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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年09月19日

ピチチ5(クインテット)『反撃バップ!!』09/17-20高円寺明石スタジオ

 ピチチ5(クインテット)は『第1回歌フェスティバル』、『大クラシック』、『3年パンク』と、私が完全にフォーリンラブしている福原充則さんが作・演出する演劇ユニットです。
 私が所属するRel-ay(リレイ)の女優 永野麻由美が出演していることに個人的に感激しつつ、今回も深い味わいダメ男コメディーでした。チケット代2000円は安いです。

 4つの短編(「空飛ぶ夜勤」「火の鳥フリーター篇」「ライスカレー28年」「やらないバンド」)でしたが、登場人物がかぶってくるので1本のストーリーのような感触でした。少しご紹介すると↓

 まんが喫茶で働く上村(三土幸敏)は、突然、同じバイトの西野さん(永野麻由美)にフラれた。「上村さんって私のこと好きでしょ?私、上村さんとは付き合いませんからっ」・・・告白してもいないのに。
 まんが家志望の我孫子(野間口徹)は、また時給が上がった。「俺は“まんがしか描けない男”になりたいんだ!」すかさず辞めて新しいバイトを始めるが、そこでもいきなりリーダー候補に。う、おおおおおおーーっ!叫ぶ我孫子。

 冴えない夜勤の男達の、何も変哲もなさすぎる平凡な日々の中の妄想。彼らの口から出る、ちょっと毒を含みながらも、基本は自信なさげな心のつぶやきが、常に図星を突いていて面白いです。
 ・「皿一枚で済む料理を作るなー!」
 ・「貧乏飯食うな!金がないからいっつもミートソースばっか食ってるんだろ!」
 ・「女は、いつも現実スレスレでいろ!」(セリフは完全に正確ではありません)

 ダメダメな日常から突然むやみにスケールがでかくなるのが快感です。人間って誰でもただ想像することによって、地球を飛び出し、太陽系を越えて、世界の果てまで旅していると思います。それを舞台上で、取るに足らないダメ男の平々凡々な毎日の中で爆発させるんですよね。

 ここからネタバレします。
 仕掛けがいっぱいありましたね~、荒唐無稽な(笑)。
 ・突然登場した手塚治虫先生が何かしょってる??と思ったら、いきなり火の鳥がビヨン!
 ・巨大な月が吊られながら出現。黒子の手助けで逆立ちして、足を月にくっつけて「俺は月にいる!」
  (上記演出は初日オンリーで、土曜日からは「片手で月を持ち上げて宇宙を征服している様子」へと変更になったそうです。)
 ・神様に「望みをかなえてあげよう」と言われて、とっさに想像した“モノ”がバイクで登場(苦笑)。

 役者さん一人一人の個性がきわめて濃厚で、誰を見ていても楽しめます。些細なやり取りにもきっちり演出がついているようですし、セリフの細かいところまで役者さんが工夫をしている風にも感じられます。でも、観客と近いリズムで呼吸しているようなライブ感があるんです。それを意図的に狙ってますね。作品全体の生(なま)と型とのバランスの取り方にピチチ5らしさが現れていると思います。

 今までに比べるとちょっと音楽が少なかった気がしました。『3年パンク』でホルストの“惑星”が流れる中の愛の告白シーンでは泣けましたしね~。そう、泣けるシーンがなかったんだな。少しグっときたのは上村が西野さんに向かって「2人以上の男に惚れられている時は、セックスするなー!」と言うシーン。西野さん、ちょっと涙ぐんでましたね。どんなに自分のタイプじゃない男でも、あれだけストレートに必死で愛を告白してくれたら彼女は嬉しかったんだね。

 初日っぽい初日で段取りがうまくいっていない部分がありましたが、全然気にならないどころか、それがまた情けなくって苦笑を生みました。役者さんがとっさにフォローするのも、ちょっと痛い感じを上手くかもし出すんですよね。客席が柔らかかったな~。みんな心から楽しんでいたと思います。
 
 ※藤田一樹の観劇レポート休むに似たり。にもレビューあり。

作・演出:福原充則
出演:植田裕一(蜜) 碓井清喜 野間口徹(親族代表) 三浦竜一(暴動mini) 三土幸敏(くねくねし) 吉見匡雄 永野麻由美(Rel-ay)
演出助手:松本佳則 舞台監督:中西隆雄 舞台美術:岩田暁 照明:河上賢一 音響:中村嘉宏(at sound) 宣伝美術:岡屋出海 制作:三村里奈(MR.co) 製作:ピチチ5
人形劇のピチチ:http://www.ne.jp/asahi/de/do/pichi.html
ピチチ5:http://www.ne.jp/asahi/de/do/five3.html

Posted by shinobu at 2004年09月19日 02:11 | TrackBack (0)