しみが、煙のように立ち現れて目に見えるようでした。ラストシーンで、波の群舞をしながら10人程の役者さんが舞台を斜めに横切り、それに対してすれ違うように「あの女」が一人でゆっくりと歩いて来ます。鍛えられたスリムな胴体と光を放つ褐色の手足。世界の全てを許したアルカイック・スマイル。彼女のあまりの美しさに、涙が溢れて溢れて顔がくしゃくしゃになりました。
タイ人の俳優さんの声と身体に魅せられたことが、この作品の一番の思い出になると思います。笑顔がすごく素朴で清らかで、彼らの体を通じて地球のパワーが劇場にみなぎっているようでした。人間ってこんなに自然と融合できるんだなと、いえ、そもそも人間は自然そのものだったんだなと、実際に体感させていただけた気がしています。
赤鬼の衣裳は体をぴったり包むようなタイツ・スタイルで、毛羽立った手編みのセーターみたいな生地でした。色合いは緑系でミッソーニのニットのように色が混ざりあってます。顔に白いメイクをし、右目だけに白いコンタクトを入れて、髪も白いソバージュでしたので見た目は本当の化け物でした。赤鬼が目をふさぎたくなるくらい恐ろしい姿のケダモノだったからこそ、彼が花を主食としていたり、壁画を描いていたり、子供を優しく育てていたりすることが奇跡として伝わりますし、そんな彼と心を通わせられたことが大きな喜びになるんですよね。たしか前回は赤いスーツだったようなので(舞台写真によると)こちらの方が良かったと思います。
「水銀」役のプラディット・プラサートーンさん。かっこい~っ。セクシーッ。鍛えらて引き締まった野性的な体に、男らしい優しさがいっぱいでした。日本人の俳優の誰かに似てるな~と思いました。見かけではなく在り方で。
※ちょいと蛇足です。赤鬼が、「あの女」と一緒にいる時に「freedom!」と叫ぶシーンで、昔私が出演したお芝居で使った音楽が流れました。雰囲気や意味として全く同じ状態で使われたので(私の芝居では壁が開いて新しい世界が現れるシーンでした)、いわゆる走馬灯状態に陥り、頭がヘンになりそうでした。体は覚えているものですね。くわばらくわばら。
作・演出:野田秀樹
翻訳=プサディ・ナワウィチット 共同演出=ニミット・ピピットクン 美術・衣裳=日比野克彦 照明=海藤春樹 照明助手:飯田幸司 選曲・効果=高都幸男 ビューティ・ディレクター:柘植伊佐夫 演出助手:石丸さち子 舞台監督:間庭隆治 カンパニーマネジャー:千徳美穂
出演= 野田秀樹(赤鬼) ドゥァンジャイ・ヒランスリ(あの女) ナット・ヌアンペーン(とんび) プラディット・プラサートーン(水銀) 他
Bunkamura内『赤鬼』サイト:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/akaoni/index.html
映画版・劇団☆新感線『髑髏城の七人』09/18-10/03丸の内東映
演劇公演をデジタル録画して映画館で上映するという前代未聞の企画です。
今年の春に新国立劇場中劇場で上演された劇団☆新感線の人気作品の再々演。プラチナ・チケットでしたね。前売2500円の入場料を払って録画を見るのはどうなんだろう?と少々いぶかりながら映画館に足を運びました。
上演前に古田新太さんの前説がありました。「すぐはじまるよ。映画だからね。わくわく感ないけどねー」とかふざけたやつ(笑)。
そして上映開始。・・・舞台とはもちろん違うのですが、それでも本番に近いのではないかと思える臨場感が味わえました。いつもの新感線のお芝居が目の前で!大好きな役者さんがドアップで!あまりにかっこよくて泣いちゃったよーっっ。
編集がめちゃくちゃカッコよかったです。特に見得を切るシーンでは、上から下から左右からパッパッパッとすばやいコマ割で、あらゆる角度から役者さんの一番かっこいいところを堪能できます。最新式のカメラを13台使っているそうです(ちなみに『オケピ!』再演のWOWOW生放送の時は16台だったはず。生放送なので編集は良くなかった覚えあり)。
ワールドビジネスサテライトで先日(9/21)、初日の舞台挨拶の模様などが放送され、特にデジタル技術について取り上げられていました。画質が飛躍的に向上したため、こんな企画が実現したんですね。フィルムじゃなくてソフトをそのままスクリーンに投影しているのには驚きました。新しい時代がやってきたということです。
家のテレビでDVDを見ることとの違いは、大画面であることはもちろんのこと、あの迫力の音響です。下手客席後方から登場する役者さんの声が、ちゃんと映画館の下手客席後方から聞こえてくるんです。嬉しかったな~。
上映時間は途中休憩15分をはさんで19:10~22:00の約3時間でした。映画館で途中休憩というのがなんだか不思議な味わいでした。いつもの新感線のお芝居と同じで、パンフレットを物色したり物販のDVDを覗き込んだり(笑)。そうそう、劇場で販売していたパンフレットを買えたのが嬉しかった♪冷静に考えてみたらすごいサービスですよね。
肝心のお芝居の内容は、期待を裏切らない、非常に面白い作品だと思いました。演出のいのうえひでのりさんが「新感線の代表作」とおっしゃるのにも納得。役者さんも超豪華で、これまたぴったりのキャスティング。来月の『アオドクロ』を観て自分がどう感じるのかがすごく楽しみです。
水野美紀さん。なんて美しいんだ!こんなに美人だったなんて知らなかったぞ!!テレビのCMやドラマではわからなかった凛々しい涼やかな微笑とあの大きな切れ長の瞳。夢に見そう。
佐藤仁美さん。迫真の演技!涙がボロボロあふれるお顔を見て私ももらい泣き。
古田新太さん。あいかわらず素敵なんですが、セリフが早すぎて、その上ちょっとモゴモゴしてらして聞こえづらかったです。はは、舞台で観ている時は古田さんのセリフなんて聞こえようが聞こえまいがあまり気にしていなかったのですが(だってカッコいいから)、これはデジタル録画&録音の成果なのかな?
さて、ちょっと蛇足。私がなぜ生の舞台を見逃したのか・・・これが涙なしには語れないのですが、なんと必死でぴあに並んでチケットを取ったというのに、スケジュール帳に予定を書き忘れたため、当日は完全にすっぽかしました!!・・・・ぐ。思い出したくない思い出だ・・・今だに半券つきのチケットが残っています(涙)。なので、今回の企画にはホントに感謝しているのです。これからもぜひやってもらいたい!でも、私が生で見たものを録画で再び観るかというと、それは疑問なのですが(笑)
これは、演劇ファン以外の人に演劇の魅力に触れてもらう絶好の機会なのではないでしょうか?映画ファンの友人に声をかけてみたいと思います。
作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
出演:古田新太 水野美紀 佐藤仁美 坂井真紀 橋本じゅん 佐藤正宏 山本亨 梶原善 右近健一 河野まさと インディ高橋 山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 杉本恵美 中谷さとみ 保坂エマ 川原正嗣 前田悟 横山一敏
アカドクロ公式HP:http://www.akadokuro.jp/
2004年09月19日
チェーホフ東京国際フェスティバル・ジンジャントロプスボイセイ『かもめ』09/15-20スフィアメックス
中島諒人さんが演出するジンジャントロプスボイセイは、はっきりと独自色のあるアーティスティックな舞台空間づくりに定評があり、利賀演出家コンクール2003において最優秀演出家賞を受賞しています。私はこれまでで3作品ぐらい拝見していると思うのですが『RとJ』@青山円形劇場では泣いちゃいました。
1時間15分の『かもめ』でした。トレープレフが自殺するところから始まり、彼の回想という形でストーリーを順に追っていき、最後はまたトレープレフの自殺で終演します。短い時間内にきっちり本筋が描かれているのはすごいと思いました。
舞台の周りは黒い幕で囲まれており、ステージも黒で、その上にモスグリーン、濃いグレー、黒などの暗い色使いの衣裳を着込んだ俳優が客席の方を向いて静止します。全体がダークなイメージの中、ニーナだけは白のドレス。衣裳デザインは『かもめ』の世界には関係なく抽象的なスタイルです。蜷川幸雄さんのシェイクスピア劇やギリシア悲劇でよく見られる全身を包み込むデコラティブな作りで、テカテカした素材も使っていることから近未来SF映画の雰囲気もあります。
スフィアメックスでの『かもめ』なので、私は今年の1月に観たク・ナウカ プロデュース『かもめ・第二章』とどうしてもイメージを重ねてしまいました。『かもめ・第二章』で伝わってきた人間の心が、今作品ではあまり感じられませんでした。利賀フェスティバルで「ギリシア悲劇のようなチェーホフ作品」と評されたそうですが、たしかに神々が天界から人間たちのおろかな所業を見下ろしているという風に見えなくもないですね。
セリフの語り口に特徴があり、ジンジャンっぽさというか、ほぼ確立されたリズムがあります。ク・ナウカの俳優の語りにも似ていますね。日本語って鍛えていくとそういう風になるのかな。しかしながら、心に伝わってくる言葉を発していない役者さんが多いような気がしました。歩いたり、立って静止したり等の体の動きについては、じっと集中して見ていられるのですが、声を出したとたんにちょっとがっかりするというか、だんだんと頭が『かもめ』から離れていってしまいました。
特に早口で長いセリフをしゃべりきる時は、言葉を話しているというより振付をこなしているような印象で、ただ脚本どおりのセリフを発しているだけで、登場人物を演じていないように見受けられました。そういうことは初めから意図していないかもしれませんが、私は退屈してしまいました。常に目を見開いて怖いお顔をしてらっしゃるのも不思議ですね。能面を被っているイメージなのかな。
ジンジャンといえば笑いにも期待しているのですが、今回は笑えなかったなぁ。マーシャが“北の宿から”の節で替え歌を歌うのがたぶん笑いになるはずだったと思うのですが、もうちょっとパンチがあれば笑えたかも。三条会ぐらいのテンションがあれば(笑)。
トレープレフとニーナが二人で作ったお芝居を上演する湖のほとりは、舞台の面側中央に置かれたテーブルの上にミニチュアとして作られていました。トレープレフとニーナの無垢なる青春時代を小さくて愛らしい箱庭として表すなんて、素晴らしいアイデアだと思いました。ニーナがトリゴーリンに心奪われて、その机を箱庭ともども倒してしまい、砂が床にざざぁっと落ちるのがすごく切ないです。その机の天板全体が照明で光るようになっているのも美しい。
あぁ・・・つくづくこの作品は野外でぜひ観たいと思いました。野外公演の舞台写真を観ると、湖がありますし、たいまつの明かりも生々しいし(あれ?たいまつは無いか、でもそんな風に見えます)、全く違う味わいだったことと思います。(この後、鳥取公演があります)
作:チェーホフ 演出:中島諒人
出演:高橋等 斉藤頼陽 中川玲奈 西堀慶 赤羽三郎 矢部久美子
舞台監督:赤羽三郎 音楽:スズキクリ 照明:斉藤啓/大迫浩二 衣装/メイク:デボラ 音響:AZTEC 協力:小倉亮子 制作:中島佳子
ジンジャントロプスボイセイ:http://www.zinjan.jp/
ピチチ5(クインテット)『反撃バップ!!』09/17-20高円寺明石スタジオ
ピチチ5(クインテット)は『第1回歌フェスティバル』、『大クラシック』、『3年パンク』と、私が完全にフォーリンラブしている福原充則さんが作・演出する演劇ユニットです。
私が所属するRel-ay(リレイ)の女優 永野麻由美が出演していることに個人的に感激しつつ、今回も深い味わいダメ男コメディーでした。チケット代2000円は安いです。
4つの短編(「空飛ぶ夜勤」「火の鳥フリーター篇」「ライスカレー28年」「やらないバンド」)でしたが、登場人物がかぶってくるので1本のストーリーのような感触でした。少しご紹介すると↓
まんが喫茶で働く上村(三土幸敏)は、突然、同じバイトの西野さん(永野麻由美)にフラれた。「上村さんって私のこと好きでしょ?私、上村さんとは付き合いませんからっ」・・・告白してもいないのに。
まんが家志望の我孫子(野間口徹)は、また時給が上がった。「俺は“まんがしか描けない男”になりたいんだ!」すかさず辞めて新しいバイトを始めるが、そこでもいきなりリーダー候補に。う、おおおおおおーーっ!叫ぶ我孫子。
冴えない夜勤の男達の、何も変哲もなさすぎる平凡な日々の中の妄想。彼らの口から出る、ちょっと毒を含みながらも、基本は自信なさげな心のつぶやきが、常に図星を突いていて面白いです。
・「皿一枚で済む料理を作るなー!」
・「貧乏飯食うな!金がないからいっつもミートソースばっか食ってるんだろ!」
・「女は、いつも現実スレスレでいろ!」(セリフは完全に正確ではありません)
ダメダメな日常から突然むやみにスケールがでかくなるのが快感です。人間って誰でもただ想像することによって、地球を飛び出し、太陽系を越えて、世界の果てまで旅していると思います。それを舞台上で、取るに足らないダメ男の平々凡々な毎日の中で爆発させるんですよね。
ここからネタバレします。
仕掛けがいっぱいありましたね~、荒唐無稽な(笑)。
・突然登場した手塚治虫先生が何かしょってる??と思ったら、いきなり火の鳥がビヨン!
・巨大な月が吊られながら出現。黒子の手助けで逆立ちして、足を月にくっつけて「俺は月にいる!」
(上記演出は初日オンリーで、土曜日からは「片手で月を持ち上げて宇宙を征服している様子」へと変更になったそうです。)
・神様に「望みをかなえてあげよう」と言われて、とっさに想像した“モノ”がバイクで登場(苦笑)。
役者さん一人一人の個性がきわめて濃厚で、誰を見ていても楽しめます。些細なやり取りにもきっちり演出がついているようですし、セリフの細かいところまで役者さんが工夫をしている風にも感じられます。でも、観客と近いリズムで呼吸しているようなライブ感があるんです。それを意図的に狙ってますね。作品全体の生(なま)と型とのバランスの取り方にピチチ5らしさが現れていると思います。
今までに比べるとちょっと音楽が少なかった気がしました。『3年パンク』でホルストの“惑星”が流れる中の愛の告白シーンでは泣けましたしね~。そう、泣けるシーンがなかったんだな。少しグっときたのは上村が西野さんに向かって「2人以上の男に惚れられている時は、セックスするなー!」と言うシーン。西野さん、ちょっと涙ぐんでましたね。どんなに自分のタイプじゃない男でも、あれだけストレートに必死で愛を告白してくれたら彼女は嬉しかったんだね。
初日っぽい初日で段取りがうまくいっていない部分がありましたが、全然気にならないどころか、それがまた情けなくって苦笑を生みました。役者さんがとっさにフォローするのも、ちょっと痛い感じを上手くかもし出すんですよね。客席が柔らかかったな~。みんな心から楽しんでいたと思います。
※藤田一樹の観劇レポート、休むに似たり。にもレビューあり。
作・演出:福原充則
出演:植田裕一(蜜) 碓井清喜 野間口徹(親族代表) 三浦竜一(暴動mini) 三土幸敏(くねくねし) 吉見匡雄 永野麻由美(Rel-ay)
演出助手:松本佳則 舞台監督:中西隆雄 舞台美術:岩田暁 照明:河上賢一 音響:中村嘉宏(at sound) 宣伝美術:岡屋出海 制作:三村里奈(MR.co) 製作:ピチチ5
人形劇のピチチ:http://www.ne.jp/asahi/de/do/pichi.html
ピチチ5:http://www.ne.jp/asahi/de/do/five3.html
2004年09月18日
演劇弁当猫ニャー『たびだち』09/17-21中野ウエストエンドスタジオ
小劇場界で“ナンセンス”と言えばこの人、ブルースカイさんが作・演出する演劇弁当猫ニャーの10周年記念解散公演です。
前売り完売とHPで早々と告知していましたが、私が観た回はかなり空席がありました。まだ10人ぐらいは座れたんじゃないかなぁ。ただし狭い桟敷席で三角座り、しかも暑い2時間15分です。こんなにしんどい観劇は久しぶりでした。何度も体勢を変えて乗り切りましたが、ほぼ拷問(苦笑)。
でもね・・・それでも「面白かった!!」って声を大にして言えます。ほんと、ブルースカイさんバンザイ!猫ニャー大好き!!
洋太(細川洋平)はのび太みたいに冴えない小学生。母親(池谷のぶえ)はしょぼい遊園地のオーナー。そこに「遊園地」について研究しようと、宇宙人のモモコ(乙井順)とカバレロ(高木康寿)がやってくる。
イギリス政府の役人(ブルースカイ)と謎の大物ミスターX(小澤敏彦)から遊園地買収の話が来て、母親も従業員(久保貫太郎と藻田るりこ)も乗り気。しかし洋太はどうしても遊園地を手放したくない。そこで、利用客を呼び戻すためにモモコとカバレロをマスコットキャラクターにしてみたら大当たり。客足が極端に戻ってきた。しかし良い時期はそう長くは続かなかった・・・。
ストーリーがすんなり進むことはなく、途中でありえない変なシーンが挟まれるのですが、終わってみるとちゃんと起承転結がありましたね。でも脱線振りは絶好調!下記、ネタバレします。
何の脈絡も無くオヤジ役者さんの小澤敏彦さんが、Mr.Childrenの“Tommorow never knows”をバックダンサー付きでフルコーラス熱唱するのが可笑しかった!照明もゴージャスで本当にばかばかしい!!このシーンだけのためにムービングライトが使われてた気がします。私はこれが一番好きだったな~っ。
ブルースカイさんが脚本を見ながら役者さんたちに「ここで宅麻伸が出てきて・・・」と説明する“稽古場シーン”が始まった時は爽快でした。そこで口頭で説明したシーンは、実際にはスコーンと飛ばされて次の展開から始まるんです。このシーンで小澤敏彦さんがCDウォークマンを聞きながら必死でミスチルの歌を練習しているんです!爆笑しましたよ、私。あと、ブルースカイさんが「三上博史さんのものまねをやりたい」って言っておいて、この後のどこかのシーンで突然やるんですけど、そのタイミングが絶妙!
賀来千香子から宅麻伸に進んで「課長 島耕作」、そして“男娼”になるのには仰天でしたね。クライマックスは猫ニャーならではのナンセンス・エログロでした。私はすごく苦手なんですよ、あの露骨なエロ表現。なのに今回は笑っちゃいました~(苦笑)。あの階段の上で洋太が宅麻伸に○○○(書けません)するのを、さすがに見ることはできませんでしたが、うつむきながらこっそり笑ってました。他のお客様もかなり笑ってましたね。
各ステージ30冊限定で解散記念のパンフレットが500円で売ってます。内容はかなり充実しています。
お手製のウチワを配ってくださったり、アンケートにも一工夫あって、劇団の方々の行き届いた心遣いが感じられる、素敵な小劇場公演でした。
演劇弁当猫ニャーは解散しますが、メンバーの方々はダックスープに所属してこれからも活動を続けられるようです。fringe blogで書かせていただきましたが(「ブルースカイさんの才能」)、そんなに深刻になる必要なさそうですね。嬉しい。
作・演出:ブルースカイ
出演:池谷のぶえ/立本恭子/乙井順/細川洋平/小澤敏彦/荒井タカシ/久保貫太郎/高木康寿/藻田るりこ/ブルースカイ
舞台監督&美術:秋山光洋 大道具:(有)イトウ舞台工房 照明:山口功一(イベント・プロデューステイク) 照明助手:シバタユキエ(白黒団) 音響:鏑木知宏(KURSK.sound) 小道具:四方智子 小道具助手:シバタユキエ(白黒団) 衣裳:山口かほり(ブルドッキングヘッドロック) 森川美香 キャラクタデザイン:加藤美保 被り物製作:正名真理子 振付:香川亮(air:man) 映像:仲井陽(ケシュ ハモニウム) 映像助手:田中希代子(ケシュ ハモニウム) 松下岳志(ケシュ ハモニウム) 制作:笠原直樹(チーフ) 島崎陽一郎 制作助手:深沢千有紀 福田裕子 製作:管理事務所
演劇弁当猫ニャー:http://www.neko-nya.net/
2004年09月15日
G2プロデュース『痛くなるまで目に入れろ』09/09-17紀伊国屋ホール
G2プロデュースは元MOTHERのG2さんが演劇作品をプロデュースする団体で、今回はG2さんの作・演出です。後藤ひろひとさんが脚本を書かれることが多いですよね。
前売りはほぼ完売で、当日券もじゃんじゃん出ていて、劇場には補助席までいっぱいのお客様。追加公演も決まっている人気公演です。最近はG2プロデュースというと必ず追加公演があるイメージです。
チラシが山内圭哉さんのアップだったのにはちょっと驚きでした。山内さんが主役のお芝居となると、内容はハードなんだろうなぁと思いながら観に行きましたが、確かに暴力がいっぱいで血のりもバンバン、人も死んじゃいますが、すごく笑いが多かったです。
残念ながら笑いのツボは私にはフィットしなかったのですが(私が笑ったのは中山祐一朗さんの「あ、ちょっと振り向いたぁっ♪」だけでした)、激しい暴力シーンが笑いで軽い感覚になるのは良かったと思います。
主役の山内圭哉さんは「彼が出るなら観に行こう」と思えるほど、私にとっては作品選びのキーになる男優さんです。山内さんはコメディーに出てもドラマに出ても常に孤高の存在で、一人で責任を取るのでめちゃくちゃカッコ良いんです。
このお芝居では陰山泰さんと山内さんが父子の関係なのですが、なぜか父と息子には見えなかったんですよね。山内さんがいつも通り一人で舞台にいたからじゃないかなぁ。父親の異常な行動が息子の人生をひん曲げ続けていくのがこの作品の軸なわけで、影の主役は父親だといえます。もっと父親と息子のドロドロとしたバカ悲しさを味わえたらなぁと思いました。
時系列どおりに展開させず、回想シーンも含みながらストーリーが行ったり来たりするので、ついて行くのが大変でした。しかも主人公が部分的に記憶を無くす男だったので、さらに複雑。いつから現在(5年後)の話が始まるんだろう、父親はどこにいるんだろう、などと探る方向で楽しみました。
オープニングでわざわざネタバレしたのが非常に面白かったです。これから起こることの3択に「B. 本当の犯人は中川だった」とか言われたらビックリしますよね。
G2プロデュースの作品を観るたびに感じるのは、出ている役者さんが楽しそうだということ。一人一人のキャラクターや特技をありったけ生かす方向の配役だし、演出だと思います。山内さんがギターを弾いて歌ったり、シルビア・グラブさんが英語をペラペラしゃべったり、久保田浩さんは噛んだり(笑)。
出演:山内圭哉,中山祐一朗,曽世海児,久保田浩,岩橋道子,渡辺慎一郎,松下好,久ヶ沢徹,坂田聡,シルビア・グラブ,陰山泰
作・演出:G2 美術:島次郎 照明:黒尾芳昭 音楽:佐藤史朗 音響:井上正弘 スタイリスト:遠藤百合子 大道具:浦野正之 演出助手:山田美紀 舞台監督:木村力 宣伝美術:東學 宣伝写真:中川彰 ヘアメイク:野崎陽子 Web:河村公一 酒井元舟 橋本徹子 制作:千葉博実 尾崎裕子 安積智子 プロデューサー:大西規世子 製作総指揮:G2
G2プロデュース:http://www.g2produce.com
ウーマンリブ『轟天VS港カヲル~ドラゴンロック!女たちよ、俺を愛してきれいになあれ~』09/08-18サンシャイン劇場
ウーマンリブは宮藤官九郎さんが作・演出で、大人計画の役者さんと演劇界の大物ゲストが出演するユニットです。
今回はチラシのビジュアルからも明らかですが、劇団☆新感線の濃厚キャラ“轟天”と、大人計画内バンド「グループ魂」の濃厚キャラ“港カヲル”のファン感謝イベントのような演劇でした。
私は大人計画のファンですが、特に“轟天”や“港カヲル”のファンではないので楽しめず、途中休憩で帰りました。休憩15分を挟んで計3時間の長丁場なんだもの。しかもサンシャイン劇場だし・・・(遠い)。
「チラシを観れば自分の好みでないことぐらいわかるでしょっ、なんでチケット取ったの!?」とお叱りを受けそうですが、私は「大人計画」というブランドに弱い!松尾スズキさんの大ファンだし、宮藤官九郎さんも好きだし、阿部サダヲさんには目がないのです。
そう、私、てっきり阿部さんが出ると思ってたんです・・・。30分ぐらい経っても阿部さんが出てこないので「もしかして??」と思ってチラシを見ると、キャストに載ってない!!・・・その時点で帰ることを決めました。いくらなんでもあんなにノリノリの劇場で席を立つのははばかられたので、途中休憩まで待ちました。
すみません。ちゃんとチラシを見てチケット買います。
作・演出:宮藤官九郎
出演:剣轟天(橋本じゅん)、港カヲル(皆川猿時)、池津祥子、伊勢志摩、宍戸美和公、猫背椿、田村たがめ、近藤公園、平岩紙、少路勇介、星野源、武沢宏、武田浩二、大林勝、尾崎拓也、関谷悦明、富川一人、宮沢紗恵子、吉田舞、宮藤官九郎、片桐はいり
舞台監督:青木義博 音楽:グループ魂:照明:佐藤啓 音響:山口敏宏(Sound ConcRete) 舞台美術:加藤ちか 衣裳:戸田京子 殺陣指導:田尻茂一 川原正嗣 前田悟(アクションクラブ) 写真撮影:田中亜紀 チラシイラスト:篠崎真紀 宣伝美術:吉澤正美 宣伝写真:桶口裕昭 山道良一 演出助手:大堀光威、佐藤涼子 衣裳助手:伊澤潤子 梅田和加子 製作助手:河端ナツキ 北條智子 制作:長坂まき子 企画・製作:大人計画 有限会社モチロン 提携:サンシャイン劇場 助成:芸術文化振興基金
大人計画:http://www9.big.or.jp/~otona/
2004年09月12日
ひょっとこ乱舞『フナの心臓、メチルの心』09/10-14王子小劇場
ひょっとこ乱舞は広田淳一さんが作・演出する劇団です。ひょっとこ乱舞HPのLinkに「東大駒場キャンパスで活動する演劇サークル 劇団綺畸のOB、OGが多く参加しています」とありますし、旗揚げ公演会場が駒場小空間ですから東京大学系ですね。 パンフレットのスペシャルサンクスにTheatre MERCURYの文字もありました。なんだか親近感が・・・(笑)。
tpt『Angels in America』でありえない迫力の“天使”を演じられたチョウソンハさん観たさに行ってみました。前回の『銀髪』にも出演されていたのですが、それは逃しました。
王子小劇場を通常とは違った形で使っていました。入って左側が舞台で、右側が客席。舞台はすごくシンプルで、何もないステージの中央に小さな赤い冷蔵庫、その裏に2階のキャットウォークへとつながる梯子が垂直に伸びています。王子小劇場のきれいな灰色の壁をそのまま使い、全体的にシャープな印象です。
チラシに書かれていますが、今回の第9回公演は第2回公演『圧縮』の再演で、「初演時は座りっぱなしの会話劇だった」のが「今回は走る身体を舞台装置の代わりに使う」とありました。簡単に言ってしまうと、夢の遊眠社や第三舞台に似てる感じでした。どんどん走って、大きな声で内容を独白形式で説明して、衣裳は記号的で、セリフはだいたいが早口の弾丸トークです。場面転換も体の動きや照明の切り替えで行われるので、目立った暗転はありません。
夢の遊眠社と第三舞台と違うのは、これまたチラシに書いてあります「まごうことなき黒光り」という作品イメージです。暗いんだなーこれが。ガンガンに主張するので尖ってる感じもします。チラシに書いてある通りの作品に仕上がっていることは良いことだと思いますが、私の好みには合いませんでした。
ウィルスの蔓延とそれに対する人間の戦いがお話のバックグラウンドです。元・メチルウィルス感染患者が隔離されている地下都市「圧縮」が舞台。進化したウィルスを持つ少女(中村早香)とワケアリで地上からやってきた健常者の女(酒井彩子)との交流と裏切り。SFですので難しい言葉がいっぱい出てきます。色んなもののネーミングが面白かったです。地名が「排水」「圧縮」「濾過(ろか)」「蛇口」だったり、ウィルス患者が隔離されている町「圧縮」の閉鎖を解こうとする運動の名前が“解凍運動”っていうのも楽しい。
→ネタバレします。終盤で、進化したウィルスに感染し、死ぬのを待つしかない女・葵里子(酒井彩子)のセリフを、なぜかチョウソンハさんがしゃべっていました。それが新型ウィルスの役なのだとわかった時は気持ちよかったですね。
ヘアメイク(入江佐伊子)が凝ってました。女の子はあみあげを多用していて、役によって違う種類の羽飾りが可愛かった。カットもしてますね。
親近感を持って言わせていただくと、「女優に色気がない」ですね。これは昔、私がいた東大系劇団のアンケートにも書かれた言葉で(今は亡き女優、氾文雀さんより)、やっぱり駒場カラーは受け継がれていってるのだなぁと変に感慨深い気持ちになりました。声を張り上げても良し、大げさに走りこんでも良し、客席に面と向かって独白するのも良し、ただ、女性らしさを省くのはもったいないと思います。
チョウソンハさん。冷蔵庫に飛び乗る動作にほれぼれ。中盤以降はお話自体にあまり惹かれなくなったので、チョウソンハさんにも目が行かなくなりました。残念。でも次も出るなら見たいと思わせる俳優さんです。
作・演出:広田淳一
出演:中村早香 酒井彩子 チョウソンハ 伊東沙保 金子優子 加茂みかん 橋本仁 浦川友美 若子昭一 市川晃次 林隆紀 高橋恵 瀧澤崇 広田淳一
舞台監督・美術:竹内和延 舞台:高岸れおな 照明:三浦あさ子(賽【sai】) 音響:角張正雄(SoundCube) 選曲協力:石谷聖子 衣装:難波寿枝 瀬沼美晴 清野綾子 ヘアメイク:入江佐伊子 宣伝美術・画・web:内藤真代 制作:ツカネアヤ 砂田麻里子 清野和美 山本啄未 田辺直樹 菅沼勲 振付:外山晴菜 演出助手:宗吉和幸
ひょっとこ乱舞:http://hyottoko.sub.jp/
Plug-In『Show Case vol.1「Blue Rose」』09/10-14麻布ディプラッツ
2003年にNEW YORK ACTING WORKSHOPに参加された俳優さんが集まった演劇ユニットです。
Studio Lifeの役者さんが多数出演されていて、宣伝はほとんど見かけなかったのに前売りは早々に完売していましたね。
テネシー・ウィリアムズの戯曲のコラージュでした。「ガラスの動物園」「財産没収」「Spring Storm」「カミノ・リアル」「しらみとり夫人」「火刑」「地獄のオルフェウス」「あるマドンナの肖像」「話してくれ、雨のように」「青春の甘き小鳥」「Vieux Carre」という沢山の戯曲から、シーンやフレーズを抜き出して構成しています。
開演時に総合演出の野村リエナさんがこの作品について簡単な説明をしてくださいました。ちょっと普通とは違ったことをやってらっしゃるわけですし、こういう気遣いが必要ですよね、大人だなーと思いました。
舞台で演技をしながら涙を流してらっしゃる役者さんが多かったです。最初はちょっと驚きましたが、何人もいらっしゃるので慣れました。たぶん舞台上でも自分の感情を開放するような演技方法なのではないでしょうか。NEW YORK ACTING WORKSHOPのホームページにメソッド等についての情報があります。英語が話せなくても参加できる10日間のコースとか、面白そう。
役者さんによって、言葉がきちんと話せている人と話せていない人との差がありました。確かに、セリフや動き(段取り)に気をとられて肝心の役柄の気持ちが表現できていない、というのは問題だとは思いますが、あまりに感情、感情と押し出されると、観ている方が引いちゃうんですよね。役者さん個人にとってのリアルが、観客全員にとってのリアルになるわけではないと思います。感情も大切ですが、まずはセリフじゃないかな。言葉が聞こえなければどんなに生き生きとした感情を出していても、観ている方は意味が分からないですから。
ダンス・シーンがセクシーで良かったです。男は男らしく、女は女らしく、美しかったです。
ドン・キホーテ役(だと思う)の方が痛々しかった。セリフとか表情や動き全般が暴力的で怖かったです。
スタジオ・ライフの役者さんはやっぱりきれいでした。美しく在ることに引っ込み思案にならないのが素晴らしい。こういうことが出来る男優さん、少ないですよね。
舟見和利さん(Studio Life)。立っているだけで、そのはかなかさに目を奪われます。
前田倫良さん(Studio Life)。『地獄のオルフェウス』のバル役のセリフを話してらっしゃる時の声がきれいでした。
総合演出の野村リエナさんはアメリカ在住の方なので、Plug-Inとしての次の予定は今のところないそうです。
作:テネシー・ウィリアムズ 上演台本:野村リエナ、水島 Jan 雅美 総合演出:野村リエナ "火刑"演出:青山治 "Spring Storm"演出:水島 Jan 雅美 など
出演:青山治、佐藤智子、大坊健太、俵野枝、手島和貴、新田絵美、羽生田早穂、福井利之、舟見和利、前田倫良、萬代慶太、水島 Jan 雅美、山田浩、山本つづみ
プラグ・イン:http://www.geocities.jp/nyplugin/index.html
2004年09月11日
ククルカン『ノーマザー・フォーファーザー』09/09-12新宿シアターモリエール
いつもチラシのイラストが可愛いので気になっていたククルカン。早稲田系の劇団です。
何度も行こうと思っていたのに叶わず、今回が初見です。
タイトル通り、母親がいなくて父親が4人いる女の子マヒル(芳賀淳子)が、見知らぬ男(橋本恵一郎)に、喫茶店で自分の出生の秘密について教えてもらうというスタイルでお話が進みます。
残念ながら、完成の形が見えないまま作ってしまったんだろうと思われる作品でした。個人の時代とか、ひきこもりとか言われている今、男4人と女1人の同居生活が成り立っているというのが、まずリアリティーに欠けます。舞台の2階部分に作られた喫茶店で「複雑な関係なんだ」と何度も言いますが、複雑ではなかったと思うし、それ以前に「関係」についてちゃんと描いてなかったので、何が問題なのかわかりませんでした。
暗くなくていいんじゃないかしら。チラシみたいに、ほんわかメローにやってくれれば良かったのになぁ。
両親がいないとか、父親が複数いるとか、わけありの子供をテーマにするのはリスキーですよね。だって、難しいでしょう。作・演出の方はきっとお若いんだと思います。久しぶりに小劇場っぽい演劇に触れた気分。
吉田久代さん。マヒルの母親になる萩尾役。ブラジル『性病は何よりの証拠』 や、みかん・夏『mellow・・・涙いろ』 で気になっていたんですよね。最初から最後まで暗い役柄で、爆発力が観られなくて残念。
日替わりゲストは山岸拓生さん(拙者ムニエル)でした。面白かった~っ!
キャスト:三瓶大介 橋本恵一郎 吉田久代 白川直子 岩渕敏司(くろいぬパレード) キム木村(ZIPANGU Stage) 小橋川健冶(絶対王様) 齋藤了介(AchiTION!) 高見靖二(劇団チャリT企画) 芳賀淳子(Ele-C@) 水谷栄介 吉冨亜希子
日替わりゲスト:9/09(木) 高山奈央子(KAKUTA) 9/10(金) 高多康一郎(RONNIE ROCKET) 9/11(土) 山岸拓生(拙者ムニエル) 9/12(日) なすび(なす我儘)
作・演出:加東航 舞台監督:西廣奏 音響:セニョール 照明:伊藤孝(ART CORE design) 演出助手:磯崎珠奈・鈴木仁美 衣装:太田家世(自由創作師) イラスト:choco スチール:石井崇詞(自由創作師) 宣伝美術:Fairy Drive グッズ:松下由紀(シスターユニフォーム) WEB制作:田川ユウスケ(hws) 制作協力:鵜殿有正・猪原健・福田泉 制作:制作集団Quarter Note(白川直子・岩田雅也・茂木尚美・杉山葉) 製作:ククルカン
ククルカン:http://www.d1.dion.ne.jp/~usk_tgw/kukulcan/
2004年09月10日
東宝『ミュージカル ミス・サイゴン』08/15-11/23帝国劇場
1992年~1993年に504日間ものロングランをしたミュージカルの再演。日本ショービジネス界の一大イベントですね。
私が観た回のメインキャストはこちら→ 市村正親 笹本玲奈 井上芳雄 岡幸二郎 ANZA 泉見洋平 杵鞭麻衣 ほか
市村正親さん目当てでチケットを取って、市村正親さんだけが良かった、という非常に残念な結果でした。
うーん・・・他の出演者の方々は歌もそれほど上手じゃないし、役柄になりきっているようにも見えないし・・・。私の席があまり良い席じゃなかったのもあるかもしれませんが、お話の中に入っていけませんでした。
大がかりなセットは確かに迫力がありますけど、帝国劇場なんだから当然かな~っていう程度でした。チケット代高いし・・・。
サイゴンが陥落し、アメリカ兵が逃げるようにベトナムから去っていくシーンで、ヘリコプターに乗り込むGIたちをベトナム人が必死で追いかけて行きます。それを観て、「ああ、人間はこういうことをしちゃだめだよな」って思いました。肌が触れ合う距離で仲良くしていたのに、突然に姿を消してはいけないです。その場所を切り捨てるのは罪になると思います。なんだか小学生みたいな書き方ですが(苦笑)、やっぱり戦争はいけないよって思いました。「戦争」という言葉だけで、何もかも無条件に断念させられてしまい、人間が人間らしく生きられない状況にしてしまうのです。
予想はしていましたが、観客のマナーが良くないのは悲しいことですよね。帝国劇場っていつもお客様のせいで何かしらヤな気持ちにさせられます。一番困ったのは、幕間の休憩の時に後半のストーリーをどんどん得意気に説明する女性がいたこと。なぜかミュージカルのファンの方にそういう人が多いです。一つの作品を何度も観るのが当然になっているからかしら。私はどんな舞台でも、あらすじ等は読まずに真っ白な頭で味わいたいと思う方なので、あわててその女性のそばから離れました。
※9月中旬から、舞台写真入りのパンフレット(2,000円)が販売開始されるそうです(今販売されているのは1,500円)。
公演公式サイト:http://www.toho.co.jp/stage/miss_saigon/
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動画がたくさん観られます。作品解説もたっぷり。
プロデュース:キャメロン・マッキントッシュ 作:アラン・ブーブリル 作曲:クロード・ミッシェル・シェーンベルグ(「レ・ミゼラブル」チームの第二弾)
訳 :リチャード・モリトビー、Jr./アラン・ブーブリル 訳詞:岩谷時子 オリジナルフランス語テキスト:アラン・ブーブリル 製作協力:キャメロン・マッキントッシュ・プロダクション 製作:東宝 後援:フジテレビジョン 協力:virgin atlantic 製作:田口豪孝・斎藤安彦
【男性アンサンブル】
藍澤幸頼 饗庭大輔 阿部 裕 阿部よしつぐ 乾あきお 岩田 元 織田和馬 小原和彦 KAZZ 香取新一 川本昭彦 岸 祐二 小鈴まさ記 小西のりゆき 斎藤健二 齋藤裕加 櫻井太郎 佐嶋宣美 清水隆伍 神宮 崇 杉本 崇 杉山有大 清野秀美 丹宗立峰 附田政信 照井裕隆 中右貴久 中澤真太朗 中本吉成 西野 誠 橋本好弘 原慎一郎 日比野啓一 堀内克彦 Marcelino 前川勝宏 松村曜生 萬谷法英 水野栄治 村上幸央 森 隆二 森山大輔 山名孝幸 横沢健司
【女性アンサンブル】
愛田芽久 浅野実奈子 荒木里佳 池谷京子 伊藤千晴 今泉りえ 越智なおみ 樺島麻美 香山ゆき 坂本法子 史 桜 染谷妃波 田島麻子 中川菜緒子 真樹めぐみ
2004年09月09日
ウォーキング・スタッフ プロデュース『ハレルヤ』09/03-12THEATER/TOPS
和田憲明さんが脚本・演出を手がけるウォーキング・スタッフ。今回は主演に田中美里さんを迎えて、やっぱりハードなストーリー。
大人の恋愛って危険です。いや~な意味で命がけ。だからシビれるんです。
夫の幸男(奥田達士)が破産して蒸発し、頭のおかしくなった姑(田島令子)と汚い倉庫で暮らしながら、水商売をして借金を返さなければならなくなった女・樹里(田中美里)の話、というだけでゾっとする怖さがあります。
ウォーキングスタッフは役者さんの演技がすごくリアルで、今回もお話の中にどっぷり浸かり込みました。舞台は、樹里と姑が暮らす半地下にある薄汚い倉庫。逃げるようにそこに転がり込んだのが夏で、そこから半年間お話なのですが、終盤に「劇場のクーラーがちょっと寒いなぁ」と感じるまでは自分が劇場にいることさえ忘れていました。
テレビや映画の世界で氾濫している「あなたさえいれば、何もいらない!」「愛しているのに結ばれないなら死んだ方がまし!」等と軽々しく言い切ってしまうラブストーリーとは一線を画しています。同じく命がけとは言えど、シェイクスピアなどの古典の世界で描かれる、男女の清らかな愛とも違います。
現実の世界で大人は、恋愛だけに身を任せたりできません。その前に生活がありますから。金を稼がなければ食べていけない。好きになった人に夫がいた。前夫との間の子供を育てている。痴呆の母の面倒を見なければならない。膨大な借金で首が回らない。秘密を握られている人に脅されている・・・等、年を取れば取るほど、逃れることが出来ないしがらみがあるものです。そのところをきっちり描ききりながら、それでも人を好きになってしまう男と女の痛々しい恋が描かれました。(この後ネタバレします)
樹里は、自分を食い物にしようとしているヤクザの金子(鈴木省吾)に頼るしかなく、体の関係を持っていく内に次第に金子も樹里に惹かれて行きます。このヤクザと売春婦の恋っていうだけで肌がヒリヒリするような激しさです。色っぽいんですよねぇこのギリギリな感じが。
義理の兄(朝倉伸二)が樹里のことを不憫に思い、自分の土地を売って借金を全部返してくれるという夢のような幸せが訪れるのですが、一筋縄ではいかないのが和田憲明さんの脚本です。最後の最後に消えたはずの幸男が現れたのは衝撃でした。「女はせつないね。男ってひどいね。」という姑のセリフがリフレインします。
死んだと思っていた幸男が帰ってきて、復縁を迫られ、どうしたらいいのかわからずに動転している樹里のところに現れたのは、顔にあざを作り、びっこを引いていて、どうやら指も詰められている金子でした。そして樹里は・・・この決断がすごく面白かったです。樹里は「自分をここから連れ出して欲しい」と金子に頼みますが「でも、その前に5分だけ一人にして」と言って、舞台には樹里だけになります。女っていったい何なんだろうって考えました。たまたま運悪く翻弄されて、その中で本気の恋に出会ってしまい、だけどそれでは幸せになれないことがわかっているから、また誰かの優しさに頼ろうとした。でも、そこに彼が現れて・・・。同じ女として、自分だったらどうするだろうと真剣に考えましたね。
場面転換の度にきっちり暗転し、次のシーンになった時には細かい小道具が片付けられていたり、新しいものが登場していて、その部屋の状態が具体的によくわかります。演出部の転換稽古、すごいんでしょうね。
弦楽器の音楽が全編で流れていました。映画『パリ・テキサス』の音楽(ライ・クーダーの演奏)がぴったりでした。ヨーヨー・マの有名な曲もありましたね。あれはどうかと思いましたが。
田中美里さん。樹里役。好きな男のためなら何でもしたいと思ってしまったり、自分で決心できずにいつも他人の望むとおりに生きてしまうというような、女らしい性質が無理なく伝わってきました。たぶん、田中さんご自身が気が弱くて優しい方なんだろうなーと思いました(違うかもしれないけど)。
田島令子さん。姑役。息子の幸男がいなくなったことを受け入れられず、少し狂ってしまう演技がすごく細かくて気迫がこもっていました。こういう演技を見ると、女優という職業のかっこ良さに惚れ惚れします。帰ってきた幸男に対して知らない振りをする顔も、凄みがありました。
脚本・演出:和田憲明
出演:田中美里 鈴木省吾 朝倉伸二 奥田達士 森山栄治 田島令子
照明:佐藤公穂 音響:早川毅(ステージオフィス) 音響プラン・オペレーション:長柄篤弘(ステージオフィス) 舞台美術:塚本祐介 舞台監督:向井一裕 演出助手:小川いさら 小道具:奥村亜紀 衣装:沢木祐子 安才由紀 特殊効果:Vanity Factory 宣伝美術:ラヴ&ピース川津 写真:アライテツヤ 制作協力:島田淳子(J-Stage Navi) ネルケプランニング 石井光三オフィス 制作:石井久美子 松田誠
シアタートップス:http://members.at.infoseek.co.jp/theatertops/
TBS/Bunkamura『RED DAMON』08/31-09/08シアターコクーン
野田秀樹さん作・演出の『赤鬼』3ヴァージョン連続公演です。出演者はもちろんのこと、舞台装置や演出もそれぞれ違うので、ぜひとも比べて観たい企画です。ロンドン・ヴァージョンから幕を開けました。
どうやらどんどんと良くなっているらしく、私が観た回はカーテンコールは3回だったのですが、昨日なんて5回だったらしいんですよ。
BunkamuraのHP内のページ「赤鬼とは」に『赤鬼』のこれまでの上演歴とあらすじが書かれています。
あらすじを引用します↓
“村人に疎んじられる「あの女」と頭の弱いその兄「とんび」、女につきまとう嘘つきの「水銀(ミズカネ)」が暮らしていた海辺の村に、異国の男が打ち上げられたことから物語が始まる。
言葉の通じない男を村人達は「赤鬼」と呼び、恐れ、ある時はあがめ、最後には処刑しようとする。彼と唯一話ができる「あの女」も同様に処刑されそうになる。「水銀」と「とんび」は捕らえられた二人を救い出し、赤鬼の仲間の船が待つ沖に向かって小船を漕ぎ出すが、船影はすでになく、四人は大海原を漂流するのだが…。”
シアターコクーンの真ん中に、ひし形の小さな舞台が作られていました。四方から観客が囲みます。全体は木目調で、ところどころに苔を表す青緑色が入っていて、長い歴史があることが感じられます。美術・衣裳はtptでもお馴染みのヴィッキー・モーティマーさん。緑、茶色、水色などのペットボトルが天井から無数に吊り下げられていて、照明が当たるとシャンデリアのようにキラキラと輝きます。ペットボトルは、海から浜辺にたくさん打ち上げられてくる瓶を表しており、その瓶が原因で赤鬼のヒデキ(野田秀樹)と、ヒデキをかばう“あの女”(タムジン・グリフィン)が裁かれ、牢屋に入られるのですから、その美しさには切なさが映ります。
アンティーク調のワードローブ(洋服ダンス)が、前も後ろも開いて扉になったり、横に倒されてバーカウンターになったり、船になったり牢屋になったり・・・野田マジックには毎度うっとりです。『パンドラの鐘』@世田谷パブリックシアターでも、扉の枠になったり、棺になったりする木の台(のようなもの)がありましたよね。
あまりに悲しい結末だったことに、素直に驚きました(ネタバレします)。さまよう小船の中で先に息絶えてしまった赤鬼の肉を食いつなぎ、もとの浜辺に生還した“あの女”と“水銀”と“とんび”の3人でしたが、自分が赤鬼を食べたのだと知った2日後に“あの女”は自らの命を絶ちます。赤鬼がこの地に来た事、出会って話をして分かり合った事、そして4人で村を捨てて海に逃げた事が、“あの女”の死によって消えない思い出になりました。“あの女”がフカヒレだと思って食べていた肉が、実は人肉であった事を知るくだりはオープニングでも演じられていて、観客は最初から結末の決まっていた悲劇を観ていたことに気づき、如何ともしがたいやるせなさを感じるのです。
俳優が体をゆっくりと前後に揺らし始め、リズムを揃えながらだんだんと大きな揺れになり、ついには数人が舞台の端から端へと走り抜けるという動作で、波が打ち寄せる様子を表します。何事も無かったかのように打ち寄せる波が舞台を優しく包み、海の向こうの悲しいお話が消えていきます。あまりの美しさに涙が溢れてきました。
野田さんはいつもの野田さんらしく、見事にきたえられた体の動きを見せてくださいました。そのせいもあって、他のイギリス人の役者さんの動作や立ち姿がきれいに見えなくて、最初から最後まで集中させられっぱなし、というわけではありませんでした。ちょっと退屈したりもしましたね。同時通訳のイヤホンガイドもその原因の一つです。でもイヤホンガイドがあったこと、しかも無料だったのには心から感謝しています。あれがなかったら何も分からなかったです。
パンフレットの役者さんのインタビューで、村人役のトニー・ベルさんが野田さんの印象についておっしゃるには、「イギリスの演劇は台詞重視で動きの無いものが多いのですが、動きを多く採り入れているところが気に入っています」とのこと。やっぱりそうか、と納得しました。体を動かすということには慣れてらっしゃらないのですね。茶道や華道、能、狂言、歌舞伎の国である日本では、手を伸ばす、足を一歩前に踏み出す、顔を上げる等の単純な動き一つにも、かけがえのない命を感じさせるような緻密さが求められる傾向があります。野田さんのお芝居において、イギリスの役者さんの動きは少々緊張感に欠けているように見えました。
台詞においては、日本人が出演するいつもの野田さんの作品とは違って、ゆっくりしっかり届いてくる感覚がありました。言葉を発する姿勢の力強さというか、存在の重さが感じられるのです。
また、ロンドンはそもそも外国人が沢山集まって機能しているメトロポリスだそうで、単一民族国家に近い日本で暮らしている私たちとは、感覚がかなり違うようです(SEO氏の日記より)。一人の異邦人を化け物扱いするということに、それほど共感がないみたいなんですよね。だから、異物に出会った時に自動的に体から染み出してしまう怒りや、やっとのことで培うことのできた異邦人との友情を、彼の死によって失ったことへの悲しみなどの感情が、あまり強くは現れていませんでした。むしろ冷静に眺めているような感じです。イギリスの歴史において「海から来た侵略者」に出会ったことがないのも、関係があるのではないでしょうか。
頭の弱い兄の“とんび”役のマルチェロ・マーニィさんが、とても柔軟で優しかったです。道化役として悲劇的な作品を客観的に観て伝えてくれたので、さらに物悲しさが増しました。
タイ・ヴァージョンはどうなんだろうなぁ。すごく楽しみ!
作・演出:野田秀樹 翻訳・脚色=ロジャー・パルバース ロンドン版脚色=野田秀樹&マット・ウィルキンソン
美術・衣裳=ヴィッキー・モーティマー&ミリアム・ブータ 照明=リック・フィッシャー 選曲・効果=高都幸男 演出助手:石丸さち子 舞台監督:TOMY 富川 カンパニーマネジャー:加彩エミ
出演= 野田秀樹 タムジン・グリフィン マルチェロ・マーニィ サイモン・クレガー ジェイソン・ソープ サマンサ・マクドナルド トニー・ベル ヨハネス・フラッシュバーガー
Bunkamura内『赤鬼』サイト:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/akaoni/index.html
2004年09月07日
JACROW×ブラジル『民宿~JACROWとブラジルがお贈りする6つの怖いお話~』09/02-06中野あくとれ
JACROWとブラジルの合同公演です。なぜこの組み合わせ?と驚きましたが、仮チラシによるとどちらも作・演出・主宰だけの一人ユニット(JACROWは中村暢明さん。ブラジルはブラジリー・アン・山田さん)だったんですね。現在のブラジルには辰巳智秋さんという可愛らしいおデブさんキャラの役者さんと、制作さんが一人加わっています。
ものすごい山奥の過疎の村にある、旅館(民宿)を舞台にしたホラーストーリーでした。(この先ネタバレします)
6話のオムニバス(JACROWとブラジルが3話ずつ)だったのですが、完全にバラバラの短編集ではなく、少しずつ登場人物が重なっていき、中盤以降は1つのお話だと受け取れる展開でした。
狙いやカラーが全然違うので、JACROWかブラジルのどちらの作品なのかはすぐにわかりましたね。
第1話では「これはホラーですよ~、怖いんですよ~」という空気をしょっぱなから作り出してしまっていたので、ちょっと興ざめしてしまいました。ごく自然に、穏やかに始まり、徐々に奇異な事象を挟み込んで行ってくれると「なんだかヘンだな」「え、もしかして・・・!?」という風にお話に入っていけたと思います。露骨に化け物(幽霊)が登場するのにも、ちょっと笑ってしまいました。
第2話で、舞台になっている村には昔、炭鉱があって、地盤沈下のために150人(?)以上が生き埋めになったという事実が明らかにされます。ここでも最後に着物を着た幽霊らしき女が出てきてしまい、なんだかちゃちいなぁと思いました。
しかしながら第3話で、第1話で化け物に襲われた男の妻と弟が登場し、旅館の仲居さんが同一人物だったので「あぁ、つながっているお話なんだな」「なるほど、第1話と第2部は導入部分だったのか!」とわかります。けっこう快感なんですよねぇ、こういうの。
その後は不安なく楽しむことが出来ました。幸運なことに(「残念ながら」と言う方がふさわしいのですが)私には怖くなるシーンはなく、登場人物のバックグラウンドや、役者さんの演技、ホラーならではの演出を味わいました。怖いの、すっごく苦手なんですよ、私。上川隆也さんと斎藤晴彦さん主演の『ウーマン・イン・ブラック~黒い服の女~』@パルコ劇場を観て以来、演劇のホラーはやっきになって避けています。ほんとに寝られないぐらい怖いんですもん。
ふすまと障子が突然、誰の手も借りずに開いたり閉じたりするのは日本の怪談のお約束ですよね。それが実現されていて嬉しかった。ただ、美術はもうちょっと写実的に作るよう頑張ってもらいたいですね。
JACROWバージョンでは、行方不明になった夫を探すために民宿を訪れた妻と義理の弟が、実はかねてからの不倫の仲で、事故を装ってお腹の子を堕胎するなど、ドロドロした人間関係が徐々にあらわにされていくのが面白かったです。音楽はイマイチかな。場面の説明をしているようなわかりやすいものでしたので、私の好みではありませんでした。
なんといっても目玉はブラジル・バージョンの第2話(通しで言うと第4話)の、お姉さん(柳田由香)とその弟の彼女(近藤美月)の二人芝居でしょう!嫁と小姑のありふれた諍いかと思いきや、2人ともまともな解釈が不可能な発言の連発。互いが一体何を望んでいるのか、しゃべっている当人同士も観客も、全くわからない緊迫したやりとりの中から、2人をつなぐ共通の過去があぶり出されていきます。脚本も演技も良かったな~。ブラジルの次回公演(12月)に柳田さんも近藤さんも出演されます。すごく楽しみ!
中村さんがJACROWのBBS(8月17日(火)投稿「どうぞお楽しみに」)に書かれています↓
「JACROWとブラジル、いい感じで反発しあっております。それはまるで、うなぎと梅干のような・・・ ちなみに、うなぎと梅干の食い合わせが悪いというのに科学的根拠はないそうです。」
ブラジリー・アン・山田さんがブラジルのBBS([552] 近況報告)に書かれているのは↓
「ジャクロウとブラジルの合同作品、うまい具合に混ざり合い、反発し合う、もんじゃとお好み焼きを同じ鉄板で焼いたら、思ったより混ざってしまった感覚に近い(と思う)、逸品となる予感。」
なるほど、そんな感じでした。どう考えてもフィットしようがない2団体のカラーが、混ぜてみたらきれいなグラデーションが出来ていて、誰が見てもけっこう楽しめたというような。観ている方は気楽にこんなこと言ってますが、作る方は大変だったんじゃないかしら。主宰のお2人はかなりの時間を掛けて話し合いを持ったそうです。
あと、どちらかというとブラジルがもんじゃだったように思います(意味はない)。
柳田由香さん。着物を着た姉さん幽霊(?)役。久しぶりに小劇場界で「女優」を見た気がしました。どんな人間にでも、人間じゃないものにも成れそうです。怖いぐらいに彼女の姿が焼きついています。
川上冠仁さん。黒澤清役。すごく人懐っこく笑いかけるくせに、本当は血も涙もない冷徹ワンマンな役でした。かっこ良かったです。やはり意外性(ギャップ)に人は惹かれるんですね。東京オレンジ主宰の横山仁一さんが、大河ドラマ『新撰組!』の土方歳三役の山本耕史さんを例に挙げ、今回の川上さんも同じ種類の当たり役だとおっしゃっていました。
近藤美月さん。黒澤清(川上冠仁)の彼女役。近藤さんが普通の女の子を演じるところを初めて見た気がします。すっごく普通で、可愛いかった。だから、中盤でお姉さん(柳田由香)とやりあうのが怖いんですよね。仮面の下の本性が現れるのです。
総合演出:ブラジリィー・アン・山田 総合製作:中村暢明 作・演出:ブラジリィー・アン・山田/中村暢明
出演:柳田幸香 佐藤亜紀 近藤美月(bird's-eye view) 土屋美穂子(Attic Theater) 太田恭輔(ブラボーカンパニー) 川上冠仁(Attic Theater) 佐藤春平 小島フェニックス 吉富光宏(双数姉妹) 肱川要亮 吉田友彰 辰巳智秋(ブラジル)
舞台美術:伊藤秀男 照明:シミズトモヒサ 音響:島貫聡 衣装:中西瑞美 小道具:村田真紀(グワィニャオン) 宣伝美術:川本裕之 舞台監督:杉江聡 舞台監督補:亀川朝子(ベターポーヅ) 企画・制作:恒川稔英
制作協力:吉野礼×浅見絵梨子
JACROW(ジャクロウ):http://www.jacrow.com/
ブラジル:http://www.medianetjapan.com/10/drama_art/brazil/
2004年09月05日
劇団青い鳥『シンデレラ ファイナル』09/02-05スパイラルホール
劇団創立30周年記念として代表作をスパイラルホールで上演するのなら、きっと面白いのだろうと思って観に行きました。
うー・・・残念ながら良いと思うところは見つけられず、ほぼ寝てました。途中退場できるものならしたのですが、スパイラルホールの一番後ろの端の席だったので、出るに出られず。まあ、最後列だったから作品の良さが伝わりにくいのもあったかもしれません。
オープニングで、Ben E.Kingの“Stand by me”をBGMに、ふんわりカラフルなスカートをはいた30~40代であろう女の人たちが、決して上手ではないダンスを踊った時点で帰りたくなりました。お姉さんたち・・・ここはスパイラル・ホールなのよ!東京芸術劇場小ホール2ではないの!!のっけから私には合わない作風です。
中盤では、山口百恵の“美・サイレント”で踊りましたねぇ・・・。振付が相当イケてなかったので、楽しめませんでした。
演出のセンスが古いと思いました。ものすごく昔にテレビで見たことがあるかも・・・というテイストです。声を張り上げながらおおげさな演技で笑いを誘いつつ、真正面から主張もする。バレリーナみたいなドレスを着る。エピソードの間に謎のダンスシーンを挟む。
「シンデレラが本当にほしかったものはなんだったのだろう。馬車やドレスが12時になると元に戻るのに、どうしてガラスの靴だけはそのままなんだろう?」←劇団HPより。この答えらしきことも言ってましたが、納得できなかったんですよね。時代の空気など全く気にせず、独自路線を進んでらっしゃるように受け止めました。でも30年も続いている劇団ですから、きっとファンも沢山いらっしゃるのでしょう。私には合わなかった、ということです。
白い部屋の装置についていた扉の仕掛けが面白かったです。完全に外れて床に倒れてしまうこともあれば、きちんと回って開いたりもしました。白い壁に、彫刻のように浮き出た感じでワンピースが張り付いていたのが、少女の夢の中の世界を思わせて良かったです。
作:市堂令 演出:芹川藍
出演:天光眞弓 芹川藍 葛西佐紀 高彩裕子 近内仁子 渡辺なほみ 森本恵美
特別出演:金利恵(韓国舞踊家)
舞台美術:宇野萬 照明:沖野隆一 舞台監督:田中正秀 技術協力:小林清隆 衣裳:葛西佐紀、森本恵美 音響プラン:芹川藍 演出助手:渡辺なほみ 照明操作:野中千絵 音響操作:茶木陽子(モックサウンド) 舞台協力:恩田義幸 アートディレクション:長友啓典 グラフィックデザイン:十河岳男+K2 制作:長井八美、渡辺なほみ、菊谷一樹
企画:劇団青い鳥 製作:青い鳥創業 助成:芸術文化振興基金
劇団青い鳥:http://www.aoitori.org
Studio Life『ドリアン・グレイの肖像』09/01-15紀伊国屋サザンシアター
前売り完売が常識になった男優集団スタジオライフ。美形俳優を眺めるだけでも楽しいのですが、海外の文学作品や日本の少女漫画を、男優のみを使って原作に忠実に舞台化する劇団として、とても貴重です。
今回はオスカー・ワイルド原作の小説の舞台化。宝塚歌劇団でも上演したことがあるそうですが、私は初めてです。
今回は、萩尾望都連鎖公演『トーマの心臓』&『訪問者』@シアターサンモール以来の感動かも!! やっぱり耽美派文学が似合いますよね、スタジオ・ライフ! けっこう泣いちゃいました。
今回も脚本・演出の倉田淳さんのまっすぐに作品(原作)と向かい合う勇気と、作品に対する並々ならぬ敬意を感じました。俳優さんを追いかけたい気持ちもありますが、倉田さんのおかげでスタジオライフは見逃したくないんですよね。
あらすじ(少々ネタバレ)を書きます。
ドリアン・グレイ(山本芳樹)は誰もがその麗しさに目を奪われるほどの美貌の持ち主だ。画家のバジル・ホールワード(岩崎大)は、ドリアンこそが自らの芸術の源であると言ってはばからない。バジルの描いたドリアンの肖像画は、ドリアン本人が絵の中の自分に嫉妬するほど、彼の外面と内面の美をそのままに描き出していた。
しかしドリアンは、バジルの友人ヘンリー・ウォットン卿(笠原浩夫)の影響を受けて、次第に刹那的な快楽に身を持ち崩していく。悪行を繰り返しながら十数年経っても、なぜかドリアンは昔と変わらない美貌と持ち続けていた。実はその裏で、肖像画の中の彼の姿がどんどんと醜悪なものに変わり果てていたのだ。
日本でも有名な童話『幸福の王子』もオスカー・ワイルドの作品ですが、ドリアン・グレイはまさにその反対ですね。王子の像は自分の体に貼られた金箔を貧しい人に分け与え続けたために、どんどんとみすぼらしい姿になってしまいますが、最後(死ぬ時)はその善行を讃えられ、ツバメと一緒に神様から祝福を受けます。たしか天国に召される王子の心臓は金色に輝いていた・・・というような描写があった気がします(本にもよりますが)。
一方ドリアンは、十数年にわたる堕落した人生においてもその美しい風貌を保つのですが、彼の肖像画は、彼が重ねた年齢と汚れてしまった心、そして犯した罪をしっかりと映し出すのです。やってしまったことは決して無かった事にはならない。年をとるごとに増える皺(しわ)と同じように、目に見える形で体に刻まれるものなのです。
今、自分よりも若い人を見てしみじみ感じるのですが(う~ん、私も年を取りました~)、“若い”ということは、それだけで眩しいぐらい素敵なことですね。自分が学生だった頃はそういうことには気づきませんでした。ヘンリー卿の言うとおり「若い頃にはその若さの価値がわからない」ものなのです。バジルが全身全霊を込めてキャンバスの中に閉じ込めたドリアンは、何も知らないおバカさんの子供だったかもしれないけれど、確かに輝いていました。
純真無垢で、善良だったことがその美しさの源だったのではないかと思います。私たちは様々な経験を重ねながら年をとっていく内に、若い頃ほどは人を信じられなくなったり、将来に希望を持てなくなったりします。だから人間は、善良であることを常に心がけて生きていかなければ、その宝物をいつの間にか失っていくのではないでしょうか。
先日メルマガ号外を出しました『高き彼物』も同じテーマで書かれた作品だと思います。近頃そういう作品によく出会います。
舞台美術もスタジオライフ作品において久しぶりの大ヒットでした。白い紗幕のカーテンを多用し、19世紀末のロンドンの貴族の世界を、清楚な美しさで表現していました。ローマンシェイドのカーテンが上がると、屋根裏部屋がぐるっとスライドして出てくるのがダイナミックで嬉しかったな~。そういえば『歓びの娘 鑑定医シャルル』とジャンル的に似ている装置だった気がします。同じく紀伊国屋サザンシアターで、最後に秘密の部屋が出てきましたよね。
役者さんについては、最初の方はちょっと硬かったですね。手のひらを上に向けて、両手を同時に肩の高さまで挙げる、「Oh,ワッカリマセ~ン」という外人ポーズを取ることが多く(山本さんと笠原さん)、ちょっと笑っちゃうこともありました。わざとなのかしら?(笑) そういう不自然な動作も後半になるとすっかり馴染んで、気にならなくなりました。これからもっと、こなれていくのだと思います。
山本芳樹さん。ドリアン・グレイ役。今まであまり良いと思ったことが無かったのですが(ごめんなさい)、今回は素晴らしかった!妖精のように美しいことが不可欠な役どころを、無理なくやりきってくださいました。動きが少々一辺倒なのが気になったこともありましたが、他の俳優がセリフを言っている時のリアクションや、独白の時の細やかな感情の変化をしっかり作られていて、引き込まれました。
林勇輔さん。女優のシヴィル・ヴェイン役。スタジオ・ライフで私が最も感動させられる役者さんです。今回もやっぱり・・・登場して最初の一声を聞いただけで、体がしびれて涙がこぼれました。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』のジュリエットのセリフで、あんなに素直な愛が伝わってきたのは初めて。歌もお上手な方なんですよね。その美声が悲劇のヒロイン役にぴったりでした。
吉田隆太さん。後半に少し登場するヘンリーのいとこ(だっけ?)のグラディス役。これが2度目の舞台とは思えないほど堂々とした女役です。ドレスは女性用をそのままお召しだそうで・・・どういう細さなんでしょうか(汗)。
私が観に行ったのはAzureバージョン(ダブルキャストなのです)。主役のドリアン・グレイ役の高根研一さんが急病のため、山本芳樹さんも変更になっていました。高根さんがお元気になったら、まぼろしのキャスティングになるかも。
噂によるとCrimsonバージョン、かなり良いらしいです。時間があれば行きたいーっ!
チラシに大きくアップで写っているのは、Crimsonバージョンに出演されている小野健太郎さんです。
原作/オスカー・ワイルド 脚本・演出/倉田淳
美術:松野潤 照明:森田三郎・森川敬子 舞台監督:北条孝 土門眞哉(ニケステージワークス) 音響:竹下亮(OFFICE my on) ヘアメイク:角田和子・片山昌子 衣裳:竹原典子 美術助手:渡辺景子・鈴木菜子 宣伝美術:河合恭誌 菅原可奈(VIA BO, RINK) 宣伝写真:峯村隆三 宣伝ヘアメイク:小口あずさ・nico・長谷川亮介・松嶋直子(Nanan)デスク:釣沢一衣 岡村和宏 揖斐圭子 制作:稲田佳雄 中川月人 赤城由美子 CUBE STAFF プロデューサー:北牧裕幸・高橋典子 制作:北里美織子 宣伝:米田律子
【Azure】 高根研一 笠原浩夫 林勇輔 深山洋貴 佐野考治 寺岡哲 奥田努 牧島進一 篠田仁志 下井顕太郎 大沼亮吉 石飛幸治 藤原啓児 河内喜一朗 ほか
【Crimson】山本芳樹 楢原秀佳 及川健 深山洋貴 篠田仁志 寺岡哲 小野健太郎 牧島進一 佐野考治 下井顕太郎 荒木健太郎 石飛幸治 藤原啓児 河内喜一朗 ほか
スタジオ・ライフ:http://www.studio-life.com
2004年09月04日
俳優座劇場プロデュース『高き彼物(たかきかのもの)』09/02-12俳優座劇場
読売演劇大賞など多くの賞を受賞した作品の再々々演。2000年初演でこの4年の間に4演目という、大人気演目なのです。私はこれで2度目ですが、「また来年やる」と言われたら3度目でも必ず観に行くと思いますよ♪
メルマガ号外を出させていただきました。
もーぼろぼろ泣いて、思いっきり笑って、すごく幸せな時間を過ごさせていただきました。たくさんの人にぜひぜひ観て頂きたい作品です。私は母親を連れて行きました。この座組みではこれが最後だとか。超必見!
あらすじ等は公演ページと2003年のレビューをご覧ください。舞台写真はこちら。
2度目だからこそ楽しめたり、泣けることが沢山ありました。
ここからネタバレします。
例えば開幕してまもなく、高校生の秀一(浅野雅博)が、お酒など飲んだことが無いのに突然日本酒を一気飲みしちゃうシーンでは、飲み始めるタイミングが絶妙で、それだけでホロリと来ちゃいました。猪原先生(高橋長英)が「友人を交通事故で亡くしたんだね」と話しかけた瞬間がそのきっかけだったのです。秀一は、自分の無免許運転のせいで事故が起こったことを、親に説得されて警察に言わずに隠していました。それを思い悩んで事故現場から動けずにいたのです。
猪原先生に心を寄せているバツイチ子持ちの野村先生(歌川椎子)の演技が素晴らしかったです。自分がセリフを言っていない時のリアクションがものすごく細やかで、いつも彼女の方ばかりに目が行きました。猪原先生の亡くなった奥様に対する思いが、仏壇で手を合わせる度にしみじみと伝わってきます。仏壇に青白い照明が仕込まれていたのも良かったな~。
猪原先生が衝動的に野村先生にプロポーズするシーンは大爆笑&号泣。はずかしくって、微笑ましくって、私が嬉しくって、あぁ思い出すだけで涙が・・・(笑)。
猪原先生は秀一に、受験勉強以外のことをたくさん教えます。
「君がやったことは、君がやったことなんだ」「なかったことになんか出来ない」
猪原先生にもまた心に秘めた傷があり、猪原先生の娘はその傷のせいで結婚に踏み切れずにいました。でも、秀一少年が訪れたことをきっかけに、家族全員が癒されていくのです。
秀一を演じる浅野雅博さんはおそらく30代前半の俳優さんです。泣きじゃくったり、思いっきり大口を開けて笑ったりするのは、まさに高校生の悪ガキそのもの!再々々、々演があった時に、この役を浅野さん以外の人がやるなんて想像できないな~っ。年齢なんて関係なく、ぜひぜひまたやってください!
作:マキノノゾミ 演出:鈴木裕美
出演=高橋長英/藤本喜久子/森塚敏/浅野雅博/歌川椎子/松島正芳/酒井高陽
美術=川口夏江/照明=森脇清治/音響=小山田昭/衣裳=宮本宣子/舞台監督=伊達一成/舞台統括=荒木眞
俳優座劇場プロデュース「高き彼物」:http://www.haiyuzagekijou.co.jp/produce/0902takaki.html