2004年10月30日
燐光群アトリエの会『ときはなたれて』10/01-11/02梅ヶ丘BOX
無実なのに死刑囚となって何年間も投獄生活を強いられた人々が独白していく形式のお芝居で、ほぼ実話です。
公演サイトより引用します↓
“冤罪によって死刑判決を受け、苦難の末に解放された「元死刑囚」たち……。”“かつて死刑囚として刑務所に収容されていた経験をもつ40人の人々と、その家族へのインタビューをもとに、幾度かのリーディングを経て、練り上げられた。”
こんなに暗そうで、怖そうで、つらそうなもの、なんで観に行くんだろう!?って思います。でも、観ずには居られないんです。それが私にとっての燐光群です。
つらかった・・・途中で立ち去りたい、この場所から逃げ出したいと思いました。でも出入り口がステージで完全に塞がれているので動けません。まるで私が牢獄に居るみたい(苦笑)。
私には座席が狭すぎたんです。そして、役者さんとの距離が近すぎました。
梅が丘BOXはただでさえ狭いのですが、いつもより舞台を大きく、客席スペースを小さく作っていたと思います(『象』と同じだったかもしれませんが)。観客一人一人のためのスペースが異常に狭いんです。金曜日の夜の疲れきった体で、こんなに重圧のあるお芝居を、ぎゅうぎゅう詰めの席で見るなんて・・・拷問でした。こんなことからレビューを書き始めたくないんですが、それを言わなきゃ始まらないんです。ごめんなさい。
こんなに狭い劇場なのに大きな声を張り上げて熱い演技をされる方がほとんどでした(大西孝洋さんや猪熊恒和さんの声は気になりませんでした)。紀伊国屋サザンシアターじゃないんだから、違う作り方でいいんじゃないでしょうか。私にはその堅さが傲慢に感じました。
アメリカの犯罪についての記述が多い脚本なので、汚い言葉がよく出てきます。決して品の良くないセリフを、ものすごく大声で、がさつにしゃべる女優さんがいて、その人が語るところでは耳をふさいでしまいました。
坂手さんは今や日本を代表する脚本・演出家でいらっしゃいますから、どんどんと有名な俳優さんとお仕事をされています。だから“坂手洋二”というと豪華キャストのイメージもあるんです。アトリエの会は劇団員の方が出演されますので、そういう意味での華やかさはありません。今回は下総源太朗さんが『新・明暗』出演中、宮島千栄さんが『二人の女兵士の物語』稽古中・・・このお二人が出ていないのは痛かった。
“『ララミー・プロジェクト』『CVR チャーリー・ビクター・ロミオ』に続いて、燐光群が上演する、アメリカ演劇最新作。”という文章をちゃんと読んでおけば良かったです・・・。私、『ララミー・・・』も『CVR』もすごく苦手だったんですよ。そして今回も然りでした。あの、アメリカ人っぽい、人になれなれしく話しかけるスタイルなんですよね。独白というよりは、どんどんと観客に話を投げかけてきます。「俺は、ケリー・マックス・クック!!」などと声を張り上げてガッチガチに言われちゃうと、めちゃくちゃ引きます。アメリカ人がやるなら自然だと思いますが、日本人ですからね、なにかしら工夫(加工)が必要なんじゃないでしょうか。
脚本は、本当にこういう経験をされた方40人にインタビューをして、その内の6つを元に構成されたものです。ジェシカ・ブランクさんとエリック・ジェンセンさんに心から感謝します。事実を知ることが出来るのは幸せなことですし、必要なことだと思います。
作=ジェシカ・ブランク&エリック・ジェンセン by Jessica Blank and Erik Jensen
訳=常田景子 演出=坂手洋二
出演:中山マリ 猪熊恒和 大西孝洋 江口敦子 内海常葉 瀧口修央 裴優宇 久保島隆 杉山英之 小金井篤 樋尾麻衣子 工藤清美 亀ヶ谷美也子
照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響=島猛(ステージオフィス) 衣裳=前田文子 美術=じょん万次郎 舞台監督=堀井俊和 演出助手=吉田智久 文芸助手=久保志乃ぶ 圓岡めぐみ 清水弥生 イラスト=山田賢一 宣伝意匠=高崎勝也 Company Staff=川中健次郎 鴨川てんし 下総源太朗 宮島千栄 樋尾麻衣子 宇賀神範子 向井孝成 桐畑理佳 工藤清美 亀ヶ谷美也子 塚田菜津子 制作=古元道広 國光千世
燐光群内:http://www.alles.or.jp/~rinkogun/tokihanatarete.html
2004年10月28日
テレビ朝日・シーエイティプロデュース『マダム・メルヴィル』10/15-11/14スフィアメックス
石田ゆり子さんと成宮寛貴くんが共演するちょっとエッチでせつないラブ・ストーリー。予想をはるかに上回る良作でした!お時間のある方はぜひ!当日券も毎公演あるようです!
でも、座席によってかなりの温度差があると思います。なんと私、最前列中央の席だったんです・・・!成宮くんのおっかけファンですか?!と言わんばかりですよっ(笑)。本当にありがたいお席でした。かぶりつきで演技も美術も堪能いたしました。
アメリカ人男性カール(成宮寛貴)が、15才の時の悲しい恋の思い出を語る追想劇。父親の仕事でアメリカからフランスに移り住んできたカールはアメリカンスクールに通い始め、そこで文学教師のマダム・メルヴィル(名前はクローディー)に出会う。美しくて知的な大人の女性クローディーに、思春期のカールはどんどん惹かれ、クローディーもまた若くて聡明なカールに魅せられる。
ここから、読んでから観に行っても支障はない程度に、ネタバレします。
15歳の少年と女教師が「一夜をともに」してしまう状況が、とてもリアルで良かったです。少年:「帰らなきゃ、だけど、まだ帰りたくない」、女教師:「とにかく今日は誰かにそばに居てほしい」というのが重なっちゃったんですよね。ドキドキの夜をすごした翌日は、そのままルーブル美術館にデートなんて・・・理想ですよっ、理想!「私も連れてって!」って思っちゃったよ!!あ、違うか、連れて行かなきゃダメなのね、この場合(笑)。
文学教師のクローディーは小説、戯曲、絵画、音楽等について博識ですので、カールの質問にどんどん答えてくれます。その、クローディーとカールの会話のキャッチボールがすごく面白いんです。ホメーロスの詩とか、ボナールの絵画とか、ビスコンティの映画とか・・・アート知識のシャワーを浴びているような感覚!そういえば開幕の第一声はカールが朗読するシェイクスピア『夏の夜の夢』のパックのセリフでしたね。
でも、なぜクローディーはカールを家に帰さなかったんでしょう・・・疑問です。親に嘘をついてまでも彼を引き止める必要はあったでしょうか?別にその日で2人はお別れというわけじゃなかったですし、第一、クローディーは教師ですから、こんなことがバレたらクビになるかもしれないですよね。そんなリスクを負ってまでも彼と一緒にいたいと思っているようには見えませんでした。でもそのシーンだけですね、納得できなかったのは。後はずっと楽しく、微笑ましく観ていられました。
美術(松井るみ)と衣裳(関けいこ)が素晴らしいです。フランス人女教師のクローディーの部屋が舞台で、何から何までリアルに作られています。スフィアメックスであんなリアルな装置は初めて見ました。シーツの柄がすごく派手で、しかも全然違う種類の布をソファー・カバーとして何枚も重ねているのも素敵。1960年代のフレンチ・スタイルのお洋服は色鮮やかで乙女チックで、やはり基本的にエレガント。ルーブル美術館デートの時のクローディーのお洋服の可愛らしいことったら!欲しい!可愛すぎて着られないけど!!
音楽および音響(井上正弘)が非常に凝っていて、演技とぴったりでした。選曲が素晴らしくて、音楽だけに聞きほれることもしばしば。レコードの音や街の喧騒など室内外の音がアパートの部屋を適度に満たし、BGMに収まらない存在感でした。
ここから更にネタバレします。観に行かれる方はお読みにならない方がいいです。
2人が密会していたことがカールの父親にバレて、カールはアメリカのおばさんの家に無理やり預けられることになります。最後の最後にカールがクローディーの部屋を訪れるシーンで、鈴木裕美さんの演出が冴えました。オペラ『魔笛』のパパゲーナ&パパゲーノの歌を静かに聞き入る2人は美しかったです。あのシーンで2人が本当に愛し合っていることがわかりました。
クローディーが彼を置いて去った直後、彼女がその数年後にガンで死ぬということをカールが独白で観客に告げます。そして「もう一度、最後の彼女を見てもいいですか?」と言うと、なんとクローディーがまた部屋に戻ってきて、さきほど見せた「カールを置いて去っていく」演技をそのまま繰り返すんです。それを見つめるカールはさっきに増してボロボロ涙を流します。いや~・・・これには泣かされました、これはきっと脚本でしょうね。う~ん、思いっきりストレートでベタなのに、ヤラれちゃいました(苦笑)。
成宮くんのことは『浪人街』で拝見したのが最近で、蜷川さん演出の『お気に召すまま』は見逃しています。実は宮本亜門さん演出の『滅びかけた人類、その愛の本質とは・・・』に出演されていたんですね。懐かしいなぁ。あの時は増沢望さんのかっこ良さにしびれてたんで(笑)、成宮くんのことは全然覚えてないんですよね、残念ながら。
で、今回。彼が初めて登場した時は・・・はっきり言って怖かったです。だって照明が顔を真上から照らすので、目がギラギラしたガイコツみたい・・・(ごめんなさい)。あぁ、このお顔は私の好みじゃないわぁっ!というところから始まってしまいました。でも、そこからすぐに始まった成宮くんの独白で、完全に心奪われてしまったのです。演技がすごく上手いっ!『浪人街』でのお子ちゃま振りは一体どこへ??観客に向かって告白するようにしゃべる時に、照れ笑いとか自分で思い出すようにボソっと話したりするのを挟むのですが、それもすごく自然なんです。フランス語でホメーロスの詩の暗唱をされたのも素晴らしかったですね。
ミニスカートからあらわに伸びたクローディーの足に生唾ゴックンのお顔や、「子供だからわからない」時のあどけない、少し心細そうなお顔など、ものすごく生き生きしていました。思春期の少年の無垢で開かれた心が、無理なく全身で表されていました。相当深く役作りされていると思います。
石田ゆり子さん。美しい方だなぁと思います。色白で声もきれいです。きっと礼儀正しくて親切な方なんだろうなぁ。なので、この役にはちょっと合わないと思いました。「カーマ・スートラ(古代インドの“愛の辞典”)」を参照してセックスの体位をふざけて試してみるとか、クローディーはフランス人女性らしい人ですよね、日本人女性にしてはちょっと破天荒すぎます(笑)。基本的にわがままなんですよ。数学教師ポールとの不倫が続いていて、彼にあてつけするように衝動的にカールと関係を持ってしまったわけだし(最後はカールを本当に愛していたと思いますが)、そういう自由気ままで闊達な感じが、石田ゆり子さんからは感じられませんでした。何をしても上品で優雅だったのはさすがだと思います。
うーん・・・成宮くんがうますぎたから石田さんの緩さが見えてしまったのかも。自分をさらけ出せてないし、言葉が完全に自分のものになっていないのが、あらわになってしまいました。成宮くんがそれを出来てたんですよね。驚きました。そういえば彼の長い独白の時、蜷川芝居の色香を感じられた瞬間があったんです。蜷川さんとのお仕事ですごく成長されたのかもしれませんね。
村岡希美さん。クローディーの隣に住むアメリカ人女性ルース。気性の激しい役でしたね。確実に大爆笑を生み出していました。紫色の服、ちょー可愛いかった。
※パンフレットが1500円と非常に高いのですが、とても充実したものでした。松井るみさんによる舞台模型の写真もありますし、役者とスタッフのインタビューもたっぷり。中でもクローディーの部屋にある本や美術書、レコードについての解説はうれしいです。読めば作品をさらに楽しめます。マコーレー・カルキンのカール役、めちゃくちゃ観たいなぁ!
※毎公演、当日券を販売する予定あり(私が観に行った回は、開演直前でも残席ありでした)。各公演の前日朝10:00より予約を受付けし、当日公演会場にて代金支払い。予約→チケットスペース 03-3234-9999
11月17日@大阪ドラマシティ、11月25日・@名古屋市民会館
出演:石田ゆり子 成宮寛貴 村岡希美 五森大輔
作:リチャード・ネルソン 演出:鈴木裕美 脚本:鈴木早苗/翻訳:吉岡裕一 美術:松井るみ 照明:吉岡ひろ子 衣裳:関けいこ 音響:井上正弘 ヘアメイク:川端富生 演出助手:森さゆ里 振付指導:奥山桃子 舞台監督:二瓶剛雄 小澤久明 演出部:田中絵里子 大道具:C-COM 小道具:高津映画装飾 舞台製作:加賀谷吉之助 プロデューサー 江口剛史 版権コーディネイター:マーチン・R,P・ネイラー 主催・制作:テレビ朝日・シーエイティプロデュース
チケットスペース内:http://www.ints.co.jp/melville/madamemelville.htm
2004年10月26日
シアター・ドラマシティ・博報堂DYメディアパートナーズ『夜叉ヶ池』10/14-31パルコ劇場
映画やテレビに出てらっしゃる有名スターが出演する公演です。
三池崇史監督(演出)というと『殺し屋1』等かなり激しいバイオレンス映画を撮ってらっしゃる方で、会田誠さん(美術)というと私が超苦手な現代画家さんですので、このチケットを取るかどうかは非常に迷いました。でも結局豪華キャストに心動かされちゃったんですよね。私は松田龍平さんと松雪泰子さんが観たくてチケットGETしました。
で、拝見したのですが・・・うーん・・・・。つまらなかったですね。脚色が長塚圭史さん(阿佐ヶ谷スパイダース)なので、アサスパ風の軽快なセリフのキャッチボールや、スカっとする笑いが来るはずだと期待しちゃうんですが、全然来ないし・・・。見せ場がしっかりと組み込まれている脚本なのがよ~くわかるので、体現できていないのが寂しかったです。
役者さんが下手だと言ってしまえばそれまでなんですが・・・。基本的な演技のバリエーションが少ないと思うんです。また、役者さん同士が舞台上であまりコミュニケーションしていません。
オープニングとラストシーンの感覚は映画の人ならではだなぁと思いました。なんとな~くポツポツと始まって、知らないうちに盛り上がっていき、なんとな~く意味ありげなシーンで終わります。映像だったらかっこいいかもしれません。
お芝居にルールがあるわけではないんだけど、必勝ポイントというのはどんな世界にもあるもので、それを押さえていないのが痛かったんじゃないかしら。ひやっとしていて硬質な空気があったのは良かったと思います。
美術(会田誠)はすごくシンプルだったのでホッとしました。予想に反してこの作品で私が一番楽しんだのは美術だったように思います。舞台のど真ん中に白い流線を数本重ねて描かれただけの細い川があります。下手に鐘楼(しょうろう)、上手に鐘楼守(武田真治)の家があり、ステージは下手奥が一番高く、上手手前が一番低くなっているツルっとした八百屋舞台で、特に派手な舞台転換はありません。
上手奥から流れてくる川が、舞台へと続く花道のような役割を果たしていました。ステージは舞台面(つら)から舞台中ほどまでの大きさなので、中ほどから上手奥までは、手すりのないキャットウォークのような道(川)が空中に浮かんでいるように見えます。真っ黒い空間の中に細い坂道が灯っているのです。これがきれいでした。役者さんが横に落ちちゃわないかしら?と心配にもなりましたが、それくらいの危うさが良かったと思います。
衣装(堂本教子)はお魚の世界の赤いドレスが豪華で美しかったです。それを男性が着ているのもいいですね。松雪さんは白いドレス(前半では黒いベストあり)がすごくお似合いでした。
泉鏡花の作品というと私は『婦系図(おんなけいず)』と『天守物語』を拝見したことがあります。『夜叉ケ池』って素敵な作品ですね(あらすじは こちら )。池の主の恋心とかすごく可愛いし。まだどこかで上演されることがあったらぜひ観たいと思いました。最近、花組芝居でも『夜叉ケ池』ありましたね。私は行けなかったんですが。
キャストでは松雪泰子さん(池の主・白雪姫役)が一番がんばってらした感がありました。走り回って大きな身振りで激しい感情を表現されていて好感が持てました。夜叉ヶ池から流れてくる川の上流から静かに降りて来る姿は美しかった。
武田真治さん。鐘楼守の萩原役。言葉がはっきり聞こえてくるのは良かったんですが、ご自分の中で処理しちゃってる感じでした。妻をいけにえにされそうになって激昂し、カマを振り回していても、なんだか小っちゃい。
松田龍平さん。萩原の友人・山沢役。セリフの語尾が必ず息声になってしまっていて残念。でも、初めに登場してきた時の存在感がすごかったし、静かに立っている姿はやっぱりかっこいい。
田畑智子さん。萩原の妻・百合役。NHK大河ドラマ『新撰組!』で近藤勇の妻役の方です。カワイコちゃんですからね、どーしょーもにゃーです。
丹波哲郎さんが、死んでしまう鐘楼守のおじいさん役と魚の世界の乳母役の2役を演じられていましたが、乳母役では座って脚本を朗読し続ける状態でした。これには驚いた(笑)。「出ていることに価値がある」のでしょう。
開演前に劇場に入って驚いたのは、ロビーにお花が全然なかったことです。もう公演も終盤だからかなと思ったのですが、それにしても贈った方々のお名前の札が展示されていません。帰りに意味がわかりました。おそらくですが、あの水槽を見せるためだったのではないでしょうか。終演後、パルコ劇場の入り口付近ロビーの、いつもは物販をしている所に、巨大な水槽が置かれていたんです。水槽の中には物語の中で沈んだ鐘と少年、少女の石像(素材は石じゃないと思います)が入っていました。
そういえば公演HPにも「劇場空間に一歩入った瞬間から物語がはじまる」って書いてありますね。うーん・・・そこまでではありませんでしたね。だって皆さん、下に降りるエレベーターに早く乗りたい一心で、水槽があることにさえ気づかないご様子でしたから。でも私はこういうアイデアは大好きです。またどこか個性的な会場でやってもらえたらなぁと思います。
演出:三池崇史 脚色:長塚圭史 美術:会田誠(原作:泉鏡花「夜叉ケ池」より)
出演: 武田真治×田畑智子×松田龍平/松雪泰子 遠藤憲一 きたろう 綱島郷太郎 涼平 鈴木ユウジ 森川涼 蛭子直和 萩原聖人 丹波哲郎
ビジュアルスーパーバイザー:堀尾幸男 照明:小川幾雄 衣裳:堂本教子 音楽:遠藤浩二 音響:長野朋美 ビューティー・ディレクター:柘植伊佐夫 舞台監督:矢野森一 企画・製作:シアター・ドラマシティ 博報堂DYメディアパートナーズ
パルコ劇場『夜叉ケ池』公式サイト:http://www.parco-city.co.jp/play/yashagaike/
2004年10月25日
ジンガロ「フランス高等馬術の継承と、アートとの融合」
ジンガロ主宰のバルタバス氏は今年の2月に、ヴェルサイユ宮殿の大厩舎馬場が一般公開されるにあたって新たに開設された「馬術スペクタクルアカデミー」の主宰に就任されました。
確かな高等乗馬テクニックの継承・普及に尽力されているのはもちろんのこと、バルタバス氏は、ダンス、歌唱などのアートと融合した独特の馬術演技も新たに創作し、広く公開されています。今ではこの馬術スペクタクルアカデミーがヴェルサイユの新しい観光スポットとなっているそうです。
ご縁がありまして、岡山県で乗馬をなさっている大学生の方とお知り合いになりました。ジンガロのことは以前からよくご存知で、待ちに待ったジンガロ日本公演「ルンタ」を岡山から観に来てくださいます。その方のお写真をご紹介させていただきます。
日本の馬術、流鏑馬(やぶさめ)!
これは島根県の流鏑馬に出場された時のものだそうです。・・・流鏑馬ってかっこいい!観てみたいな~。こっそりお聞きしたんですが、矢で射る時に両手を手綱から離しますよね、あれ、いつ落馬してもおかしくない状態なんですって!!こわっ!ジンガロのパフォーマンスも馬の上でジャンプしたり、2頭の馬に1人で乗ったり、ものすごいアクロバティックな乗馬(?)が盛りだくさんなんですよっ。
乗馬をなさる方にとってジンガロはとても有名で、いつかは観てみたいと念願されているような存在だったんですね。私はついつい演劇の側から見てしまって、ジンガロを「舞台芸術のひとつだ」とひとくくりに考えがちなのですが、まず確かな乗馬技術があって、それをアートまで高めているのが凄いことなんですね。
【チケットのお求めはこちらへ】
ジンガロ日本公演『ルンタ』03/12-05/08木場公演内ジンガロ特設シアター
チケットスペース TEL 03-3234-9999 (←お問い合わせもこちらへどうぞ)
イープラス
電子チケットぴあ
※一般発売は11/27(土)です。只今ぴあで先行予約受付中!(11/9まで)
三鷹市芸術文化振興財団・ペンギンプルペイルパイルズ『246番地の雰囲気』10/21-24三鷹市芸術文化センター 星のホール
倉持裕さんが作・演出されるペンギンプルペイルパイルズの新作です。オーディションで集めた役者さんが大勢出演。
う~ん・・・「こりゃ面白い!」と思う部分が多々ありましたが、作品全体としてはわいわいがやがやと若者が集まった“お祭り”になっていました。もともと倉持さんもそういう意図があったようですが。私はあまり楽しめませんでした。
花道を作って、その脇でバンドの生演奏があるのは楽しいです。演奏するSAKEROCKのヴォーカルがいなくて寂しかったな。
玉置孝匡さんが主役の私立探偵役なんですが、おもいっきりキザでカッコつけたセリフがいっぱい(笑)。それをもっとなりきってやってもらいたかったですね。
≪言及ブログ≫
藤田一樹の観劇レポート
MITAKA“Next”Selection 5th
作・演出=倉持裕
出演=ぼくもとさきこ 玉置孝匡 児玉貴志 日比大介(THE SHAMPOO HAT)松竹生 長田奈麻(ナイロン100℃) SAKEROCK 内田慈 太田緑・ロランス 岸潤一郎 佐藤銀平 白石幸子 杉森雅也 関絵里子 高山のえみ 他
舞台監督:橋本加奈子(SING-KEN-KEN) 舞台美術:中根聡子 照明:清水利恭(日高照明) 音響:高塩顕 音楽:SAKEROCK 衣装協力:田中美和子 宣伝美術:岡屋出海 舞台写真:引地信彦 制作:土井さや佳 企画制作:ペンギンプルペイルパイルズ 主催:三鷹市芸術文化振興財団
ペンギンプルペイルパイルズ:http://www.penguinppp.com/
三鷹市芸術文化振興財団:http://mitaka.jpn.org/
ニ兎社『新・明暗』10/22-11/07世田谷パブリックシアター
夏目漱石の未完の小説「明暗」を永井愛さんが独自のエンディングを追加して脚色・演出されます。主要登場人物を演じる役者さんは初演(2002年10月@シアタートラム)とほぼ同じで、劇場はぐんと大きくなっての再演です。
商社マンの津田(佐々木蔵之介)は大手ハム会社令嬢のお延(山本郁子)と結婚し、順風満帆の新婚生活を送っている・・・ように見せかけていた。実は実父(長野のゼネコン関連会社に天下りした元官僚)に借金をしなければやっていけないし、お嬢様育ちで世間知らずのお延にも少し食傷気味。さらに、痔ろうの手術で入院することに。お延と津田の実妹(小山萌子)との不仲や学生時代からの悪友である小林の出現、お延の妹の継子(小山萌子)のお見合い、陰の権力者である専務夫人(木野花)のおせっかい等のてんやわんやの末、津田は未だ忘れられない元恋人、清子のいる温泉宿に向かう。「なぜ僕を振ったのか」を聞くために。
永井さんの脚本、演出にすっかり感服でした。初演でハプニング(山本郁子さんの足の怪我)にちょうど出くわしてしまったのもあり、私には全てがグレードアップしたように感じられました。登場人物の言葉、表情、感情の起伏、立ち位置、動きなどの一つ一つが細かいところまで入念に作り込まれています。美術にも照明にも演出意図がしっかりと行き届いていました。休憩15分(だったかな?)を挟んで3時間強の長丁場ですが、全く長さを感じさせない痛快な現代娯楽演劇でした。
この地球に生じた時から続いている男と女の絶え間ない戦い、本音と嘘が背中合わせになっている人間のコミュニケーションの実態を、漱石の滑らかでしたたかなストーリーに写し込み、永井さんらしい鋭い視点から描きます。大人が思いっ切り笑える笑いも盛りだくさんです。
体裁を繕うこと、いい格好をすること、思いやっているようで実は騙そうとしていること・・・もしかすると私もやっちゃってるかも(冷汗)。基本的に善意で真面目にやってることだから気づかないんですよね。
ここからネタバレします(セリフは完全に正確ではありません)。
津田にひがみの感情をぶつけながら、物や金を堂々とせびる大学時代の悪友、小林(下総源太朗)の「俺は悲しいよ」というセリフにじ~んと来ます。本音丸出しで生きている彼は当然のことながら回りに嫌われるので、世の中をうまく渡って行けません。だから、本音をひた隠しにして環境をうまく利用している津田を軽蔑し、同時に妬んでいます。学生時代に清子のことを一途に愛していた津田を知っているからこそ、今の津田そして自分を知るにつけ「悲しく」なるのです。そんな小林に対していつも余裕を見せている津田ですが、実は小林に負けたくないという気持ちを持っており、それをバネにして清子(山本郁子)に心を打ち明けることに成功するのは見事な仕掛けだと思います。
温泉宿の滝の前で清子に「なぜ僕を振ったのか」を聞くシーンの津田は、後の清子のセリフにもあるように本当に魅力的な男でした。蔵之介さんの演技も一味違いましたね。自分の心をそのままに、正直に気持ちを伝えようとしている時の人間は、光を放つものだと私は思っています。ある日、私の友人がボロボロと涙を流しながら失恋話をしてくれたことがありました。彼女の張り裂けんばかりの悲しみもそっちのけで、とめどない涙がつたう彼女の頬や、小さく震える唇からこぼれ出る声の美しさに、私はただただうっとり彼女に見とれてしまったのです。あぁ人間って、あるがままの姿をあるがままに見せることが出来た時に、その本来の輝きが他人の目に届くんだなと知りました。
津田を振ったのは「関(今の夫)のことが好きになってしまったからよ」と、拍子抜けするほどサラリとした返事をした清子が、再び津田のところにやって来て「さっきのことは全部うそ(!)」と言いのけるあたりから、加速度をつけて終幕までひとっとびでした。2人の仲が復活しようかというところで、津田がまた逃げ出すのが悲しいほどに滑稽です。清子が「あなたがそういう人だから、私はあなたを振ったのよ」と言うのに心底納得(笑)。
台風を切り抜けて家の前にたどり着くと、妻のお延と実妹と専務夫人が一緒にお茶をいただいて待っていました。険悪な仲だった3人が、互いの利害の一致を見出して結束したことを表しています。またもや津田は、欲望を嘘で包み隠す世界へと戻ってきたのです。清子を置いて逃げてきたものの、津田の心にはまだ自分を解き放つことができた、あの温泉宿と紅葉の景色が残っています。そこで出たのがラストのセリフ「まだ、もうちょっとこの空気を吸っていたいんだ」なんですね。
全面黒色のパネルでステージをとり囲むように建て込まれた装置は、角ばった穴がたくさん空いているものの、舞台の一番奥の幕が黒いために全体が黒のイメージです。真っ黒い空間にところどころ白い光が差し込んでおり、これは人の心の闇を表しているんだなと思いました。豪華なマンション、最高級レストラン、オペラ劇場、揺れ動く心のままに派手に立ち回る登場人物たち等、この黒い空間の中にあるものは全て津田やお延の心の中の出来事であり、正しいのか間違っているのか、本当なのか嘘なのかは誰にも決められません。それに対して、温泉宿から散歩に出るシーンでは、奥の幕が黒幕から紅葉を描いた鮮やかなスクリーンに変わります。見事だったな~・・・。すがすがしい滝が流れる秋の気持ちのいい自然の中で、津田は初めて本当の心を打ち明けられるのです。回り舞台も初演の時はちぐはぐに感じていましたが、今回は完璧。永井さんの演出が見事に実現していました。
メルマガ号外に書きましたが、終演直後に隣りの席の見知らぬ方に話しかけられました。「傑作だね」『ええ、本当に』「いやぁたいしたもんだっ」『はい、最高でした』(「 」がお隣の方、『 』が私)と感想を言い合ったんです(私の語彙の少なさが悲しい・・・)。しかもそれがかなりお年を召した方だったのに喜びもひとしお。あれは本当の気持ちのやりとりだったと自信を持って言えます。お芝居の最中には涙など出なかったのですが、帰りの電車で泣けてきました。永井さんを始め、この作品を作っている方々の本当の気持ちを体中に浴びて、そのおじい様も私も本当の気持ちを出せたのだと思います。
※ロビーでは、永井さんの戯曲本やエッセイ本の他に「新・明暗」饅頭と「新・明暗」酒が販売されていました。なんとお酒は佐々木酒造(佐々木蔵之介さんのご実家)の清酒!こりゃー買うしかないでしょう(笑)。透明プラスティック製の公演記念升(マス)も付いています。
※残念ながら客層が・・・良くなかったです。やっぱり蔵之介さん、テレビでもご活躍ですしね。何をやっても(やらなくても)笑う女性客や、上演中に何度もセリフを言い返す女性客、隣りの席の友達とおしゃべりしちゃう女性客など(女性限定ですね)、かなり気分の悪い環境でした。覚悟して観に行かれた方がいいです。
※東京初日のお宝ハプニングがありました。蔵之介さんがベッドのヘッドボードの上に乗り出しすぎて、ベッドがグシャッと壊れたんです。会場中が大爆笑&大喝采。その後、いくら演技を続けても笑いが吹き出てしまう蔵之介さんでしたが(笑)、そのシーンの最後にはきっちり盛り返したのが見事でした。たぶんベッドの上でやるはずだったことを立ったままでやったんじゃないかな?
※関連サイト
ぴあ メールマガジン特集コラム ≪舞台のツボ≫二兎社「新・明暗」
ぴあ 佐々木蔵之介インタビュー
原作:夏目漱石「明暗」 作・演出:永井愛
出演:佐々木蔵之介/山本郁子/木野花/下総源太朗/小山萌子/土屋良太/鴨川てんし/中村方隆
美術:太田創 照明:中川隆一 音響:市来邦比古 衣裳:竹原典子 舞台監督:小山博道 宣伝美術:マッチアンドカンパニー 宣伝写真:熊谷聖司 提携:世田谷パブリックシアター 制作担当:弘雅美 安藤ゆか
ニ兎社:http://www.nitosha.net/
世田谷パブリックシアター:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/
2004年10月23日
メルマガ号外 ニ兎社『新・明暗』
ニ兎社『新・明暗』
10/22-11/07世田谷パブリックシアター
《東京の後→札幌、滋賀、大阪》
http://www.nitosha.net/stage/index.php
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“しのぶの演劇レビュー” 号外 Vol.11 2004.10.23 318部 発行
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今、面白い演劇はコレ! 年200本観劇人のお薦め舞台♪
★★ 号 外 ★★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ニ兎社『新・明暗』
10/22-11/07世田谷パブリックシアター
《東京の後→札幌、滋賀、大阪》
http://www.nitosha.net/stage/index.php
☆原作:夏目漱石「明暗」 作・演出:永井愛
出演:佐々木蔵之介/山本郁子/木野花/下総源太朗 他
シアタートラム公演から2年。劇場を変えてリベンジ再演。
◎観劇後のコメント◎
本音と嘘のアンビバレンス、男と女の戦いの歴史、
人間の恥ずかしい真実と輝かしい虚飾が、開けっぴろげになります。
大人の笑いの中に辛らつな永井節が冴えわたる、痛快な娯楽演劇。
初演に比べて全てがグレードアップした印象です。
隣りに一人で座ってらっしゃったほぼ白髪のおじい様が、終演直後に
突然、満面の笑みを浮かべて私に話しかけてくださいました。
「傑作だね。いやぁたいしたもんだっ。」
※劇場ロビーで「新・明暗」饅頭と「新・明暗」清酒が購入できます。
清酒の醸造元は佐々木酒造ですよ♪
*レビューはまだUPしていません。
《チケットについて》
1階席5,000円 2階席4,000円 3階席3,000円(全席指定・税込)
東京公演はまだ残席があります。
こちらのページでチケットに関する詳細がバッチリわかります。
→ http://www.nitosha.net/stage/meian7.php
★当日予約引換券ネット受付あり!(二兎社HP内)
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なんと、当日券購入の為に販売開始時間の前から並ばなくても
確実に当日券がGETできます!(公演日の前日24:00まで受付)
※座席数は限られています。立見席になる可能性あり。
◎お問い合わせはこちらへ↓
二兎社
TEL 03-5638-4587(10:00-18:00・日祝休)
くりっくチケットセンター
TEL 03-5432-1515(10:00-18:00・店頭19:00迄・月不定休)
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◆ 【編集後記】
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◎今日は秋晴れとまでは行きませんが、気持ちの良い休日でしたね。
久しぶりに表参道でショッピングなどいたしました。
でも買ったのは800円のリップグロスだけ・・・(苦笑)。
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イープラス&電子チケットぴあで『ルンタ』先行予約が始まりました。
良いお席はお早めにGETしてくださいね♪
ジンガロ『Loungta(ルンタ)』
3/12-5/8木場公園ジンガロ特設シアター
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イープラス「ジンガロ」特集ページ
http://eee.eplus.co.jp/s/zingaro/
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メルマガ号外 『ウモジャ』
朝日新聞社/TOKYO FM/テイト・コーポレーション主催
『ミュージカル「ウモジャ~The Spirit of Togetherness」』
10/21-24ゆうぽと簡易保険ホール
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今、面白い演劇はコレ! 年200本観劇人のお薦め舞台♪
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朝日新聞社/TOKYO FM/テイト・コーポレーション主催
『ミュージカル「ウモジャ~The Spirit of Togetherness」』
10/21-24ゆうぽと簡易保険ホール
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☆南アフリカ発のオール黒人キャストのミュージカル。
2001年のロンドン初演で大成功し、22ヶ国で上演されています。
2003年6月@Bunkamuraオーチャードホールが日本初演でした。
◎観劇後のコメント◎
アフリカの歴史を辿りながら、それぞれの時代が生んだ
アフリカン・ミュージックとダンスを紹介していきます。
涙が溢れて止まらない!脚が震えっぱなし!
原始から今へ受け継がれているスピリットが身にしみます。
音楽も歌も演奏も絶品です。特にダンスには驚愕しました。
昨晩の初日を観たのですが、仕事の都合で号外を出すのが
半日遅れてしまいました。ごめんなさい。
*レビュー↓
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2004/1022022256.html
《チケットについて》
S席 13,000円/A席 12,000円/B席 10,000円/バオバブ席 5,000円
※B席およびバオバブ席はテイト・チケットセンターでのみ受付。
※未就学児童の入場不可。
◎チケット購入・お問い合わせはこちらへ↓
テイト・チケットセンター TEL 03-3402-9911
★公演期間中に前回(03年公演は除く)のチケット半券を会場内の
引換え窓口に持参すると、500円をその場でキャッシュバック!
リピーターが多いからとのご配慮です。
★「ウモジャ」on TV!
9/26(日)24:40からNHK BS2にて
「ウモジャ」のテレビ放映があります。
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◆ 【編集後記】
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◎最近めっきりお酒に弱くなっちゃったんです。
昨日なんて焼酎お湯割を2杯しか飲んでないのに、
翌日のお昼まで胃痛だし、お酒が抜けませんでした。
プチ酒豪だった日々はいずこ・・・?
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◎実は今晩観た演劇も号外レベル!明日またお会いしましょう(笑)。
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2004年10月22日
ジンガロ「チケット争奪戦が始まりました!」
11/27(土)の一般発売に先駆けて、イープラスの「プレオーダー」、電子チケットぴあの「プレリザーブ」の受付が始まり、ジンガロ日本公演『ルンタ』のチケット争奪戦の火蓋は切って落とされました!
10/15から開始しているイープラスでは既に多くのお申し込みをいただいております。ありがとうございます。
10/21(木)発売のWeeklyぴあ10/28号の14、15ページにジンガロ『ルンタ』情報が見開きで掲載されました。A4サイズになったぴあの紙面には舞台写真も特別に多く紹介されています。ぜひご覧ください。
先週から上演が始まったフランス公演を取材された記者の方々にも『ルンタ』は大好評だったそうです♪これから色んな雑誌にジンガロ旋風が吹き荒れますので、どうぞお楽しみに!
※イープラスの「プレオーダー」受付締め切りは10/24(日)18:00まで、ぴあの「プレリザーブ」は11/9(火) 9:00AMまでです。良いお席はどうぞお早めにお申し込みください。
ミュージカル『ウモジャ』10/21-24ゆうぽと簡易保険ホール
南アフリカ発のミュージカルです。去年6月のBunkamuraオーチャードホールでの日本初演を見逃したので、今度こそはと伺いました。
もーーーーーーーーっっ!!感動感動感動!!!
涙が溢れて止まらない!脚が震えっぱなし!心臓もなんだか不可思議な状態っ!これはぜひぜひ体験すべきです!!
タイトルの"UMOJA(ウモジャ)"の意味は、英語で"The Spirit of Togetherness"。日本語では「心の結束」と訳されていました。
太鼓(アフリカン・ドラム)の音がドスンドスンと鳴り響き、アフリカの民族衣装らしき衣裳を身に着けたダンサーが、信じられないくらい大きなパワーで踊りだします。
一体何なんだろう、この感覚・・・。ドキドキじゃない、わくわくでもない。でも体は震えている。心臓が何かに触れられている。気持ちが何かに突き動かされている。涙がボロボロこぼれてくる。足の裏がしびれている・・・あ、私、このリズムと音に共鳴してるんだ・・・!!
オープニングでは、アフリカがまだ西洋によって発見される前の時代の音楽と舞踊が披露されました。そして、その後のアフリカの歴史を辿っていきながら、それぞれの時代に生まれたアフリカン・ミュージックおよびダンスを紹介していく構成になっています。シーンとシーンの間にナレーターの男性が南アフリカの黒人と音楽との、切っても切れない関係について楽しく話してくださいます。基本的に日本語字幕が表示されるので理解するのに問題はありませんでした。でもね、言葉なんて別に必要ないです。次から次に出てくるパワフルでワイルドでソウルフルでピュアな(あぁカタカナばっかりになっちゃった)、今までに体験したことのないパフォーマンスが繰り広げられるんですから!
つややかで力強い歌声と全力でぶつかってくるダンスが、舞台から次々と飛び出してきます。私はこぼれる涙をハンカチでぬぐいながら、ただただ口をポカンと開けて、サウス・アフリカンの命の輝きに身を任せました。まるで自分の体の中で地震が起こってるみたい。頭の中はずっと、幸せな“非常事態”でした。
シーンごとに衣裳がじゃんじゃん変わります。民族服を着てトップレスだった時はあまり目にも留まらなかった女優さんが、ナイト・ドレスを着て出てきた時にはその美しさに愕然としました。なんて細い足首、なんて細いふくらはぎ、そして、なんて長い脚!
ハンティング・ダンス、ガンブーツダンス、スウィング、スネークダンス、ゴスペル、アフリカンドラム、マリンバ、ジャズ&ソウル・・・これでもか!というほど踊って歌って叩いて、シャウトしてくれました。ゴスペルの後のPOPS風ソウルやヒップホップにはちょっと心が冷めてしまいましたが、ラストにまた大挽回しました。
プリミティブな世界から、差別、虐待を受けた苦しい時代を経て現代までを辿り終わると、またオープニングの民族衣装&舞踊に戻ります。エンディングではこれまでに辿ってきた全ての時代の人々が出てきて、皆で“ウモジャ”を熱唱します。『赤鬼~タイ・ヴァージョン』で感じた躍動感と似ていましたが、こちらの方が格段に熱い気がします。「ヘタに気取った来日ブロードウェイ・ミュージカルよりも数段上だよ」という噂を聞いていたのですが、本当にそうだと思いました。歌もすごいしダンスもすごいです。
これは記録として書いておきますが、照明&音響のオペレーションがミスしまくってました。びっくりしましたね~、この公演規模でスピーカーにノイズとか入ると(笑)。でもね、そんなのどーーーーーーーでもいい!ほんっとに全然関係ないです。だってダンサーだって振付バラバラだし(爆笑)。スピリットは完全に共有していたんですよ。それって奇跡だよねっ!
チケット代が海外招聘ミュージカルということで、ちょっと高い目なんですよね。青山劇場で上演中の『ビッグ・リバー』よりも高い・・・(汗)。S席 13,000円/A席 12,000円/B席 10,000円/バオバブ席 5,000円です(バオバブ席って何?)。だからなのかどうかはわかりませんが、空席が目立ちました。でも会場はノリノリ!スタンディング・オベーションしてる方もいっぱいいらっしゃいました(私は気弱なのでなかなか立つことが出来ません)。終演後はパンフレットやCD、アクセサリー売り場に観客が殺到!
今週末24(日)13時の回が千秋楽です。ぜひお時間を作って観に行って下さい!!空席があるなんて、それは良い席をGETできるチャンスですよ!
補足:開場時間にロビーで出演者によるマリンバの演奏が聞けます。かな~りお得です。開演10分前までやってくれますので、ぜひお早めにご来場ください。上演時間は休憩20分を挟んで約2時間20分です。
【お問合せ】テイト・チケットセンター:03-3402-9911
クリエーター:トッド・トワラ&テンビ・ニヤンデニ
振付:トッド・トワラ 衣装デザイン:テンビ・ニヤンデニ プロデューサー:ジョー・テロン
出演:ナレーター/パフォーマー 36名/ミュージシャン 5名 (予定)
主催: 朝日新聞社 / TOKYO FM / テイト・コーポレーション
後援: NHKエンタープライズ21 / 南アフリカ共和国大使館
企画招聘: テイト・コーポレーション
ウモジャ2004年日本公演公式サイト:http://www.tate.jp/umoja2004.html
2004年10月21日
青年団・五反田団『いやむしろわすれて草』10/12-17こまばアゴラ劇場
話題の五反田団、私は初見です。今回は今までとはちょっと違う味わいだったと聞いています。
噂どおり舞台装置はほぼ何もなく、作品のカラーは“笑いを多い目にして少しソフトにした青年団”という印象でした。青年団の役者さんも出てらっしゃるのでどうしてもイメージが重なりました。
何もいじっていないこまばアゴラ劇場の舞台中央に、病院の白いパイプのベッドがあり、木製のちょっと高価そうな椅子とナイトテーブルが置かれています。
ここからネタバレします。
八百屋の4人姉妹のお話。母親は彼女らが子供の頃に蒸発し、当時中学生だった長女の一美(兵藤公美)とガンコで怒りっぽい父親(志賀廣太郎)が店を切り盛りして生活しています。
物語の中心になるのは子供の頃から入退院を繰り返している病弱な三女の三樹(端田新菜)で、三樹が入院している病室と、三樹のベッドがある八百屋の2階の部屋の2箇所で、子供時代と成人してからの家族の風景が描かれます。舞台装置にいっさい変化はありませんし、特に何の説明もなくお話が過去に行ったり現在に行ったりします。場面転換がとてもさりげなくて、ちょっとスリリングで楽しかったです。
頑固一徹な風貌の父親と4人の少女の生活は、いわゆる庶民的な一家庭のリアルな姿でした。子供のケンカが心に痛いです。年下の子供から「びえぇええんっ!」と雄たけびを上げるように泣き出すんですよね。誰もが経験したことのように思います。
さて、4人が大人に成長した現在の世界では、二女(望月志津子)は東京で一人暮らしをしていて四女(後藤飛鳥)もどうやら家を出ています。実家にいるのは父親と、一緒に働いている長女と病気の三樹。
三樹のお見舞いに来ている姉妹たちの会話の中から、長女の一美が実はプロポーズを断り続けているという話が出てきて、四女から「このままじゃ一美ちゃん結婚できないよ」「二葉(二女)も私も家に戻ろうかなって」「だって、お父さんと三樹ちゃんだけじゃ心配だもの」とまで言われます。・・・あぁ・・・苦しいよー、つらいよー、なんてあからさまで傲慢なセリフたち。発している方は思いやりを持っているつもりなんだよね。ぐぅ・・・の音も出ない。
最後は子供時代のシーンでした。恒例の家族行事であるボーリングに「行かない」と言い張る三樹を、家族全員でムリムリ説得しようとしますが、結局決裂。大泣きした三樹は長女に抱きつき、そこで終演。私も泣いちゃいました。子供の純粋な欲望は言葉にできないままに体中からあふれ出てしまいます。しかも三樹の場合は常に抑圧しているから爆発しちゃうんですね。このシーンで終わってくれたのがまた良かったです。
『いやむしろわすれて草』っていうタイトルは、すごく味わい深いなぁと思います。
私、映画でもテレビでも演劇でも病気が描かれるのは本当に苦手なんです。病院とか医者とかも。それが舞台に出てくるだけで半分拒否症状が出るぐらい。でも、この作品を作られた方(前田司郎さん)もそれをわかっていて、あえて題材に選ばれたように感じられましたので、頑張ってちゃんと観るように努力しました。病名を具体的に挙げなかったのと、寿命を限らなかったことが素晴らしいですね。そのおかげで作品世界が壊れなかったと思います。
作・演出の前田さんがご自身の日記(秘密日記)で「一般ウケを狙った」とおっしゃってます。次回はぜひ一般ウケを狙っていないものを観たいと思います。「ながく吐息」とか、また再演してくれるかしら。
そもそも四女役の後藤飛鳥さん目当てで観に行ったのですが、期待を裏切らない可愛さでした。本当にさまざまなジャンルの劇団でご活躍なんですよね。次はbird's-eye viewのsecond lineですね。楽しみです。
志賀廣太郎さん(青年団)。父親役。お年を召した男優さんが出ているのは舞台がキリリと引き締まって良いと思うのですが、いかんせん声がギラギラしていて浮いている感じがしました。
黒田大輔さん(THE SHAMPOO HAT)。妻が三樹と同じ病院に入院している男役。面白いキャラクターでした。すっごく好きになりました。
作・演出 前田司郎
出演 奥田洋平(青年団) 黒田大輔(THE SHAMPOO HAT) 後藤飛鳥 志賀廣太郎(青年団) 端田新菜(青年団) 兵藤公美(青年団) 望月志津子 山本由佳(むっちりみえっぱり) 他
照明:岩城保 宣伝美術:藤原未央子 イラスト:前田司郎 制作:端田新菜
こまばアゴラ劇場内:http://www.letre.co.jp/agora/line_up/2004_10/gotandadan.html
五反田団:http://www.uranus.dti.ne.jp/~gotannda/
2004年10月19日
NBS・日本経済新聞社『エディタ・グルベローヴァ シューベルト、R.シュトラウスの歌曲を歌う』10/19サントリーホール
エディーご降臨!!!!!
世界一のソプラノと名高いエディタ・グルベローヴァのリサイタルです。本当はウィーン国立歌劇場『ドン・ジョヴァンニ』@東京文化会館に行きたかったんですけどね(泣)。
あぁ(涙)・・・神々しい天使の歌声です。彼女は人であって人ではないよっ!女神だよっ!!
グルベローヴァが会場に姿を現した瞬間、目頭が熱くなっちゃいました。彼女が今、目の前にいるだけで感動。まだ歌ってないのに!(苦笑)
今回はシューベルト10曲、シュトラウス6曲のリート(ドイツの芸術歌曲。特にピアノ伴奏つきの独唱曲)のコンサートでした(去年はオペラ・アリアだったそうで、とんでもない人気公演だったそうです。行きたかったなぁ・・・)。今回の 曲目はこちら です。1曲たりとも知りませんでしたが、みんな可愛らしい曲で楽しかったです。てゆーかグルベローヴァなんだもの!彼女の声が聴けるだけで、彼女の姿が見られるだけで、私は満足以上なのです。
なんとアンコールを3曲も歌ってくれました。確かに会場中すごい拍手だったしなー・・・2回までは歌ってくれる雰囲気だったけど3回目はまさかと思いました。マジで?また歌ってくれるの??って。ピアノのハイダーさん(エディーのご主人でもあるらしい)が楽譜を持って出てきてくれた時には、ほとんど反射的に「きゃーっっ!!!」って悲鳴を上げちゃいました。2階席には「ありがとーーーーーっ!」って大きく叫んだおじちゃまがいましたけど(笑)。
実は、このアンコールこそがこのリサイタルの目玉だったんです。コロラトゥーラ(超絶技巧)全開!!
曲目は↓
1.デラクワ「ヴィラネッラ(村娘)」
2.ドニゼッティ「アンア・ボレーナ」より最後のアリア
3.ドニゼッティ「シャモーのリンダ」より
うぇえ~・・・・・・涙がボロボロぼとぼと溢れてこぼれて、体の芯から震えが来ました。ありがとう!ありがとう!!なんて凄いんだ!なんて強いんだ!なんて美しいんだ!!私も、貴女には全然かなわないけど、頑張る!頑張るよっ!!
10月23日(土) 3:00pmから池袋の東京芸術劇場 大ホールでもありますので、お時間のある方はぜひ!ぜひぜひ!!
ピアノ:フリードリッヒ・ハイダー
クラリネット:生方正好(「岩の上の羊飼い」のみ)
主催:財団法人日本舞台芸術振興会・日本経済新聞社
NBS:http://www.nbs.or.jp
シアター1010・tpt『楡の木陰の欲望』10/18-31(10/17プレビュー)シアター1010
ユージン・オニールの戯曲をロバート・アラン・アッカーマンさんが演出し、寺島しのぶさんとパク・ソヒさんが出演するのですから、有無を言わさず必見です。
北千住に新しくオープンしたシアター1010(せんじゅ)のこけら落とし公演のひとつです。芸術監督の朝倉摂さんが美術を担当しています。
さて、久しぶりに私、怒っています。座席のせいでお芝居が見えないなんてこと、S席 8,000円・A席 5,000円も取ってる公演ではあってはならないことです。
2階建ての家屋がそのまま舞台装置になっていまして、前の方の席(私は1階5列21番という席でした)からは、2階でのお芝居が非常に見えづらいのです。2階でお話が進行するシーンがすごく多いので、1階の天井ばかりが視界に入っている状態で、ずーっと首を曲げて見上げていなければなりませんでした。また、2階の部屋のど真ん中にリアルな壁が作られているせいで、自分が座っている席の反対側の壁の向こうでの演技がいっさい見えません。休憩の時に試してみましたが、最低でも12列目よりも後ろで、真ん中ブロックの席じゃないとダメです。
大好きな役者さんを間近で見たいがために早いめにチケットを確保しておいたのが、とんだバカを見るはめになりました。新しい劇場のこけら落としの初日にわざわざ私の家からは遠い北千住まで出向いたというのに、ひどい仕打ちです。心の底からがっかりです。
実は、空調も効き過ぎていてすごく寒かったので、休憩時間に苦情を言って対処していただきました。また、役者さんの声が幾重にも響いてしまって聞こえづらかったです。これはホールの構造の問題なのでしょうから、どうしようもありませんよね。本当の意味での初日なのに、客席の環境をこれほど悪くするなんて、どういう心構えなのでしょうか。この新しい劇場は、最初から悪い印象を私の心に刻ませました。
さて作品についてですが、先に述べたような悪環境ではどんなに役者さんががんばっても挽回は絶望的でした。
厳格で自己中心的で鬼のように残酷な70才の父親エフラム(中嶋しゅう)とその3度目の妻アビー(寺島しのぶ)、そしてアビーと愛し合ってしまう息子エバン(パク・ソヒ)の、ほぼ3人芝居のようなお話です。コアになるのはアビーとエバンの激しい愛なのですが、アビーとエバンが互いに一目ぼれしてしまう初対面のシーンでエバンの姿および表情が“壁のせいで”見えなかったり、父親とアビーがいる寝室の声に耳をそばだてるエバンの演技が“壁のせいで”見えなかったり、2階のエバンの寝室でアビーとエバンが初めてキスをするシーンが“壁のせいで”全く見えなかったり、つまり、愛が生まれて育まれるポイントとなるシーンが欠如しているたため、ストーリーに説得力を感じられませんでした。寺島さんがパクさんを、パクさんが寺島さんを愛しているように見えなければ、何にもならないんですよ。
さて、壁についての苦情はこのあたりにしておきましょう。前半はむさくるしい男たちの男くさいお芝居がしばらく続きます。ヒロインの寺島さんが出てきてから一気に面白くなりました。あの集中力とオーラはさすがだなぁとうっとりしちゃいます。胸元が大胆に開いたドレスもすごくお似合いで、男を悩殺する悪女イメージがしっくり来ました。ドレスの色は赤や紫に部分的な黒のレース使いがポイントになっていて、これまたセクシーさがアップしました。前半は寺島さんのおかげでけっこう楽しかったのですが、後半は寺島さんが真っ黒の服を着ている時点で「あぁ、ここから暗くなるんだな」とわかってしまい、そのままずるると暗いまま終わってしまった印象です。
パク・ソヒさん(エバン役)は弱かったですね。言葉の発声・種類のバリエーションが少なかったです。キスシーンなどのラブ・シーンは相変わらず何度観ても素敵です。
中嶋しゅうさん(父親役)がこんなに激しい役を演じてらっしゃるのは初めて観た気がします。笑って踊って飛び跳ねてましたよね(笑)。しっかりした語り口で言葉を伝えてくださいました。すごく長いセリフも安心でした。
私は朝倉摂さんの美術とは今のところ相性が悪いようです。『薔薇の花束の秘密』は途中休憩で帰りましたし、『海の上のピアニスト』は爆睡しました。オペラ『源氏物語』もすごく退屈だったことを覚えています。tpt『蜘蛛女のキス』は良かったですが、特に美術が良かったという印象では在りませんでした。いつか当たりに出会いたいです。
この作品はベニサン・ピットで観たかったですねぇ・・・。そもそもこの劇場は客席が扇状に広がりすぎているんですよ。“地方の劇場”にこういう構造の劇場が多いと聞きます。シアター1010はそんな劇場を目指しているわけじゃないと思っていたんですけど・・・私の予想(期待)が外れたということでしょう。
作:ユージン・オニール
出演:エフラム・キャボット/中嶋しゅう ある男/高山春夫 シミアン/山本亨 ある女/吉田昌美 ピーター/大川浩樹 老農夫/塾一久 エバン/パク・ソヒ 保安官/深貝大輔 アビー・パトナム/寺島しのぶ バイオリン弾き/片岡正二郎 若い娘/真堂藍 男/由地慶伍 近隣農場の人々/川田朗子 福島園子 石川和利 芥川太一
訳/木内宏昌 演出/ロバート・アラン・アッカーマン 美術/朝倉摂 照明/沢田祐二 衣裳/黒須はな子 音響/高橋 巖 ヘア&メイク/鎌田直樹 舞台監督/久保勲生
シアター1010:http://www.t1010.jp/
tpt:http://www.tpt.co.jp
2004年10月16日
ひょうご舞台芸術『やとわれ仕事(原題:Odd Jobs)』10/13-17俳優座劇場
カナダの劇作家フランク・モハーさんの脚本を宮田慶子さんが演出します。どこにでもいそうな普通の人々の日常に訪れる切実な問題を、優しく暖かく、しかしリアルに描いています。
明日10/17(日)14:00の回が千秋楽です。とても感動できるお芝居だと思いますので、どうぞ大人のムードの俳優座劇場に足をお運びください。
工場のオートメーション化(機械導入)でリストラされた若者ティム(野村宏伸)は「庭掃除でも大工仕事でも何でもやるよ!」とアピールして、大きな家で一人暮らしをしているフィリップ夫人(長谷川稀世)に雇ってもらう。夫人は夜になるとハイウェイの近くを放浪してしまう等の痴呆の症状が出始めていて、日常生活に誰かの助けが必要だと感じていたのだ。ティムは週6日、朝から夜までフィリップ夫人の家で家事をすることになり、2人の生活のリズムが揃い始めた頃、ティムの妻ジネット(宮地雅子)が今よりも給料の高い仕事を勝ち取った。百貨店に勤めながら夜学に通った努力が実ったのだ。しかし新しい勤務地はド田舎で、すぐにでも引っ越さなければならない。フィリップ夫人のことを放っておけないティムはこのまま残ると言い出すが・・・。
オープニングがものすごく暗くて、のっけからかなり気が滅入ったんです。でもフィリップ夫人の若い頃の職業がわかった時から、この戯曲の深いところに入り込んでいけました。
リストラ、痴呆・介護問題は今の日本においてものっぴきならない大問題です。女性の社会進出は晩婚・少子化を促進し、夫婦や家族の形そのものに変化をもたらしました。この戯曲は1985年に書かれたものなのですが、2004年の今になって、すごく身近です。
フィリップ夫人にもティムとジネットにも子供がいません。ちょっと物足りない気もしましたが、子供がいたら遺産相続などの家族の内側の問題をクローズアップせざるを得ませんからね。自立した大人だけのお話にしているおかげで、私自身を登場人物一人一人と重ね合わせて観る事が簡単に出来たように思います。
演出の宮田慶子さんがこの戯曲についてパンフレットに書かれている素敵な文章を引用させていただきます↓
「どんな大きな問題も、あくまでも等身大の自分の問題として全力でとり組み、ひとつずつ解決していくことが、これから先の世界を作っていくのだという勇気をもらいます。」
ここからネタバレします。(引用するセリフは完全に正確ではありません)
工場長になってやると意気込んで必死で働いていたティム、ケベック州から出てきてカウボーイと結婚したいと思っていたジネット、そして痴呆が始まった元数学者フィリップ夫人3人の人物像がきめ細かく浮かび上がる脚本でした。役者さんの演技がお上手なのも大きいと思います。そしてもちろん、登場人物の一人一人に細やかな愛を持って演出される宮田さんの力も大きいと思います。
フィリップ夫人が友人の音楽学者の夫婦らとともに別荘で過ごした若い頃の思い出話をするシーンで泣けました。「ショーペンハウェルの、あの気難しいドイツ人哲学者の人生は、果たして幸せだったのかどうかを、大自然の中で喧々諤々(けんけんがくがく)言い争ったりして、私たち本当に馬鹿だったわ。・・・でも、私たちは本気だった」。他にも「数学は音楽と一緒」とか、「私ははみだし者だったのよ」とか、自分の人生について率直に、達観した心持ちで発せらるセリフが、彼女の人生を鮮やかに描き出しました。老人ホームに入ると決心したフィリップ夫人が、「数学者として生きてきた50年だったけれど、知りたいことはわからないままだった。自分の人生は何だったんだ、全ては徒労だった」と嘆くところは私も身につまされ、涙がこぼれました。
ジネットが大好きなカントリーウェスタンの音楽がよく流れます。私もカントリーミュージック、大好きなんですよね。それもあってか、時々暗転中にかかる音楽を聴いて泣けてきたりもしました。ジネット曰くの「虐げられてきた人達の音楽」は、確かに根底に悲しみがあり、だけど前向きで力強くて、人に優しいんです。
美術(横田あつみ)がとても地味でした。舞台奥の全体が幕になっている作品を連続で観たので(『バット男』もそうだったんです)、ちょっと寂しい気がしていたのですが、最後には上手のおばあちゃんの家と下手の若夫婦の部屋が合体しましたね。このままでは終わらないだろうと思っていたので少し嬉しかったです。オレンジと黄色の明るいチラシのビジュアルは、このラストシーンのイメージだったのかな。植物のつるを絡めて作られた大きな木が舞台中央にそびえていましたが、すごく印象に深いオブジェでした。私には人間の脳と脳髄に見えたり、原爆雲に見えたり(なんでやねん)、さまざまに想像力を掻き立てられました。
美術が地味だった分、ストイックで品の良い照明(中川隆一)をじっくり味わえました。特に木のオブジェに当てる光は美しかったです。
カナダの演劇作品を観るのはこれで4度目になります(『ハイライフ』『月の向こう側』『7ストーリーズ』)。どこか淡々としたところがあるのが共通点ですね。大事件が起こってもシラっとしてるというか、冷静というよりは他人行儀な雰囲気。一人ずつが孤独で静かな戦いをし続けており、そこから決して逃げていない潔さがあります。イギリスとフランスに取り合いされ、結果的にはイギリス領になったけれども、英語とフランス語が公用語として残っている状態で、芸術・文化の面ではお隣りの国アメリカに押され続けているというのが、今のカナダの環境だそうです(パンフレットからの情報です)。そこで培われてきたカナダ独特の文化が現れているのでしょう。
ひょうご舞台芸術のパンフレットにはいつも、芸術監督の山崎正和さんとスタッフのお一人との対談が載っています。今回は翻訳の吉原豊司さんでした。吉原さんは「(会社員の時に)赴任先のカナダ独特の英語表現に慣れるために、劇場通いを始めた」そうで、商社を定年退職してから翻訳業を始められました。人間の人生、いくつになっても色んなことが出来るんですね。
作:フランク・モハー 翻訳:吉原豊司 演出:宮田慶子
出演:野村宏伸(ティム・アレンズ) 宮地雅子(ジネット・アレンズ) 長谷川稀世(フィップス夫人)
美術:横田あつみ 照明:中川隆一 衣裳:前田文子 音響:高橋巌 ヘアメイク:林裕子 演出助手:阿部洋平 舞台監督:澁谷壽久 芸術顧問:山崎正和 プロデューサー:三崎力(芸術文化センター推進室) 主催・企画製作:兵庫県、(財)兵庫県芸術文化協会 協賛:近畿コカ・コーラボトリング株式会社 後援:朝日新聞社、カナダ大使館 制作:インタースペース
兵庫県立芸術文化センター:http://www.gcenter-hyogo.jp/
チケットスペース:http://www.ints.co.jp/
2004年10月15日
山の手事情社20周年記念公演Yamanote7481『jamゴールドブレド』10/06-17青山円形劇場
劇団 山の手事情社の20周年記念公演3本立ての内の1作です。私は『夏の夜の夢』に続いて伺いました(残念ながら『オイディプス@TOKYO』は観られませんでした)。内容は主に“即興演技”で、清水宏さんが出演されるのも大きな目玉です。
明日、あさっての土日のチケットは、早々から前売り完売でした(予約のない方は、当日券のキャンセル待ちになります)
あぁ・・・疲れた(笑)。役者さんも舞台上で全力投球、神経過敏状態ですので、観客もハラハラどきどきです。
私は学生時代に学生劇団で役者をやっていました。しばらく休んでいましたが、5年ほど前も数回舞台に立ったりしていました。で、こうやって色んなお芝居を観て、俳優さんを見て、気づいたんですよね。私には出来ないってこと。「こんなこと、私にはムリっ!」って。特に山の手事情社の俳優さんについては毎度そう思います(笑)。
恥ずかしながら白状いたしますと、俳優って、脚本に書かれたことを解釈して、演出家に言われたことを実現する職業だと思っていたんです。でも、それだけじゃないんですよね。自分でどんどんと作り出していかなければならないんです。むしろそれが俳優の本分です。解釈することひとつをとっても、それは創造することなんですよね。
さて、レビューを書くのが遅れている内に、お知り合いの中から内容についてすごく詳しく書かれたレビューが早々と出ていました。藤田一樹の観劇レポートは私と同じ回をご覧になっており、すごく細かいところまで書いてらっしゃいます。
某日観劇録は違う回をご覧になっているので、比べると本当に即興でやってるんだなってわかります。「山の手事情社、恐るべし」です。だいたい3作品連続公演っていうのが脅威ですよね。今は解散したMOTHERの公演で、そういうのがあったのを思い出しました。あれは4作品だったかなー。同じく青山円形劇場でしたね。
『jamゴールドブレド』では、清水宏さんの凄さを体感できたのが一番の収穫でした。与えられた3つのお題から、その場で短編芝居を作り出すコーナーでは、清水さんがいたチームがダントツで面白かったです。世界観を作るというよりは、露骨に「面白い」ことを目的にされていて、その潔さというか、笑いに対する執念に圧倒されました。
出演:柳家花緑 山本芳郎 倉品淳子 野々下孝 岩淵吉能 太田真理子 水寄真弓 河村岳 浦弘毅 森谷悦子 山口笑美 久保村牧子 植田麻理絵 鴫島隆文 名久井守 野口卓磨 山田宏平
構成・演出:安田雅弘 照明・舞台装置:関口裕ニ(balance, inc) 音響:斉見浩平 衣裳:渡邉昌子・栗崎和子→『夏の夜の夢』『オイディプス@TOKYO』 寒河江真紀(lame☆trap)→『jamゴールドブレンド』 舞台監督:本弘 宣伝美術:福島治 演出助手:小笠原くみこ 制作:福冨はつみ 製作:劇団山の手事情社・(有)アップタウンプロダクション
山の手事情社オフィス:http://www.yamanote-j.org
ジンガロ on TV『騎馬劇団ジンガロの魔法』10/18NHK BSハイビジョン(BS-3)
昨年9月に放映されたNHKハイビジョン特集『騎馬劇団ジンガロの魔法』が再放送されます。
なんと1時間50分という長時間のスペシャル番組!
イープラスpickupページ↓
騎馬オペラ「ジンガロ」日本公演『Loungta-ルンタ』
公演写真や制作発表の写真も見られます!
フランスでの密着取材では、ジンガロ主宰バルタバスへのインタビュー、稽古風景、乗り手の生活、楽屋裏などがたっぷり紹介され、過去の公演映像も贅沢に盛り込まれています。すっごく充実した内容で、「ジンガロっていったい何?」という疑問に、満足のいくの答えがもらえる番組だと思います。
●NHK BS-hiハイビジョン特集
『騎馬劇団ジンガロの魔法』
日時:10月18日(月)
時間:23時~24時50分
チャンネル:NHK BSハイビジョン(BS-3)
この『騎馬劇団ジンガロの魔法』を見て、そして来年3月~5月のジンガロ初来日公演には、ジンガロを見るだけでなく体験しにいらしてください!
ジンガロ公式HP(フランス):http://www.zingaro.fr/
朝日新聞社内暫定HP:http://www.asahi.com/zingaro
2004年10月14日
松竹『髑髏城の七人(アオドクロ)』10/05-28日生劇場(5日はプレビュー)
休憩20分を挟んで計3時間40分という超大作です。私は先日、映画館で『アカドクロ』を見たばかりでしたが(レビューはこちら)、最高に楽しかったです。もー・・・染五郎さんスゴすぎ!かっこよすぎ!!
前半は「なんだか地味だな~」と思っていたのですが、後半はどんどん盛り上がって、帰る時には「あぁ面白かったっっ!サイコーっ!!」状態。もーあそこまでやってくれたら大満足なんですよ、何も言うことないんですよ、ホント。ありがたくって。そこに劇団☆新感線があるだけで。
書きたいなーとおもうことは、染五郎さんがめちゃくちゃカッコ良かったこと、染五郎さんがめちゃくちゃセクシーだったことだけです。
うそ。嘘です。他にもあります。三宅弘城さん(ナイロン100℃)が面白かったこととかね、鈴木杏ちゃんが熱かったこととかね、照明が素晴らしかったこととかね、観劇後の飲みで盛り上がったこととかね(これは余計)。
だけどね、もーいいんですよ染五郎さんさえ見られればっ!(笑)
『アカドクロ【赤】』と『アオドクロ【青】』の違いについて、ちょっと書いておきますと↓(ネタバレします)
【青】の方が【赤】よりもお色気&ゴージャス&スタイリッシュ感が強調され、高度なダンスシーンが見せ場になっていました。メインカラーはもちろん青。脚本の大筋は同じですが、細かいところにはかなりの変更があって、特に刀鍛治役(三宅弘城・役名:カンテツ)が、刀を「タナカ」と言い間違える爆笑キャラになっていたのが面白かったです。三宅さんはアクションも凄かったですね。
キャストでは、無界屋蘭兵衛役が女優の水野美紀さんから男優の池内博之さんに変わっているのが最大の変化でしたね。天魔王の染五郎さんとのキスシーンはきれいだったな~。【赤】では美女(水野美紀)と野獣(古田新田)のうっとりラブでしたが(笑)、【青】では美青年同士の禁断の愛でした。
オープニングで【赤】と同じセットなのかなぁと思わせるような装置が両袖にあったのが粋ですね。【赤】からの連続性を感じられるように、わざわざそうしていたのではないでしょうか。凝りに凝ってる!
あぁ、まだ天魔王の染五郎さんの声が響いてます・・・悪役が似合いますよねーっ!
【出演(メイン)】市川染五郎:玉ころがしの捨之介 鈴木杏:沙霧 池内博之:無界屋蘭兵衛 高田聖子:極楽太夫 三宅弘城:謎の刀鍛冶 粟根まこと:小田切渡京 高杉亘:鋼の鬼龍丸 川原和久:水無月才蔵 ラサール石井:狸穴二郎衛門 佐藤アツヒロ:こぶしの忠馬
【出演(その他)】逆木圭一郎 村木よし子 山本カナコ 村木仁 川原正嗣 前田悟 タイソン大屋 葛貫なおこ 小寺利光 小村裕次郎 杉山圭一 田畑亜弥 中野英樹 安田栄徳 山中崇 横山一敏 竹内康博 中川素州 加藤学 矢部敬三 三住敦洋 藤家剛 佐治康志 柴田健児 島田裕樹 小椋太郎 蝦名孝一 武田みゆき 伊藤美帆 嶌村緒里江 野澤紗耶
作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
美術:堀尾幸男 照明:原田保 衣裳:小峰リリー ヘアメイク:高橋功亘 振付:川崎悦子 アクション・殺陣指導:田尻茂一 川原正嗣 前田悟 アクション監督:川原正嗣 音楽:岡崎司 音響:井上哲司 音効:山本能久 大木裕介 小道具:高橋岳蔵 特殊効果:南義明 映像:樋口真嗣 歌唱監督:右近健一 演出助手:坂本聖子 小池宏史 舞台監督:芳谷研 宣伝美術:河野真一 宣伝写真:野波浩 宣伝メイク:内田百合香 制作:真藤美一(松竹) 柴原智子(ヴィレッヂ) 制作協力:劇団☆新感線 ヴィレッヂ 主催・製作:松竹株式会社
松竹内公式:http://www.shochiku.co.jp/play/others/nissei/dokuro/
劇団☆新感線:http://www.vi-shinkansen.co.jp/
2004年10月13日
TBS/Bunkamura『赤鬼~日本バージョン』10/02-20シアターコクーン
野田秀樹さん作・演出の『赤鬼』3ヴァージョン連続公演の最後を飾るのは日本バージョンです。出演者は最少人数の4人。(前2バージョンのレビューはこちら→ ロンドン 、 タイ )
客層がめっきり変わっていました。若い人が多い!
BunkamuraのHP内のページ「赤鬼とは」に『赤鬼』のこれまでの上演歴とあらすじが書かれています。
あらすじを引用します↓
“村人に疎んじられる「あの女」と頭の弱いその兄「とんび」、女につきまとう嘘つきの「水銀(ミズカネ)」が暮らしていた海辺の村に、異国の男が打ち上げられたことから物語が始まる。
言葉の通じない男を村人達は「赤鬼」と呼び、恐れ、ある時はあがめ、最後には処刑しようとする。彼と唯一話ができる「あの女」も同様に処刑されそうになる。「水銀」と「とんび」は捕らえられた二人を救い出し、赤鬼の仲間の船が待つ沖に向かって小船を漕ぎ出すが、船影はすでになく、四人は大海原を漂流するのだが…。”
さすがに3度目ですので退屈しました。これは・・・仕方ないと思います。ストーリー全部わかっちゃってるし、誰がどんな役なのかも知っているし。この上さらに楽しもうとすると、前の2バージョンと比べて観るというのが一番てっとり早いわけです。
全バージョン通して劇場中央に小さな舞台が設営されるのですが、今バージョンでは上から見たらひょうたんのような形の、丸みを帯びたものでした。色は白木色。床からの高さはジュース瓶の高さぐらいです。というのも、舞台のまわりをグルっといろんな種類の瓶で囲んでいるのです。ところどころその瓶に可愛らしい花が刺してあり、前2バージョンと比べるとメルヘンチックなイメージでした。
さて内容についてですが、まずセリフが早口でしかも声が通っていないため、せっかくの日本語の言葉が聞こえづらかったです。ちょうど『夢乃プレイ』 や 『胎内』で上手い役者さんを観たばかりだったのもあり、これは私には致命的でした。
日本人の役者さんは野田さん、大倉さん、小西さんの3人ですが、ひっきりなしにどんどんと違う役を演じていく演出なので、一つ一つの役柄がすごく軽く見えました。村の老人、若者、赤子などはあくまでも記号として作り、メインの「トンビ」「水銀」「あの女」だけ掘り下げたキャラクター作りをされたのかもしれません。でも、どうも皆さん、アニメっぽいというか・・・表面だけの演技のように見えてしまい、主要人物を好きになれませんでした。ロンドンの役者さんのように歴史や技術を背負っていなかったし、タイの役者さんのように全身で勝負しているようも感じられなかったのです。全力投球はされていたと思いますが、あくまでもそれは運動面の話です。走りっぱなしですものね。
ロンドン、タイバージョンで赤鬼が「freedom!」と叫ぶところは、セリフ全部がキング牧師の演説になっていましたね。それ以外の赤鬼のセリフはフランス語に近かったように思えました。赤鬼役のヨハネス・フラッシュバーガーさんは特に可もなく不可もなく。野田秀樹さんの赤鬼と比べるとやっぱりプレーンですから(笑)。
音楽は、これはいつものことなのですが、私の好みには合いませんでした。野田さんの作品の選曲はベタっとしたものが多いので受け入れづらいです。また、テーマ曲はいいとしても、違うバージョンなのに同じ曲が流れるのはやはり嫌ですね。タイ・バージョンで使われた私の個人的思い入れの深い曲が、やはり同じシーン(赤鬼が" I have a dream"と叫び、「あの女」が通じあうところ)で使われていて興ざめでした。言葉も演出も出演者も違うのですから、音楽もその作品に合うものに変える方が良いと思います。
前2バージョンに比べると不満な部分が多かったのですが、最後はやっぱり感動してほろりと来ちゃいました。3度目なのに。野田さんの脚本はすごいですね。水銀役の大倉さんが熱く「あの女」への愛情を伝えてくださり、「あの女」(小西真奈美)が美しく見えました。トンビ(野田秀樹)が語る妹の「絶望」のことが少しわかった気がしました。うーん、これは戯曲本を買わなきゃかも。
小西真奈美さん。北区つかこうへい劇団に出演されていた時(『蒲田行進曲』『二代目はクリスチャン』等)と同じようにされていたのが残念でした。いわゆる良いセリフ(決めゼリフ)を話す時には決まって、あの裏声のような、息を漏らして出す高めの声色を使われるんですよね。「あの女」の普段の声は低くて艶のある色っぽい声ですごく良かったんです。あのまま、なりきって語ってほしかったです。
大倉孝ニさん。アドリブっぽい演技が楽しかったです。ラストの「あの女」とのやりとりでは完全に大倉さんに見とれていました。野田さんの頭を叩く時に、遠慮して帽子のつばをさわる程度になっているのが可愛らしかった(笑)。
野田秀樹さん。「裁く男」役がめちゃくちゃカッコ良かったです。セクシーだったな~、あのずる賢くて最高にイヤな野郎役が。
私が観た回はカーテンコールが4回ありました。やりすぎじゃないかなーと思ったんですが、出てくる度に小西さんの笑顔がどんどんと可愛くなって、あの笑顔のためになら拍手しちゃうかもねと思いました。ただ、小西さんの笑顔に見えるのは役を演じきった喜び(自負心)というよりは、全力を出し切ったスポーツ選手のさわやかな汗のようなものに感じられました。
作・演出:野田秀樹
美術・衣裳:日比野克彦 照明:海藤春樹 選曲・効果:高都幸男
出演:小西真奈美(あの女) 大倉孝ニ(水銀) 野田秀樹(とんび) ヨハネス・フラッシュバーガー(赤鬼)
Bunkamura内『赤鬼』サイト:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/akaoni/index.html
新国立劇場 演劇 THE LOFT 1『胎内』10/04-17新国立劇場小劇場
新国立劇場の小劇場をさらに小さく使うTHE LOFTという企画の第1弾(3弾まであります)。『浮標』で大感動した三好十郎さんの戯曲なので(2003年の私のベスト1です。レビューはこちら)少し期待して観に行きました。
戦後2~3年経った日本。悪事を働き金儲けをしている男(千葉哲也)とその愛人(秋山菜津子)、生きる希望を失くし、穴の中に閉じこもっていた元兵士(檀臣幸)の3人が、防空壕の中に閉じ込められる。必死で穴からの脱出を試みるが、わずかな希望も絶たれて極限状態に陥ってしまう。死を目の前にした彼らのそれぞれの生き様があばかれていく。
敗戦国となった日本では、世の中の価値基準がガラっと変化しました。道徳や理性などかなぐり捨てて金のために奔走する者が増え、またそういう輩に本当に金が集まるようになってしまった、心の喪失の時代。正反対の生き方をしている男2人と1人の女に、当時の日本人の姿が投影されます。(ここからネタバレします。作品の性質上、読んでから観に行かれても問題ないと思います)
20世紀の戦争についての自分の知識を振り返ると、私が受けた高校までの歴史教育では、事実ではなく一つの解釈を教わったように感じています。人から人に何かを伝えるということ自体に常にそういうリスク(事実の捏造)があるのですが、三好十郎さんのこの戯曲の言葉は、ありのままの本当の事として受け取れました。
このまま死ぬのだとわかってから、佐山(檀臣幸)は意外にも自分が「生きたい」と思っていることに気づきます。そして、今までの自分の人生を初めて振り返るのです。(下記のセリフは完全に正確な引用ではありません)
「戦争に負けて、みな『自分は本当は戦争なんてやりたくなかった』と声高に言い始めた。この戦争を誰かのせいにするために。」
「戦争をやっている時、俺は誰かを殺したいなどとは全く思っていなかった。ただ、命令されるがままに穴を掘っていた。」
「戦時中、戦争をしたいと思っていた奴がいただろうか?いやいなかった。ただ上に言われるがままに従っただけだ。それに、従わなかったとして、あの時、弱い人間に何が出来たであろう?いや何もできなかった。」
「人間は弱いのだ。」
「弱いことは、悪だ。」
「俺は自分の命をもてあそんでいた。」
気が動転してくるにしたがって花岡(千葉哲也)と村子(秋山菜津子)の衣装はどんどんと血の色が現れて、花岡などは赤い服を着ているかのように全体が血に染まった半袖のシャツを着ている状態になります。反対に、自分が「生きている」と気づき、主体的に生きはじめた佐山(檀臣幸)の衣装は、汚れずにそのままです。登場した時のボロ雑巾のような風貌から、凛々しささえ垣間見られるようなります。
このお芝居のタイトルが『胎内』であることについて。「もしここから出られたら、私、もっとちゃんとするのに」と息も絶え絶えになって嘆く村子(秋山菜津子)の言葉に、観客は自分自身を重ね合わせます。この作品という母体の中にいた観客は、死んでいった3人の痛ましい人生に触れ、劇場の外に出る時には新しい命として生まれ変わるという意味なのではないでしょうか。私たちの祖先が犯した過ちを正しく知り、それを再び繰り返さないと誓い、生きるということを主体的に生きて、今、突然死んでしまっても恥ずかしくない生き方をしようと、心を新たにするのです。なんて偉大な・・・。
さて、ここまでは三好十郎さんの戯曲についての感想でした。役者さんが非常に達者な方ばかりだったおかげでセリフを正確につかむことが出来ました。下記、この公演自体についての感想です。
穴に閉じ込められたと気づくまでの3人のやりとりが、リアルながらとても軽快で面白かったです。でも客席は総じて深刻な雰囲気で、コミカルな間(ま)がちゃんとあったのに笑ったのは私だけ・・・?という状態。もっと笑っていいと思うんですけどねぇ。
閉じ込められて「もう助からない」と気づいてからの5、6日間を3シーンぐらいに分けていた気がします。長かったですが、予想していたよりは平静に観ていられました。事前にあらすじを読んで、明るい結末ではないことを覚悟できていたからだと思います。
役者さんは3人とも演技がリアル。文句なく上手くてほれぼれします。ただ、すごく意外なことに、感情移入できなかったんです。本当にそういう人が目の前にいるように見えてしまい、「昔の時代の人がいるな~」と、眺めてしまう状態だったんです。なんて皮肉なんでしょう!リアルを求めたために心の内側へ内側へと突入してしまい、外側(観客側)への爆発力が減ったのでしょうか。それとも私が脚本解釈ばかりしてしまったせい?理由ははっきりしないのですが、とにかく私は淡々と眺めるままに終わってしまいました。
舞台はツルっとした何もない板の上で、全体が斜めの坂のようになっています。色は汚しの入ったどす黒い朱色。両側を観客にはさまれた細長い形で、直線的で抽象的なものでした。中央に水が溜まった丸い穴があいていて、たばこを捨てたり、花岡が佐山の頭をつっこんだり、生々しい用途に使われます。この装置もなんだかサラッとしていたんですよね・・・。たぶん言葉があまりに凄すぎて、美術や音響、照明などがちょっとした装飾どまりに思えてしまったのではないかしら。装置がすごくリアルな穴ぐらだったらどうだったんだろう・・・。『浮標』の時みたいに(初日写真はこちら)、額縁や周辺だけを抽象にする方が、観ている方も当事者のように感じられたのかも?うーん、良い戯曲だっただけに疑問がふつふつと・・・。私は最前列の席だったのですが、不思議なことに何もかもが遠くに、遠くに感じたのです。目の前に居る千葉哲也さんが私と全然関係のない世界にいらっしゃるように感じました。
役者さんについて。素直に尊敬です。こんな壮絶な芝居をやろうと思うなんて。そして、あそこまでなり切って演じられるなんて。1日2ステージの日があるのが恐ろしい。
千葉哲也さんと秋山菜津子さん。tptで二人芝居もされていらっしゃいます。期待通り。満足。言うことなし。
檀臣幸(だん・ともゆき)さん。青年座所属。ハンサムを期待していたんですが・・・この役ではそれは全くムリですね(笑)。めちゃくちゃ演技がうまいです。手放しでスゴイ。『てのひらのこびと』(レビューはこちら)以来、さらにファンになりました。全然関係ないことですが「檀臣幸」でYahoo!検索した時に出てくるお写真、めちゃくちゃ若い!!
作:三好十郎 演出:栗山民也
出演:秋山菜津子 千葉哲也 檀 臣幸
美術:島次郎 照明:勝柴次朗 音響:市来邦比古 衣裳:宇野善子 ヘアメイク:林裕子 演出助手:宮越洋子 舞台監督:米倉幸雄
新国立劇場:http://www.nntt.jac.go.jp/
2004年10月11日
STスポット・ポかリン記憶舎+Ort-d.d『夢乃プレイ~音楽劇《少女地獄》~』10/09-11横浜・山手ゲーテ座
ポかリン記憶舎 と Ort-d.d(オルト・ディー・ディー)の合同公演という、まさに“夢”の企画です。
東急みなとみらい線 終点の元町・中華街駅から徒歩7分。デートスポットで有名な「港の見える丘公園」の目の前にある岩崎ミュージアムの中の、小さなコンサートホール(山手ゲーテ座)が会場でした。
30分~40分間の短編お芝居の2本立てです。
【夢編】ポかリン記憶舎
ダークな色合いの袴姿の少女たちが、しずしずと滑るように登場します。ポかリン記憶舎のいつもの空気でした。音楽もいつもの感じ。ピアノの生演奏(木並和彦)があったのですが、スピーカーを通していたので途中まで生演奏だとわかりませんでした。生音で聞きたかったですね。
「うふふふふ・・・」と全員で笑い声を出すのはちょっと作為的すぎるんじゃないかと思いました。これもまたいつものポかリンらしさなのですが、私は何度も拝見しているので飽きちゃったのかもしれません。
少女の心の中にある善(ミカエル等)と悪(ルシフェル)との戦い。最後に少女は善も悪も脱ぎ捨て、少女そのものになって昇華する・・・という風に受け取りました。最後に裸の人形が一体、舞台中央に捨てられるように置かれていたことで、全ては死んでしまった少女の夢の中の出来事だった、というように示したんじゃないでしょうか。
舞台装置は5~7mぐらいの高さの銀色の網のついたてだけでした。グルグルと丸まった針金が何枚か重なっているようでしたが、おそらくベッドのスプリングですよね。うまいこと使ってるなぁって思いました。石と木で出来ているホールの壁とすごくマッチしていました。
衣裳については、袴の着物の中にレースのブラウスを着ていたのが素敵でしたね。黒っぽい口紅も最近は見ないので新鮮でした。
夢編終了後、ちょっと長い目の休憩(15分だったかな?)があり、観客は会場ロビーに出て待っていました。舞台装置の転換があるためです。
【プレイ編】Ort-d.d
舞台はちょっとした厨房になっていました。大きなお鍋やフライパンなどの調理器具の他に、にんにくや黒こげになった四足動物がぶらさがっていたり、ちょっといかがわしい雰囲気もあります。スチールの台の上には、太鼓やさまざまな打楽器が置かれてました。
観客が劇場に脚を踏み入れた時からお芝居は始まっていて、先ほどとは全くジャンルの違う衣裳をまとった女優さんが一人ずつ出てきます。ダーク&しっとりな和風麗人から打って変わって、キッチュ&ポップなド派手ねーちゃん達のオンパレード!ラメやスパンコールがギラギラしていて少し中華風。色彩はゴージャスでどぎつくて、ターコイズブルーのタイツにショッキングピンクのハイヒールを履いちゃったり。黒いレースのビスチェ(下着)とキャミソールの重ね着など、ちょっとジャンクな感じもプラスされていて、イっちゃってる感、大。この時点で私の頭の中はお祭り騒ぎでした。
パーカッションの棚川さんだと思うのですが、厨房の奥に座りながら、手書きで「プレイ編」と書かれた布巾をチラっと見せるんです。なんて小気味良い、味のあるオープニングなのでしょう!
「何でも黒焼きにしてお出しします」というレストランで、シェフや小姓たちが話しかけます。「中でも“火星人の黒焼き”が当店自慢のメニューです」というところで原作『火星の女』につながります。『火星の女』のストーリだけを超~簡単に書いてしまうと「背が高くて見栄えも悪く、頭の方も良いとは言えない女学生が、学校でじわっといじめられながら、校長先生に手篭めにされ、最後には焼身自殺してしまう」というものです。火星人と呼ばれているその少女、甘川歌枝(田丸こよみ)の独白形式で原作は語られるのですが、それが『火星人の黒焼き』のレシピと同時進行するのです。このアイデア、ぶっ飛んでますよっ!サイコー!!
夢野久作の作品は小説なので色は見えないのですが、私には青白い石膏の白と、どす黒い内臓の血の赤のイメージがあります。極めて禁欲的で純粋な心から生まれ出る行動が、悲しいほどに罪深いのです。書かれている具体的表現がいくら残酷でグロテスクであっても、私達はその皮肉な人工的美しさに魅了されます。この『火星の女』Ort-d.dバージョンでは、人間の原始的な欲求である食欲や、性欲(パーカッションのリズムへの恍惚)のド真ん中にその人工美を落とし込み、いわば全く反対の側面から光を当てて、原作の本質を照らし出すことに成功しました。演出ってこういうことだなって思います。
音楽・演奏を担当されている棚川寛子さんも、きれいなドレスをお召しになってずっと舞台上にいらっしゃいました。女優とコミュニケーション(アイコンタクト)を取りながら、打楽器を自由自在に鳴らしまくります。かっこいい!!女優さんも一緒にパーカッショニスト顔負けの演奏を見せてくれました。言葉では言い表せないあのグルーブ感を、ぜひとも多くの方に体感していただきたいです。
Ort-d.dおなじみの田丸こよみさん、寺内亜矢子さん(ク・ナウカ)、市川梢さんは、いつもながらに妖艶かつ力強い演技で私を悩殺してくださいました。ポかリン記憶舎の女優さん(田上智那さんと中島美紀さん)の新しい面が見られました。特に田上さん、嘘つきシェフの役でしたっけ?大爆笑ですよっ!中島さんは激しいダンスがお上手だったのが意外で、魅力倍増でした。
とにかく女優三昧。日本の女優、スゴイぜっ!!
出演=田上智那(ポかリン記憶舎)/中島美紀(ポかリン記憶舎)/田丸こよみ/寺内亜矢子(ク・ナウカ)/市川梢
原作=夢野久作
〈夢編〉演出=明神慈(ポかリン記憶舎)音楽・演奏:木並和彦 演出助手:冨士原直也(crew) 音響:日下部そう(ポかリン記憶舎)
〈プレイ編〉演出=倉迫康史(Ort-d.d) 楽器協力:AZTEC 録音編集:末延仁 音楽・演奏:棚川寛子
〈夢編・プレイ編 共通スタッフ〉照明:木藤歩(balance, inc) 衣装・美術:ROCCA WORKS(岡崎イクコ ほか?) 舞台監督:弘光哲也 舞台助手:岡田宗介 宣伝美術制作:山本ゆうか 衣装協力:野村佳世 藤島K子 森田圭 ヘアメイク:NAOKO
スパーキング21 vol.15特別企画
STスポット:http://www.jade.dti.ne.jp/~stspot/index.html
風琴工房『風琴文庫』10/11-17自由が丘 大塚文庫
風琴工房は詩森ろばさんが作・演出を手がけてらっしゃる劇団です。少人数のお客様限定の企画で、自由が丘にある大塚文庫という私設美術館の中で行われています。ダブル・キャストの2バージョンの内、私は[桐]チーム(風琴工房の役者陣)を拝見しました。
全てネタバレになりますので、これから観に行かれる方はお読みにならない方が良いと思います。
会場の大塚文庫は「大塚正夫が生前の1989年に、美術工芸品のささやかなコレクションを収蔵展示するために、自宅敷地内に建設したもの」だそうです(大塚文庫HPより)。自由が丘の閑静な住宅街にひっそりと、こんなに素敵な建物があるなんて、知ることができただけでも嬉しかったです。今年4月にOrt-d.dの『乱歩プレイ』が上演された高椿美術館を思い出しました。
昭和異端文学の4つの短編をもとにした3幕じたての作品でした。地下室で「昆虫図」、1階の和室で「アップルパイの午後」、2階のサロンで「双生児奇譚」(?)が上演されます。「瓶詰地獄」が全てのバックグランドになっており、登場人物である兄(山ノ井史)が妹(椎葉貴子)を探しているという設定でした。
夢野久作の「瓶詰地獄」は知っていました。たぶん漫画で読んだと思います。南の無人島で禁断の愛欲の日々をむさぼっていた近親相姦の兄妹。ビール瓶の中に入れた手紙によって自ら招いた悲しい破滅。ドロドロしていて官能的で、汚いことと綺麗なこととのバランスが紙一重なのが刺激的です。読んでいる方も罪悪感を感じながら、どんどんと読み進んでしまう作品でした。
[桐]バージョンは最初に和室、次が地下室でした。両方ともほぼ2人芝居でセリフも多いため、言葉に重点をおいて観ることになりました。そういう状況で役者さんの演技がおぼつかないため、見ていて苦しかったです。また、セリフが説明のためにばかり使われている気がして集中できず、物語を味わうところまで入って行けませんでした。
特に男優さんが弱かったですね。「そちらの方は手練(てだれ)ですよ」と自分のセックス・テクを自負しているような男には見えませんでした。“ご案内人(座敷童子)”役の宮嶋美子さんは芯から堂々とされていて良かったです。
「手練」についてですが、そもそも一人の女(妹)としか経験してないのにテクがあると思っていること自体おかしいですよね。他にも脚本に合点がいかないことが多かったです。「昆虫図」で男(兄)がナイフを持っている理由を夫人(松岡洋子)に説明しましたが、ナイフは突然出てくるもので良かったと思います。「アップルパイの午後」が始まる前に、妹が兄に向かって「この(戯曲の)とおりにやってくれないとダメ」と言ったのは、構成のつじつま合わせのためのセリフだと受け取ってしまいました。
最後は2階のサロンで両バージョンの役者さんが全員集合します。登場人物が各2人ずつ同時に出て来て、互いに「あなたは誰?」などとしゃべりだしたのに仰天。地下と1階で作り上げた世界の大ネタバレ大会が始まりました。夫人が「この屋敷の地下室ではいつも私は殺されるの」と言っちゃって以降、「全部はこの屋敷のせい」になり、さらに、案内人である座敷童子が、どこまでが原作でどこからが創作なのか、[桐]と[萩]の場内進行の違いについてなど、しっかりとセリフで説明してくれちゃて、もー何が何だか、何をどうしたいやら。私は何も知りたくなかったですね。昭和異端文学の世界をほんのりと味わうだけで良かったんです。同じ登場人物が2人いる状態から「双生児奇譚」につなげてしまった時にはもう、私の心はサロンから逃げ出していました。一体何をしたい公演だったのかなぁ・・・。
会場がものすごくスペシャルですし、観客と作り手との距離がめちゃくちゃ近いですので、ほんの少しでもボロが出ると目立つんですよね(着物の着付けとか)。こういう企画はヴィジョンが一番大切だと思います。根本というか、最初の大前提さえしっかりしていれば細かいところは気にならなくなるんです。そこが伝わってこなかったから、こういう感想になったんじゃないかなと思います。
さて、これはぜひ書き記しておきたいのですが、チラシがものすごく可愛らしかったですよね。そもそも私はあのチラシに惹かれてチケットを予約したんです。私のお気に入りチラシ・コレクションに加えました。公演公式HPも凝ってるし美しいです。郵送で届いたチケットは繊細な絵柄が印刷がされていて、しおりとしても使えるデザインになっていました。こちらのブログLIVESTOCK DAYSで詩森ろばさんの赤裸々な(笑)稽古場日誌が読めます。作る側の死に物狂いの苦労が伝わってきます。これもまた、私がこの作品を観に行きたくなった原因のひとつです。
原作:久生十蘭「昆虫図」/夢野久作「瓶詰地獄」/尾崎翠「アップルパイの午後」/桐島華宵「双生児奇譚」
構成・脚本・演出:詩森ろば TOTAL DESIGN:LIVESTOCK STYLE
出演:[桐] 松岡洋子・椎葉貴子・山ノ井史 [萩] 吉川愛・平山寛人(机上風景)・ほりゆり(第三エロチカ)[ご案内人] 宮嶋美子
風琴文庫:http://windyharp.org/bunko/
風琴工房:http://www.windyharp.org/
2004年10月09日
G-upプロデュース『金魚鉢の中で』10/06-11シアターVアカサカ
小劇場界で有名で実力もある役者さんが集められたプロデュース公演です。作・演出が ほさかよう という無名の新人さんなのが、さらに興味をそそりました。今公演のプロデューサーの赤沼かがみさんが彼を見出したようですね。こういうの、すごく嬉しいです。小劇場界の新しい流れとなって定着してもらいたいです。
海に浮かぶプチ・ゴージャスなヨットの船内。若者が6人、ワケあってその船の中にいる。窓の外は嵐。密航者の発見をきっかけに始まる、密室の殺人サバイバル。
怖かった~・・・。最後の最後まで予想がつかない展開でした。上演時間が1時間50分強だったのは長く感じましたね。1時間半にまとめられたらかなりの秀作になったんじゃないでしょうか。こういう気の抜けない作品って、役者さんのコンディションも大きく影響しますよね。残念なことに私が観た回はちょっと間が緩んでいた気がしました。でも、うまい役者さんばかりでしたので不安になることは全くありませんでした。
しかし、こんなおっとろしい脚本を書いたのが、こんなに可愛らしい23歳の男の子だなんて・・・(写真は非公開になったようです)。若者の才能は計り知れません(笑)。これから注目の脚本家だと思います。ほさかさんは劇団こってり の主宰さんだったんですね。時々チラシで見かけたり観劇仲間から噂を聞いたりしていましたが、具体的なご縁にはなっていませんでした。この公演のおかげでお会いできて良かったです。
ただ、演出についてはもう一歩ですね。簡単に言ってしまうと全般的にきっかけが遅れ気味だった気がします。暗転や音楽が鳴るタイミング、セリフとセリフのつながりなど、観客をリードしていくリズムがありませんでした。また、「こういう風に見せたい」と思ってらっしゃるのは伝わってくるのですが、実現できてなかったところがチラホラ。これから勉強していかれるのでしょう。
選曲は、舞台上でも何度か話題に上ったディズニー映画の音楽(『眠りの森の美女』の"Once Upon a Dream")がとても良かったです。血まみれバトルでクラシック音楽が優雅にかかるのは最高に気持ちがいいですよね(笑)。
伊達暁さん(阿佐ヶ谷スパイダース)。ヨットの持ち主のしのぶ役。深く役作りをされていて細かい演技もひとつひとつ丁寧なので、抜け落ちるところがないんです。どうしようもなくかっこいいです、やっぱり。
ますもとたくやさん(スペクタクルガーデン)。おもろいなーっ!すっごいなーっ!!オープニングからめちゃくちゃ自然に笑いを生んでくださいました。いや~あっぱれ。
武藤晃子さん(TEAM発砲・B・ZIN)。猫と戯れるこずえ役。どうしちゃったのかな・・・。TEAM発砲・B・ZINの他にも方南ぐみやG2プロデュースでキュートな武藤さんをよく拝見していましたので、今回はキャラについても舞台上での存在感についても疑問でした。あんなにがさつに作らなくても良かったんじゃないでしょうか。
折り込みチラシによるとG-up(ジーアップ)の来年のスケジュールは↓
●作:川上徹也(PLAYMATE)・演出:寺十吾(tsumazuki no ishi)
『Brains』01/22-01/30シアターVアカサカ
●作・演出:鈴木哲也(オフィス・マキノ)
MOBO presents Vol.2『Torys!』02/24-03/06シアターVアカサカ
(→TEAM発砲・B・ZINや扉座の役者さんが出演)
と続きます。今までにない組み合わせですよね~!間が1ヶ月も空いてないのもすごい。
(以下、ネタバレします)
南(林真也)がレイプした女子中学生の兄は、実はしのぶ(伊達暁)だったと判明するあの瞬間が一番ゾクゾクしました。あれがあっただけでこの作品は成功じゃないでしょうか。スカっとしましたね~。密室殺人の醍醐味と言えば「犯人は誰なのか?」ですが、この作品では一人(たとえばフルートを持つ少女“かや”)が全員を殺したわけじゃないそうです。一回観ただけじゃわかるのは難しいみたいですね。私なんて脚本も読んで、お稽古も拝見して、本番も通してみたのに犯人を間違っていました(苦笑)。
問題:和彦(ますもとたくや)を殺したのは誰でしょう? (私はこの答えを間違えたんです。今だに根拠さえわかってない・・・)
脚本・演出:ほさかよう
出演:伊達暁(阿佐ヶ谷スパイダース) 武藤晃子(TEAM 発砲・B・ZIN) 中坪由起子 有川マコト(絶対王様) 林真也 ますもとたくや(スペクタクルガーデン) 広澤草
舞台美術 福田暢秀 美術製作 F.A.T studio 舞台監督 藤林美樹 音響 平田忠範(GENG27) 照明 廣井実 演出助手 奥村亜紀 ヘアメイク Tiamat 蓮 宣伝美術 石曽根有也(C-FLAT) 制作 G-up 保田佳緒 鎌田千穂子 プロデューサー 赤沼かがみ 企画・製作 G-up
G-up(ジーアップ):http://www.g-up.info/
山の手事情社20周年記念公演Yamanote7481『夏の夜の夢』10/08-17青山円形劇場
劇団 山の手事情社の20周年記念公演です。観客アンケートで再演希望の多かった3作品を2週間連続で上演しています。2作品連続上演とかは聞いたこともあるのですが、3作品って・・・すごすぎる。一体どうやって作ったんだろう・・・。私は『夏の夜の夢』から拝見しました。
銭湯を舞台にした『夏の夜の夢』は初演の時から評判が高かったのは知っていましたが、期待が大きすぎたせいか「めちゃくちゃ良かった」とは思えませんでした。最近の『DOUJOUJI』の方がずっと面白かったんですよね。セリフもほとんどシェイクスピアの作品そのものを生かす形でしたしね。そうなるとシェイクスピアの『夏の夜の夢』は何度も観てますので、今まで観たものと比べてしまいます。どうせならもっともっと奇抜な演出で観たかったな~。男と女の配役がところどころ逆になっているのは楽しかったです。特にオーベロン(倉品淳子)とティターニア(山本芳郎)は最高。
落語家の柳家花緑さんがボトムをはじめとする町人たちをお一人で演じられる(語られる)のですが、私は退屈でしたね。落語にあまり慣れてないからなのかなぁ。茶色の網パンストをかぶってロバになるのは素晴らしいアイデアだと思いましたが(笑)。
あと、役者さんの力量の差が気になったのが残念でした。山の手事情社のお芝居には役者全員による身体表現がよくありますよね。上手な方は本当にお上手なので、ちょっとおぼつかないな、という人がいるとヘンに目立っちゃうんです。でもオープニングはめちゃくちゃかっこ良かった!「わぁっ・・・!」と小さな声を上げてしまいました。
青山円形劇場をプロセニアム(額縁)形式で使っていました。青っぽい白を基調にした舞台上に、黄色いおけが沢山積まれていて、コインロッカー、電動あんま椅子、体重計、牛乳瓶の入った冷蔵庫など、昔ながらの銭湯にある調度品がオブジェのように置かれています。おけ以外はすべて真っ白な舞台上に、カラフルな和風の衣裳をまとった役者さんがしずしずと歩み現れ、次第に体の動きで見せていきます。あぁ・・・思い出すだけで嬉しくなります。
照明が素晴らしかったです。山の手事情社の蛍光灯は本当にかっこいいですよね。上から吊り下げられた掛け時計と冷蔵庫が照らされるのもいい。冷蔵庫は中から照明が仕込まれているのもきれいです。舞台のまわりを丸く囲むように、天井から床まで真っ直ぐ落ちるようにスクリーンがかかっていて、そのスクリーンを、下から青、緑、黄色、ピンク、赤などの原色系の照明が色とりどりに照らします。
衣裳はいつも素晴らしいのですが、今回も美しかったな~・・・。着物に袴スタイルで、配役ごとに色や柄で違いを出しています。特に妖精たちの帽子と頭飾りが凝っていましたね。パックが黒ぶち眼鏡をかけているのもキュートでした。
休日マチネってあまり演劇に慣れていない方がいらしている度合いが高いので、アート系のお芝居は平日ソワレに行くことにしているのですが、やっぱりヤラれました。おそらく山本芳郎さんのファンの女性なのでしょう、山本さんが出てくるだけで大笑いしてらっしゃいました。女装してきた時なんて休まず笑い続けるんです。なんでやねん!?ファンならもっと演技とかを見ればいいのいね。ラストのめちゃくちゃいいシーンで、一人で大声を上げて手を叩いて大爆笑したおばさま!まわりは皆キレかけだったのよ!!(怒)。そう、ラストの「役者は・・・」のところはジィーンと来ました。あの邪魔な大笑いさえなければ「今まで観た中で一番美しい『夏の夜の夢』のエンディングだった」と言えたと思います。
3作品全部に出演されている役者さんは「モノスゴイことになっている」そうです。「『jamゴールドブレンド』は即興だからいいんだけど、『オイディプス@TOKYO』と『夏の夜の夢』は正反対の内容だから」と、ある役者さん談。なるほど頭の切り替えが大変そう・・・。こんな公演を実現・実演されていることに感服です。
※『jamゴールドブレンド』は10/15(金)以外すべて完売だそうです。ご予約はお早めに!
出演:柳家花緑 山本芳郎 倉品淳子 野々下孝 岩淵吉能 太田真理子 水寄真弓 河村岳 浦弘毅 森谷悦子 山口笑美 久保村牧子 植田麻理絵 鴫島隆文 名久井守 野口卓磨 山田宏平
構成・演出:安田雅弘 照明・舞台装置:関口裕ニ(balance, inc) 音響:斉見浩平 衣裳:渡邉昌子・栗崎和子→『夏の夜の夢』『オイディプス@TOKYO』 寒河江真紀(lame☆trap)→『jamゴールドブレンド』 舞台監督:本弘 宣伝美術:福島治 演出助手:小笠原くみこ 制作:福冨はつみ 製作:劇団山の手事情社・(有)アップタウンプロダクション
山の手事情社オフィス:http://www.yamanote-j.org
2004年10月05日
遊機械オフィスプロデュース『溺れた世界』10/03-24シアタートラム
白井晃さんが、えり抜きのスタッフとともに創る海外戯曲@シアタートラムの第3弾。
フィリップ・リドリー作『ピッチフォーク・ディズニー』、『宇宙で一番早い時計』に続いて今度はゲイリー・オーウェンの“The Drowned World(溺れた世界)”です。
つみきみほ さん にしびれました。ぜひぜひ彼女を目撃して欲しい!
期待を裏切らない白井ワールドでした。緊張が続く2時間はちょっぴりキツイですが、こんなに繊細で美しい舞台世界を作り出せるチームは少ないです。もったいないことに空席が目立ちます。10月24日(金)までありますので、どうぞお時間を作って観に行っていただきたいです。
情けないことにちょっと風邪を引いてしまいました。てゆーか会場クーラーきき過ぎ!!苦情を言って帰ってきました。でも作品は素晴らしいですよ。(ここまで10/5にUP)
劇場入り口で、登場人物とSTORYについて書かれた1枚の紙が手渡しで配られました。手に持ったのでチラリと見てから観劇したのですが、読んでおいて良かったです。何もない舞台に4人の俳優が出てきて語るだけのお芝居(と言っても過言ではない)で、セリフも難解なのです。これからご覧になる方は、ネタバレを恐れずに事前にあらすじ等をお読みになることをお勧めします。それでも十分に楽しませてもらえますから。
(ここからネタバレします。)
●あらすじ(当日パンフレットから引用します)
そこは市民と非市民に分断された世界。非市民は輝くように美しい人間たち。市民は醜く、美しいものたちが放つ輝きを恐れて非市民を抹殺し、世界を支配している。青年ダレンは市民側(醜いもの)の人間でありながら、自分のいる世界とその人々を嫌悪し、いつか天使が自分を救いに来ることを願っている。ある日、誰かがダレンの部屋のドアを叩く。そこにいたのは市民に追われた、非市民(美しいもの)であるターラと、怪我をした恋人のジュリアンだった。ダレンは彼女が自分を救ってくれる天使だと信じ、ふたりを家にかくまう。ダレンは3人分の食べ物を得るため、ターラの美しい髪を闇売人のケリー(市民側)に売るが、実はケリーは非市民をかばう裏切り者の市民を通告するための、警察側スパイだった。(あらすじ終わり)
市民と非市民の構造は、戦時中ドイツにおけるユダヤ人差別に似ています。ただ、この物語においては被差別者が特定の人種などではなく「美しいもの」であることから、より広い普遍性につながります。
ケリー(つみきみほ)が窓辺にいたジュリアン(田中哲司)をチラリと見た瞬間に「吐き気がした」のは、警察側からすると「モラル・コントロールを失わせる非市民側の攻撃」なのですが、それはつまりは一目ぼれでした。ジュリアン(の瞳)を手に入れたいという強い欲望に支えられながら、闇売人の姿に身をやつして獲物を待っていると、ターラの髪を持ったダレンが引っかかってきます。そこでケリーは“美しいもの”を生け捕りにしているダレンに「“美しいもの”を自分のものにして、そして処分した後も、彼らの面影を抱きながら生きていける」と提案します。すごく切ないなぁと思いました。自分は醜い。世界も汚い。その中で生きていくためには幸せな思い出が必要なんですよね。
ダレン(岡田義徳)に惨殺されたケリー(つみきみほ)と、市民になぶり殺されたジュリアン(田中哲司)が、天国(地獄?)で出会うラストシーンでは、彼らは互いにこの上なく醜い姿になっています。ケリーは海の底で魚に体を食いちぎられているし、ジュリアンは火あぶりにされたのでケロイドだらけです。初めて何の偏見もなくコミュニケーションをし合えるようになった彼らの前に、8才ぐらいの子供が現れました。ケリーが警察側で働いていた頃は、子供であろうが“美しいもの”なら容赦なく捕まえていましたが、死んでしまって自由になった彼らは、その子供に光輝く月のことを話そうと言い合います。これは、こんなに醜い人間の世界だけれども、子供達の未来はきっと明るいものにしようという意志の暗示だと受け取りました。
演出(白井晃)、美術(松井るみ)、照明(高見和義)、映像(上田大樹)は『ファウスト』に引き続いて同じスタッフです。
舞台は何もない正方形の板の上。舞台面はへび皮のような姿のひからびた地面だったり、波が左右から打ち寄せる波打ち際だったり、天井から写される映像で変化します。舞台正面奥も全面がスクリーンになっていて、基本は黒色ですが場面ごとにそのシーンの色づけのための映像が映し出されます。とても抽象的な動画ばかりなので、場面の背景として決して邪魔にはならず、空間に動きと色づけをする以外に、登場人物の心中をやんわりと説明する役割も果たしていました。映像を使った舞台作品の中では秀逸な出来栄えだったと思います。白井さんの作りたい世界観がきっちりスタッフに伝わっているから実現しているのでしょう。
シーンとシーンのつなぎに、俳優が舞台上をただ動くシーンが挟まれます。これをコレオグラフィー(振付)の杏奈さんが作られたのでしょうね。残念ながら俳優の身体が追いついていませんでした。決められた動作をすることに精一杯で、触れ合ったりすれ違ったりする動作や位置関係で登場人物の関係や心情を表すところまでは行き着いていませんでした。これは役者さんの力量不足かも。これから公演後半になるに従ってしっくりしてくる可能性はあります。
いつもながら白井さんのキャスティングは心底すごいと思います。役者さん本人の資質を見抜いてそれを引き出すように演出されるのでしょうね。『ピッチフォーク・ディズニー』の宝生舞さん、『宇宙で一番早い時計』の鈴木一真さん(『浪人街』ではイマイチでしたが)、音楽劇『ファウスト』の篠原ともえさん、そして今回は つみきみほさん が私の新しい発見になりました。
岡田義徳さん。ダレン(市民)役。オープニングのたった一人での長ゼリフは、すごく頑張ってらっしゃったのですが言葉がずるずると流れてしまっていて、のっけから不安にさせられました。でも、物語が佳境に入ってくるにしたがって、岡田さん演じるダレンの心がじんわりと岡田さんの身体から溢れて出てくるようになり、ケリー(つみきみほ)を殺害するあたりからは、なるべく奥に秘めるように吹き出させる感情表現に、かえって激しさを感じることが出来ました。
田中哲司さん。ジュリアン(非市民)役。いちばん落ち着いて舞台上に居(お)られたように思います。田中さんというと色んなお芝居で活躍されているので(特に『欲望という名の電車』は素敵でした)、欲を言うともっと光って欲しかったです。そう、“輝くように美しい若者”であることを引き受けていなかった気がします。炎に飲み込まれるシーンと、死後の世界でケリーと語らうところの清らかな存在感はさすがにかっこ良かったです。
つみきみほさん。ケリー(市民)役。瞳にしびれました~・・・。一言一言を丁寧に、まるでその場で言葉を選んでいるかのように話されていました。グサっと肌に突き刺さるハードなセリフがすごく快感で、つみきさんが語ってらっしゃる時の私はほぼマゾでしたね(笑)。ターラ(上原さくら)の金髪が触れた岡田さんの唇に、誘われるように口づけるシーンのセクシーなこと!久々に本物のファム・ファタールに出会えました。つみきさんを観られるだけでもこのお芝居の価値ありです。
上原さくらさん。ターラ(非市民)役。スタイル抜群なのでシンプルなワンピースがよくお似合いでした。「絶世の美女」という役柄に全くしり込みせず堂々としてらっしゃるのが気持ちいいです。アフタートークでも相当面白かったようですね(笑)。声もきれいに届いていましたし、セリフもしっかりと間違いなく発せられていました。ただ、人物としてはちょっと上っ面だけだった気配アリ。でもその方が作品としては良かったのかもしれないです。“輝くように美しい若者”である非市民の方にも非がないわけではないことが伝わってきました。多くの側面から語ることの出来る、難解な、しかし普遍的なこのお話に、さらに一側面を加えることができたのではないでしょうか。
作:ゲイリー・オーウェン 翻訳:小宮山智津子 演出:白井晃 美術:松井るみ
出演:岡田義徳/上原さくら/田中哲司/つみきみほ
美術:松井るみ 照明:高見和義 音響:井上正弘 衣裳:前田文子 映像:上田大樹 ヘアメイク:林裕子 コレオグラフィー:杏奈 宣伝美術:高橋雅之(タカハシデザイン室) 宣伝写真:二石トモキ 宣伝写真ヘアメイク:米倉カオル 宣伝CGオペレーション:進藤小瀬里 制作:馬場潤子、根本成美(遊機械オフィス) 根本晴美(世田谷パブリックシアター) 制作アシスタント:春山美智 提携:世田谷パブリックシアター 企画制作:遊機械オフィス
世田谷パブリックシアター:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/
ジンガロ「制作発表」10/04フランス大使公邸
フランスが世界に誇る騎馬劇団ZINGARO(ジンガロ)が来年3月に満を持して来日します。
ご縁があってジンガロ日本公演実行委員会 事務局に勤めることになりました。公演が終わる来年の5月8日まで、ジンガロ日本公演密着レポートを“しのぶの演劇レビュー”内で不定期更新していきたいと思います。公演のPRが一番の目的ですが、プライベートな雑談も書いていきますのでどうぞお楽しみに♪
10年間も招聘が実現しなかったジンガロの日本公演がとうとう!?(本当に??)ということで、業界内でも話題を呼んでいます。そのことを裏付けるかのように制作発表(記者会見・レセプション)は200人を上回るお客様およびプレスの方々で大盛況でした。
“ジンガロ”とは、1984年にフランス郊外のオーベルヴィリエでBARTABAS(バルタバス)氏が創設した「馬と人間が出演する舞台パフォーマンス」を上演する一座の名称です。
キャッチコピーを一部ご紹介します。
●ーオペラ、サーカス、音楽、演劇、ダンスー
あらゆる表現手段を超えた20世紀最大の収穫
●馬と人間の愛と友情がつくりだす全く新しい舞台芸術
●馬と人の知性と想像力の融合。
種を超えた生命の響きあい。
それが「ジンガロ」。
ポスターは↓
●ジンガロ日本公演『Loungta(ルンタ 風の馬)』
~フランスが生んだ馬と人が織り成す極限の芸術~
フランスで何度もジンガロ公演をご覧になった方がおっしゃるには「ジンガロは体験しなきゃわからない」そうです。私も簡単な公演紹介ビデオしか観ていないので期待が高まるばかり!
制作発表のために来日したバルタバスさんは、さすがにオーラを感じられる方でした。フランス紳士らしい気品があり、野性味あるふれるルックスはとてもセクシーでした。お話をされている時にちょっと飛び跳ねたり、抱きついたりされるのがおちゃめ。馬と会話ができる(!)彼は「現代のシャーマン」と呼ばれたりもしています。
この公演にはフランスの最高級ブランドのエルメスが特別協賛されています。ジンガロの生み出す芸術の大前提には“エレガンス”があるのです。
私がお見かけしたVIPは、名誉委員の羽田孜さん、鳩山由紀夫さん、顧問の野村萬さん、小沢昭一さん、オペラ歌手のジョン・健・ヌッツォさん、など。
エントランスの車寄せに付けられる車は高級外車が多かったですが、中でも水色のボディーに白い屋根のシトロエンには驚愕!
さて、制作発表が執り行われた広尾のフランス大使公邸は、当然のことながら普通に入れる場所ではありません。一歩足を踏み入れたとたん、私は(おそらく私だけが)ほぼ興奮状態。石造りのエントランス、カラフルでふかふかの絨毯、クラシックでゴージャスなソファー、キッチュな現代絵画、漆器の赤に塗られた柱、和風の箪笥、青々とした芝生のゴルフ場のような中庭・・・「は~・・・(恍惚のため息)。これがフレンチ・シック!? エスプリってこんなに自然なの!? モダンとレトロって共存できるのね!? ジャポニズムも取り入れられてる!!」もー半狂乱ですよっ。あんなミクスチャーなのに、どこから見ても“おフランス”。
ジンガロ公式HP(フランス):http://www.zingaro.fr/
朝日新聞社内暫定HP:http://www.asahi.com/zingaro
流山児★事務所『心中天の網島』10/03-10下北沢本多劇場
骨太のアングラ芝居を上演し続けている流山児★事務所の20周年記念公演です。七瀬なつみさんが主演されるので観に行くことにしました。近松門左衛門の最高傑作と言われる世話物を篠井英介さんが現代風に演出されます。あらすじはこちらの下の方に載っています。
初日を拝見したのですが、「まだ完成していません・・・!」という空気が流れてしまっていました。おろおろして動きがおぼつかない役者さんが多かったです。役になりきるどころか「どうしていいかわからないけど、とりあえず演出がついた通りにやってみよう」と、モゾモゾしている状態。もしかすると様々なことが間に合ってなくて、演出があまりつけられなかったのかなぁ?と想像したりしました。お芝居を観ている最中にこんなことを思い浮かべてしまう時点で、観客としては全く楽しめない残念な結果でした。
篠井さんが演出される流山児★事務所の公演は、創立15周年記念公演『完璧な一日』01/08-16ザ・スズナリを拝見しました。きっと篠井さんはシンプルで、か弱くて、清楚な美しさがお好みなのではないかしら。舞台装置のコンセプトが非常に似通っていたのです。白い壁で四方を囲んだだけの空間で、上下(かみしも)と舞台奥の中央に、出はけ口になる四角いドアの大きさの穴がポコポコと開いています。床に2段ぐらいの段差も作られていますが、基本的には“何もない空間”ですね。そこに明治・大正のレトロなイメージのドレスや背広を着た俳優が登場します。
スズナリでの公演は白くて小さい“箱”という、空虚で閉塞感のある密度高の空間が成り立ちましたが、今回は本多劇場ですので、ただただ広くて何もなくて、閑散としちゃいました。出演者も多くないですし、装置もついたてが2つと簡単な家具ぐらいしかなかったですし。2階レベル以上の高い空間も装置を作って使った方が良かったのではないかと思いました。
(この下の段落でネタバレします)
ラストは結ばれない男女(紙屋治兵衛と小春)が川のほとりで心中するのですが、その2人(若杉宏二と七瀬なつみ)だけが舞台上にいるシーンが長過ぎました。これもまた役者の感情が熟していないからなのか、単に細かいところまで演出がつけられていないのか、未完成の空気がムンムンです。篠井さんはこのシーンを一番じっくり見せたいと思ってたんじゃないかなぁ。上から降ってくる青い照明もきれいだったし。もったいないですね。
『完璧な一日』でも、オープニングに少しだけ出演された篠井さんの存在感が他の主要な役者さんを上回ったのですが、残念ながら今回もやっぱり篠井さんに軍配でした。他の役者の皆さん、なんだか自信がないのが見え見えだったんです。お稽古が足りていなくて不安になる感じ。「この作品は果たして面白いのだろうか?」といぶかっているような感じ。役者さんは、最低でも自分が出るシーンでの自分の役割を果たすことに集中できなきゃだめですよね。何かがうまく働いていなかったのでしょうね。
さて、お目当ての七瀬なつみさんですが、やっぱりお美しいです。顔はもちろん、スタイルもいいし、お声はきれいだし、観ていて幸せ♪でも、演技についてはもうひと頑張り欲しいですね。初めての二役なのだそうなのですが、演じ分けがあまりヴィヴィッドじゃなかったです。残念。
いわばストーリー・テラーになる近松門左衛門役の流山児祥さんが、合間合間に歌を歌われます。流山児さんご自身は渋い俳優さんだと思うのですが、ちょっと内輪ウケな感じがしました。
休憩なしの2時間のお芝居で、真ん中辺りに場面転換もふまえての幕間のシーンがあり、20周年記念の口上が挟まれました。流山児さんがカッコよく見得を切るところで「流山児!」とかけ声がかかり、とても親しみやすい良い感じになりました。
「俺が!」「俺らが!」と正面からバシバシ主張する姿勢は、良い意味で流山児★事務所らしさだと思いますが、この演目にはあまりフィットしていない気がします。記念公演だから、劇団の独自色を際立たせているのもあるのでしょうね。
原作:近松門左衛門、岡本綺堂 脚本:山元清多 演出:篠井英介
出演:七瀬なつみ、若杉宏二、篠井英介、栗原茂、木内尚、上田和弘、甲津拓平、イワヲ、小林七緒、矢吹歩雅、渡辺恵美、悪源太義平 流山児祥
芸術監督:流山児祥 舞台美術:島次郎 照明:沖野隆一 音楽:本田実 音響:島猛(ステージオフィス) 衣裳:宮本宣子 舞台監督:北村雅則 演出補:小林七緒 演出助手:浅倉洋介 写真撮影:アライテツヤ 写真スタイリスト:篠原さおり 写真ヘアメイク:双木昭夫 ポスター&チラシデザイン:藤原カムイ+スタジ2B チラシ裏デザイン:清水俊洋 制作:米山恭子 制作統括:小松克彦
流山児★事務所:http://www.ryuzanji.com/
2004年10月03日
新国立劇場『こどものためのオペラ劇場 ジークフリートの冒険~指環を取りもどせ!GET BACK THE RING!~ 』08/06-08新国立劇場 中劇場
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ワーグナー作曲の、壮大なスケールのオペラ『ニーベルングの指環』を子供向けにわかりやすく脚色・編曲・演出した作品で、通称「キッズオペラ」。あぁ、これを観られた子供はなんて幸せなんだ!!私も小学生の頃に観たかった・・・(泣)。
初日写真が公開されています!子供も大人も一律で2,100円なんて、恐ろしいほどお値打ち価格です。メルマガ号外(2004/08/07 14:20)を出しました。
会場に入るなり、文字が目に入りました。舞台中央前面に飾ってある剣の上に、大きな垂れ幕のような布がぶら下がっています。そこに書かれているのは筆で書かれた巨大な「さわるな!」の文字。もちろん平仮名です。劇場空間に入った瞬間に、子供を物語の世界へと飛び込ませる仕掛けですよね。作った大人たち!あんたたちサイコーにかっこいいよっ!!
そしてオープニングにさっそうと登場したのはTOYOTAの“パートナーロボット”。余裕の二足歩行で登場し、きれいな女の人の声(録音)にあわせてめちゃくちゃ滑らかな動きで、観客に話しかけます。そして、なんとラッパを吹くんです。あれには驚いた。SONYアイボとかキュリオとかHONDAのアシモとか、全然およばないよねぇ。だいたい名前が好き。ちゃんと「ロボット」って言ってるところが。人格があるように感じさせちゃダメだと思うんですよ、ただの塊なんだから。おっと話がそれました。
歌は全て日本語で、セリフも多いのでオペラ歌手は歌唱力以外に演技力も相当要求されます。でも皆さん、ものすごくお上手でした。コメディーセンスもあるし、立派なエンターティナーでらっしゃいました。途中、指揮者にも話しかけるんですよ。いや~・・・全身全霊で子供のために作られている!
森の小鳥(久嶋香奈枝)がかわいかった!演技力がすごいですね。鳥の鳴き声が出る、口の中に入れて演奏する楽器は一体何というのかしら?本当に鳥の声だし、しかも豊かな感情表現ができていました。
ジークフリート(経種廉彦)も明るくおおらかな演技でヒーローの役割をしっかり果たしてくださいました。オペラ歌手のふところの深さに感涙ものです。歌も大満足。
歌が弱かったのはラインの魚の妖精たちですね。ワルキューレの3人の妹たちと同じキャストが演じていました。
衣装はひびのこづえさん。さすがでした~・・・もー最高に楽しいファンタジックなコスチュームでした。悪者のドラゴンの衣装は風船のように膨らんでいて、空気を抜くときれいにぺっしゃんこになる仕組みになっています。体中に付けられたあの赤くて丸いイボイボは、たぶんプラスチックのゼリーの入れ物を接着剤で貼り付けているんじゃないかしら。
美術は堀尾幸雄さん。ピカピカ光る布を下からの風でなびかせて赤いライトを当てて炎に見せたり(野田さんのオペラ『マクベス』では魔女が使う巨大な釜を表現するのに使われていました)、舞台面よりも大きいサイズの布をなびかせてライン川を表現したり(『透明人間の蒸気』でもありましたよね)、舞台上でわくわくドキドキのマジックが繰り広げられました。子供も大人も夢中です。
ラストシーンはちょっと遊びすぎかな~と思いました。悪者もみな集まって仲良く記念写真っていうのは、ね(苦笑)。でも子供向けですので「ハッピーエンドであることは良きこと哉」です。
最後に歌手の皆さんが客席通路に出てきて歌を歌って、子供たちと握手したりだっこしたりしてくれたのが最高に嬉しい演出でした。
配布された当日パンフレットが素晴らしかったです。A3サイズを折って手のひらサイズにしているのですが、各ページに指輪の絵が描いてあって、その輪の中がくりぬかれているんです。大きな指輪、小さな指輪と穴の大きさは様々なのですが、ページが重なるごとにその穴が同じ場所に何重にも重なっていき、表紙から見ると、指輪がいくつもあるように立体的に見えました。中身はオールカラーで、ひびのこずえさんの衣裳デザイン画が見開きにそのまま載っており、登場人物のキャラクター紹介になっています。子供達は大喜びで、開演前も上演中も(苦笑)、そして終演後もその絵を見ながらしきりに感想を話し合っていました。(ポスター・プログラムデザイン:山本寛)
劇場内およびお周辺でで夏休みイベント「アーツシャワー2004」が同時開催中でした。→fringe blog「野田舞台の小道具にさわれます」
※一緒に観劇したお子様たちの感想を聞いてみました。皆さんひとこと目には口をそろえて「面白かった」と言っていましたが、ストーリーについては驚くべき返事が返ってきました。
「みんな自己中!」「卑怯者だよねっ。」・・・えええ??そ、そういえば・・・・誰一人として他人のためにがんばっている奴がいなかった。鳥ぐらい?でも鳥だって、眠らされているワルキューレ長女を助けたかったとはいえ、ラインの娘たちの指輪を盗ませようとしたしねぇ。ジークフリートもあのままほっといたら指輪盗んでましたよね。父王なんて自己中そのもの!(笑)なるほどな~。
卑怯者というのは、王の剣を守っていたワルキューレ妹たちのことでした。姉が助けてくれたというのに、ちゃっかり逃げちゃって。姉がつかまって眠らされる時も、誰も父王に反抗しないどころか、逃げっぱなしでした。あぁ・・・日本人の子はやはり日本人。義理人情に厚いのです。なんだかお子様に一本取られました。
リヒャルト・ワーグナー:「ニーベルングの指環」による
編曲・指揮 :三澤洋史 台本・演出 :マティアス・フォン・シュテークマン
キャスト:平井香織 経種廉彦 泉良平 久嶋香奈枝 島村武男 諸井サチヨ 前田祐佳 清水華澄
美術 :堀尾幸男 衣裳 :ひびのこづえ 照明 :磯野睦 音響:土肥昌史 舞台監督 :村田健輔 演出助手:田尾下 哲 副指揮:城谷正博
管弦楽 :新国立劇場こどもオペラ・アンサンブル(東京フィルハーモニー交響楽団メンバーによる)
主催 :新国立劇場 共催 :朝日新聞社
新国立劇場:http://www.nntt.jac.go.jp/
2004年10月02日
世田谷パブリックシアター『リア王の悲劇』09/25-10/11世田谷パブリックシアター
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世田谷パブリックシアターの初代ディレクターである佐藤信さん(シアターガイドのインタビュー)が演出・美術を手がけ、実力派ぞろいの豪華キャストです。チラシのビジュアルがちょっと暗くて怖そうで迷ったのですが、やっぱりキャストに惹かれて観に行くことにしました。初日観劇です。
見終わって一言、すっぱり言い切りたい。「舞台装置がひどい!!」なんと舞台全部が階段なんですよ!役者は階段の上で演技をし続けるんです。そりゃぁ一番下と一番上にはある程度の平たい部分はありますけどね、まるで宝塚歌劇のフィナーレように、ずーーっと階段なんですよ。宝塚よりもひどいことには、途中に踊り場がないんです!さらに怖いことには、舞台の一番低い面は幅2m分ぐらいの平たいステージがあるのですが、実はその床が部分的にスライド式になっていて、スライドの下にも舞台上と同じように階段が続いているんです!3階分ぐらいの階段がとめどなく続いている舞台・・・悪夢ですよ、悪夢。
パンフレット内によると『リア王』はシェイクスピアの4大悲劇の中でも最高傑作と言われる作品で、実は2種類の『リア王』の脚本が残っているのです。その内、シェイクスピアが残したのが『リア王』、シェイクスピアの死後に弟子がまとめたのが『リア王の悲劇』で、この2つには100~400行分の内容の差があるのですが、歴史劇というよりも悲劇性を強く打ち出しているのが今回の『リア王の悲劇』です。脚本に忠実に上演されるのは日本ではおそらく初めてのことだとか。
確かに人間の歴史とか、死生観、無常観とかよりも、わかり合えないことへの深い悲しみや、純粋で一途な愛の残酷な最期など、心にグサっとささる悲劇的エピソードが美しい印象を残しました。
『リア王』は劇中劇も含めて2度ほど観たことがあったのですが、今回で初めて物語の骨組みがよーくわかりました。やっぱり演技が上手い役者さんは凄いです。シェイクスピア劇のあの長々と続くセリフの意味がきちんと伝わってきました。中でも、辛らつな言葉遊びから隠された真実をはっきりと伝えてくれた、道化役の手塚とおるさんに感服でした。血のように赤い髪に青白いメイクもドスが利いていましたね。
タイトルロールのリア王役の石橋蓮司さんがこの公演のポイントだったのですが、残念ながら名演とはいえませんでした。セリフが聞こえないのがつらかった。リアが狂っていく演技が私にはリアルに感じられなかった。そして、時々針のように現れる乱暴な動作が見苦しかった。声が聞こえないというのはプレビューのネット劇評(松本和也氏@Wonderland、某日観劇録)にも書かれていたので、覚悟をしていた分、致命的にはならなかったですが、当然ながら魅力は半減ですね。
三女コーディーリア役の石橋けいさんが良かったな~・・・。彼女の、父親リア王への愛は本物でした。だから、リア王がイマイチでもコーディーリアと2人で語らうシーンではちょっぴり涙がホロリと来るんです。
衣裳(山口小夜子)が良かった~っっ!アジアの民族衣装風でしたね。パッチワークでできた巨大なガウンが豪華でした。役者さんは裾さばきに命がけですが、観ている方は嬉しいです。
鼓動が音楽を担当しているのも楽しみにしていたのですが、叩いている姿を見られなかったのが残念。和太鼓や笛の音はやっぱり躍動感があってかっこ良かったです。特に戦闘シーンには荘厳な和のイメージも付加されて、ぴったりでした。
階段舞台の上の舞台奥が全面スクリーンになっていて、シーンの背景を表す映像が写されますが、同じく世田谷パブリックシアターで上演された白井晃さん演出の『ファウスト』の方が、ずっとセンスも良いし効果も高かったので、二番煎じの感がぬぐえませんでした。リア王の長い独白シーンで、スクリーンと階段全てを包むように、波のようなうねうねとした水色の映像が写された時はとてもきれいでしたが、シーンが長すぎて単調だったので最後の方は退屈してしまいました。うーん・・・詰めが甘い気がします。
No hay bandaのレビュー(?)が最高に面白いです。ご観劇された方はぜひご一読を!(爆笑)
ここから辛口トークです。長くなってしまいましたので、お読みになりたい方だけお読みください。
パンフレットで演出・美術の佐藤信さんがおっしゃっていることを下記に引用します。
「で、俳優がどうしたら演技しにくいかを検討したうえで(笑)、舞台の全面を階段にするというアイデアに至ったんですけど・・・。これ手ごわい装置ですよね。」
「観客には親切なんですよ、役者の演技が全部見られる、全身をね。非常に演劇的ですよ。」
「でも逆に少しでも気の抜けた所があれば、すごく目につく。若い俳優も含めて、どこまでその辺を詰めていけるのか、演出的な逃げ場のなさを考えると、まあちょっと墓穴を掘ったところもあるかな(笑)。」 引用終わり。
まず、「観客には親切なんですよ」というのは勘違いだと思います。だって私、ハラハラしどおしだったんですもの。私が観ていた回では階段上で転んだ人が1人、つまづいた人が約3人、衣裳の裾を踏んだ人が2人以上。こんな状態で落ち着いて芝居なんて観られない。非常にいやな気分でした。
「(俳優に)少しでも気の抜けた所があれば・・・」とおっしゃっていますが、それは「階段で転ばないように」と常に気をつけておかなければならない悲惨な状態になっただけで、かえって演技には集中できていなかったように見受けられました。大きな損害だと思います。
「演出的な逃げ場のなさを考えると・・・」。なるほど、「墓穴を掘った」と自覚してらっしゃるわけですね。ラストシーンでリアがコーディーリアの死体を抱きかかえて出てくるのですが、コーディーリアは等身大の人形でした。至極興ざめです。狂ったリアがコーディーリアを階段から投げ飛ばすということをしたかったのでしょうが、人形なんだもん(泣)。しらけてしまいました。クライマックスで盛り上がってたのにすごく残念でした。
作:W.シェイクスピア 翻訳:近藤弘幸 演出・美術:佐藤信 衣裳:山口小夜子 音楽:鼓童
出演:石橋蓮司/手塚とおる/中川安奈/冨樫真/石橋けい/真那胡敬二/大森博史/二瓶鮫一/斎藤歩/ハラトモヒロ/大鷹明良/内山森彦/片岡弘貴/辻萬長/阿部眞二/田中剛/本多幸男/南智章/北川響
照明:齋藤茂男 音響:島猛 美術補:星健典 殺陣:國井正廣 技術監督:熊谷明人 演出助手:鈴木章友 舞台監督:森下紀彦 宣伝美術:有山達也 宣伝写真:久家靖秀 宣伝スタイリング:飛田正浩 三橋奈穂子 宣伝ヘアメイク:赤間賢次郎 久保田直美
世田谷パブリックシアター:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/
音楽を鼓動( http://www.kodo.or.jp/ )が担当。
2004年10月01日
男子はだまってなさいよ!4『バカ・ワールドカップ』9/30-10/3ラフォーレ・ミュージアム原宿
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“男子はだまってなさいよ!”は、細川徹さんが作・演出をするシュールな笑いのコントをやるユニットだと聞いていました。シティーボーイズのお芝居の脚本も手がけてらっしゃいます。私は初見です。
ラフォーレ原宿なので気軽な気持ちで行ってみようと思ったら、大人計画の面々やバナナマンまで出演されていて、かなり入手困難なチケットでした。
会場のほぼ中央にプロレスのリングのような四角い舞台があり(柱とロープはありません)、四方から観客が囲みます。いつも客席がある方から見て上手と下手の角に、花道のような通路が作られていて、そこから役者さんが登場します。リング舞台の真ん中はお盆になっていて、ところどころで情けない感じで回転し、笑いを誘いました。
・・・はい、コントでした。ここから全てネタバレです。
特徴としては、とにかくお下劣!!これに尽きます。とりあえず脱ぎます。そして白ブリーフ一丁になります。オ○ンチンだし、う○こだし、肛○です(苦笑)。一人前の大人がやることじゃないよ!!っていう意味で笑えるのもありますが、私はそういう方向では楽しまないので、やはり技というか心意気というか、役者さんの芸を見られたと思った時に、笑いましたし、喜びました。
ウィンブルドンを目指すテニス少年2人組(荒川良々さんとバナナマンの日村勇紀さん)が時空を超えてワープしながら、最後はバカ・ワールドカップに出場しちゃう展開はちょっと面白かったです。
テニス少年二人組がなぜか浄水場に行って、ありえない衣裳のバカ3人に会うというコントで、この作品のカラーに直接触れた気がしましたね。だって、マッチ棒で作ったBATHING APEのTシャツって、その発想は一体何!?犬用の服を着て両手をパイル地の便座カバーに突っ込んでいた大堀さんが最も強烈でした。このコントの間はずっとあっけにとられ続けました。
大堀こういちさんのことは、ずいぶん前に不条理劇で拝見したような気がしたのですが(本当のところは分かりません)、本領発揮といいましょうか、パワー全開でした。語尾に必ず「ぴゅー」と言ってしまうボランティア活動(?)をしている男の役は凄かった。岩松了さん&竹中直人さん的な香りです。
佐伯新さんと近藤公園さんが、へび使いのおばさん(池津祥子さん)に会いに行く話では、ピンクのTシャツに水色の短パンをはいた佐伯さんのキャラクターにホレボレ。ズボンからテントを出すのはやめて!!(笑)。あの躍動感とスピードがギャグをさらにナンセンスに、色濃くするんですよね。
たまたま私が観た10/1(金)の回にはナイロン100℃のみのすけさんがゲスト出演されてまして、私はみのすけさんが一番好きでしたね~。「やまとだましい」という、おそらくオリジナルであろう汚くて情けない歌の弾き語りに、苦しげな笑いが止まりませんでした。「吸って!吸って!」って言うくせに吸い付いたら「やめて!」と言う、超長い髪型の人間役も凄かったなあ。何事にも動じないあの笑顔が目にこびりついています。
※藤田一樹の観劇レポートによると藤田くんが観た回は竹中直人さんがゲストだったそうです。HPでは公開されていませんが、日替わりだったようですね。どんなサプライズにも驚かない場所だった気がします。竹中直人さんが現れても小泉純一郎さんが現れても、なるほどな~ぐらいに思ったでしょう。
作・演出 : 細川徹
出演:大堀こういち バナナマン(設楽統・日村勇紀) 荒川良々 五月女ケイ子 佐伯新 井苅智幸 細川徹
ゲスト:池津祥子 近藤公園 他
舞台監督:橋本加奈子(SING-KEN-KEN) 照明:佐藤啓 音響:島猛(ステージオフィス)美術:松本英明 衣裳:今村あずさ(SING-KEN-KEN) 宣伝美術:内田雅之(VOLTAGE) 演出助手:伊藤のぶゆき 制作:木村香波子/100V
男子はだまってなさいよ!:http://www.dansiwa.com/