劇団 山の手事情社の20周年記念公演です。観客アンケートで再演希望の多かった3作品を2週間連続で上演しています。2作品連続上演とかは聞いたこともあるのですが、3作品って・・・すごすぎる。一体どうやって作ったんだろう・・・。私は『夏の夜の夢』から拝見しました。
銭湯を舞台にした『夏の夜の夢』は初演の時から評判が高かったのは知っていましたが、期待が大きすぎたせいか「めちゃくちゃ良かった」とは思えませんでした。最近の『DOUJOUJI』の方がずっと面白かったんですよね。セリフもほとんどシェイクスピアの作品そのものを生かす形でしたしね。そうなるとシェイクスピアの『夏の夜の夢』は何度も観てますので、今まで観たものと比べてしまいます。どうせならもっともっと奇抜な演出で観たかったな~。男と女の配役がところどころ逆になっているのは楽しかったです。特にオーベロン(倉品淳子)とティターニア(山本芳郎)は最高。
落語家の柳家花緑さんがボトムをはじめとする町人たちをお一人で演じられる(語られる)のですが、私は退屈でしたね。落語にあまり慣れてないからなのかなぁ。茶色の網パンストをかぶってロバになるのは素晴らしいアイデアだと思いましたが(笑)。
あと、役者さんの力量の差が気になったのが残念でした。山の手事情社のお芝居には役者全員による身体表現がよくありますよね。上手な方は本当にお上手なので、ちょっとおぼつかないな、という人がいるとヘンに目立っちゃうんです。でもオープニングはめちゃくちゃかっこ良かった!「わぁっ・・・!」と小さな声を上げてしまいました。
青山円形劇場をプロセニアム(額縁)形式で使っていました。青っぽい白を基調にした舞台上に、黄色いおけが沢山積まれていて、コインロッカー、電動あんま椅子、体重計、牛乳瓶の入った冷蔵庫など、昔ながらの銭湯にある調度品がオブジェのように置かれています。おけ以外はすべて真っ白な舞台上に、カラフルな和風の衣裳をまとった役者さんがしずしずと歩み現れ、次第に体の動きで見せていきます。あぁ・・・思い出すだけで嬉しくなります。
照明が素晴らしかったです。山の手事情社の蛍光灯は本当にかっこいいですよね。上から吊り下げられた掛け時計と冷蔵庫が照らされるのもいい。冷蔵庫は中から照明が仕込まれているのもきれいです。舞台のまわりを丸く囲むように、天井から床まで真っ直ぐ落ちるようにスクリーンがかかっていて、そのスクリーンを、下から青、緑、黄色、ピンク、赤などの原色系の照明が色とりどりに照らします。
衣裳はいつも素晴らしいのですが、今回も美しかったな~・・・。着物に袴スタイルで、配役ごとに色や柄で違いを出しています。特に妖精たちの帽子と頭飾りが凝っていましたね。パックが黒ぶち眼鏡をかけているのもキュートでした。
休日マチネってあまり演劇に慣れていない方がいらしている度合いが高いので、アート系のお芝居は平日ソワレに行くことにしているのですが、やっぱりヤラれました。おそらく山本芳郎さんのファンの女性なのでしょう、山本さんが出てくるだけで大笑いしてらっしゃいました。女装してきた時なんて休まず笑い続けるんです。なんでやねん!?ファンならもっと演技とかを見ればいいのいね。ラストのめちゃくちゃいいシーンで、一人で大声を上げて手を叩いて大爆笑したおばさま!まわりは皆キレかけだったのよ!!(怒)。そう、ラストの「役者は・・・」のところはジィーンと来ました。あの邪魔な大笑いさえなければ「今まで観た中で一番美しい『夏の夜の夢』のエンディングだった」と言えたと思います。
3作品全部に出演されている役者さんは「モノスゴイことになっている」そうです。「『jamゴールドブレンド』は即興だからいいんだけど、『オイディプス@TOKYO』と『夏の夜の夢』は正反対の内容だから」と、ある役者さん談。なるほど頭の切り替えが大変そう・・・。こんな公演を実現・実演されていることに感服です。
※『jamゴールドブレンド』は10/15(金)以外すべて完売だそうです。ご予約はお早めに!
出演:柳家花緑 山本芳郎 倉品淳子 野々下孝 岩淵吉能 太田真理子 水寄真弓 河村岳 浦弘毅 森谷悦子 山口笑美 久保村牧子 植田麻理絵 鴫島隆文 名久井守 野口卓磨 山田宏平
構成・演出:安田雅弘 照明・舞台装置:関口裕ニ(balance, inc) 音響:斉見浩平 衣裳:渡邉昌子・栗崎和子→『夏の夜の夢』『オイディプス@TOKYO』 寒河江真紀(lame☆trap)→『jamゴールドブレンド』 舞台監督:本弘 宣伝美術:福島治 演出助手:小笠原くみこ 制作:福冨はつみ 製作:劇団山の手事情社・(有)アップタウンプロダクション
山の手事情社オフィス:http://www.yamanote-j.org